ヒートシンクとは
ヒートシンクとは、発熱する部品に密着させて、熱を空気へ渡しやすくするための放熱器です。 フィンと呼ばれる薄い板や柱を並べた形をしており、空気に触れる面を増やす役目を持ちます。
表面積を稼いで、対流の熱抵抗を下げます
Section titled “表面積を稼いで、対流の熱抵抗を下げます”ヒートシンクの形には理由があります。ロームの技術資料は、対流を、熱を受け取った流体が移動することによって熱を運ぶ熱移動現象だとし、対流における熱抵抗が対流熱伝達率hmと発熱する物体の表面積Aの積の逆数になるとしています。式の形から、物体の表面積が大きくなると対流の熱抵抗が下がることが分かると同社は書いています。
フィンは、この表面積を稼ぐための形です。同じ体積の金属でも、薄い板を並べた形にすれば空気に触れる面は何倍にもなります。同じ資料は、自然対流を流体の温度差で生じる浮力によってのみ駆動される流れ、強制対流をファンやポンプなどの外部的な要因によって駆動される流れだとし、対流熱伝達率hmが対流の種類によって異なるとしています。加えて、流体を欠く状態、つまり真空では対流による熱移動が期待しにくいとも書いています。
受け持つのは、直列に並ぶ3区間のうちの1つです
Section titled “受け持つのは、直列に並ぶ3区間のうちの1つです”富士電機のアプリケーションマニュアルは、電力用ダイオードやIGBTなどのパワーモジュールで電極部と取付けベースが絶縁されているものが多く、一つのヒートシンク上へ複数のパワーモジュールを取付けて用いる構成が取れるため、実装が容易でコンパクトな配線が可能になるとしています。そのうえで、これらを安全に動作させるには動作時に各素子が発生する損失(熱)を効率よく放散させる必要があり、ヒートシンクの選定が大きな鍵になると書いています。2022年3月版の記述です。
同じ資料は、半導体の熱伝導を電気回路に置き換えて解けるとし、IGBTモジュールをヒートシンクに取付けた場合の接合温度Tvjを、接合とケースの間の熱抵抗Rth(j-c)、ケースとヒートシンクの間の熱抵抗Rth(c-f)、ヒートシンクと周囲の間の熱抵抗Rth(f-a)という3つの和に発生損失Wを掛け、周囲温度Taを足した熱方程式で表しています。ヒートシンクが直接下げる区間は、ヒートシンクと周囲の間のRth(f-a)です。ほかの2区間の値は、フィンをどれだけ大きくしても合計に入ったままです。
接触面の作り方が、全体を左右します
Section titled “接触面の作り方が、全体を左右します”3区間のうち中央にあたるケースとヒートシンクの間Rth(c-f)は、部品の性能というより組み立て方で決まります。富士電機の資料は、IGBTモジュールを取付けるヒートシンク面の仕上げについて、ネジ取付け位置間の平坦度を100mmに対し50μm以下、表面粗さを10μm以下にするよう求めています。ヒートシンク面が窪んでいる場合は接触熱抵抗Rth(c-f)の増加を招くとし、平坦度が上記の範囲を超えた場合には、締付け時にモジュール内部のチップと金属ベースの間にある絶縁基板へストレスが加わり、絶縁破壊を生じる恐れがあるとしています。同社製品についての記述で、要求される平坦度や表面粗さは製品ごとに異なるとも書かれています。
サーマルグリスにも適切な厚さがあります。同じ資料は、接触熱抵抗を小さくするためにヒートシンクとIGBTモジュールの取付け面の間へサーマルグリスを塗布するとしたうえで、グリス自体が熱容量を持つため厚く塗布しすぎるとヒートシンクへの放熱を妨げてチップ温度の上昇を招くとしています。薄く塗布した場合は、ヒートシンクとモジュールの間にサーマルグリスの未接合部分が生じて接触熱抵抗が上昇する可能性があると書いています。塗布厚が不適切な場合には、最悪でチップ温度が上限を上回って破壊に至る可能性があるとし、均一な厚さで塗れるステンシルマスクによる塗布を推奨しています。
