エッチング
露光で描いた線幅どおりに膜へ写したいのに、薬液は横方向にも溶かして寸法を太らせ、プラズマは下地まで削って特性を悪化させます。エッチングは、露光で描いたパターンを実際の膜構造へ変える工程です。言い換えると、回路の設計図を立体形状に変換する工程 です。方向性を優先するか、材料選択性と加工の単純さを優先するかで、ウェットとドライのどちらを使うかを選定します。
エッチングとは、レジストで覆われた部分を残し、開口部の下にある膜を薬液またはプラズマで削り取る工程です。ここでは、ウェットとドライを方向性と材料選択性で比べ、選択比・異方性・エンドポイント・ダメージの4つの軸が寸法や側壁のどこに影響するかを表にし、寸法ずれを露光由来・エッチング条件由来・洗浄後の残渣に切り分けられるようにします。
ウェットエッチング
Section titled “ウェットエッチング”薬液を使って材料を除去します。 装置や条件によっては導入しやすい一方で、薬液は横方向にも進むため、微細化では方向性制御が難しい場合があります。
ドライエッチング
Section titled “ドライエッチング”プラズマを用いて除去します。 微細加工で重要な異方性制御がしやすい方式です。 東京エレクトロンは製品・サービスのページで、半導体製造プロセス別の製品区分の一つとしてエッチングを挙げ、膜を削る基幹工程と記しています。
図1のとおり、同じマスク開口でも、薬液は膜をマスクの下へ回り込んで削るためアンダーカットが生じ、プラズマは縦方向に進むため側壁が立ちます。微細パターンの転写でドライを選ぶ理由はこの方向性にあり、ウェットは材料選択性とバッチ加工を優先する工程で使います。
ウェットとドライの使い分け
Section titled “ウェットとドライの使い分け”| 観点 | ウェットエッチング | ドライエッチング |
|---|---|---|
| 方向性 | 横方向にも進みやすい | 縦方向に制御しやすい |
| 主な強み | 材料選択性、加工の単純さ、バッチ加工 | 微細パターン転写、側壁形状、エンドポイント制御 |
| 注意点 | アンダーカット、薬液管理、乾燥時の欠陥 | プラズマダメージ、チャンバー状態、マスク消費 |
| 主な適用工程 | 洗浄、犠牲膜除去、材料選択性が重要な工程 | ゲート、コンタクト、配線溝、High-NA世代のパターン転写 |
比較するときの軸
Section titled “比較するときの軸”| 軸 | 測る対象 | 影響 |
|---|---|---|
| 選択比 | 削りたい膜と残したい膜の削れやすさ | 下地ダメージ、マスク消費、寸法ばらつき |
| 異方性 | 縦方向にどれだけまっすぐ削れるか | 線幅、側壁形状、パターン転写精度 |
| エンドポイント | 削り完了をどう検知するか | オーバーエッチ、残膜、歩留まり |
| ダメージ | プラズマや薬液が材料へ与える影響 | リーク、信頼性、後工程の接合品質 |
ダメージの軸については、サムコが化合物半導体向けALE装置の発表資料で、イオンの物理的衝撃に依存した加工ではデバイスへのダメージが発生し、リーク電流増大などの特性劣化を招くと記しています。表の「リーク、信頼性」は、この種の損傷が電気特性の数値差として検出される経路です。
何が難しいか
Section titled “何が難しいか”- 欲しい材料だけ削りたい
- 横方向に削れすぎると寸法が崩れる
- 下地まで傷つけると特性が悪化する
- 微細化でマージンが急激に減る
現場で意識されること
Section titled “現場で意識されること”- 選択比:残したい下地がどれだけ削れたか、マスクがどれだけ減ったかを、寸法ばらつきと同じ条件で測る
- 異方性:側壁の立ち方と、設計値からの線幅の太りを断面の形で測る
- エンドポイント:検知が遅れればオーバーエッチ、早ければ残膜になるため、膜厚ごとに検知条件を選定する
- プラズマダメージ:リーク電流のような電気特性の数値差として出るため、形状の合否と同じ表に載せる
- チャンバー内の汚染:残渣や膜荒れとしてウェハ側に出るため、ウェハを連続して流したときのチャンバー状態も条件に含める
不良モードの見方
Section titled “不良モードの見方”エッチング不良は、形状、残膜、損傷、汚染に分けると追いやすくなります。 寸法が太る、細る、側壁が丸まる、下地が削れる、残渣が残る、膜が荒れるなど、検出された現象によって疑う条件が変化します。 露光由来のパターン問題なのか、エッチング条件由来なのか、洗浄後の残渣なのかを切り分けることが工程判断を左右します。
図2の4つの不良断面は、表「比較するときの軸」の行にそのまま対応します。側壁が丸まれば異方性、下地が削れれば選択比(オーバーエッチも併せて)、残膜が残ればエンドポイント、残渣や膜荒れは洗浄とダメージを疑います。よくある誤解として、寸法が設計値からずれると装置単体のエッチング条件の不良と受け取られやすいが、実際には露光由来のパターン問題か、エッチング条件か、洗浄後の残渣かを切り分けてから、前後の膜厚やハードマスク、レジストまで含めて条件を選定します。
量産では、1回のエッチングだけでなく、前後の膜厚、ハードマスク、レジスト、洗浄、計測のフィードバック方法まで含めて条件を選定します。 そのため、装置単体の性能だけでなく、工程全体のどこにマージンが残っているかを、洗浄や CMP を含む前後工程の測定結果と同じ表で比べます。 数nmの差が配線抵抗、リーク、歩留まりに影響するため、形状と電気特性をセットで判定材料にします。
次工程との関係
Section titled “次工程との関係”形ができたあと、必要に応じて導電性や接合特性を与えるために イオン注入 が行われます。 日新イオン機器はイオン注入を、デバイス構造の特定の深さに適切な量の不純物を導入し、デバイス特性を再現よく制御する手段と記しています。
エッチング条件は、前の 露光とリソグラフィ で作ったパターン、後の洗浄・表面準備、CMP とつながって決まります。 供給ガス、反応種、側壁と底部(sidewall / bottom)、終点(endpoint)、エッチング後残渣(post-etch residue)の測定条件は エッチングガスと洗浄液 で切り分けます。 微細化世代では、High-NA EUVのパターニング課題 と合わせて比べると、工程間の上限が分かりやすくなります。
この内容を使う場面は三つあります。プロセス担当は選択比と異方性の要求から薬液かプラズマかと装置条件を選定し、検査担当は寸法・側壁形状と電気特性を同じ表で合否判定に当てはめ、解析担当は寸法ずれを露光由来・エッチング条件・洗浄後残渣に切り分けます。次に比べる軸は、供給ガスと反応種の選び方(エッチングガスと洗浄液)と、装置メーカーごとのチャンバー構成の分類(AMAT・Lam・TELのエッチング装置分類)です。
- 東京エレクトロン「製品・サービス(半導体製造プロセスから探す)」(確認日 2026-09-09)
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「初心者のための半導体入門 エッチング」(確認日 2026-09-09)
- サムコ「ドライエッチング装置とは(半導体製造装置入門)」(確認日 2026-09-09)
- 浜松ホトニクス「エッチング」(確認日 2026-09-09)
- サムコ「原子層レベルの制御を実現するALE装置の販売を開始」(確認日 2026-09-09)
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー:イオン注入」(確認日 2026-09-09)