ジャイロセンサとは
ジャイロセンサとは、物体が回る速さ、つまり角速度を測るセンサです。 加速度センサが直線方向の動きを拾うのに対して、ジャイロセンサは向きが1秒間に何度変化するかを出力します。
角速度は「1秒あたり何度」で表します
Section titled “角速度は「1秒あたり何度」で表します”セイコーエプソンの技術コラム「ジャイロセンサーとは」は、ジャイロセンサの別名が角速度センサであり、角速度が単位時間あたりの回転角を指し、単位に deg/s(degree per second)を使うのが一般的だとしています。
村田製作所のMEMS技術の基礎知識は、物体の動きが3つの直角方向への並進と3本の直交軸まわりの回転という6自由度で表せるとし、このうち回転の3方向を角速度センサが測るとしています。加速度センサとジャイロセンサをそろえて初めて、動きの6自由度が全部そろうという関係です。
回転を、直角向きの振動へ移し替えます
Section titled “回転を、直角向きの振動へ移し替えます”MEMSのジャイロセンサは、回転をいったんべつの向きの振動へ移し替えてから電気信号にします。 村田製作所の同じ解説は、ジャイロが回転のコリオリ力への変換に基づいて動くこと、動作には一次運動(フィード運動)が要ること、コリオリ力が2つの直交する動きの結果として、その両方に直交する向きへ生じることを述べています。同社はさらに、MEMSジャイロが機械的な振動を一次運動として利用すること、一次運動と直交する軸まわりの角度変化を受けると波状のコリオリ力が生じ、一次振動および角速度の軸と直交する二次振動が一次振動と同じ周波数で起こること、この連成振動の振幅が角速度を判断する尺度になり、静電容量で検出されることを述べています。
電子情報通信学会の知識ベース(9群8編5章 MEMS、2012年受領)も、質量が一軸方向に振動するときに回転が加わると、角速度に比例する見かけの外力であるコリオリ力が、振動方向と回転軸の双方に直交する向きへ働き、その変位量から角速度を得るとしています。
センサ自身が揺れ続ける代償があります
Section titled “センサ自身が揺れ続ける代償があります”同じ知識ベースの5章は、角速度センサが圧力センサや加速度センサと異なり、センサ自身を機械的に駆動する必要がある点を挙げ、高い感度を得るにはパッケージへの取り付け方にも留意が要るとしています。振動を自前でかけ続ける以上、その振動を支える部分から外へ漏らす経路が生まれるためです。
同章は、音叉型の角速度センサが広く使われる理由として、音叉形状が駆動振動と検出振動に対称性を与えて機械的な不動点を作れること、その不動点をパッケージへの取り付け箇所に使えば、感度を保ったままセンサを搭載できることを挙げています。
漏れの中身も同じ知識ベースが列挙しています。9群8編3章の圧電ジャイロの項は、実際の出力信号が、コリオリ力による成分と、駆動側と検出側のあいだの各種結合による漏れ出力成分とのベクトル和になるとし、結合の要因として、圧電磁器の接着ずれによる余剰の力係数成分、双共振子の構造の非対称性、残留歪や支持に起因する機械的結合、静電的結合を挙げています。2012年受領の記述です。
感度を上げると、応答の平坦な範囲が狭くなります
Section titled “感度を上げると、応答の平坦な範囲が狭くなります”同じ3章(2012年受領)は、車両ナビゲーション用やビデオカメラの手振れ補正用で、周波数応答の平坦な範囲として0〜10 Hzあるいは20 Hz程度が要るとしています。そのうえで、駆動側と検出側の共振周波数の差Δfを小さくすると出力の振幅は大きくなる一方で平坦な範囲は狭く位相遅れも大きくなり、Δfを大きくすると平坦な範囲が広がり位相遅れも小さくなる代わりに振幅が小さくなるとし、要求される範囲で検波出力が平坦になるようΔfを設定することが設計指針だとしています。感度と応答の速さは、同じつまみの両端にあるという関係です。
素子の材料は水晶とシリコンの2系統です
Section titled “素子の材料は水晶とシリコンの2系統です”セイコーエプソンの技術コラムは、振動ジャイロセンサの素子を水晶振動ジャイロとSi-MEMS振動ジャイロに大別し、水晶を材料物性が安定で圧電駆動(材料の持つ圧電性を利用して駆動)、シリコンを供給が豊富で安価で静電駆動(狭いギャップ間の静電気力を利用して駆動)と区分しています。同社は自社の代表製品について、水晶のダブルT型構造により、顧客の使用帯域内で0.0015 (°/s)/√Hz の低ノイズを実現したとしています。同社が測定した代表製品の値です。
村田製作所は、シリコン側の作り方として、単結晶シリコンとガラスを使う容量式センサが2つの表面の距離のばらつきに基づく静電容量の検出原理を利用すること、静電容量が距離と重なり領域で決まること、ウェハボンディングやシリコンの深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)といったMEMS特有の技術を用いること、3D MEMSがウェハレベルのプロセスで密封されることを述べています。同社製品の構造です。
使いみちは3通りです
Section titled “使いみちは3通りです”セイコーエプソンの技術コラムは、ジャイロセンサの用途を3つに区分しています。角速度そのものの検出(スポーツの動作の記録)、角速度をCPUで積分して角度を求める使い方(カーナビゲーション、ゲームコントローラ、スマートフォン)、そして制振(カメラの手ブレ補正、車体制御)です。
電子情報通信学会の知識ベース9群8編3章も、車両のナビゲーションや姿勢制御、ビデオカメラやデジタルカメラの手振れ検知を用途として挙げ、圧電ジャイロの特徴として、摩耗する軸受を省いた構造ゆえに寿命が長く起動時間が短いこと、構造が簡単で小型化に向き低消費電力で安価なこと、電源と角速度出力がともに直流であることを列挙しています。自分で振動し続けるという代償と引き換えに、回る量を小さなチップで測れるようになった、というのが振動式ジャイロセンサの立ち位置です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ジャイロセンサとは何ですか?
