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Nikon DSP-100、600 mm角基板をマスクレス露光する設計

100 mm角packageや大型interposerをstep-and-repeatで露光すると、photomaskのfield寸法を超えた描画範囲はmaskの切り替えと複数fieldのstitchingで埋めることになり、mask枚数、field配置、mask製作期間が生産計画へ入ります。先端パッケージの工程設計者と露光装置担当者は、この上限を動かすために、解像度だけでなく基板寸法、重ね合わせ精度、throughput測定条件を同じ表で比べます。

Nikon DSP-100とは、photomaskの代わりにSLM(spatial light modulator:空間光変調器)でCAD由来のデジタルパターンを投影し、600 × 600 mm角までの基板を露光するdigital lithography装置です。以下では、1.0 µm L/S(line and space:線と間隔の寸法)、±0.3 µm以下のoverlay、510 × 515 mm基板時50 panels/hourがどの測定条件と組の公表値か、9倍という比が何を対象にした値かを、CADデータの変換量と基板の反り補正まで含めて採否試験の比較列へ書き分けます。

Nikonの2025年7月16日公式発表は、Digital Lithography System DSP-100を同社初の半導体後工程向け露光装置として発表し、2025年7月に受注を開始、2026年度の発売予定としました。公式lineupにもDSP-100が後工程露光装置として掲載されています。この記事の根拠範囲は受注開始と公表仕様までで、出荷台数、顧客採用、量産稼働は記載対象外です。公式URL閲覧日は2026年7月17日です。

01 / データ変換から基板搬送までの工程順
設計CADデータ 製品patternと最小L/S 露光用データへ変換 変換時間がcycle timeへ加算 SLMへ高速転送 photomaskの代わりに投影 反りとalignmentを補正 overlay ±0.3 µm以下(公表値) 複数レンズと高速stageで露光 600 × 600 mm角基板まで 基板を搬送して次のpanelへ panel cycle timeが確定 panel cycle time=データ変換+SLM転送+補正+露光+搬送 公表throughput 50 panels/hour は 510 × 515 mm基板での値
図1 panel cycle timeは、CADデータの変換とSLMへの転送から補正、露光、搬送までを含む一続きの工程順で積み上がる。公表の50 panels/hourは510 × 515 mm基板での値。

図1の工程順のとおり、panel cycle timeにはCADデータの変換、SLMへの転送、補正、露光、搬送が入ります。装置の比較列へ入れる時間は、露光時間の単独値より、CAD変換から搬送までを含むpanel cycle timeです。

photomaskのfield寸法をCADデータへ置き換える

Section titled “photomaskのfield寸法をCADデータへ置き換える”

従来のstep-and-repeat露光は、photomask上の固定パターンを投影し、基板上のfieldを順番に露光します(レジスト塗布から現像、overlay、検査までを含む露光工程の全体は露光とリソグラフィで確かめます)。描画範囲がmask寸法を超える場合は、maskの切り替えや複数fieldのstitchingが必要です。パッケージやinterposerが大型化すると、mask枚数、field配置、stitching、mask製作期間が工程計画へ加わります。

DSP-100はphotomaskの代わりにSLM(spatial light modulator:空間光変調器)を使い、CAD由来のデジタルパターンを基板へ投影します。描画範囲はmask寸法とは別のデータ指定です。一方、設計データから露光用データへの変換とSLMへの転送がpanel cycle timeへ加わります。

Nikonの技術ストーリーは、細線化でSLMの分解能と駆動データ量が増え、データ変換時間が生産性を下げる問題を開発課題に挙げます。Nikonは高解像度を維持した高速データ転送技術を開発したとしています。変換アルゴリズム、buffer構成、実pattern別のcycle timeは非公開です。

複数レンズと高速stageで大面積を露光する

Section titled “複数レンズと高速stageで大面積を露光する”

DSP-100は、半導体露光で培った高解像度光学、FPD露光のマルチレンズ、高速stageを組み合わせています。複数の投影レンズを並べ、一つの大口径レンズに相当する露光領域を構成します。

02 / 複数レンズが受け持つ露光領域
CAD由来のpatternをSLMが投影 SLM 複数の投影レンズ 大口径レンズ1つ分の 露光領域をつくる 継ぎ目 角基板 600 × 600 mm角まで 反りに合わせてfocus追従 高速stage 走査速度・位置決め誤差・振動・基板保持・focus追従 光路ごとに揃える項目 倍率・焦点・照度・座標 隣接領域はstitching誤差として管理 非公開の項目 lensごとのcalibration値 stage control条件 模式図。レンズ数と光学寸法は公表条件の外。
図2 複数の投影レンズが受け持つ区画を横へ並べて、一つの大口径レンズに相当する露光領域を作る。管理する項目は、光路ごとに揃える倍率・焦点・照度・座標、隣接区画の継ぎ目、反った基板へのfocus追従の3つになる。

図2のとおり、露光領域はレンズ1本ずつが受け持つ区画を横へ並べて作ります。複数レンズ方式では、各光路の倍率、焦点、照度、座標を揃え、隣接領域のstitching誤差を管理する必要があります。高速stageでは、速度と位置決め誤差、振動、基板保持、focus追従を同時に管理します。lensごとのcalibration値とstage control条件は非公開です。

公表仕様は測定条件と組にする

Section titled “公表仕様は測定条件と組にする”

