Advantest APOS、V93000テストセルの電力最適化を工程データで制御する
先端SoCのテスト工程では、テスタの測定性能に加えて、テストフロアで待機・稼働するカードやシステムの電力をどう管理するかが、運用コストと環境負荷の上限になります。量産ではテスタ、プローバ、ハンドラ、DUTボード、カード、制御ソフトが連動するため、電力削減は単純な電源オフより細かい切り分けを要します。待機カードを通電したままにすれば測定と無関係な電力が積み上がり、一方で誤って必要カードを止めれば、テストプログラム、throughput、測定再現性に影響します。必要な測定能力を保ったまま、待機中のリソースを止め、状態を記録し、後から改善へ返せることが、この二律背反を解く条件になります。
Advantest Power Optimization Solution(APOS)とは、Advantestが2025年9月30日の公式発表で示した、V93000 SoCテストプラットフォーム向けの電力最適化ソフトウェアです。同社はAPOSを、自社のSmart TestCell(STC)エコシステムを拡張するソリューションとして位置づけています。この記事では公式資料で読み取れる範囲に絞り、テストセルの電力をカード単位で制御する仕組み、可視化と履歴データが工程データになる経路、サステナビリティ主張を技術判断に使える範囲の三つを分けて示します。
図1が比べているのは、全カードが常時通電する状態と、APOSが必要カードと待機カードを分け、カード状態と電力をTCSの履歴へ送る状態です。二つの差は、電源を切る動作そのものより、待機電力を測定に必要な電力と分けて工程データとして記録できるかどうかに出ます。図1のカードは左右とも模式で、枚数を定めた例示は図2で示します。
テスト工程の電力は装置単体では完結しない
Section titled “テスト工程の電力は装置単体では完結しない”半導体テストでは、完成したICやウェハ上のデバイスへ電気信号を与え、仕様どおり動作するかを電気特性で分けます。先端SoCでは、デジタル、RF、アナログ、電源、スキャン、メモリなど複数の測定領域が同じテストプログラムに入ります。そのため、テストシステムは多くのカード、電源、冷却、制御ソフト、周辺装置を組み合わせて運用されます。
AdvantestのV93000公式ページは、V93000をスケーラブルなSoCテストプラットフォームとして位置づけ、デジタル、RF、アナログ、パワーなど複数のソリューションへ対応するとしています。同じページでは、旧世代V93000のプローブカード・DUTボード・テストプログラムとの互換性、複数サイズの筐体、すべてのカードがすべてのテストヘッドに適合する再利用性にも触れています。つまりV93000は、デバイスや工程に合わせて構成を変えるテスト基盤として比較する対象です。
構成を変えられる基盤では、カードの役割がテストステップごとに入れ替わります。あるテストステップでは必要なカードが、別のステップでは待機状態になります。待機カードが通電したままなら、テスト精度とは無関係な電力が積み上がります。一方、誤って必要カードを止めれば、テストプログラム、throughput、測定再現性に影響します。APOSが対象にするのは、この二つの失敗の間にある切り分け条件です。
図2の左では待機カード2枚の電力が測定と無関係に積み上がり、中央では必要カードまで停止して測定側に影響が出ます。右のAPOSは、テスタのシナリオに応じて選択カードだけを無効化し、必要カードの通電を保ったまま、通電と無効化の状態を記録します。図の「4枚のうち2枚」という数は例示で、実際の枚数と組み合わせはテストプログラムと構成ごとに異なります。
APOSはカード状態を電力管理の単位へ変える
Section titled “APOSはカード状態を電力管理の単位へ変える”APOS公式製品ページは、APOSをV93000 tester power-on periodの電力管理を最適化するソフトウェアと示しています。対象はファウンドリやOSATで、性能を保ったままエネルギー効率とコスト削減を進める文脈で位置づけられています。
公式発表(日本語版)は、APOSが実際のテスタのシナリオに応じて、選択したテストカードを自動で有効化または無効化するとしています。APOSの制御粒度は「選択したカード」であり、テスタ全体の一括制御より一段細かい単位です。テスト工程では、カード、DUTボード、プログラム、測定ステップの関係を外すと、電力を落とす判断が粗くなります。
よくある誤解として、APOSはテスタの電源をまとめて落として省エネする機能と受け取られやすいものの、実際には公式発表が示す制御の単位は選択したテストカードであり、測定に必要なカードは通電したまま、待機しているカードだけを無効化の対象にします。
APOSの電力最適化は、工場側の運用では、待機しているリソースを細かく区別する仕組みです。測定に必要なカード、今は不要なカード、状態を監視すべきカードを分け、テスト精度を保ちながら不要電力を抑える。この粒度を欠くと、電力削減は現場の経験則か、設備全体の大まかな運用ルールに戻ってしまいます。
可視化は省エネの結果ではなく制御の入力になる
Section titled “可視化は省エネの結果ではなく制御の入力になる”公式発表は、APOS Client Displayがカード種類、状態、使用数量、電力使用状況をリアルタイムに可視化すると示しています。さらに、APOS DashboardはTestcell Central System(TCS)Server Web Dashboardと連携し、テストフロアの電力削減データを中央で管理し、履歴記録をレポートや改善へ使うとしています。
図3の流れでは、選択カードの有効化・無効化はテストセルの中で完結し、カード種類・状態・使用数量・電力使用状況はAPOS Client Displayにセル単位で表示され、APOS DashboardがTCS Server Web Dashboardと連携した電力削減データはテストフロア単位の履歴とレポートになります。公式発表がClient Displayをリアルタイム表示、DashboardをTCSと連携したテストフロア全体の一元管理として分けているため、この記事では前者をセル単位、後者をテストフロア単位の帯として描いています。改善へ返る経路は、この履歴の差分をテストプログラム、設備構成、運用手順、保守状態と比べる作業です。
