PMIC(電源管理IC)とは
PMIC(電源管理IC)とは、1つのチップへDC/DCコンバータやLDOなど複数の電源と、それらの起動・停止の順序を制御する回路をまとめた集積回路です。
スマートフォンや車載機器の中心にあるSoCは、内部の機能ブロックごとに異なる電圧を同時に要求します。必要な電源が何系統にもなるため、電源の側にも専用の受け皿が要ります。それがPMICです。
日清紡マイクロデバイスは公式の製品ページで、特定のシステムに必要なDC/DCコンバータやLDOなど複数の電源を搭載し、それぞれのパワーオンシーケンス、パワーオフシーケンス、電圧の動的変更までを制御する機能を1チップへ載せたものをPMICと記述しています(同社製品ページの記述です)。まとめた対象には、電源の数に加えて順序も入ります。
順序が仕様として決まっています
Section titled “順序が仕様として決まっています”ロームのTechWebは、FPGAやDSPのように複数の電源を要するICや電子機器では、電源の投入と停止の順番が仕様として決まっている場合があると述べ、別の順番で投入した場合には起動の失敗やデバイスの損傷が起こり得ると記述しています(同社技術情報サイトの記述です)。
順序が仕様になる理由の1つは、チップの内側でブロック同士が信号線を共有しているためです。日清紡マイクロデバイスは、適切な投入と切断をシーケンス制御で行うことによってバスの競合を防げると記述しています。電源の来たブロックと、電源を待っているブロックが同じ線へ同時に居合わせると、余計な電流の行き来が起こります。順番とは、その状態を回避しながら全体を立ち上げるための道順です。
順序をつくる方法は、PMICのほかにもあります。ロームは同じ記事で、出力のオンオフ機能だけを持つ汎用電源ICと外部回路によってシーケンスを実現する回路例を示しています。基板の上へ抵抗やトランジスタを足して順番をつくる形です。PMICは、この外付け部分をチップの中へ取り込んだ製品にあたります。
同時に立ち上げると入力側が落ち込みます
Section titled “同時に立ち上げると入力側が落ち込みます”順序をずらす理由は、起動の可否のほかにもあります。日清紡マイクロデバイスは、各電源が一斉に立ち上がった場合、PMICの入力側の電源ラインで電圧のドロップが起こり、誤動作の恐れがあると述べています。各電源の起動タイミングをずらして突入電流を分散させることが、シーケンス制御のもう1つの目的だと同社は記述しています(同社製品情報ページの記述です)。同社のPMICでは、遅延のステップ間隔をOTPで0.5msまたは2msから選べます。
電圧を動かしながら供給を続けます
Section titled “電圧を動かしながら供給を続けます”PMICの制御は、動作中の電圧そのものにも及びます。日清紡マイクロデバイスは、DVS(Dynamic Voltage Scaling)を、供給先のSoCやFPGAへ電源を届けたまま、その動作状態に合わせて電圧を動的に変化させる機能と記述しています。電圧を一度に落とさず段階を踏んで下げるため、リップルの小さい遷移になると同社は述べています(同社製品情報ページの記述です)。待機中のロジック回路へ低い電圧を送れば、その分だけ消費電流が小さくなります。
入出力のピンと保護の回路も、同じチップの内側にあります。日清紡マイクロデバイスは、同社のPMICが用途に合わせて入出力を選べるマルチファンクションGPIOを備えるとし、1チップ化によって同じ数の単品電源ICを使う場合よりも実装面積が小さくなるとしています。ルネサス エレクトロニクスも、電源シーケンス制御とあわせて故障保護機能を自社PMICの特徴に挙げています。
メーカーはSoCの系列ごとに品種をそろえます
Section titled “メーカーはSoCの系列ごとに品種をそろえます”ルネサス エレクトロニクスは公式製品ページで、同社のPMICが電源シーケンス制御と電圧レギュレーションに加えて、DC/DC変換とバッテリ充電までを統合すると記述し、製品ポートフォリオをSoC向け、MCU向け、MPU向け、Vcore/Sub-PMIC、高電圧、低電圧に分類しています。同ページはR-Car SoCやRH850車載用MCUの系列ごとに対応するPMICの型名を掲げ、車載向けにASIL-BとASIL-Dの機能安全へ対応した品種を示しています(同社公式製品ページの記述です)。PMICがSoCと対で語られるのは、順序と電圧の組み合わせが相手のチップごとに固有だからです。
中身は2種類のレギュレータです
Section titled “中身は2種類のレギュレータです”ロームのTechWebは、電源ICを大きくリニアレギュレータとスイッチングレギュレータの2種類へ分類し、リニアレギュレータの出力形式は降圧のみ、スイッチングレギュレータには降圧・昇圧・昇降圧・反転という4つの出力形式があると記述しています(同社技術情報サイトの記述です)。PMICの内側にあるのは、この2種類の組み合わせです。効率を優先する系統へDC/DCコンバータを、静けさを優先する系統へLDOを割り当て、その上に順序の制御を重ねた製品がPMICだと言えます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”PMICとは何ですか?
