磁気センサとは
磁気センサとは、磁石や電流が生む磁気や地磁気について、その大きさと向きを検知するセンサです。 旭化成エレクトロニクス(AKM)の技術解説は、この語をそう位置づけたうえで、一口に磁気センサといっても種類が多いとしています。
磁気は、人の目が受け取る光の範囲の外にあります。そのため、磁気センサを介して電気信号へ移します。AKMの技術解説は、この点を磁気センサが要る理由として挙げています。
同時に、磁気にはもう1つの性質があります。村田製作所のAMRセンサ基礎知識は、プラスチックのような非磁性体を磁力線が吸収されることなく通り抜けて反対側へ届くとしています。
この2つが重なると、独特の使い道が生まれます。センサを筐体の内側、磁石を外側に取り付ければ、壁に穴を開けることなく外の動きを検知します。村田製作所は用途として、ノートパソコンの開閉検知、ガスや水道メーターの回転検知、ウェアラブル端末の電源スイッチを挙げ、防水構造にしやすい点を利点としています。これらは同社の記述です。
止まった磁石まで検知できるかどうかで、方式が決まります
Section titled “止まった磁石まで検知できるかどうかで、方式が決まります”AKMの技術解説は、代表的な磁気センサとしてコイル、リードスイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子の4つを挙げています。
コイルは、その中でも構造が単純な部類です。コイルに磁石を近づけると内部の磁束密度が増え、その増加を妨げる向きに磁束を生む誘導起電力と誘導電流が立ちます。遠ざけると向きが逆になります。AKMは、磁石が止まっている間は磁束密度の変化が無く、誘導起電力も誘導電流も 0 のままだとしています。構造が簡単なぶん壊れにくい一方で、出力電圧が磁束密度の変化する速さに依存するため、コイルが応えられるのは磁束密度が動いている場面に限られます。
リードスイッチは、左右から伸びる金属片(リード)を、重なる位置で隙間を空けてガラス管に封じたセンサです。外から磁場をかけるとリードが磁化し、重なった部分どうしが引き合って接触し、スイッチがオンになります。
ホール素子と磁気抵抗素子は、この2つと立場が違います。AKMは、ホール素子が磁束密度の変化が無い静磁場であっても磁場の有無を検知するとし、磁石と組み合わせた非接触スイッチ、角度センサ、電流センサまで幅広い用途で使われるとしています。ホール素子を使った地磁気センサがスマートフォンなどで広く使われているとも述べています。
電圧で受け取る方式と、抵抗で受け取る方式があります
Section titled “電圧で受け取る方式と、抵抗で受け取る方式があります”AKMの技術解説によれば、ホール素子と半導体磁気抵抗素子(SMR)は、どちらもローレンツ力から出発しながら、測る量が違います。ホール素子は生じたホール電圧を測り、SMRは抵抗値の変化を測ります。半導体薄膜を流れる電子が磁場からローレンツ力を受けると経路が曲げられ、経路が長くなるぶん抵抗値が上がります。SMR素子を使ったセンサは、歯車の回転の検知などに使われます。
磁気抵抗素子には、この半導体系のほかに強磁性体薄膜を使う3種類があります。異方性磁気抵抗素子(AMR)では、強磁性体膜の磁化が電流と同じ向きを取るか、直角の向きを取るかで電子の散らばり方が変わり、そのぶん抵抗値も動きます。巨大磁気抵抗素子(GMR)は、強磁性体(ピン層)/非磁性体金属/強磁性体(フリー層)の積層膜で、2つの磁化が反平行の場合と揃った場合とで散乱の度合いが変化します。トンネル磁気抵抗素子(TMR)は、あいだが絶縁体になった積層膜で、トンネル効果によって絶縁体を通る電子の割合が変化します。
材料の選択も、方式ごとに固まります。村田製作所は、AMRセンサとホールICを比べた表で、AMR素子の材料をNiFe合金、ホールICの材料をSi(安価、低感度)またはInSb(高感度、ただし温度特性は不利)とし、検知方向をAMRが水平磁場、ホールICが垂直磁場としています。これは同社の比較表の記述です。
測る磁界の大きさを、数字でたどります
Section titled “測る磁界の大きさを、数字でたどります”磁気センサが向き合う磁界の大きさは、桁で数えると広い範囲に散らばります。
産業技術総合研究所は、日本における地磁気をおよそ41〜51マイクロテスラ(µT)としています。身のまわりの磁気センサは、この地磁気の中で働きながら、目当ての磁石の磁界を拾います。
もっと強い側の例として、村田製作所はAMRセンサの感度を、オフからオンへ切り替わる磁界(Hon)と、オンからオフへ戻る磁界(Hoff)の組で表しています。同社は MRMS501A-001 の感度規格を Hoff 0.5mT から Hon 2.5mT までとしています。これは同社の1品番の規格値です。さきほどの地磁気と比べると、0.5mT はおよそ10倍、2.5mT はおよそ50〜60倍にあたります(2つの倍率は本記事で割り算した値です)。切り替わる磁界がこれだけ強ければ、地磁気に揺さぶられにくくなります。
