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露光とリソグラフィ

scanner の解像度は要求を満たしているのに、エッチ後の線幅がばらつき、コンタクトの opens / shorts が出続ける。この失敗場面で原因を露光機だけに求めると、レジスト膜厚のむら、下地の反射、前層との位置ずれ、欠陥検出の遅れという別の起点を見落とします。

リソグラフィとは、レジスト、露光、現像、overlay、inspection をまとめて、次工程が使えるパターンへ変換する工程です。この記事では、露光機単体の性能と patterning cluster(露光機にトラック、マスク、レジスト、inspection を加えた一群)全体の工程責任を切り分け、解像度、overlay、depth of focus、dose、defectivity のどれを合否条件にするかを区別できるようにします。

  • リソグラフィの対象範囲は、レジストを塗る露光する現像する の3動作に、その前後の 膜条件表面状態位置合わせ欠陥検出 を加えた範囲になる
  • 微細化が進むほど、主要比較軸は解像度だけでなく overlaydepth of focusdosedefectivitythroughput の同時最適化になる
  • High-NA EUV では、露光機の性能に加えて マスクトラック(レジストの塗布現像装置。例として東京エレクトロンは、High NA を含む EUV プロセスに対応する塗布現像装置 LITHIUSを公開している)、レジストinspection を同じ cluster として比較し、その結果で採否を確定する
  • patterning を学ぶときは、何を写すか何で条件を満たすか を同じ表で比較すると、工程要件を切り分けやすい

露光で起きていることは単純です。

  1. ウェーハ上に underlayer とレジストを用意する
  2. マスク経由で光を当て、レジスト内部の化学状態を変える
  3. 現像で溶ける部分と残る部分を分ける
  4. 残ったパターンを エッチングイオン注入 へ受け渡す
01 / レジストが形を運ぶ4段階
① 膜と表面の準備 レジスト underlayer / BARC 下地 膜厚・密着・表面状態を揃える ② 露光(マスク経由の光) マスク レジスト underlayer / BARC 下地 感光部の化学状態が変化する ③ 現像 レジスト underlayer / BARC 下地 溶ける部分を取り除く ④ 次工程へ受け渡し レジスト underlayer / BARC 下地 エッチング・イオン注入が受け取る レジストは形を次工程へ運ぶ一時的な転写材で、完成構造は後段の工程で作られる
図1 露光で変化するのはレジスト内部の化学状態で、下地を変えるのは残ったレジストを受け取るエッチングやイオン注入の段階です。レジストは形を次工程へ運ぶ一時的な転写材です。

図1のとおり、露光で変化するのはレジスト内部の化学状態で、下地を削る役割は残ったレジストを受け取るエッチングが担います。
レジストは一時的なパターン転写材であり、完成構造は後段の工程で作られます。

2. リソグラフィを4ブロックに分ける

Section titled “2. リソグラフィを4ブロックに分ける”
ブロック何をするか何が崩れると困るか関連ページ
膜と表面の準備underlayer、BARC、レジスト塗布条件を揃える密着不良、膜厚むら、pattern collapse 起点酸化・成膜・薄膜形成洗浄・表面前工程・再汚染管理
露光と像形成光学像をレジストへ転写する解像不足、focus margin 低下、overlay 悪化High-NA EUVの量産ボトルネックHigh-NA EUVのマスク・ペリクル・stitching
現像とパターン残し溶解差で必要形状だけ残すline edge roughness、残渣、欠け、bridgingエッチング
計測と補正overlay、欠陥、CD を測って補正条件へ返す異常の発見遅れ、歩留まり立ち下がり、装置マッチング悪化検査・計測・オーバーレイ装置の役割分担
02 / 4ブロックと補正条件の返し先
patterning cluster(露光の合否はこの全体で確定) 膜と表面の準備 密着不良 膜厚むら pattern collapse 起点 成膜・洗浄・track 露光と像形成 解像不足 focus margin 低下 overlay 悪化 scanner はここ 現像とパターン残し line edge roughness 残渣・欠け bridging track・エッチング 計測と補正 overlay・欠陥・CD を測る 異常の発見遅れ 装置マッチング悪化 inspection・overlay 計測 測定値を補正条件へ返す(overlay・欠陥・CD) 露光機の性能は像形成ブロックの一部で、合否は4ブロックと返し先まで含めて確定する
図2 露光機は4ブロックのうち像形成の1装置で、計測で得た overlay・欠陥・CD の測定値は前のブロックの補正条件へ返ります。工程責任はこの返し先まで含めて分解します。