取付ける位置も熱抵抗を動かします。同じ資料は、IGBTモジュール1個をヒートシンクに取付ける場合はヒートシンクの中心に取付けると熱抵抗が最小になるとし、1つのヒートシンクへ複数を取付ける場合は各モジュールが発生する損失を考慮して取付け位置を決定するよう求めています。大きな損失を発生するモジュールには、大きな占有面積を与えるようにと書いています。
ヒートシンクを省いた部品は、基板へ熱を渡しています
Section titled “ヒートシンクを省いた部品は、基板へ熱を渡しています”小さなICの多くは、金属のヒートシンクを省いた構成で使われます。ルネサスの資料は、熱放射がパッケージの表面積が非常に大きいケース以外では無視できるほど小さくなるとし、パッケージからの実際の放熱経路として、パッケージ表面の上部から空気へ熱伝達する経路、外部端子からプリント基板へ熱伝導しそこから空気へ熱伝達する経路、パッケージ側面へ放熱する経路の3つがあるとしています。
そのうえで同社は、デバイスを基板実装したのみでパッケージ上面のヒートシンクを省いた場合、最大の放熱経路がプリント基板への熱伝導になり、計算によると全体の8割を占めるとしています。実際に熱流体解析を行うと、352ピンPBGAを4層基板に実装した状態で9割がプリント基板経由、パッケージ表面からの放熱はわずかに1割という結果も出ていると書いています。同社が示す解析例です。
つまり、ヒートシンクを省いた設計では、プリント基板そのものが放熱器の役割を担っています。ロームの放熱面積の資料も、発熱する部品では実装基板を放熱器として利用する必要があり、そのためにある面積を要するとし、この面積を欠くと熱抵抗が高くなって発熱が大きくなるとしています。同社の資料は、ICの消費電力が1W、最大周囲温度TA(HT)が85℃、許容するTJの最大値が140℃という条件例で、θJAを55℃/Wとするには500mm²以上の銅箔面積が必要になるとしています。加えて、発熱するICが近接して実装されると相互に発熱が干渉して温度上昇を招くとし、ICの端から基板面に対する45°の直線どうしが干渉を避けられる間隔を最低限とする考え方を示しています。
基板側の作り込みも熱抵抗を左右します。ロームの熱設計ワンポイント集は、基板の層数と熱抵抗の関係をシミュレーションしたデータについて、層数が多い方が熱抵抗は低くなるとしています。同じ資料は、viaの有無を比べるとviaの効果が高く、熱抵抗を下げるには基板の層数を増やすよりviaを設ける方が効果的だとまとめています。同社が示すシミュレーション結果です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ヒートシンクとは何ですか?
発熱する部品に密着させて、熱を空気へ渡しやすくするための放熱器です。フィンと呼ばれる薄い板や柱を並べた形をしており、空気に触れる面を増やします。富士電機の資料は、パワーモジュールを安全に動作させるには動作時に各素子が発生する損失を効率よく放散させる必要があり、ヒートシンクの選定が大きな鍵になるとしています。
なぜフィンで表面積を増やすのですか?
対流の熱抵抗が表面積で決まるためです。ロームの技術資料は、対流における熱抵抗が対流熱伝達率hmと発熱する物体の表面積Aの積の逆数になるとし、物体の表面積が大きくなると対流の熱抵抗が下がると書いています。フィンは、この表面積を稼ぐための形です。
自然対流と強制対流はどう違いますか?
流れを起こす力が違います。ロームの技術資料は、自然対流を流体の温度差で生じる浮力によってのみ駆動される流れ、強制対流をファンやポンプなどの外部的な要因によって駆動される流れだとしています。対流熱伝達率hmは対流の種類によって異なるとしています。
ヒートシンクを付ければ熱の問題は片づきますか?
