前工程・後工程とは
前工程とはシリコンウェーハに回路を作りこむまで、後工程とはウェーハからチップを切り出してパッケージングするまでを指します。 産業技術総合研究所は公開ニュースで、半導体の製造をこの2つに大別しています。
この区分は、工程の順番の切れ目にあたります。そのうえで、ものづくりの型そのものが違います。
東京エレクトロンが公開している解説記事は、この違いを次のように書いています。前工程はウェーハまたはバッチの単位でまとめて流すプロセス型のものづくりで、工程・作業のほとんどが自動化されています。いっぽう後工程は、ある程度の自動化は進んでいるものの、個別のチップを1つずつ組み立てる型のものづくりが中心です。
この違いは、働き方にも設備投資の形にも出ます。一括で流す工程は装置に投資が集中し、個別に組み立てる工程は人と手順に依存する部分を抱えます。産総研が2024年の公開ニュースで、半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)としてNEDOの「先端パッケージング等を含む後工程の自動化にかかる技術開発」に採択されたと発表しているのは、この構造を裏返した話です。自動化が国の研究開発課題として立つほど、後工程には手作業が残っています。
線引きは、資料ごとに変わります
Section titled “線引きは、資料ごとに変わります”実務で紛れやすいのが、どこからどこまでを前工程と呼ぶかです。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の公式工程図は、前工程の側に「半導体設計用装置」「マスクレチクル用製造装置」「ウェーハ製造用装置」「ウェーハプロセス用処理装置」を、後工程の側に「組立用装置」「検査用装置」を分類しています。設計やウェーハそのものの製造まで前工程に含める区分です。
いっぽう産総研や東京エレクトロンの記述は、ウェーハに回路を作りこむところを前工程としています。SEAJより狭い範囲です。
どちらの区分も、立場に沿って成り立ちます。装置産業の側から見れば設計とマスクも一連の流れですし、デバイスメーカーの側から見れば回路形成が前工程です。「前工程」という言葉を聞いたら、その資料が指す範囲を先に特定するほうが実務的です。
工程の中身も公開されています。SEAJの前工程ページは、インゴットの引き上げ・切断、ウェーハの研磨、酸化、フォトレジスト塗布、パターン形成、エッチング、拡散・CVD・イオン注入、CMP、電極形成、ウェーハ検査という順に並べ、ウェーハ検査を前工程の最後としています。後工程ページは、ダイシング、マウンティング、ワイヤーボンディング、モールド、トリム&フォーム、バーンイン、製品検査・信頼性試験、マーキングという流れを示しています。
1社の装置が、線の両側にまたがります
Section titled “1社の装置が、線の両側にまたがります”資料ごとに範囲が異なるうえ、線を引く場所そのものが1社の製品ラインをまたぐことは、装置メーカーの自己記述にも表れます。
ディスコは公式IRのよくあるご質問で、グラインダ・ポリッシャを半導体製造前工程の一番最後でウェーハの裏面を削る装置と位置づけ、ダイシングソーを後工程でウェーハを賽の目に切り分ける装置としています。
同じ会社の隣り合う2つの装置が、前工程の末尾と後工程の先頭という別々の区分に入っています。 工程が連続している以上、線を引く場所は人の決めで動きます。
なお同社は、ダイシングソーとグラインダ・ポリッシャの世界シェアをいずれも7〜8割としています。
後工程の比重が上がっています
Section titled “後工程の比重が上がっています”近年この区分が注目されるのは、重心が動いているためです。
産総研は2021年の公開ニュースで、前工程の微細加工が物理的限界に近づいているため、高機能化・多機能化を続けるうえで後工程の重要性が増していると述べています。1つのチップを小さくし続ける道が細くなったぶん、複数のチップをどう組み合わせるかが高機能化・多機能化を左右する、という流れです。
その結果として、区分そのものが揺らぎ始めました。東京エレクトロンの記事は、チップレットには前工程的な要素と後工程的な要素の両方があり、その工程が「中工程」と呼ばれるようになったとし、従来の前工程・後工程の二部構成が揺らいでいると述べています。
同記事は、OSATを、ファウンドリからウェーハを受け取り、チップに切り分けてテストし、合格品をパッケージに実装・封止して製品に仕上げることを専門とする企業としています。先進パッケージングの重みが増すほど、この領域の技術的な難度も上がります。
分業の線として引かれた区分が、技術の変化で引き直されつつあります。前工程・後工程は、そういう段階にある言葉です。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 半導体製造プロセス事典 ── 工程分類の一覧と、各工程にひもづく公開求人
- デバイス製品開発の工程ページ ── 設計側の工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”前工程と後工程の違いは何ですか?
