IDMとは
IDMとは、設計・前工程・後工程のすべてを自社で行う半導体メーカーです。 日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、この形を垂直統合と呼び、採用する企業をIDM(Integrated Device Manufacturer、アイディーエム)と呼ぶと述べています。
水平分業の記事で見たとおり、半導体を作る仕事は設計・前工程・後工程という3つの工程に区切られます。この3つを別々の企業が担うのが水平分業でした。
IDMは、その3つを1社で持ちます。何を作るかを決め、ウェーハに作りこみ、切ってパッケージに入れ、自社ブランドで売ります。半導体という産業が始まってから長いあいだ、これが当たり前の形でした。
東京エレクトロンの解説記事は、80年代当時の半導体業界はIDMこそが唯一の事業形態だったと述べています。
全部を持つことは、全部の重さを持つこと
Section titled “全部を持つことは、全部の重さを持つこと”その唯一の形が、なぜ揺らいだのでしょうか。同記事は、IDMが1社で同時に抱える需要変動リスクと巨額の設備投資を挙げています。
自社ブランドで販売するチップを設計すると、応用市場での需要変動リスクを抱えます。売れる年と売れ行きが落ちる年があり、それを自分で引き受けることになります。
ところが同記事によれば、それを自社で製造するには、回収に失敗すれば一発で会社経営が破綻するほど巨額な設備投資が必要になってきました。
この2つは向きが食い違います。需要は年ごとに上下し、工場の費用は一定のまま続きます。工場は建てた時点で費用が固まり、稼働が落ちてもその費用を払い続けます。変動するものと、固まったものを同じ会社が同時に抱える形になります。
同記事は、このジレンマを解消するアイデアを実践したのがTSMC創業者のモリス・チャン氏であり、そのアイデアが、設計と製造を別の企業が分担する水平分業型の業界構造に再編すればリスクを切り離して巨額投資に耐えられる、というものだったとしています。
それでも、垂直統合は残っています
Section titled “それでも、垂直統合は残っています”分業が進んだあとも、IDMは現役の形です。単体素子の分野に、いまも残っている領域があります。
日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、水平分業が発達した現在でも、トランジスタ等の単体素子(ディスクリート半導体と呼ばれます)の主要メーカーはIDMだと述べています。
理由は、ファブレスが生まれた経緯の裏返しです。ファブレスが広がったのは、チップが「部品」から「システム」へ変わり、設計が差別化の中身になったからでした。同ブログは、集積回路の発明以前のトランジスタが一つの汎用部品に過ぎず、標準的な回路は誰が設計しても同じで設計による差別化はできなかったと述べています。
つまり、設計で差が付きにくい製品ほど、設計を切り出して外へ渡す利点も小さくなります。分業の利点は、製品ごとに大きさが変動します。
IDMも、委託と受託の両方を使います
Section titled “IDMも、委託と受託の両方を使います”もう一つ、見落とされやすい点があります。IDMという分類が指すのは、自社で持っている工程の範囲だけです。
日清紡マイクロデバイスの第16回は、ファウンドリへの製造委託の1つの形として、IDMが自社工場で作っている製品の受託を挙げています。需要が生産能力を超えたとき、IDMは自社の能力を上げる設備投資と他社への委託という2つの手のうち、後者を選ぶ形です。同ブログはこれを、変動する需要を固定費と変動費のうち変動費へ振り替える形だと述べています。
後工程でも同じことが起きます。東京エレクトロンの同記事は、Intelのような自社工場を持つIDMがOSATの顧客となり、後工程での生産能力不足分を補う場合もあると述べています。
さらに、IDMが受託する側に回ることもあります。同ブログは、IDMがファウンドリビジネスも行うことは現在でも普通にあるとし、日清紡マイクロデバイス自身もファウンドリサービスを提供していると述べています。ファウンドリが生まれる以前から、日本のIDMは米国ファブレスの製品の製造を受託していました。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”IDMとは何ですか?
日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、設計・前工程・後工程のすべてを自社で対応するビジネスモデルを垂直統合と呼び、それを採用する企業をIDM(Integrated Device Manufacturer、アイディーエム)と呼ぶと述べています。
昔はIDMしかなかったのですか?
東京エレクトロンの解説記事は、1980年代当時の半導体業界はIDMこそが唯一の事業形態だったと述べています。
IDMはどんな課題を抱えたのですか?
同記事は、自社ブランドで販売するチップを設計すると応用市場での需要変動リスクを抱える一方、それを自社で製造するには回収に失敗すれば一発で会社経営が破綻するほど巨額な設備投資が必要になってきた、というジレンマを挙げています。
いまも垂直統合は残っているのですか?
残っています。日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、水平分業が発達した現在でもトランジスタなどの単体素子(ディスクリート半導体)の主要メーカーはIDMだと述べています。
IDMはファウンドリを使うことがありますか?
使います。同ブログは、需要が生産能力を超えた場合、IDMには自社の生産能力を上げる設備投資と、ファウンドリ等の他社への製造委託という2つの手があり、後者を選んで対応する場合があるとしています。同ブログはこれを、変動する需要を固定費と変動費のうち変動費へ振り替えて対応するものだと述べています。
IDM自身がファウンドリになることはありますか?
あります。同ブログは、IDMがファウンドリビジネスも行うことは現在でも普通にあるとし、日清紡マイクロデバイス自身もファウンドリサービスを提供していると述べています。
IDMは後工程も外に出しますか?
委託することがあります。東京エレクトロンの解説記事は、Intelのような自社工場を持つIDMがOSATの顧客となり、後工程での生産能力不足分を補う場合もあると述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 日清紡マイクロデバイス「半導体産業の水平分業化とファブレスの躍進」公式ブログ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 設計・前工程・後工程のすべてを自社で対応するビジネスモデルを垂直統合と呼びそれを採用する企業をIDM(Integrated Device Manufacturer、アイディーエム)と呼ぶこと
- 日清紡マイクロデバイス「半導体産業の水平分業化の歴史~ファブレス半導体企業の誕生~」公式ブログ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 水平分業が発達した現在でもトランジスタなど単体素子(ディスクリート半導体)の主要メーカーはIDMであること、集積回路の発明以前のトランジスタが一つの汎用部品に過ぎず標準的な回路は誰が設計しても同じで設計で差別化できなかったこと、ファウンドリ誕生以前から日本のIDMが米国ファブレスの製品の製造を受託していたこと
- 日清紡マイクロデバイス「半導体産業の水平分業化~ファウンドリは下請けか?~」公式ブログ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 需要が生産能力を超えた場合にIDMが自社の設備投資と他社への製造委託のうち後者を選んで対応する場合があり、これが変動する需要を固定費と変動費のうち変動費へ振り替えて対応するものであること、IDMがファウンドリビジネスも行うことが現在でも普通にあり同社自身もファウンドリサービスを提供していること
- 東京エレクトロン TELESCOPE magazine「半導体の進化で揺れ動く、後工程『OSAT』の立ち位置を解説」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 80年代当時の半導体業界はIDMこそが唯一の事業形態だったこと、自社ブランドのチップを設計すると応用市場での需要変動リスクを抱える一方で自社製造には回収に失敗すれば一発で経営が破綻するほど巨額な設備投資が必要になったこと、モリス・チャン氏のアイデアが設計と製造を別企業が分担する水平分業型へ再編すればリスクを切り離して巨額投資に耐えられるというものだったこと、Intelのような自社工場を持つIDMがOSATの顧客となり後工程での生産能力不足分を補う場合もあること