受け持つのは経路の一部です。富士電機の資料は、IGBTモジュールをヒートシンクに取付けた場合の接合温度を、接合とケースの間、ケースとヒートシンクの間、ヒートシンクと周囲の間という3つの熱抵抗の和に発生損失を掛け、周囲温度を足した式で表しています。ヒートシンクが下げるのは、そのうち最後の1区間です。
取付け面はどのくらい平らである必要がありますか?
富士電機の資料は、IGBTモジュールを取付けるヒートシンク面の仕上げについて、ネジ取付け位置間の平坦度を100mmに対し50μm以下、表面粗さを10μm以下にするよう求めています。ヒートシンク面が窪んでいる場合は接触熱抵抗の増加を招き、平坦度が上記の範囲を超えた場合は締付け時にモジュール内部の絶縁基板へストレスが加わって絶縁破壊を生じる恐れがあるとしています。同社製品についての記述です。
サーマルグリスは厚く塗るほど良いのですか?
適切な厚さがあります。富士電機の資料は、サーマルグリスがそれ自体熱容量を持つため厚く塗布しすぎるとヒートシンクへの放熱を妨げてチップ温度の上昇を招くとし、薄く塗布した場合は未接合部分が生じて接触熱抵抗が上昇する可能性があるとしています。同社は、均一な厚さで塗れるステンシルマスクによる塗布を推奨しています。
ヒートシンクを省いた部品は、どこへ熱を渡していますか?
おもにプリント基板です。ルネサスの資料は、パッケージ上面のヒートシンクを省いて基板実装しただけの場合、最大の放熱経路がプリント基板への熱伝導になり、計算によると全体の8割を占めるとしています。同社は、352ピンPBGAを4層基板に実装した状態で熱流体解析を行うと、9割がプリント基板経由、パッケージ表面からの放熱はわずかに1割という結果も出ていると書いています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 熱抵抗とは ── ヒートシンクの働きを数値で表すための考え方
- パワーモジュールとは ── 一つのヒートシンクへまとめて取付けられる形の部品
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- 富士電機「富士IGBTモジュール アプリケーションマニュアル 第6章 放熱設計方法」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 一つのヒートシンクへ複数のパワーモジュールを取付けられること、接合温度を3区間の熱抵抗の和で表す熱方程式、ケース温度の測定例(A点51.9℃/B点40.2℃/C点31.4℃、ヒートシンク表面45.4℃/36.9℃/30.2℃)、平坦度100mmに対し50μm以下と表面粗さ10μm以下、サーマルグリスの厚さと接触熱抵抗、取付け位置の指針、2022年3月版
- ローム TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:対流における熱抵抗」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 対流の意味、自然対流と強制対流の区別、対流の熱抵抗が対流熱伝達率と表面積の積の逆数になること、真空で対流による熱移動が期待しにくいこと
- ローム TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:伝熱と放熱経路」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 伝導・対流・放射の3形態、表面実装ICの放熱経路、熱設計を放熱経路の熱抵抗低減とするまとめ
- ローム TechWeb「表面実装における放熱面積の見積もりと注意点」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 実装基板を放熱器として利用すること、消費電力1W・周囲温度85℃・許容するTJの最大値140℃という条件例とθJA 55℃/Wに要する銅箔面積500mm²以上、発熱するIC同士の熱干渉と45°の間隔の考え方
- ローム TechWeb「基板層数と熱抵抗」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 基板層数が多いほど熱抵抗が低くなること、viaの効果が高く層数を増やすよりviaを設ける方が効果的だという結論
- ルネサスエレクトロニクス「放熱のメカニズム」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 熱放射が多くの場合小さくなること、パッケージからの3つの放熱経路、ヒートシンクを省いた場合にプリント基板への熱伝導が全体の8割を占めること、352ピンPBGAを4層基板に実装した熱流体解析での9割対1割という結果