この4ブロックに分けると、scanner は像形成ブロックの1装置で、露光の合否は patterning cluster 全体で確定します。
図2の返し先のとおり、計測で得た overlay・欠陥・CD(線幅)の測定値は前のブロックの補正条件へ返り、工程責任はその返し先ごとに分解します。

どこまで細い線や小さい穴を単一露光で作れるかです。
ただし、量産で使える解像度には、roughness と欠陥が許容範囲に収まる条件が付きます。

前の層と今の層がどれだけ正しく重なるかです。
接触穴、ビア、gate 周辺では、位置ずれがそのまま opens / shorts や電気特性ばらつきへ変化します。

focus がずれても許容できる高さ余裕です。
多層化や topography が厳しくなるほど、この余裕が狭くなります。

必要露光量です。
dose を上げれば pattern fidelity が向上する場面はありますが、throughput や cost と衝突しやすくなります。

形成したパターンに、どのくらい欠け、bridging、粒子起点不良、stochastic failure が残るかです。
先端ノードでは、写ったかどうかに加えて 欠陥密度をどこまで抑えられたか が実務上の主要な合否条件になり、その原因はレジスト材料の状態と測定位置まで含めて切り分けます。

4. 前後工程と切り離せない理由

Section titled “4. 前後工程と切り離せない理由”

リソグラフィの合否は、前後工程の条件を含めて確定します。

特に先端ロジックでは、露光の条件出しエッチ後に何が残ったか を分離して比べると、原因切り分けを外しにくくなります。

High-NA EUV の採否は、より細かく写せる scanner という判定材料に、cluster 側の条件を加えて確定します。
露光 field、mask OPC、pellicle(マスクの防塵カバー。例として三井化学はフォトマスク用防塵カバーの三井ペリクルを公開しています)、depth of focus、レジスト厚、track defectivity、inspectionで得た欠陥データのフィードバック先がまとめて変化します。

その判定条件は High-NA EUVの量産ボトルネック で分類しています。
最新判定条件を短く言えば、0.55NA 露光機の導入 より 0.55NA に合わせた patterning cluster を量産で安定化できるか が主要判定条件です。

材料選定まで含めるなら、High-NA EUVレジスト比較 を続けて分解します。CARMORMTR対象パターン量産成熟度 の2軸で比べます(JSR は EUV 向けのmetal oxide resist(MOR)の商業化を進めていると公表しています)。dry resist も同じ2軸で比較対象に含めます(Lam Research は真空中の気相成長でウェーハ上に成膜する resistとして公開しています)。 mask 側の条件を分ける場合は、High-NA EUVのマスク・ペリクル・stitching で、half-field、mask absorber、pellicle、stitching の継ぎ目条件を読み取れます。

  • 露光はレジストの化学状態を変える工程で、形を削る役割は後段のエッチングが受け持つ
  • レジストは一時的な pattern transfer 材料で、完成構造は後段の工程で作られる
  • 歩留まりは、scanner の解像度に加えて track と inspection を含めた工程補正設計で確定する
  • overlay は前後工程を通した位置合わせ誤差として管理する指標で、露光機単体の指標より広い範囲を含む

scanner を高い NA の機種へ替えれば歩留まりも上がる、と受け取られやすいですが、これは解像度と歩留まりの混同で、実際には、NA が確定するのは単一露光で解ける寸法までです。写った線に残る欠陥密度、前層との overlay、エッチ後に残った形は、track、inspection、エッチングの条件を含めた工程補正設計で確定します。

EUV固有の語(多層膜反射鏡、中間集光点、マスク3D効果、確率的欠陥、actinic計測)を波長13.5 nmから順にたどる場合は、EUVリソグラフィの基礎と用語 へ進みます。

この切り分けは、プロセス担当が露光の条件出しの合否を判断する場面、検査担当が overlay と欠陥データの返し先を選定する場面、解析担当がエッチ後の線幅ばらつきの原因を露光・現像・エッチングに振り分ける場面で使います。次に比較する軸は scanner の NA と cluster 側の条件の対応で、量産安定化の判定条件は High-NA EUVの量産ボトルネック に、測定値の返し先は 検査・計測・オーバーレイ装置の役割分担 に続きます。

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