基準電圧源とは
基準電圧源とは、電源電圧や温度が動いても一定の電圧をつくり、ほかの回路が電圧を測るときの目盛りとして使う回路です。 電源ICの精度は、この目盛りの精度から始まります。
ロームのTechWebは、リニアレギュレータの内部回路がエラーアンプ(誤差検出用のオペアンプ)、基準電圧源、出力トランジスタの3つで構成されるとしています。動作は帰還ループ制御で、入力や負荷が動いて出力電圧が変動し始めても、エラーアンプが出力からの帰還電圧と基準電圧を連続的に比べ、差分がゼロになるようにパワートランジスタを加減して出力電圧を一定に保ちます。同社は、出力電圧が VREF に (R1+R2)/R2 を掛けた値になるとしています。
スイッチングレギュレータでも比較の相手は同じです。同社は降圧型スイッチングレギュレータの動作原理として、出力電圧が内部の比較回路へ引き込まれて基準電圧と比べられると述べ、この比較回路がリニアレギュレータのエラーアンプと同じものだとしています。リニア側は比較の結果を出力トランジスタの連続的な加減へ渡し、スイッチング側はスイッチのオンオフ時間(デューティサイクル)の制御へ渡します。
つまりレギュレータは、基準電圧へ出力を合わせ込む機械です。出力電圧の正しさの出どころは、比較の相手にあたる基準電圧そのものです。
目盛りの誤差は出力へそのまま移ります
Section titled “目盛りの誤差は出力へそのまま移ります”ロームは、リニアレギュレータの重要スペックとして出力精度を挙げ、可変タイプではIC自体の精度が VREF の精度そのものだとしています。可変タイプの出力電圧は外付け抵抗で決まるので、実際に得られる精度は、VREF の誤差にその抵抗の誤差が上乗せされた形になります。固定出力タイプの許容誤差については、昔は±5%が標準的でしたが、最近は±1%という高精度の品種も数多くあるとしています。出力精度は温度や出力電流とも密接な関係があるため、常温だけの値よりも全温度範囲のスペックを参照するとしています(いずれも同社資料の記述です)。
基準電圧の値そのものが、設定できる出力電圧の下限にもなります。同社は、可変タイプで設定できる最低電圧が VREF になると述べています。エラーアンプが帰還電圧を VREF へ合わせ込む仕組みのため、下限は比較の相手と同じ値で止まります。VREF の値は回路方式ごとに決まっており、同社によればCMOS系のリニアレギュレータではおよそ0.8V、バイポーラ系ではおよそ1.2Vが一般的です。1Vの出力が要る場面では、VREF が0.8V前後の品種を選ぶ必要があります。
温度が動いても平らな目盛りをどうつくるか
Section titled “温度が動いても平らな目盛りをどうつくるか”半導体の中でこの目盛りをつくる代表的な回路が、バンドギャップ基準電圧(BGR)です。RAMXEEDのテックコラムは、BGRが温度によって直線的に増えるPTAT(Proportional To Absolute Temperature)電圧と、温度が上がるほど減るCTAT(Complementary To Absolute Temperature)電圧を加算して、温度による変動を打ち消すとしています。CTATはシリコンPN接合のVBE特性から、PTATは抵抗とトランジスタの特性から得られ、両者を適切な比率で加算すると温度に依存しにくい基準電圧が得られると述べています。
同じコラムは、設計上の主要なパラメータとして出力電圧、温度係数、PSRR(電源電圧の変化に対する出力変動)、負荷変動耐性を挙げ、出力電圧は一般的に約1.2V付近に設定されることが多く、温度係数は数十ppm/℃以下を目標とするとしています。−40℃〜125℃といった広い温度範囲では2次から3次の温度補償技術が要る場合があり、これにより高温域と低温域でも±10ppm/℃以下の安定性が実現可能だとしています(いずれもアナログASIC向けの設計指標として同コラムが挙げる値です)。代表的な構成としてはBrokaw型(オペアンプと2つのバイポーラトランジスタ、抵抗器で構成)を挙げ、低消費電力化や小面積化を目的としたオペアンプレス型の構成も採られるとしています。
製造ばらつきは出荷時に詰めます
Section titled “製造ばらつきは出荷時に詰めます”同じコラムは、半導体プロセスのばらつきがBGRの出力電圧や温度特性に大きく影響するとし、MOSFETやバイポーラトランジスタのしきい値、そして抵抗値がばらつく前提でマージンを取る設計を挙げています。ばらつきを吸収する手としては、トランジスタどうしの面積比と、抵抗のレイアウトの対称性を使うとしています。シミュレーションの段階ではMonte Carlo解析で統計的な変動を見積もり、用途によってはトリミング機構を設けて出荷時の補正でプロセスばらつきに対処するとしています。
雑音への手当ても要ります。同コラムは、BGRの出力が回路全体へ広がる基準になるため雑音特性の最適化が要るとし、熱雑音やフリッカーノイズを抑えるためにトランジスタの面積を適切に確保して電流密度を最適化する方法を挙げています。PSRRについては、電源の揺れがそのままBGRの出力へ届いてしまうため、カスコード電流源を使ったり、レギュレータと組み合わせたりして抑えるとしています。
基準電圧が揺れると何が起きるか
Section titled “基準電圧が揺れると何が起きるか”RAMXEEDは、BGRの使い道として、ADCの基準電圧、電圧検出やリミッタ回路のしきい値、そしてオペアンプやバッファアンプのバイアス生成を挙げています。目盛りが揺れれば、そこから作られるバイアス電圧やしきい値もいっしょに揺れます。同コラムは、その結果としてADCのオフセット誤差が増えたり、電源監視回路が誤動作したりするとしています。基準電圧の安定性がアナログASIC全体の品質を左右するため、設計の初期にBGRの仕様が他の回路ブロックより先に決まる場合もあると述べています。
基準電圧は電源の供給側でも目盛りとして働きます。電子情報通信学会の知識ベースは、大型コンピュータの給電で、負荷近傍の電圧をセンスして基準電圧との差分を補正するリモートセンス方式が従来採られていたと述べ、低電圧化が進むにつれてこの方式での補正が難しくなったため、給電系のインピーダンスを下げる方向、つまり負荷近傍への電源実装が最善だとしています(2019年公開版の記述です)。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”基準電圧源とは何ですか?
