反りとは
反りとは、半導体パッケージやプリント基板が弓なりに曲がり、平らさを失う現象です。 温度が上下するたびに大きさも向きも変わるため、常温での形と、はんだが溶ける温度での形は別物になります。
パッケージは、シリコンのチップ、エポキシの封止材、銅の配線、ガラスクロス入りの基板といった、性質の異なる材料を重ねた構造です。温度が上がったときに伸びる量は、材料ごとに異なります。伸び方の異なる板を貼り合わせたまま温度を変えると、片側だけが長くなろうとして、全体が弓なりになります。これが反りです。
伸びやすさは熱膨張係数という数字で表され、材料どうしの差が反りの大きさを決めます。レゾナックは、有機基板用のエポキシ樹脂封止材の製品ページで、弾性率や熱膨張率をコントロールしてパッケージの反りを抑制することを特長の先頭に掲げています。同ページの製品特性表では、CEL-9750ZHF10の熱膨張係数がα1で7ppm/℃、α2で27ppm/℃、曲げ弾性率が26GPaです。α1とα2はガラス転移温度を挟んだ前後の値であり、27を7で割ると約3.9倍になります(当サイトで計算)。同じ材料であっても、温度域が変われば伸び方はこれだけ開きます。この段落の数値は、同社が公表する特定製品の特性表によります。
常温で平らでも、温まれば反ります
Section titled “常温で平らでも、温まれば反ります”JEITAは、規格ED-7306「昇温によるパッケージ反りの測定方法と最大許容値」を2007年3月に制定しています。同協会の規格一覧は、この規格を電子デバイス部門の半導体パッケージ関係へ、日英併記として掲載しています。
規格本文の解説は、制定の背景をこう述べています。常温で平坦度の要求を満たしているパッケージであっても、リフローの昇温中に反り、はんだ接合部がオープンやショートの不良になる、という事例が積み上がってきました。パッケージの薄型化、ボールの狭ピッチ化、鉛フリーはんだへの移行が、リフロー中の反りを増やした要因として挙げられています。以下、この節の記述は同規格によります。
そこで同規格は、半導体を供給する側が高温での最大許容反りを規定するという合意を示しています。測る温度は、室温、はんだの融点、ピーク温度、はんだの凝固点、そして冷えたあとの室温という5つです。融点と凝固点は、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだで220℃を参考値としています。
反りには向きもあります。同規格は、基板へ向く面とは反対側の面が山なりに盛り上がる形を凸としてプラス、へこむ形を凹としてマイナスと定めています。
測り方も、許容値も、規格が定めています
Section titled “測り方も、許容値も、規格が定めています”測定にはシャドウモアレ法かレーザ反射法を使い、はんだボールの頂点を避けて、パッケージの基板面を測ります。条件ごとに3個以上のサンプルを用意します。同じサンプルを繰り返しリフローへ掛ける進め方は、避けるよう求められています。熱電対はパッケージ中央へ貼り、モールド側と基板側の温度差は10℃未満に収めることが望ましいとされています。吸湿すると反りが大きくなるという事実も、規格を作った作業部会がまとめた合意事項として載っています。以下の数値も含め、この節の記述は同規格の本文と表によります。
最大許容反りは、表で与えられています。BGAとFBGAでは、ボールピッチ0.4mm・ボール高さ0.20mmで0.10mm、0.65mm・0.33mmで0.14mm、1.27mm・0.60mmで0.25mmです。ピッチが細かいほど、許される反りは小さくなります。FLGAでは、ランドピッチ0.4mmで0.08mm、0.8mmで0.13mmであり、この値は溶けたはんだペーストの厚みそのものです。
数字の作り方にも、考え方が入っています。BGAの最大許容反りは、オープンやブリッジを避けられる最大相対変位のうち、80%をパッケージへ割り当てた値です。残る20%は、基板の反りとペースト厚のばらつきのために取ってあります。FLGAでは100%をパッケージへ割り当てるため、基板の反りへ回す余白がゼロになります。同規格は、この点がFLGA実装の難しさを表す、としています。積み重ねる構造のパッケージについては、80%と20%という配分の前提が崩れるため、同規格の適用範囲から除かれています。
反りが起こす不良は、検査をすり抜けることがあります
Section titled “反りが起こす不良は、検査をすり抜けることがあります”ルネサス エレクトロニクスは、公開している実装マニュアルで、BGAのヘッドインピロー(head-in-pillow)という不良を取り上げています。はんだボールとはんだペーストが、未融合のまま接した状態で残る不良です。同社は、実装直後の検査では電気的に導通している場合がある、と記しています。厄介なのはこの点で、不良が出荷後まで持ち越されます。
同社が推定する機構は3段です。予熱でパッケージや基板が温まって反り、反りが大きいとボールとペーストが引き離されます。その状態で加熱が続くと、ボール表面の酸化が急速に進みます。このときペーストから染み出したフラックスが表面を覆いますが、フラックスが活性を失うと、冷却で反りが戻ってボールが触れても、酸化膜が残ったまま未融合の状態になります。
対策も挙げられています。BGAと基板は吸湿すると反りが大きくなるため、規定の条件でベークします。基板の材料、構造、配線、形状、実装レイアウトが反りを助長するため、常温と加熱時の両方で反り挙動を調べます。加熱時の反りが大きい場合は、反り防止治具の採用を検討します。リフローのピーク温度を上げすぎても基板やパッケージの反りが大きくなり、BGAはQFPより反りが大きいため、より慎重な検証が要ります。この節の記述は、同社が公開する実装マニュアルによります。
反りを抑えると、別の代償が出ます
Section titled “反りを抑えると、別の代償が出ます”パッケージが大きくなるほど、反りは歩留まりと信頼性を左右します。手を入れる先は、封止材の側と基板の側の2つです。
