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マルチプレクサとは

マルチプレクサとは、複数の入力信号のうち1つを選び、1本の出力へ通す回路です。 ルネサス エレクトロニクスのエンジニアスクールは、マルチプレクサを、いくつも並んだ入力信号の中から、出力へ送る1つを選ぶ信号切り替え器としています。

同社の解説は、この動作を自動販売機にたとえています。ボタンを選ぶことによって、1つの販売口からさまざまな飲み物が出てくるのに似ている、と書いています。飲み物の種類は複数あっても、受け取り口は1つのままです。

同社はさらに、スイッチで組んだ図を示しています。縦に並んだ4つのスイッチが連動したものをスイッチA、もう一組をスイッチBとして、Aが0でBが0なら出力に入力0がつながり、Aが1でBが0なら入力1、Aが0でBが1なら入力2、Aが1でBが1なら入力3が出力される、と順に示しています。つまり2本の選択信号で、4つの入力から通す1つを決めています。

選ばれた1つ以外の入力には、何が起きるでしょうか。残る3つは、その手前で止まります。マルチプレクサが出力へ送るのは、4つのうち選ばれた1つの信号だけです。

入り口は4つ、出口は1つです
通れるのは、いつも1つだけです入力0入力1入力2入力3MUX選択信号は A = 0、B = 1 です出力 = 入力2選択信号と、通る入力ですA0 B0 ── 入力0が通りますA1 B0 ── 入力1が通りますA0 B1 ── 入力2が通りますA1 B1 ── 入力3が通ります残る3つは、手前で止まります
ルネサスがスイッチで示した4入力1出力の例です。選択信号の組み合わせを切り替えると、通る入り口だけが別の1つへ移ります。

中身は、ANDとORだけでできています

Section titled “中身は、ANDとORだけでできています”

この切り替えを、特別な部品なしで作れるところがマルチプレクサの面白さです。

ルネサスの同じ解説は、この切り替えを論理回路で描くとANDとORだけで作れるとし、AND側で通す入力を選び、OR側で信号を1つにまとめていると述べています。

なぜANDで入力を選べるのかは、同社の基本論理回路の回が答えています。同社はそこで、基本論理回路をゲートとも呼び、片側の入力の与え方しだいで、出力を一定に保つ側(閉じた側)にも、もう片方の入力を通す側(開いた側)にもなるとしています。AND回路については、片側の入力をオンに保つと、残る側の入力の値がそのまま出力へ出てきて、オフに保つと出力はオフのままになる、としています。

つまりAND回路は、片方の入力を弁として使える回路です。選択信号でその弁を1つだけ開ければ、開いた側のデータだけが先へ進みます。あとはOR回路で全部の線を合流させるだけで、通ってきた1本がそのまま出力になります。

同社は、論理回路の基本要素はAND、OR、NOTの3種類しかなく、それらを組み合わせればさまざまな機能の回路が作れるとも述べています。マルチプレクサは、その組み合わせのごく初歩的な実例にあたります。

ルネサスの同じ回は、マルチプレクサとデコーダを同じ章で対にしています。2つを対にすると、入り口の数と出口の数が互いに逆になっているとわかります。

同社はデコーダを、届いた入力の値を見分けて、対応する出力だけをON(High)へ変える組み合わせ回路だとしています。入り口は少なく、出口は多い形です。マルチプレクサはその逆で、入り口が多く、出口は1つです。

デコーダは配り、マルチプレクサは集めます。 向きは正反対ですが、どちらも「何番を選ぶか」という符号を受け取り、AND回路で通す線を1本だけ選ぶところは共通しています。マルチプレクサのAND部分は、事実上デコーダと同じ仕事をしています。

同社は、比較器や加算器、乗算器、減算器、バレルシフタというように、組み合わせ回路には数多くの種類があり、その多くはマルチプレクサやデコーダを応用して作れるとも述べています。この2つは、組み合わせ回路の土台にあたる部品です。

同じAND回路を、逆向きに使います
デコーダは配り、マルチプレクサは集めますデコーダ符号DEC出力0出力1出力2出力31本の符号から、多くの線へ広がりますマルチプレクサ入力0入力1入力2入力3MUX出力多くの線から、1本へ集まりますどちらも「何番を選ぶか」を符号で受け取り、AND回路で選びます
2つの回路は鏡写しの関係にあります。デコーダは符号を多くの線へ広げ、マルチプレクサは多くの線を1本へ絞ります。

チップの中では、線をまとめる係です

Section titled “チップの中では、線をまとめる係です”

マルチプレクサは、単体の部品としてよりも、大きな回路の中の部材として大量に使われています。

電子情報通信学会の公開知識ベース『知識の森』は、集積回路設計の章で、動作合成という工程を、演算要素・記憶要素・転送要素という3種類の部材からデータパスを組み立て、あわせてそのデータパスを動かす制御回路も合成する作業だとしています。そのうえで、演算要素はおもに演算器を、記憶要素はレジスタやメモリを、転送要素はマルチプレクサやバスなどを指すとしています(2010年公開の章の記述です)。

