ファウンドリとは
ファウンドリとは、半導体の前工程の製造受託に特化した企業です。 日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、この言葉が前工程の製造受託に特化した企業を指す場合と、前工程の製造受託ビジネスそのものを指す場合があるとしています。
ファウンドリ(foundry)を英語の辞書で引くと、並ぶのは金属加工の言葉です。同ブログは、意味が鋳造(業)、鋳物類、鋳造所、鋳物工場などに限られるとしています。
それでもこの名で呼ばれるのは、仕事の形が似ているからです。鋳物は、溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やして固めて取り出します。鋳型さえあれば、同じ形の金属製品を何個でも作れます。
半導体も同じです。同ブログは、回路パターンが形成されたマスクがあれば、それをウェーハに転写でき、繰り返せば同じ回路パターンのチップが多数載ったウェーハを何枚でも作れるとしています。そのうえで、鋳型とマスクを対応させた比喩がファウンドリという語の由来だと想像できるとも述べています。
誰が言い始めたかについても記述があります。同ブログは、ミード教授らの業績を紹介する記事に、シリコンファウンドリという用語はインテルのムーアが作り、ミードがそれを広めたという記述があったと紹介しています。
指しているのは、事業のかたちです
Section titled “指しているのは、事業のかたちです”ここは間違いやすいところです。同ブログは、foundryをネットで検索すると半導体製造工場という意味が出てくることがあるとしたうえで、ファウンドリと呼ぶ対象を他社からの製造受託に限り、IDMの製造工場はこの語の外にあるとしています。
ファウンドリという語があてはまる先は、建物や設備よりも他社の製品を受託して前工程を担うという事業のかたちの側です。だから、IDMがファウンドリ事業を持つこともあります。同ブログは、IDMがファウンドリビジネスも行うことは現在でも普通にあるとし、日清紡マイクロデバイス自身もファウンドリサービスを提供しているとしています。
そして、事業をファウンドリビジネスだけに絞った企業をpure-play foundry、日本語では専業ファウンドリと呼ぶとしています。
受託には、性質の異なる2つがあります
Section titled “受託には、性質の異なる2つがあります”同ブログの第16回は、製造受託と言っても大きく2つの形態があり、この2つは製造受託とは言っても全く別のビジネスと言ってもいいとしています。
1つめは、IDMが自社工場で作っている製品の製造受託です。需要が生産能力を超えたとき、IDMは設備投資して自社の能力を上げる道と他社へ委託する道のうち、委託を選びます。同ブログはこれを、変動する需要を、固定費と変動費のうち変動費に振り替えて対応するものとしています。この場合、委託先のプロセスをそのまま使えることも、IDMと同じプロセスを新たに立ち上げる必要が出ることもあります。
2つめは、ファウンドリの開発したプロセスをもとに顧客が製品を設計する形です。ここには、他の製造業とは順序が逆になる特徴があります。
同ブログは、組立産業ではまず製品があり、その後に製造工程を設計するイメージであるのに対し、半導体、特に集積回路ではまず製造前工程すなわちウェーハプロセスがあるとしています。ファウンドリがトランジスタなどの素子を作るプロセスを構築し、その素子を使って回路やシステムを設計するのが、IDMの設計部門やファブレスといった顧客の仕事になります。
だからファウンドリは、プロセスに加えて設計の道具までそろえます。同ブログは、製品の設計に必要な情報やデータやツールやIPを関連企業とも連携して提供しているとし、製造受託という受け身のビジネスというよりも、製品の設計と製造に必要なプラットフォームを提供している能動的な意味合いの方が強いとしています。
専業という選択は、消去法から出てきた
Section titled “専業という選択は、消去法から出てきた”専業ファウンドリは、産業の発展が自然に生んだものというより、誰かが選び取った結果です。
以下は、TSMC創業者のモリス・チャン氏が2007年8月24日に収録されたオーラルヒストリーで語った回想です。
同氏は、台湾政府から事業計画を求められて数日で提出することになったとし、専業ファウンドリという考えが固まったのはその数日のあいだだったとしています。
考えのもとになったのは、カーバー・ミード氏の著作でした。同氏は、ミード氏が設計は製造技術から切り離せるという点を示したとしています。ただし、ミード氏の主張はその分離までにとどまるとも明言しています。
そのうえで、同氏は台湾に何があって何がなかったかを並べています。販売とマーケティングの力は乏しく、知的財産の面で持つ強みもわずかだ、というのが同氏の見立てでした。台湾が持ちうる唯一の強みは半導体の製造、ウェーハの製造であり、それも明白な強みというより可能性にとどまるとしています。
そして同氏は、専業ファウンドリという選択を、いちばんましな選択と言ってもいい、という控えめな言い方で述べています。
弱いところは、要る場面そのものを減らせばよい、という組み立てです。設計の強みが薄い分、専業ファウンドリは設計を顧客に委ねます。販売力が弱くても、ファウンドリの販売は一般の半導体企業より単純で済みます。知的財産に弱くても、当時は製造プロセスが他社からの知財攻撃を最も受けにくい部分だったと同氏は述べています。争いの多くは回路設計をめぐるものだったからです。
「市場はどこにあるのか」という致命的な問題
Section titled “「市場はどこにあるのか」という致命的な問題”ただし、この選択には大きな穴がありました。同氏はそれを致命的な問題と呼び、その中身を市場はどこにあるのか、と表現しています。
当時の受け止めも記録されています。聞き手から、その考えは業界であまり受け入れられなかったと振られると、同氏はきわめて評判が悪かったと繰り返し答えています。
では、なぜ踏み切れたのでしょうか。同氏は、ファブレス産業の台頭を見通していたというより、ただそうなることを願っていた、としています。
願うだけの理由はありました。同氏は、独立を望む多くの設計者が、ウェーハ工場を建てるための巨額の資金を集められずに独立を諦めるのを見てきたと述べ、専業ファウンドリがそれを解決すれば、彼らが会社を作り、自分たちの顧客になり、安定して成長する市場になると考えたとしています。
ファブレスの記事で見たとおり、工場建設費の高騰は新規参入をふさいでいました。ファウンドリは、そのふさがった道の代わりとして設計されたものでした。
成功は、赤字2年のあとに来ました
Section titled “成功は、赤字2年のあとに来ました”同氏は結果についても具体的に語っています。TSMCは1987年に始まり、その最初の年が赤字でした。赤字はもう1年あり、1991年以降は赤字と無縁だとしています。
最初の数年は、当時わずかにあったファブレスも日本企業へ仕事を出していました。理由を問われて同氏は技術と信頼を挙げ、それを証明する必要があったと続けています。
証明が要ったのは、技術と信頼の両方でした。作った回路がそのまま製品になる以上、顧客が発注するには工場への信用が要ります。受け皿になるとは、先に信用を積むことでした。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ファウンドリとは何ですか?
