DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)とは
DRIE(Deep Reactive Ion Etching、深堀り反応性イオンエッチング)とは、シリコンへ深い溝や穴を垂直に掘るためのドライエッチングです。 エッチングと側壁保護を交互に切り替えることで、深さが増しても穴が広がりにくくなります。
DRIEが解く課題は、深く掘るほど側壁が削られるという性質です。通常のドライエッチングでも縦方向が速く進みますが、横方向の除去も同時に進みます。底へ向かって掘り進む間、入口に近い側壁はずっと反応種とイオンにさらされ続けます。深さが増すほどこの時間差が広がり、穴が上ほど広い形になります。
答えは、掘る段と守る段を分けることです。KLAは公式製品ページで、シリコンのDRIEがボッシュプロセスを使うこと、ボッシュプロセスがプラズマの化学種をエッチング(SF₆)と側壁保護(C₄F₈)の段の間で繰り返し切り替え、シリコンへ異方性の溝や穴を作ることを述べています。保護膜を作る段を挟むことで側壁が守られ、底だけが掘り進みます。
用途は、深い構造そのものが要る領域です。TSV(シリコン貫通電極)やMEMSが代表例になります。同じKLAの公式製品ページは、1,500台を超えるDRIEプロセスモジュールの設置実績を持ち、深堀りシリコンエッチングで長年の専門性を積んできたと述べています。
3段の分担と、切り替えの周期
Section titled “3段の分担と、切り替えの周期”サムコは高速シリコンディープエッチング装置の公式ページで、ボッシュプロセスを3つの段の繰り返しとして記しています。第1段がシリコンの等方性エッチング、第2段が保護膜の堆積、第3段がシリコンの異方性エッチングで、第3段の入口で底面の保護膜を取り除きます。同ページは、エッチング側にSF₆、保護膜側にC₄F₈を主に使い、高い選択比を保ったまま高異方性のエッチングを成り立たせると述べています。
第1段が等方性であるという点が、この手順の勘所です。1段のなかでは横方向にも削れ、横へ伸びた分が側壁の細かい窪みとして写ります。これがスキャロップです。振幅は1段あたりの掘り込み量にほぼ対応し、1段を短く切れば小さく、長く取れば大きくなります。
年表も同じページに出ています。ボッシュプロセスはRobert Bosch GmbH(ドイツ)が1992年に開発した技術で、サムコは2003年に日本の半導体製造装置メーカーとして初めてこのライセンスを取得したと記しています。用途としては、加速度センサーやジャイロセンサーなどのMEMS、3次元パッケージで使うTSV、インクジェットプリンターヘッド、シリコンパワーデバイス、μTASなどの医療機器分野を挙げています。
サムコのRIE-800iPB公式製品ページは、0.1秒でのガス切り替えにより低スカロップの加工を成り立たせると記しています。この0.1秒が、側壁の振幅を左右する一次のつまみです。
適用の範囲 ─ どの寸法から先がDRIEか
Section titled “適用の範囲 ─ どの寸法から先がDRIEか”Oxford Instrumentsの日本語DRIEの技術ページは、MEMSの深堀りに使う2つの技術としてボッシュプロセスとクライオプロセスを挙げ、ボッシュプロセスを一般に1μmより大きい形状に、深さでは10μmを超える領域に使うと記しています。同ページはクライオのシリコン深堀りエッチングを、平滑な側壁、ナノエッチング、テーパー形状という用途に割り当て、混合プロセスを深さの小さい低アスペクト比の微細構造に割り当てています。
つまり寸法の側に境目があります。1μmより細い形状や深さ10μm以下の加工では、同社の割り当てはボッシュプロセスから別の方式へ移ります。同ページはボッシュプロセスについて高いエッチングレートと選択性、異方性を挙げ、シリコン深堀りエッチング全体のメリット欄には、高いエッチングレート、フォトレジストや酸化物に対する高い選択比、高アスペクト比、平滑な側壁、マスクアンダーカットの最小化を並べています。
現場のつまみと、両側で起きること
Section titled “現場のつまみと、両側で起きること”段の時間(切り替え周期)