反対に、うんと弱い側を狙う研究もあります。産業技術総合研究所は2024年2月17日の発表で、愛知製鋼と共同で開発した磁気インピーダンス素子(MI素子)向けの集積回路について、試作の測定結果を示しています。入力磁束密度のレンジは±80µT、消費電力は4mW、10kHzの信号帯域で45pT/√Hzのノイズフロアでした。同研究所は、デジタル自動補正を入れると、電源電圧1.4Vから1.6Vまで振ったときの磁気検出感度のばらつきが、10サンプルの平均で3分の1まで縮んだとしています。
素子そのものの進歩も続いています。産総研マガジンは、磁気トンネル接合(MTJ)が1〜2nmの薄い絶縁膜を2枚の強磁性金属で挟んだ構造だとし、2004年に酸化マグネシウム(MgO)を障壁に使った素子で約200%というMR比を実現し、現在までに600%を超えるMR比が実現されているとしています。同記事は、MTJ素子が汎用の磁気センサとしても普及し始め、自動車や機械の位置・回転検知に使われているとしています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”磁気センサとは何ですか?
旭化成エレクトロニクスの技術解説は、磁石や電流が生む磁気、そして地磁気などの大きさと向きを検知するセンサだとしています。磁気は人の目が受け取る範囲の外にあるため、センサを介して電気信号へ移します。
どんな種類がありますか?
旭化成エレクトロニクスは、代表的なものとしてコイル、リードスイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子を挙げています。磁気抵抗素子には、半導体磁気抵抗素子(SMR)、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)の4種類があります。
コイルとホール素子はどう違いますか?
旭化成エレクトロニクスは、コイルの出力電圧が磁束密度の変化する速さに依存するとしています。磁石が動いている間だけ誘導起電力が立ちます。ホール素子は静磁場でも磁場の有無を検知するため、磁石が止まった後も出力が続きます。
なぜ密閉した機器の中でも使えるのですか?
村田製作所は、磁力線がプラスチックのような非磁性体を通り抜けるとしています。センサを内側、磁石を外側に取り付ければ、壁を一枚のままにして外の動きを検知します。同社は防水構造にしやすい点を利点として挙げています。
どのくらいの大きさの磁界を測るのですか?
産業技術総合研究所は、日本における地磁気をおよそ41〜51マイクロテスラとしています。村田製作所は自社のAMRセンサ MRMS501A-001 の感度規格を Hoff 0.5mT 〜 Hon 2.5mT としています。これは同社の1品番の規格値です。
TMRセンサとは何ですか?
産業技術総合研究所は、磁気トンネル接合(MTJ)を、1〜2nmの薄い絶縁膜を2枚の強磁性金属で挟んだ構造とし、2枚の磁化の向きで電気抵抗が変化する現象をトンネル磁気抵抗(TMR)効果としています。この抵抗変化を磁界の読み取りに使うセンサがTMRセンサです。
半導体の製造技術とどう関係しますか?
素子の材料が化合物半導体やシリコン、強磁性体の薄膜だからです。産業技術総合研究所は、MTJ素子の大量生産と高密度集積回路への集積化のためにCoFeB/MgO/CoFeB構造を開発したとしています。薄膜を作る装置と工程が、そのままセンサの性能を左右します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ホール素子とは ── 磁気センサのうち、ホール効果で電圧を得る側
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- 旭化成エレクトロニクス 技術解説「#01 磁気センサーとは」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 磁気センサの語義、コイル・リードスイッチ・ホール素子・磁気抵抗素子の仕組みと、SMR/AMR/GMR/TMRの区分
- 村田製作所 AMRセンサ 基礎知識「AMRセンサ(磁気センサ)とは?」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 非磁性体を磁力線が通り抜ける性質、Hon/Hoffの考え方、MRMS501A-001の感度規格
- 村田製作所 AMRセンサ 基礎知識「AMRセンサ(磁気センサ)とホールICの違い」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── AMRとホールICの材料と検知方向の比較表
- 産業技術総合研究所 プレス発表「高性能磁気センサーの感度を自動補正する集積回路を開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 日本の地磁気の大きさ、MI素子向け集積回路の試作値
- 産総研マガジン「磁気トンネル接合とは?」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── MTJの構造、MR比の推移、汎用磁気センサとしての普及