ADC(A/Dコンバータ)とは
ADC(A/Dコンバータ)とは、アナログ信号をデジタル信号へ変換する回路です。 ロームの技術解説は、この動作を標本化・量子化・符号化という一連のステップとしています。
温度も音も光も、大きさが連続して変わります。一方でマイコンやDSPが扱えるのは0と1の並びだけです。この2つをつなぐ入口がA/Dコンバータであり、出口を受け持つのがD/Aコンバータです。
ロームは技術解説で、A/D変換を3つの段に分けています。以下は同社の記述に沿います。標本化は、連続した波形の振幅をサンプリング周期Tsごとに切り出す段で、担当する回路をサンプル&ホールド回路と呼びます。量子化は、切り出した振幅を離散的な値へ近づける段です。符号化は、その値を0と1の2値の符号へ置き換える段で、担当する回路はエンコーダです。
同社は、変換後のデジタル信号のビット数を分解能、最上位ビットをMSB、最下位ビットをLSBとしています。デジタル信号の違いとして区別できる入力の最小振幅が1LSBであり、切り出した値と量子化した値の差が量子化誤差です。最初のデジタル信号の変化点の0.5LSB下をゼロスケール、最後の変化点の0.5LSB上をフルスケールと呼び、その間隔がフルスケールレンジになります。
分解能は範囲を何分割するかを決めます
Section titled “分解能は範囲を何分割するかを決めます”ロームのマイコン向け技術資料は、A/D変換を左右する要素を2つ挙げています。1つは、どこからどこまでを変換するかにあたる基準電圧(VREF)です。もう1つが、その範囲を何分割するかにあたる分解能です。同社によれば、分解能が10ビットなら2の10乗で1024分割となり、最小の分解能幅はVREF電圧を1024で割った値、つまり1LSBになります。
分解能には8ビット、10ビット、12ビット、16ビットなどがあり、数字が大きいほど入力を細かく区別します。同社は、分解能が出力するデジタル信号の本数で決まるとし、8ビットのA/Dコンバータでは出力が8本で、VREF電圧が2の8乗の256分割になると記しています。
速さと細かさは方式ごとに入れ替わります
Section titled “速さと細かさは方式ごとに入れ替わります”分解能をどこまで上げられるかは、方式ごとの変換速度と抱き合わせで決まります。ロームは技術解説で基本形を4つ挙げており、以下の数値はいずれも同社が示す目安です。
フラッシュ型は、あらかじめ分圧した基準電圧とアナログ信号を比較器で同時に比べ、結果をエンコーダで符号にします。一度に変換するのでサンプル&ホールド回路が要らず、基本形の中で最も高速で、サンプリング周波数は1GHz以上も可能とされています。そのかわりNビットの分解能には2のN乗から1を引いた数の比較器が要り、回路規模と消費電力が膨らむため、分解能は8ビット程度が限界です。
パイプライン型は、段ごとに粗く変換し、残った差分を増幅して次の段へ渡します。16ビット程度の分解能と200MHz程度のサンプリング周波数を両立します。ただしデジタル出力までに各段を通る待ち時間が生じるため、ロームは制御などリアルタイム性が要る用途を不得手に挙げています。
逐次比較(SAR)型は、標本化した電圧とD/Aコンバータの出力が一致するよう、MSBから順に大小を比べていきます。18ビット程度まで実現でき、変換に分解能プラスαのクロックサイクルが要るため、サンプリング周波数は10MHz程度までです。応答性が良く、入力のマルチプレクサでアナログ信号を切り替えやすい点も特徴です。
ΔΣ型は、本来より高い周波数で標本化(オーバーサンプリング)し、ΔΣ変調で1ビットなどの低ビットデータに直したうえで、デジタルフィルタで帯域外のノイズを取り除いて間引きます。量子化誤差を高い周波数の側へ追いやってから取り除く形になるため、基本形の中で最も高分解能で、32ビット程度まで届きます。逐次比較型より変換は遅く、ロームは入力を高速に切り替える用途を不得手に挙げています。
マイコンに載るのは逐次比較型です
Section titled “マイコンに載るのは逐次比較型です”ロームは、マイコンに最も使用されるA/Dコンバータとして逐次比較型を挙げ、3ビットの例で動きを追っています。入力が16分の9のVREF電圧のとき、まず中間の8分の4のVREF電圧と比べます。入力の方が大きいので1が出ます。次に8分の6と比べると入力の方が小さいので0、続いて8分の5と比べても小さいので0となり、100という3ビットの値が得られます。1回の比較で入力のありかを半分に絞る動作を、LSBまで繰り返す形です。