Section titled “段の時間(切り替え周期)”段の時間を短くすると、1段あたりの掘り込み量が減り、側壁のスキャロップの振幅が小さくなります。差し出すのは切り替え回数です。保護膜を張る段と底の膜を破る段が増え、合計時間のうち掘る段の割合が下がります。長く取るとレートが伸びる代わりに、1段の等方エッチングが横へ伸びて振幅が大きくなります。マスク直下でこの振幅が大きくなると、開口の寸法が設計より広い側へ動き、CD均一性バジェットを食います。
ICP側のRFパワー
Section titled “ICP側のRFパワー”ICP側のパワーを上げると、プラズマ密度が上がってSF₆から出るフッ素ラジカルの量が増え、レートが伸びます。サムコはRIE-800iPBについて、ボッシュプロセス専用のICPコイルによって5,000WのRFパワーを効率よく印加すると記しています。差し出すのはマスクとチャンバ壁の消耗です。ラジカル量が増えるとレジストの後退も速くなり、目標の深さへ届く前にマスクが尽きる側へ近づきます。パワーを下げれば、レートが落ちる代わりに両方の負荷が軽くなります。
基板側のバイアス(イオンエネルギー)
Section titled “基板側のバイアス(イオンエネルギー)”基板側のRFを上げるとイオンエネルギーが上がり、第3段で底の保護膜を破る力が増します。深い穴の底まで力が届くのはこの経路です。差し出すのは選択比とダメージです。Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEのページは、低いイオンエネルギーによって選択性とダメージを制御すると記しています。裏返せば、上げる側では両方が悪い方向へ動きます。バイアスを下げると、マスクは守られる代わりに底の保護膜が残り、掘り進みが途中で止まります。現場でエッチストップと呼ぶ、深さが伸びなくなる状態です。
アルバックの平均自由行程の公式解説ページは、気体分子がまっすぐ飛べる距離を圧力ごとの数値で記しています。大気圧の10⁵ Paでは700Å、10¹ Paでは0.7mm、10⁻¹ Paでは7cm、10⁻² Paでは70cm、10⁻³ Paでは7mです。同ページは、蒸着装置が普通10⁻² Paから10⁻³ Paを使い、装置の幅や高さが1mから2mであるため、飛び出した分子がまっすぐ基板へ届くと述べています。
圧力を下げると平均自由行程が伸び、イオンが向きを変えずに穴の底へ届く割合が増えます。Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEページも、低圧を保てることを優れたプロファイル制御の理由として挙げています。差し出すのはレートです。反応種の数そのものが減るため、単位時間あたりの除去量が落ちます。圧力を上げるとレートが伸びる代わりに、平均自由行程が縮んで斜めに入るイオンが増え、穴の中腹が膨らむボウイングや、上ほど広い裾引きが出やすくなります。
ウェーハ温度
Section titled “ウェーハ温度”東京エレクトロンの公式ブログは、プラズマのエネルギーでウェーハの温度が上がりすぎる分を抑えるため、装置内へ低温のブライン(不凍液)を流していると記しています。現行機のブライン温度は0度から用途により80度で、クライオジェニックエッチングではマイナス数十度のブラインを流せます。同ブログは、この極低温によって深さ10μmを超える穴を従来の2.5倍の速さでまっすぐ掘れるようになり、40%以上の低消費電力化も達したと述べています。対象は3D NANDのメモリチャネルホール、つまり絶縁膜であり、シリコンのボッシュプロセスとは加工対象が別です。
温度を下げる側では、側壁の保護膜が安定して形が締まる方向になります。Oxford Instrumentsの日本語DSiEページがクライオを平滑な側壁の用途に割り当てているのも、この向きです。差し出すのは装置側の冷却能力と、マイナス数十度を保つ静電チャックまわりの設計です。
測る量と、公表されている実測値
Section titled “測る量と、公表されている実測値”サムコは装置ごとの数値を公式製品ページで公開しています。順はレート、選択比、アスペクト比、深さの実データ、ウェーハ径、面内の傾きです。
- レートは45μm/min以上です(RIE-800iPB、シリコン深掘り、サムコ公表値)。
- 選択比はレジストとシリコンで1対500以上です(同装置、同社公表値)。
- アスペクト比は100以上です(RIE-800iPB)。RIE-400iPBでは30以上です。
