熱抵抗とは
熱抵抗とは、2点間の温度差を、その2点間を流れる熱流量で割った値です。 ロームの技術資料は、この値が大きいほど熱は伝わりにくく、小さいほどよく伝わることを表すとし、記号にRthやθ(シータ)を、単位に℃/W(K/W)を用いるとしています。
電気の計算とそろえた形で使います
Section titled “電気の計算とそろえた形で使います”ロームの技術資料は、熱抵抗を電気抵抗とほぼ同じように考えられるとし、熱計算の基本式をオームの法則と同じように取り扱えるとしています。電気の側には電流I(A)、電圧差ΔV(V)、電気抵抗R(Ω)が並び、熱の側には熱流量P(W)、温度差ΔT(℃)、熱抵抗Rth(℃/W)が並びます。電位差をR×Iで求めるのと同じ形で、温度差はRth×Pで求まります。
この対応が役に立つのは、半導体の内側へ温度計の届く範囲が限られるためです。新電元工業の技術資料は、動作中の半導体デバイスで直に観測できる温度が、パッケージの樹脂表面や金属リードの表面で測るケース温度Tcだとしています。接合温度Tjはデバイスの内側にあるPN接合部(ジャンクション)の温度なので、熱電対の先が届く範囲の外にあります。同社の資料は、データシート上の熱抵抗Rthと電気的特性のカーブ、実測したケース温度Tc、オシロスコープでとらえた動作波形を組み合わせて動作中の損失を求め、その損失から接合温度Tjを擬似的に割り出す手順を示しています。2024年12月版の記述です。
熱抵抗は、測れる温度から測りにくい温度を見積もるための係数だと考えると分かりやすくなります。消費電力が分かっていれば、温度の差が計算で求まります。
熱の通り道は、区間ごとの足し算です
Section titled “熱の通り道は、区間ごとの足し算です”ロームの伝熱の資料は、熱が伝わるには伝導・対流・放射(輻射)の3つの形態があるとしています。伝導は熱エネルギーによる分子の運動が隣接する分子へ伝播していくこと、対流は空気や水などの流体による熱移動、放射は電磁波による熱エネルギーの放出だとしています。
同じ資料は、プリント基板に実装したICを例に経路を追っています。発熱源はICのチップで、その熱はパッケージやリードフレーム、ダイアタッチパッド、そしてプリント基板へと伝導し、基板やパッケージの表面から対流と放射によって大気へ抜けます。表面実装した場合のメインの放熱経路として、チップからダイボンドを介して裏面露出フレームへ伝導し、プリント基板ランド上のはんだを介して基板へ伝導し、そこから対流と放射で大気へ抜ける道筋を挙げています。ほかに、チップからボンディングワイヤを通じてリードフレームへ伝わる経路と、チップからパッケージを通じて抜ける経路があるとしています。
そのうえで同社は、熱設計とはチップから大気へ至る放熱経路の熱抵抗を下げていく作業だとしています。それによって接合温度TJが低下し、信頼性が向上するともまとめています。
同じICでも、載せる基板で値が動きます
Section titled “同じICでも、載せる基板で値が動きます”ロームの熱抵抗データの資料は、θJAをジャンクションと周囲環境の間の熱抵抗、ΨJTをデバイス全体の消費電力に対して、ジャンクションとパッケージ上面中心との間にどれだけ温度差が付くかを表す熱特性パラメータとし、いずれもJEDEC規格JESD51によるものだとしています。用途も分けて書かれており、θJAは形の違うパッケージどうしで放熱性能を比べる用途、ΨJTは実際の放熱環境で接合温度を推し量る用途に使うとしています。
そしてデータ例の資料は、500mA出力のLDOリニアレギュレータのデータシートを例に、2種類のパッケージそれぞれについて、1層基板に実装した場合と4層基板に実装した場合の2条件で熱抵抗が示されるとしています。1層基板はJESD51-3準拠、4層基板はJESD51-5および51-7準拠の基板です。同社は、熱抵抗がICのパッケージと実装する基板の条件の両方で決まり、基板側の影響が大きいとしたうえで、提示された熱抵抗の条件が伏せられている場合には必ず条件を調べる必要があると書いています。同じ資料が示すグラフは、裏面放熱フィン付きの8ピンSOPタイプについて、放熱用の銅箔面積が15.7mm²から1200mm²までの範囲でθJAとΨJTがどう動くかを表しています。
見積もりの手順と、上限を超えたときの手立て
Section titled “見積もりの手順と、上限を超えたときの手立て”ロームの計算例は、LDOリニアレギュレータBD450M2EFJ-Cを題材にしています。この製品のTJMAXは+150℃です。同社は基板に実装した状態を想定してグラフからθJAを48℃/Wとし、周囲温度TAを85℃と想定して接合温度TJを計算し、許容内の使用条件だと判断する手順を示しています。同社製品についての記述です。
上限を超える見積もりになった場合の手立てとして、同じ資料は消費電力Pを減らす、周囲温度TAを下げる、熱抵抗θJAを下げる、の3つを挙げています。そのうえで、入出力電圧や出力電流といった電気的仕様は必要条件なので一般に変更が難しく、TAも機器の動作仕様として設定されている場合は動かしにくいとしています。そこでθJAを下げる方法が挙がり、実装基板の銅箔面積を広げること、複数種のパッケージが用意されている製品ではθJAのより小さいものを選ぶことを挙げています。いずれも基板レイアウトの変更をともなうため、設計の段階で十分な見積もりをしておくことが大切だとまとめています。
ロームの放熱面積の資料は、具体的な条件例も示しています。ICの消費電力が1W、最大周囲温度TA(HT)が85℃、許容するTJの最大値が140℃という条件では、θJAを55℃/Wとするために500mm²以上の銅箔面積が要るとしています。同社が示す条件例です。同じ資料は、発熱するICが近接して実装されると相互に発熱が干渉して温度上昇を招くとし、ICの端から基板面に対する45°の直線どうしが干渉を避けられる間隔を最低限とする考え方を示しています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”熱抵抗とは何ですか?