Nikonの製品lineupは、DSP-100の性能を次のように掲載しています。

比較軸Nikon公表値試験仕様へ入れる条件
解像1.0 µm L/Sresist、膜厚、dose、pattern形状、現像後計測
光源i-line相当resist感度、focus margin、材料互換
overlay±0.3 µm以下layer構成、基板変形、alignment mark、測定点
基板寸法600 × 600 mm角まで材料、厚さ、反り、保持方法、edge exclusion
throughput50 panels/hour510 × 515 mm基板、pattern密度、alignment、搬送条件

50 panels/hourは510 × 515 mm基板での値です。600 × 600 mm基板と別patternは公表条件の外です。1.0 µm L/Sとoverlayは、工程で使うresist、膜厚、基板材料、反り量、alignment mark配置を揃え、CDとoverlay残差を測ります。

Nikonの2025年発表は、600 × 600 mm角基板に対応し、100 mm角の大型packageを配置する場合、300 mm wafer利用時に比べて基板1枚あたりの生産性を9倍としています。9倍の対象は基板1枚あたりのpackage配置数です。装置throughput、line全体のoutput、製造costの比とは区別します。

03 / 9倍の対象と別に測る項目
300 mm wafer 600 × 600 mm角基板 100 mm角 100 mm角 配置数 9倍 Nikon公表値 基板1枚あたり 9倍 100 mm角package配置時 別に測る項目 装置throughput line全体のoutput 製造costの比 9倍の対象=基板1枚あたりのpackage配置数 面積を広げるとedge lossは相対的に下がる
図3 9倍は、同じ100 mm角packageを配置したときの基板1枚あたりの配置数の比。装置throughput、line全体のoutput、製造costの比は別に測る。

図3の左は300 mm wafer、右は600 × 600 mm角基板で、どちらにも同じ100 mm角packageを重ねてあります。9倍という比は、装置1台のthroughputが9倍になる値として受け取られやすい数値です。公表の対象は基板1枚あたりのpackage配置数であり、装置throughput、line全体のoutput、製造costの比と混同すると、line能力を過大に見積もったまま採否試験の条件を作ることになります。

先端パッケージを角基板へ面付けするpanel level packagingでは、基板面積を広げるとedge lossを相対的に減らせる一方、反り、熱膨張、局所変形、膜厚分布、搬送安定性の管理範囲が広がります。DSP-100は基板の反りと変形を高精度に補正すると公表しています。補正可能な反り量、測定分解能、補正後残差、測定から露光までの時間は公開値なしです。

1.5 µm開発機が示す解像とthroughputの交換条件

Section titled “1.5 µm開発機が示す解像とthroughputの交換条件”

Nikonの2026年6月5日公式発表は、DSP-100とは別に、1.5 µm L/Sと510 × 515 mm基板時65 panels/hour以上を目標とする装置を開発し、2027年度の発売を予定するとしています。DSP-100の1.0 µm、50 panels/hourに対し、光学系を1.5 µmへ最適化して30%以上のthroughput向上を狙う開発計画です。

04 / 解像とthroughputの交換条件
throughput(panels/hour) 65 50 throughput 30%以上を目標 1.0 µm L/S 1.5 µm L/S DSP-100(2026年度発売予定) 50 panels/hour(510 × 515 mm基板) 開発機(2027年度発売予定) 65 panels/hour以上(同じ基板寸法)
図4 同じ510 × 515 mm基板で、最小L/Sを1.5 µmへ緩める側がthroughput 30%以上の向上を目標とする。線幅要求とpanel cycle timeのどちらを優先するかで比較候補が決まる。

図4の2点は、同じ510 × 515 mm基板という条件で並びます。最小L/Sを1.0 µmから1.5 µmへ緩める側が、throughputで30%以上の向上を目標にする関係です。

この発表は、用途によって最小線幅とthroughputの優先順位が異なることを示します。fine RDLでは1.0 µm側、線幅要求が緩く面積throughputを優先するFC-BGAやinterposerでは1.5 µm側が比較候補になり得ます。Nikonは顧客工程ごとに要求仕様が異なると記載しています。選定表には最小L/S、基板寸法、overlay、panel cycle timeを入れます。

採否試験はpatternと基板条件から始める

Section titled “採否試験はpatternと基板条件から始める”

DSP-100の採否試験では、次の順で条件を試験票へ記録します。

  1. 製品patternから最小L/S、via、pad、stitching位置を抽出する。
  2. 基板寸法、材料、厚さ、反りmap、thermal expansionを試験条件にする。
  3. alignment mark配置と測定点を指定し、global / local overlay残差を、ベンダー別の装置カタログ総覧から会社と工程で引き当てた測定装置で測る。
  4. CAD変換、補正、露光、搬送を含むpanel cycle timeを記録する。
  5. 現像後CD、欠陥、layer間overlayをlot内・lot間で比較する。

mask不要という利点は、mask製作期間を短縮し、pattern変更をdata revisionへ移します。量産採否の測定項目は、data preparation、露光、現像、検査を含むcycle timeと、基板面内・lot間の再現性です。recipeとacceptance criteriaは、自社patternと基板で得たCD、overlay、欠陥、cycle timeから作成します。

この比較列を使う場面は、後工程の露光工程設計、package面付けの設計、装置技術の試験票作成、現像後CDとoverlayの検査条件づくりです。次に比べる軸は、同じ600 mm角基板を前提としたmaskless露光方式どうしの最小L/S、overlay、panel cycle timeで、同じ軸でSCREEN DW-3100のダイレクトイメージングを並記します。工程順のどこに入るかは後工程とパッケージングで確かめます。

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