住友ベークライトは2024年11月の発表で、パネルレベルパッケージについて、パネルのさらなる大型化に伴い、実装後の反りやパネル内の成形厚みのばらつきといった品質面の課題克服が必要だった、としています。同社は、封止材のフィラーサイズと樹脂粘度を最適化することで成形後のパネルの反りを低減した圧縮成形用の顆粒材料を製品化し、600×600mmサイズの大型パネルでも均一な成形が可能になったと述べています。液状の封止樹脂と比べて、成形後のパネルの反りと個片化後のパッケージの反りをともに低減した、とも記しています。
レゾナックは2025年2月12日の発表で、基板の側から手を入れた場合の代償を示しています。大型化に伴い、基板の反りが信頼性へ与える影響はより大きくなる、というのが出発点です。反りを抑えるには銅張積層板の熱膨張係数を小さくすることが有効ですが、同社は、熱膨張係数を小さくすると温度サイクル試験の冷却時に、基板を構成する他の材料との熱膨張差によってクラックが発生しやすくなる、と述べています。同社はマルチスケール解析で材料ごとの設計指針を出し、温度サイクル試験における寿命を従来比の4倍としたうえで、100mm×100mmを超える半導体パッケージへの対応と、2026年の量産開始を掲げています。この節の数値と条件は、両社が公表した発表によります。
ここに、反り対策の本質が出ています。1つの材料の膨張を小さくする作業と、材料どうしの膨張差を揃える作業は、別の仕事です。片方を極端に進めると、もう片方が壊れます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”反りとは何ですか?
半導体パッケージやプリント基板が弓なりに曲がり、平らさを失う現象です。性質の異なる材料を重ねた構造のため、温度が変わると材料ごとの伸びる量の差が曲げの力になります。
なぜ反るのですか?
材料ごとに熱膨張係数が異なるためです。レゾナックは有機基板用エポキシ樹脂封止材の製品ページで、弾性率や熱膨張率をコントロールしてパッケージの反りを抑制することを特長の先頭に掲げています。
常温で平らなら大丈夫ですか?
常温での形と、はんだが溶ける温度での形は別物になります。JEITAの規格ED-7306の解説は、常温で平坦度の要求を満たすパッケージがリフローの昇温中に反り、はんだ接合部がオープンやショートの不良になる現象を、規格制定の背景として挙げています。
反りはどうやって測るのですか?
シャドウモアレ法かレーザ反射法を使います。同規格は、室温、はんだの融点、ピーク温度、はんだの凝固点、冷えたあとの室温という5つの温度で測ると定めています。融点と凝固点は、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだで220℃を参考値としています。
どこまでの反りなら許されるのですか?
ボールピッチごとに決まります。同規格の表では、BGAとFBGAでボールピッチ0.4mm・ボール高さ0.20mmのとき0.10mm、1.27mm・0.60mmのとき0.25mmです。FLGAではランドピッチ0.4mmで0.08mmであり、これは溶けたはんだペーストの厚みそのものです。
反りがあると何が起きますか?
ヘッドインピローという不良が代表例です。ルネサス エレクトロニクスの実装マニュアルは、はんだボールとはんだペーストが未融合のまま接した状態で残る不良として取り上げ、実装直後の検査では電気的に導通している場合があると記しています。
反りはどうやって抑えるのですか?
封止材と基板の両側から手を入れます。住友ベークライトは2024年11月の発表で、封止材のフィラーサイズと樹脂粘度の最適化により成形後のパネルの反りを低減したと述べています。レゾナックは2025年2月の発表で、銅張積層板の熱膨張係数を小さくすることが有効な一方、温度サイクル試験の冷却時に他の材料との熱膨張差でクラックが発生しやすくなると述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- リフローとは ── 反りがいちばん大きくなる温度域を作る工程です
- 封止樹脂とは ── 反りの向きと大きさを決める材料の側です
- 放熱材(TIM)とは ── 反りが生むすき間を埋めて熱を伝える材料です
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- JEITA「ED-7306 昇温によるパッケージ反りの測定方法と最大許容値」規格本文(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 測定する5つの温度、凸と凹の符号、シャドウモアレ法とレーザ反射法、最大許容反りの表、80%と20%の配分、規格制定の背景
- JEITA「JEITA規格 電子デバイス部門 半導体パッケージ関係」規格一覧(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ED-7306の日本語規格名称と2007年3月の制定
- ルネサス エレクトロニクス「Semiconductor Package Mount Manual Rev.8.00」実装マニュアル(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ヘッドインピローの推定機構、吸湿とベーク、反り防止治具、BGAとQFPの比較
- レゾナック「エポキシ樹脂封止材 有機基板用」製品ページ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 反り抑制の特長、CEL-9750ZHF10の熱膨張係数と曲げ弾性率
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- 住友ベークライト「先端半導体向けPLPに対応した圧縮成形用封止樹脂(顆粒材料)を量産化」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── パネル大型化に伴う反りの課題、フィラーサイズと樹脂粘度の最適化、600×600mmでの均一成形