日清紡マイクロデバイスの公式ブログは、ファウンドリという言葉が半導体デバイスの前工程の製造受託に特化した企業を指す場合と、前工程の製造受託ビジネスそのものを指す場合があるとしています。
なぜ鋳物を意味する言葉が使われているのですか?
同ブログは、foundryを英語の辞書で調べると意味が鋳造や鋳物工場などに限られるとしたうえで、鋳型があれば同じ形の金属製品を何個でも作れることと、マスクがあれば同じ回路パターンを転写したウェーハを何枚でも作れることの類似性から名付けられたと想像できると述べています。
誰が言い始めた言葉ですか?
同ブログは、ミード教授とその共同研究者の業績を紹介する記事に、シリコンファウンドリという用語はインテルのムーアが作り、ミードがそれを広めたという記述があったと紹介しています。
IDMの工場もファウンドリと呼ぶのですか?
この語を使う範囲は製造受託の側に限られます。同ブログは、foundryをネットで検索すると半導体製造工場という意味が出てくることがあるとしたうえで、ファウンドリと呼ぶ対象は他社から前工程を受託する事業であり、IDMの製造工場はこの語の外にあるとしています。
専業ファウンドリはどこまでを指すのですか?
同ブログは、IDMがファウンドリビジネスも行うことは現在でも普通にあるとしたうえで、事業をファウンドリビジネスだけに絞った企業をpure-play foundryと呼ぶことがあり、日本語では専業ファウンドリと訳されることが多いとしています。
製造受託には種類があるのですか?
同ブログは大きく2つの形態を挙げています。1つはIDMが自社工場で作っている製品の製造受託で、需要変動を固定費と変動費のうち変動費で受けるためのものです。もう1つはファウンドリが開発したウェーハプロセスをもとに顧客が製品を設計する形態です。
ファウンドリは下請けなのですか?
同ブログはこれを明確に否定しています。ファウンドリは製品設計に必要な情報・データ・ツール・IPを関連企業と連携して提供しており、製造受託という受け身のビジネスというよりも設計と製造に必要なプラットフォームを提供する能動的な意味合いの方が強い、としています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 日清紡マイクロデバイス「半導体産業の水平分業化の歴史~ファウンドリの誕生~」公式ブログ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── foundryの辞書上の意味が鋳造や鋳物工場であること、鋳型とマスクの類似性から名付けられたと想像できること、シリコンファウンドリという用語をムーアが作りミードが広めたという記述が業績紹介記事にあったこと、ファウンドリが前工程の製造受託に特化した企業を指す場合と製造受託ビジネスを指す場合があること、IDMがファウンドリビジネスも行うことが現在でも普通にあり同社自身もファウンドリサービスを提供していること、事業をファウンドリビジネスだけに絞った企業をpure-play foundry・専業ファウンドリと呼ぶこと、ファウンドリと呼ぶ対象が他社からの製造受託に限られIDMの製造工場はその外にあること
- 日清紡マイクロデバイス「半導体産業の水平分業化~ファウンドリは下請けか?~」公式ブログ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 前工程の製造受託に大きく2つの形態があること、1つがIDMの製品の製造受託で変動する需要を固定費と変動費のうち変動費に振り替えて対応するものであること、もう1つがファウンドリの開発したウェーハプロセスをもとに製品を設計する形態であること、組立産業は製品が先だが半導体はウェーハプロセスが先であること、ファウンドリが設計に必要な情報・データ・ツール・IPを関連企業と連携して提供しプラットフォームを提供する能動的な意味合いが強いこと
- Computer History Museum「Oral History of Morris Chang」公開PDF、2007年8月24日収録(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf、18ページ)── 事業計画を求められた数日のうちに専業ファウンドリの考えが固まったこと、カーバー・ミード氏が設計と製造技術の分離を示し、その主張が分離までにとどまること、台湾の唯一の強みが半導体製造でありそれも可能性にすぎなかったこと、専業ファウンドリを「いちばんましな選択」と呼んでいること、当時プロセスが知財の争いを最も受けにくい部分だったこと、市場の不在を致命的な問題と呼びこの考えがきわめて評判が悪かったこと、ファブレス産業の台頭を見通していたというより願っていたと述べていること、資金を集められず独立を諦める設計者を見てきたこと、1987年に始まり最初の年が赤字で1991年以降は赤字と無縁であること、最初の数年はファブレスが日本企業へ仕事を出しており理由が技術と信頼だったこと