同知識ベースは、低消費電力設計の節でも、レジスタの手前にマルチプレクサを入れた回路構成を例として示しています。イネーブル信号が1のときだけ組合せ回路の出力を保持しますが、0のときにもレジスタへの書込みが行われるため電力を消費する、という例です。ここでのマルチプレクサは、イネーブル信号を受けて、レジスタへ渡す値を切り替える役をしています。

バスも同じ系統の使われ方です。JEITAの半導体用語集は、バスを、CPUやメモリ、周辺回路のあいだでデータをやり取りするために共用する信号の通り道としています。そして同知識ベースのIP間接続の章は、オンチップバスという方式が世に出たころ、セレクタを組み合わせるだけの単純な形で、交信を要求する側の機能ユニットと、その要求を受けて読み書きする側の機能ユニットとを結んでいたと述べています。この形はシングルレイヤーバスと呼ばれています。

共通の経路にまとめれば、配線は減ります。そのかわり、通れるのは一度に1つずつです。同章は、IP間接続の途中にスイッチやバッファがある場合、一般的にスループットを高くすると経路のなかでデータが混雑し、レーテンシが長くなる傾向があるとし、走行車が多い高速道路で渋滞が起きて到着が遅れることに似ているとしています。

マルチプレクサは、配線の本数と待ち時間を交換する部品でもあります。何本まで1本へまとめるかは、この交換をどこで折り合わせるかという判断になります。

マルチプレクサとは何ですか?

ルネサス エレクトロニクスのエンジニアスクールは、マルチプレクサを、いくつも並んだ入力信号の中から、出力へ送る1つを選ぶ信号切り替え器としています。多くの入り口を持ちながら、出口は1つだけという回路です。

どうやって選んでいるのですか?

同社の解説は、スイッチに例えた図を使い、連動する2組のスイッチAとBの0と1の組み合わせによって、4つの入力のうちどれが出力につながるかが決まる、と示しています。選択信号が、通す入り口を指しています。

どんな部品でできているのですか?

同社は、この切り替えを論理回路で描くとANDとORだけで作れるとし、AND側で通す入力を選び、OR側で信号を1つにまとめていると述べています。基本的な論理ゲートだけで組める回路です。

セレクタと呼ぶこともありますか?

あります。電子情報通信学会の公開知識ベースは、オンチップバスの章で、この方式が世に出たころはセレクタを組み合わせるだけの単純な形で機能ユニット同士を結んでいた、と述べています。同じはたらきの回路をセレクタと呼んでいる例です(2010年公開の章の記述です)。

デコーダとはどう違いますか?

向きが逆です。ルネサスの同じ解説は、デコーダを、入力の値を見分けて対応する出力をONへ変える回路だとしています。デコーダは1本の符号を多くの線へ配り、マルチプレクサは多くの線から1本へ集めます。

チップの中では、どこで使われていますか?

電子情報通信学会の公開知識ベースは、動作合成という工程を、演算要素・記憶要素・転送要素からデータパスを組み立て、制御回路もあわせて合成する作業だとし、そのうち転送要素がマルチプレクサやバスなどにあたるとしています。

たくさんの信号を1本にまとめても大丈夫ですか?

通れるのは1つずつなので、混雑が起こります。同知識ベースは、IP間接続にスイッチやバッファがある場合、一般的にスループットを高くするとデータが混雑してレーテンシが長くなる傾向があるとし、高速道路の渋滞にたとえています。

  • デコーダとは ── マルチプレクサは多くの線から1本へ集め、デコーダは1本の符号を多くの線へ配ります

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  • ルネサス エレクトロニクス「デジタルICの基礎、組み合わせ回路」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── マルチプレクサを信号切り替え器とする記述、スイッチによる4入力1出力の図、ANDとORだけで実現できること、デコーダとの並置
  • ルネサス エレクトロニクス「デジタルとは、基本論理回路」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 基本論理回路がゲートとして開閉すること、AND回路で片方の入力をオンまたはオフに保ったときの動き、基本要素をAND・OR・NOTの3種類とする記述
  • 電子情報通信学会『知識の森』「10群1編3章 集積回路設計」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 動作合成における転送要素としての位置づけ、レジスタ手前にマルチプレクサを入れた回路構成
  • 電子情報通信学会『知識の森』「10群3編4章 IP間接続」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── セレクタを組み合わせたシングルレイヤーバス、スループットと混雑・レーテンシの関係
  • JEITA(電子情報技術産業協会)半導体部会「半導体用語集」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── バスを共通の信号経路とする記述
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