- 深さの実データは、RIE-800iPBで深さ450μmのピラー加工、量産用RIE-800iPBCで深さ400μmの高アスペクト加工、RIE-400iPBでアスペクト比23の深掘りと深さ500μmの貫通加工です。
- ウェーハ径はRIE-800iPBが最大ø8インチ、RIE-400iPBが最大ø4インチで、いずれも1枚ずつ流す枚葉方式です。
- 面内の傾きについて同社は、RIE-800iPBがチルトを抑制しø8インチウエハで良好な均一性を実現すると記しています。
これらは1社1装置の公表値です。装置形式、マスク材、開口寸法、深さの目標が別なら数字も別になるため、自分のプロセスウィンドウはこの6項目を自分の装置で取り直して引きます。
取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか
Section titled “取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか”- 速さとスキャロップです。段を長く取ればレートが伸び、側壁の振幅が大きくなります。0.1秒での切り替えは、振幅の側を取った設定です。
- 選択比とレートです。バイアスを上げれば底の膜を破る力が増え、1対500以上という選択比の余裕が削られます。
- 深さと面内均一性です。深さを稼ぐほどチルトとばらつきが積もります。ø8インチでの均一性は装置側の設計項目です。
- 形状とガスの地球温暖化係数です。東京エレクトロンの公式ニュースリリースは、400層を超える積層構造へのメモリチャネルホールについて、エッチング深さ10μmを33分で加工し、地球温暖化係数を従来比84%削減したと述べています。同社の公式ブログは、地球温暖化係数の高いC₄F₈などのCF系ガスを91%までHFガスへ置き換え、クライオジェニックエッチングの第一世代機に対してカーボンフットプリントを80%以上削減したと記しています。深い穴と環境負荷は、同じレシピの表と裏です。
- 工程の分割と一度掘りです。同じ公式ブログは、現状がアスペクト比1対100の工程を複数組み合わせる段取りであり、目標が一度で1対200を掘る側だと述べています。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 3社/3family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21
- KLA
- SPTS Omega Rapier / DSi-v etch modulesEtch / DRIE
- Lam
- Syndion Product FamilyDeep Silicon Etch / Packaging
- Samco
- ICP-RIE / ALE / DRIE etching systemsEtch / Compound Semiconductor
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- ドライ・プラズマエッチングの工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- TSV・シリコン貫通電極の工程ページ ── DRIEを使う代表的な後工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”DRIEとは何ですか?
DRIE(Deep Reactive Ion Etching、深堀り反応性イオンエッチング)は、シリコンへ深い溝や穴を垂直に掘るためのドライエッチングです。KLAは公式製品ページで、シリコンのDRIEがボッシュプロセスを使うと述べています。
ボッシュプロセスとは何ですか?
エッチングと側壁保護を交互に切り替える手順です。KLAの公式製品ページは、ボッシュプロセスがプラズマの化学種をエッチング(SF₆)と側壁保護(C₄F₈)の段の間で繰り返し切り替え、シリコンへ異方性の溝や穴を作ると述べています。サムコの公式製品ページは同じ手順を3段として記し、第1段がシリコンの等方性エッチング、第2段が保護膜の堆積、第3段が底面の保護膜を除いてからの異方性エッチングであると述べています。
なぜ交互に切り替えるのですか?
深く掘るほど側壁が削られる時間が長くなるためです。エッチングの段だけを続けると、底へ進む間に側壁も削れて穴が広がります。保護膜を作る段を挟むことで側壁を守り、底だけを掘り進められます。
DRIEはどこで使われますか?