電源電圧や温度が動いても一定の電圧をつくり、ほかの回路が電圧を測るときの目盛りとして使う回路です。ロームは、リニアレギュレータの内部回路がエラーアンプ、基準電圧源、出力トランジスタで構成されるとしています。
レギュレータとの役割の違いは何ですか?
レギュレータは出力を基準電圧へ合わせ込む部分で、基準電圧源はその合わせ先そのものをつくる部分です。ロームは、リニアレギュレータの出力電圧が VREF に (R1+R2)/R2 を掛けた値になるとしています。
なぜ出力が約1.2Vなのですか?
RAMXEEDは、バンドギャップ基準電圧(BGR)の出力電圧が一般的に約1.2V付近に設定されることが多いとしています。温度に比例して増えるPTAT電圧と、温度が上がるほど減るCTAT電圧を加算し、温度依存を打ち消した結果の値です。
温度が動いても一定なのはなぜですか?
逆向きの温度特性を足し合わせるためです。RAMXEEDは、シリコンPN接合のVBE特性がCTAT動作を示し、抵抗とトランジスタの特性から得られる電圧がPTAT動作を示すとし、適切な比率で加算すると温度依存が打ち消されるとしています。
温度係数のppm/℃とは何を表しますか?
百万分の1を単位として、温度が1℃動いたときの基準電圧の動きを表す指標です。RAMXEEDは、温度係数として数十ppm/℃以下を目標とし、−40℃〜125℃の広い温度範囲では2次から3次の補償で±10ppm/℃以下の安定性が実現可能だとしています。
基準電圧の精度は何に響きますか?
レギュレータの出力電圧に直接響きます。ロームは、可変タイプではIC自体の精度が VREF の精度そのものであり、これに外付けの出力設定抵抗の誤差が上乗せされるとしています。固定出力タイプの許容誤差については、昔は±5%が標準的でしたが、最近は±1%という高精度の品種も数多くあるとしています。
製造ばらつきはどう吸収しますか?
RAMXEEDは、しきい値や抵抗値の変動を見込んだマージン設計、トランジスタの面積比とレイアウト対称性の活用、Monte Carlo解析による統計的な見積もりを挙げ、用途によってはトリミング機構を設けて出荷時に補正するとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- バンドギャップとは ── 基準電圧の値の由来になる、材料そのもののエネルギー差
- DC-DCコンバータとは ── 基準電圧へ出力を合わせ込む側の回路
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- ローム「リニアレギュレータの動作原理」TechWeb(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── エラーアンプ、基準電圧源、出力トランジスタという内部構成と、出力電圧の式
- ローム「リニアレギュレータの重要スペック」TechWeb(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── VREF が出力の下限になること、CMOS系0.8V前後とバイポーラ系1.2V前後、出力精度の内訳と±5%から±1%への推移
- ローム「降圧型スイッチングレギュレータの動作原理」TechWeb(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── スイッチングレギュレータでも出力を基準電圧と比べる帰還制御が働く点
- RAMXEED「アナログASIC設計におけるバンドギャップ基準電圧の基礎と応用技術」テックコラム(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── PTATとCTATの加算、約1.2Vという出力、数十ppm/℃と±10ppm/℃、Brokaw型、トリミングとPSRRの手当て
- 電子情報通信学会「知識ベース 8群5編1章 通信情報用電源・システム」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 負荷近傍の電圧を基準電圧と比べて補正するリモートセンス方式と、低電圧化に伴うその限界