角速度、つまり物体が回る速さを測るセンサです。セイコーエプソンの技術コラムは、ジャイロセンサの別名が角速度センサであり、角速度が単位時間あたりの回転角を指し、単位に deg/s(degree per second)を使うのが一般的だとしています。
加速度センサとの違いは何ですか?
測る量が異なります。加速度センサは直線方向の加速度を、ジャイロセンサは軸まわりの角速度を測ります。村田製作所は、物体の動きが3つの直角方向への並進と3本の直交軸まわりの回転という6自由度で表せるとし、このうち回転の3方向を角速度センサが測るとしています。
なぜセンサ自身を振動させるのですか?
回転をコリオリ力へ変換するためです。村田製作所は、ジャイロの動作に一次運動が要ること、コリオリ力が2つの直交する動きの結果として、その両方に直交する向きへ生じることを述べています。自分でかけ続ける振動が、回転を測れる形の力へ変換する入口になります。
音叉型の素子が多いのはなぜですか?
駆動振動と検出振動に対称性を与えられるためです。電子情報通信学会の知識ベースは、音叉形状が機械的な不動点を作り、その不動点をパッケージへの取り付け箇所に使えば、感度を保ったままセンサを搭載できるとしています。
水晶とシリコンでは何が異なりますか?
材料と駆動の原理です。セイコーエプソンの技術コラムは、水晶振動ジャイロを材料物性が安定で圧電駆動、Si-MEMS振動ジャイロをシリコンで供給が豊富かつ安価で静電駆動と区分しています。
感度を上げれば良いジャイロセンサになりますか?
応答の平坦な範囲との兼ね合いになります。電子情報通信学会の知識ベースは、駆動側と検出側の共振周波数の差Δfを小さくすると出力の振幅が大きくなる一方で平坦な範囲は狭く位相遅れも大きくなるとし、車両ナビゲーション用やビデオカメラの手振れ補正用では0〜10 Hzあるいは20 Hz程度の平坦な範囲が要るとしています。2012年受領の記述です。
ジャイロセンサはどこで使われていますか?
姿勢や向きを追う機器です。セイコーエプソンの技術コラムは、角速度そのものの検出、積分による角度の算出、制振の3通りを用途として挙げ、カーナビゲーション、スマートフォン、カメラの手ブレ補正、車体制御を例示しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 村田製作所「MEMS技術の基礎知識 ジャイロセンサ」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── コリオリ力への変換、一次運動と二次振動の関係、静電容量による検出
- 村田製作所「MEMS技術の基礎知識 単結晶シリコン容量式MEMS」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 静電容量の検出原理、ウェハボンディングとDRIE、ウェハレベルの密封
- セイコーエプソン「ジャイロセンサーとは ~仕組みとトレンド~」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 角速度の定めと単位、水晶とSi-MEMSの区分、用途の3通り
- セイコーエプソン「エプソンのジャイロセンサーの特長」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ダブルT型構造と0.0015 (°/s)/√Hz のノイズ密度
- 電子情報通信学会 知識ベース「9群8編5章 MEMS」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 振動型の検出原理、センサ自身を駆動する必要、音叉型の不動点
- 電子情報通信学会 知識ベース「9群8編3章 弾性波デバイス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 圧電ジャイロの特徴、漏れ出力の要因、Δfと周波数応答の関係