この方式が組み込みで選ばれる理由は、応答性の良さにあります。入力を切り替えてもすぐ次の変換に移れるため、1個のA/Dコンバータの前にマルチプレクサを構え、複数のセンサを順番に取り込む使い方に向きます。温度が上がったらファンを回すといった制御は、この取り込みの上に成り立っています。
画素の列ごとに変換器を配置する作り方もあります
Section titled “画素の列ごとに変換器を配置する作り方もあります”方式の選択に加えて、変換器を何個どこへ配置するかも設計の一部です。ソニーセミコンダクタソリューションズは技術情報で、カラムA/D変換回路として、イメージセンサー内のA/D変換器を画素の垂直列ごとに並列に配置する構成を挙げています。同社によれば、この構成では垂直信号線から各列の変換器までアナログのまま伝わる距離が最短で済みます。その区間で乗るノイズが画質を落とす度合いを抑えたまま、読み出しの速さも確保します。同社は、アナログとデジタルの両方の回路でノイズを打ち消すデュアルノイズキャンセル方式と併せて、低ノイズを実現したとしています。
製品の並びにも方式の違いが出ます
Section titled “製品の並びにも方式の違いが出ます”ルネサスは公式製品ページで、同社のデータコンバータ製品として、高精度のSAR型およびΔΣ型のA/Dコンバータと、500MSPSに対応する高速A/Dコンバータを挙げています。分解能を優先する系列と速度を優先する系列が別々に並ぶ点は、方式ごとの得意分野をそのまま映します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ADC(A/Dコンバータ)とは何ですか?
アナログ信号をデジタル信号へ変換する回路です。ロームの技術解説は、この動作を標本化・量子化・符号化という一連のステップとしています。
標本化・量子化・符号化はそれぞれ何をしていますか?
標本化は、連続した波形の振幅をサンプリング周期ごとに切り出します。量子化は、切り出した振幅を離散的な値へ近づけます。符号化は、その値を0と1の2値の符号へ置き換えます。ロームの技術解説では、標本化はサンプル&ホールド回路、符号化はエンコーダが担当します。
分解能とは何ですか?
変換後のデジタル信号のビット数です。ロームのマイコン向け解説では、分解能が10ビットなら基準電圧の範囲が2の10乗すなわち1024に分割され、その1目盛りが1LSBになります。数字が大きいほど入力を細かく区別します。
量子化誤差とは何ですか?
切り出した値と、それを近い目盛りへ丸めた値との差です。ロームの技術解説はこの差を量子化誤差と呼んでいます。目盛りの間隔が1LSBなので、分解能を上げるほど誤差の取りうる幅は小さくなります。
どの方式が一番良いのですか?
用途によって変わります。ロームの技術解説が挙げる目安では、フラッシュ型はサンプリング周波数1GHz以上も可能な一方で分解能は8ビット程度が限界、ΔΣ型は32ビット程度まで届く一方で変換速度は遅くなります。速さと細かさのどちらを優先するかで方式が決まります。
マイコンに入っているのはどの方式ですか?
ロームは、マイコンに最も使用されるA/Dコンバータとして逐次比較型を挙げています。応答性が良く、入力のマルチプレクサでアナログ信号を切り替えやすいため、1個の変換器で複数のセンサを順に取り込む使い方に向きます。
D/Aコンバータとどう違いますか?
向きが逆です。A/Dコンバータはアナログ量をデジタル量へ、D/Aコンバータはデジタル量をアナログ量へ変換します。デジタルで演算する機器では、入口をA/Dコンバータ、出口をD/Aコンバータが受け持ちます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- DAC(D/Aコンバータ)とは ── 向きが逆で、デジタル量をアナログ量へ変換する回路です
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- ルネサス「データコンバータ」公式製品ページ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 高精度SAR型・ΔΣ型と500MSPS対応の高速A/Dコンバータという製品の並び