テスト工程で必要なのは、削減量の合計値に加えて、どのカードがどのタイミングで使われ、どの状態で電力を消費し、どのテストセルやlotで改善余地が残ったかを、後から分析できる粒度で残すことです。APOSを省電力ボタンとして比べると、この粒度が抜けます。
リアルタイム表示は、異常検知にも近い役割を持ちます。想定より多くのカードが通電している、ステップ終了後もリソースが通電したまま残っている、あるテストセルだけ電力の山が他のセルと異なる。こうした差分は、テストプログラム、設備構成、運用手順、保守状態のどこに原因があるかを履歴と比べる入口になります。この経路があるため、この記事ではAPOSを、電力を「削る対象」から「テストフロアの工程データ」へ変換するソフトウェアとして比較します。
Smart TestCellの中でAPOSを位置づける
Section titled “Smart TestCellの中でAPOSを位置づける”量産工場向けソリューションの公式ページは、APOSをSmart TestCellや量産工場向けソリューションの文脈に含めています。同ページは、APOSがV93000使用中の電力管理を最適化するソフトウェアであり、機器や生産プロセスへの影響を避けること、Smart TestCellエコシステムを拡張することを示しています。
同じページでは、Smart TestCellを、テストセルのリアルタイムデータ収集、レシピ管理、クライアント実行制御を提供するソリューションとして示しています。APOSの役割は、Smart TestCellが集めるデータの一覧に電力とカード状態を加える点にあります。テストセルで集めるべきデータは、測定結果やyield関連の値に加えて、カード状態、電力、設備状態、実行制御を含み、いずれも量産環境を安定させるデータになります。
APOSの発表が対象にするのは、V93000の測定性能の更新より、既存のテスト基盤を運用する中で電力と状態をどう制御対象へ入れるかです。装置カタログDB上では「V93000」や「APOS」という製品名で分類可能ですが、技術記事としては、テストセル統合、TCS、カード制御、履歴データを同じ工程管理の条件群として比較する必要があります。
サステナビリティ主張は境界付きで比較する
Section titled “サステナビリティ主張は境界付きで比較する”APOSの公式発表は、エネルギー効率とサステナビリティを見出しに書いています。半導体製造の電力消費が増える中では、当然の訴求です。一方で、APOSによる削減率、顧客別の効果、全fabへ適用できる削減量の独自推定は、この記事の対象外です。
Advantestの製品に関する環境取り組みページは、同社サプライチェーン全体のGHG排出でScope 3 Category 11、つまり販売した製品の使用が大きな比率を占めると示しています。FY2024のGHG排出比率では、Scope 3 Category 11が61%と示されています。この公開情報から読み取れるのは、Advantestが製品使用時の排出を重要な課題として比較していることです。
ただし、APOSの記事で書けるのは、V93000の電力管理を改善する公式発表と、製品使用時排出を重視する会社方針との対応関係までです。個別顧客の導入効果、テストコスト削減率、出荷やshare、株価反応は対象外です。公式発表に顧客コメントが含まれていても、この記事では採用規模や一般的な効果へ広げず、APOSがテストフロアの電力データを制御対象へ入れる技術発表として比較します。
この発表から分かること
Section titled “この発表から分かること”APOSの焦点は、測定に必要なリソースと待機電力を分けることにあります。先端SoCのテストでは、カード、DUTボード、プログラム、テストセル、TCSが連動します。APOSは、その中で電力をカード状態と履歴データに紐づけ、テストフロア単位で改善できるデータへ変換します。
公開資料で読み取れる範囲では、APOSはV93000向けの電力最適化ソフトウェアであり、選択カードの有効化・無効化、リアルタイム可視化、TCSダッシュボードとの連携、履歴データの活用を主要機能にしています。この記事では、削減率の独自推定、顧客導入範囲、出荷、share、投資判断は対象外です。
次に観察すべきポイントは、半導体テスト工程で、測定性能、throughput、設備稼働率、エネルギー使用量がどこまで同じ制御画面に統合されるかです。AI/HPC向けSoCや高性能デバイスのテスト負荷が増えるほど、ATEの競争軸は測定速度だけでなく、テストセル全体の運用データをどう閉ループ化するかへ広がります。
この内容が使われる判断は三つあります。テストプログラムの設計担当は、測定ステップごとに必要なカードと待機カードを分ける場面で、APOSの自動有効化・無効化がどのカードを対象にするかを比べる材料にします。テストフロアの製造技術・設備担当は、APOS DashboardとTCSの履歴から、電力の山が他のセルと異なるテストセルの原因を設備構成や保守状態と比べる場面で使います。装置比較の担当は、V93000の測定性能に加えて、テストセル運用データの中央管理を比較軸に加える場面で使います。次に比べる軸は二つあります。テスト工程の全体像はテストと選別で、どの段階で何を落とすかを先に確かめます。装置側の比較はベンダー別の装置カタログ総覧で、会社名と工程から装置構成と公式リンクを引いて比べます。
- Advantest, Advantest Launches Power Optimization Solution to Enhance Energy Efficiency and Sustainability in Semiconductor Testing, September 30 2025
- アドバンテスト, 半導体テストにおける電力消費を最適化する「Advantest Power Optimization Solution(APOS)」を発表, 2025年9月30日
- Advantest, Advantest Power Optimization Solution (APOS)
- アドバンテスト, 量産工場向けソリューション
- アドバンテスト, V93000 SoCテストシステム
- Advantest, Environmental efforts on our products