TSV(シリコン貫通電極)やMEMSのように、アスペクト比の高い深い構造が要る用途です。KLAは公式製品ページで、1,500台を超えるDRIEプロセスモジュールの設置実績を持つと述べています。サムコの公式製品ページは、加速度センサーやジャイロセンサーなどのMEMS、TSV、インクジェットプリンターヘッド、シリコンパワーデバイス、μTASなどの医療機器分野を挙げています。
DRIEとRIEの違いは何ですか?
掘る深さと手順が異なります。RIEは通常の層の除去に使い、化学反応とイオン衝撃を同時に働かせ続けます。DRIEはエッチングと側壁保護を交互に切り替えることで、深い構造を垂直に掘ります。
DRIE装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、DRIEや深堀りシリコンエッチングに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。KLA(SPTS Omega Rapier / DSi-v)、ラムリサーチ(Syndion)、SAMCO、Plasma-Thermなどが該当します。
DRIEのエッチレートや選択比はどのくらいですか?
サムコは高速シリコンディープエッチング装置RIE-800iPBの公式製品ページで、45μm/min以上のシリコン深掘り、レジストとシリコンの選択比1対500以上、100以上のアスペクト比加工を挙げています。同社のRIE-400iPB公式製品ページは30以上のアスペクト比加工と、深さ500μmの貫通加工の実データを挙げています。いずれも1社1装置の公表値で、装置形式やマスク材、開口寸法が別なら数字も別になります。
スキャロップを小さくするにはどうしますか?
ガスの切り替えを速くします。サムコはRIE-800iPBについて、0.1秒でのガス切り替えにより低スカロップの加工を成り立たせると記しています。切り替えを速くする代わりに、保護膜を張る段と底の膜を破る段の回数が増えます。同社は非ボッシュプロセスでのスカロップフリー加工と順テーパー加工も挙げています。
ボッシュプロセスはどの寸法から使いますか?
Oxford Instrumentsの日本語公式技術ページは、ボッシュプロセスを一般に1μmより大きい形状に、深さでは10μmを超える領域に使うと記しています。同ページは、平滑な側壁やテーパー形状にはクライオのシリコン深堀りエッチングを、深さの小さい低アスペクト比の微細構造には混合プロセスを割り当てています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 主要メーカーのエッチング装置分類 ── メーカー別の装置分類
- エッチング工程 ── 工程としてのエッチングの全体像
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- KLA(SPTS)「Etch」公式製品ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── SF₆とC₄F₈の段の切り替え、1,500台超の設置実績
- Oxford Instruments Plasma Technology「Reactive ion etching (RIE)」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── RIEの異方性
- サムコ「高速シリコンディープエッチング装置」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 3段の内訳、1992年の開発と2003年のライセンス取得、用途
- サムコ「RIE-800iPB」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 5,000W、0.1秒切り替え、選択比1対500以上、45μm/min以上、アスペクト比100以上、ø8インチ、深さ450μm
- サムコ「RIE-400iPB」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── アスペクト比30以上と23、ø4インチ、深さ500μmの貫通加工
- Oxford Instruments Plasma Technology「シリコン深堀リアクティブイオンエッチング (DRIE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 1μm超と10μm超という適用範囲、クライオと混合の用途
- アルバック「平均自由行程」公式解説ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 圧力別の平均自由行程の数値
- Oxford Instruments Plasma Technology「誘導結合プラズマ RIE (ICP RIE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 低イオンエネルギーと選択性、低圧とプロファイル制御
- 東京エレクトロン「クライオジェニックエッチング」公式ブログ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ブライン温度、従来比2.5倍の速さ、40%以上の低消費電力化、91%のHF置換、1対200という目標
- 東京エレクトロン「400層超の3D NANDへのメモリチャネルホール形成技術」公式ニュースリリース(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 深さ10μmを33分、地球温暖化係数84%減
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成