産総研は、半導体の製造がシリコンウエハーに回路を作りこむ前工程と、ウエハーからチップを切り出してパッケージングする後工程に大別されるとしています。
ものづくりの型は別ですか?
大きく異なります。東京エレクトロンの解説記事は、前工程がウェーハまたはバッチ単位でまとめて流すプロセス型で工程・作業のほとんどが自動化されているのに対し、後工程はある程度の自動化は進んでいるものの個別チップそれぞれを対象にする組み立て型のものづくりが中心だと述べています。
前工程と後工程の線引きはどこですか?
資料によって違います。産総研や東京エレクトロンは回路形成までを前工程としますが、SEAJの工程図では前工程に半導体設計用装置やマスクレチクル用製造装置、ウェーハ製造用装置まで含めています。
後工程にはどんな工程がありますか?
SEAJの後工程ページは、ウェーハのダイシング、チップのマウンティング、ワイヤーボンディング、モールド、トリム&フォーム、バーンイン、製品検査・信頼性試験、マーキングという流れを示しています。
なぜ最近は後工程が注目されるのですか?
産総研は、前工程の微細加工が物理的限界に近づいているため、高機能化・多機能化を続けるうえで後工程の重要性が増していると述べています。
前工程と後工程の線引きが揺らいでいるというのは本当ですか?
本当です。東京エレクトロンの記事は、チップレットに前工程的な要素と後工程的な要素の両方があり、その工程が「中工程」と呼ばれるようになったとし、従来の二部構成が揺らいでいるとしています。
OSATとは何ですか?
同記事は、OSATをファウンドリからウェーハを受け取り、チップに切り分けてテストし、合格品をパッケージに実装・封止して製品に仕上げることを専門とする企業としています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 先進パッケージングとは ── 前工程と後工程の線引きを動かしている側
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- 産業技術総合研究所 ニュース(2021年5月31日)(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 半導体の製造がシリコンウエハーに回路を作りこむ前工程と、ウエハーからチップを切り出してパッケージングする後工程に大別されること、前工程の微細加工が物理的限界に近づいているため後工程の重要性が増していること
- 産業技術総合研究所 ニュース(2024年11月7日)(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)がNEDOの「先端パッケージング等を含む後工程の自動化にかかる技術開発」に採択されたこと
- 東京エレクトロン nanotec museum「後工程」解説記事(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 前工程がウェーハ/バッチ単位でまとめて流すプロセス型でほとんどが自動化されていること、後工程が個別チップを対象にする組み立て型であること、OSATが担う範囲、チップレットに両方の要素がありその工程が「中工程」と呼ばれるようになったこと
- 日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体の製造工程」公式ページおよび前工程・後工程の各ページ(2026年8月29日にリンク生存を実測、いずれも200)── 前工程に半導体設計用装置・マスクレチクル用製造装置・ウェーハ製造用装置・ウェーハプロセス用処理装置を、後工程に組立用装置・検査用装置を分類する区分、前工程の工程順とウェーハ検査が最後に来ること、後工程の工程順
- ディスコ「よくあるご質問」公式IRページ(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── グラインダ・ポリッシャを半導体製造前工程の一番最後、ダイシングソーを後工程と位置づけていること、両製品の世界シェアをいずれも7〜8割と自社で示していること