2点間の温度差を、その2点間を流れる熱流量で割った値です。ロームの技術資料は、この値が大きいほど熱は伝わりにくく、小さいほどよく伝わることを表すとし、記号にRthやθ(シータ)を、単位に℃/W(K/W)を用いるとしています。
なぜ電気の抵抗にたとえるのですか?
計算の形がそろうためです。ロームの技術資料は、熱計算の基本式をオームの法則と同じように取り扱えるとし、電流Iに熱流量P、電圧差ΔVに温度差ΔT、電気抵抗Rに熱抵抗Rthが対応するとしています。電位差をR×Iで求めるのと同じ形で、温度差はRth×Pで求まります。
熱抵抗から何を計算しますか?
半導体チップの中の温度です。新電元工業の技術資料は、動作中の半導体デバイスで直に観測できる温度が、パッケージの樹脂表面や金属リードの表面で測るケース温度Tcだとしています。接合温度Tjはデバイスの内側にあるPN接合部の温度なので、熱電対の先が届く範囲の外にあります。熱抵抗は、測れる温度から測りにくい温度を見積もるための係数として働きます。
θJAとΨJTは何が違いますか?
測る2点が違います。ロームの技術資料は、θJAをジャンクションと周囲環境の間の熱抵抗、ΨJTをジャンクションとパッケージ上面中心の間の熱特性パラメータとし、いずれもJEDEC規格JESD51によるものだとしています。θJAは形状が異なるパッケージ間で放熱性能を比べる用途、ΨJTは実際の放熱環境での接合温度の推定に使う用途だと書いています。
同じICなら熱抵抗はいつも同じ値ですか?
実装する基板の条件で動きます。ロームの技術資料は、熱抵抗へ実装する基板の条件が大きく影響するとし、データシートの例では1層基板と4層基板の2条件で値を示すとしています。同社が示すグラフは、放熱用の銅箔面積が15.7mm²から1200mm²までの範囲でθJAが動く様子を表しています。
熱抵抗はどう使って設計しますか?
接合温度の見積もりに使います。ロームの計算例は、LDOリニアレギュレータについてグラフからθJAを48℃/Wとし、周囲温度85℃を想定して接合温度を計算し、このICの上限である150℃の内側に収まる旨を判断する手順を挙げています。同社製品についての記述です。
見積もりが上限を超えたらどうしますか?
ロームの技術資料は、消費電力を減らす、周囲温度を下げる、熱抵抗θJAを下げる、の3つを挙げています。そのうえで、入出力電圧や出力電流といった電気的仕様は必要条件なので一般に変更が難しく、θJAを下げる手として実装基板の銅箔面積を広げる方法や、θJAのより小さいパッケージを選ぶ方法があるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ヒートシンクとは ── 熱抵抗のうち、放熱器から空気までの区間を受け持つ部品
- 熱バジェット(熱予算)とは ── こちらは製造中に与える熱の総量で、動作中の温度を測る熱抵抗とは別の量
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- ローム TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:熱抵抗とは」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 熱抵抗の意味、記号RthとθJA、単位℃/W(K/W)、熱のオームの法則としての電気との対応
- ローム TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:伝熱と放熱経路」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 伝導・対流・放射の3形態、表面実装ICの放熱経路、メインの経路が裏面露出フレームとはんだを通ること、熱設計を放熱経路の熱抵抗低減とするまとめ
- ローム TechWeb「熱抵抗データ:熱抵抗と熱特性パラメータの意味」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── θJAとΨJTの意味と用途、JEDEC規格JESD51による規定
- ローム TechWeb「熱抵抗データ:実際のデータ例」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 1層基板と4層基板の2条件で熱抵抗が示されること、準拠規格JESD51-3および51-5/51-7、銅箔面積15.7mm²から1200mm²のグラフ、条件を調べる必要があるという注意
- ローム TechWeb「TJの見積もり:θJAを使った計算例」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── BD450M2EFJ-CのTJMAX+150℃、θJA 48℃/Wと周囲温度85℃での見積もり、上限を超えた場合の3つの手立て
- ローム TechWeb「表面実装における放熱面積の見積もりと注意点」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 消費電力1W・周囲温度85℃・許容するTJの最大値140℃という条件例、θJA 55℃/Wに要する銅箔面積500mm²以上、発熱するIC同士の熱干渉と45°の間隔の考え方
- 新電元工業「パワーMOSFETの損失と発熱計算手法」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 直接観測する温度がケース温度Tcであること、接合温度TjがPN接合部の温度であること、熱抵抗と動作波形から接合温度を擬似的に算出する手順、2024年12月版