複数の電源と、その電源をどの順番で立ち上げて停止するかを制御する回路を、1つのチップへまとめた集積回路です。日清紡マイクロデバイスは、DC/DCコンバータやLDOなどの電源に加えて、パワーオンシーケンス、パワーオフシーケンス、電圧の動的変更までを1チップへ載せたものをPMICと記述しています。
電源シーケンスとは何ですか?
複数の電源を投入する順番と、停止する順番のことです。ロームは、FPGAやDSPのように複数の電源を要するICでは、この順番が仕様として決まっている場合があると述べています。
なぜ順序が問題になるのですか?
仕様どおりの順番で電源が届いたときに、機器が正しく起動するためです。ロームは、別の順番で投入した場合に起動の失敗が起こり、場合によってはデバイスの損傷に至ると記述しています。日清紡マイクロデバイスは、適切な投入と切断でバスの競合を防げるとしています。
すべての電源を同時に立ち上げるとどうなりますか?
入力側の電源ラインで電圧が落ち込みます。日清紡マイクロデバイスは、各電源が一斉に立ち上がった場合に入力側のドロップが起こり、誤動作の恐れがあると述べています。起動タイミングをずらして突入電流を分散させることが、シーケンス制御のもう1つの目的です。
DVSとは何ですか?
Dynamic Voltage Scalingの略です。日清紡マイクロデバイスは、供給先のSoCやFPGAへ電源を届けたまま、その動作状態に合わせて電圧を動的に変化させる機能と記述し、電圧を段階的に下げることでリップルの小さい遷移になるとしています。
単品の電源ICを組み合わせる場合と何が違いますか?
順序をつくる回路の置き場所が違います。ロームは、出力のオンオフ機能だけを持つ汎用電源ICと外部回路でシーケンスを実現する例を示しています。PMICは、この外付け部分をチップの中へ取り込んだ製品です。日清紡マイクロデバイスは、1チップ化により同数の単品電源ICを使う場合と比べて実装面積が小さくなるとしています。
PMICはどんな機器に入っていますか?
複数の電圧を同時に要するSoCやMCUを積んだ機器です。ルネサス エレクトロニクスは、車載システムのほか、民生機器、産業機器、ネットワーク機器を挙げ、車載向けにはASIL-BとASIL-Dの機能安全へ対応した品種を掲げています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- LDOレギュレータとは ── PMICの内側にも入る、入出力差の小さいリニアレギュレータ
- パワーモジュールとは ── 大電力側で複数素子を1パッケージへまとめた部品
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- 日清紡マイクロデバイス「PMIC」製品ページ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── PMICの成り立ちと、1チップへ載せる電源管理機能の範囲
- 日清紡マイクロデバイス「PMIC 特長とメリット」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── シーケンス制御の目的、突入電流の分散、OTP設定、DVS、実装面積
- ルネサス エレクトロニクス「マルチチャネルパワーマネジメントIC(PMIC)」公式製品ページ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 統合する電源機能、製品ポートフォリオの分類、SoC系列ごとの対応品種と機能安全
- ローム「汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路」TechWeb(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 電源シーケンスが仕様として決まる事情と、外付け回路で順序をつくる方法
- ローム「電源ICの種類」TechWeb(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの分類と出力形式