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ノイズとは

ノイズとは、本来の信号に重なってしまう、余計な変動です。 電子情報通信学会の公開知識ベースは、ノイズを理想的な電気信号に重なる余計な変動としています。

同学会の通信測定の章は、雑音と呼ばれる波形をオシロスコープで観測すると規則性が見当たらず、映っている部分から他の部分を推し量ることが難しい、と書いています。この推し量れなさが雑音を特徴づける、という筋道です。裏を返せば、きれいに繰り返す妨害は、ノイズというより別の信号として扱えます。

同じ章は、雑音を発生源で分ける方法も挙げています。機器の内部から発生する雑音を内部雑音、機器の外部から到来する雑音を外部雑音と呼ぶ、という分け方です。ノイズの話を追うとき、この線引きが道しるべになります。外から来るものには、遠ざける・囲う・濾すという手立てが届きます。内から出るものは、その手立ての先でも同じ幅で残り続けます。

同じ手立てが、片方だけに届きます
対策の前離す・囲う・濾したあと外から来る雑音(外部雑音)振れ幅が縮みます素子から湧く雑音(内部雑音)同じままです破線の幅が、温度と電流で定まる下限です波の振れ幅が、そのままノイズの大きさを表します
外から来る雑音は、遠ざける・囲う・濾すという手立てで振れ幅が縮みます。素子の中から湧く雑音は同じ手立ての先でも同じ幅を保ち、破線ではさんだ帯が温度と電流で定まる下限になります。

外から来るノイズは、部品より置き方で決まります

Section titled “外から来るノイズは、部品より置き方で決まります”

ルネサス エレクトロニクスは、電気ノイズの主な種類を電源系と信号系に分けて示しています。電源系では同時スイッチングノイズを挙げ、デバイスの中で膨大な数のトランジスタが切り替わるとき、そのタイミングが偶然そろうと電源とグラウンドの電位が大きく動き、誤動作の可能性が高まるとしています。信号系ではクロストークノイズを挙げ、平行して走る信号線どうしが影響し合う現象であり、線が近いほど、平行している距離が長いほど大きくなると述べています。同社はほかに反射ノイズ、減衰、ジッタも挙げ、減衰については信号の周波数が高いほど影響が大きく、1GHzを超える帯域では大きな問題になるとしています。

並べてみると、どれも置き方と引き回しで決まっています。ロームの技術解説は、スイッチングノイズを急な電流の入り切りが生む高周波のリンギングとし、配線には一般に1mmあたり1nHほどのインダクタンスがあるとしています。同記事は、放射の強さが電流の流れ方でどれだけ動くかも計算例で示しています。周波数100MHz・ノイズ電流1マイクロアンペアという同じ条件で、面積20平方センチメートルのループを回る場合(ディファレンシャルモード)は1m地点の電界強度が0.26マイクロボルト毎メートル、20cmのケーブルを流れる場合(コモンモード)は25.1マイクロボルト毎メートルになります。同じ電流でもコモンモードの放射が約100倍大きい、というのがこの一例からの読み取りです。

対策の原則も、そのモードの違いに沿って二通りになります。同記事は、ディファレンシャルモードにはループ面積を減らすこと、たとえばケーブルを撚り線にすることを挙げ、コモンモードにはケーブルを極力短くすることを挙げています。クロストークについては、配線が直交する場合には浮遊容量や相互インダクタンスがかなり小さくなるとも述べています。同記事の締めくくりは、配線をできるだけ短くすることがノイズ低減に大きく寄与する、という一文です。

対策には、必ず代償が付きます

Section titled “対策には、必ず代償が付きます”

同じ記事は、リンギングを吸収する手立てとしてスナバ回路を挙げ、スイッチングノードとグラウンドの間に抵抗とコンデンサを足し、高周波のエネルギーを抵抗で消費させると書いています。あわせて、その追加によって損失が生じるとも書いています。スナバ抵抗10オーム、スナバコンデンサ1000pF、入力電圧12V、発振周波数1MHzという条件での計算例では、抵抗が受け持つ損失が0.144Wになり、定格0.25W以上の抵抗が必要になります。同社が示した条件つきの計算例です。

ノイズは熱に変わり、抵抗がそれを受け止めます。同記事はもう一つ、ハイサイドのMOSFETの立ち上がりを抵抗で緩やかにする手立ても挙げています。波形を鈍らせて放射を抑える以上、切り替えの速さのほうは差し出すことになります。

中から湧くノイズには、温度と電流が定める下限があります

Section titled “中から湧くノイズには、温度と電流が定める下限があります”

学会の通信測定の章は、熱雑音を抵抗体から発生する雑音とし、絶対零度まで冷やしてはじめて排除できるとしています。温度Tの抵抗体が生む1Hz当たりの電力密度はkT〔W/Hz〕で与えられ、常温ではマイナス174dBm/Hzになる、とも書いています。極端に雑音を嫌う宇宙通信では、増幅器を液体窒素などで冷やして熱雑音を下げる例も挙げています。同章はさらに、熱雑音を増幅しても、熱雑音どうしを足し引きしても、得られるのは熱雑音であり、動くのは電力密度やスペクトルにとどまるとしています。後段でどう手を入れても、種類としては残るという意味です。

微細デバイスを主題にした別の章は、この下限を式で示しています。熱ノイズは熱平衡状態のキャリアのブラウン運動から生じ、電流ノイズのパワースペクトル密度は4kT/Rで表されます。kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Rは抵抗です。ショットノイズは定常電流が流れる非熱平衡の状態で生じ、電流を担うキャリアが粒であることに由来し、パワースペクトル密度は2qIで表されます。qは電気素量、Iは電流です。温度・抵抗・電流という、回路の仕様そのものが下限を決めています。

静かな素子ほど、交点が左へ動きます
ノイズの大きさ(対数)周波数(対数)1/f ノイズ(低い周波数ほど大きくなります)熱ノイズ・ショットノイズ(平ら)コーナー周波数交点が左にあるほど静かな素子です
低い周波数では1/fノイズが、高い周波数では熱ノイズとショットノイズが大きさを決めます。二つが等しくなる点がコーナー周波数で、この点が低いデバイスほど静かなデバイスにあたると学会の公開知識ベースは述べています。

同じ章は、周波数で見た内訳も示しています。1/fノイズはフリッカーノイズとも呼ばれ、名のとおり周波数にほぼ反比例するパワースペクトル密度を持ち、低い周波数で大きいため低周波ノイズとも呼ばれます。熱ノイズとショットノイズは、遮断周波数(kT/h、およそ6THz)より下の広い範囲で一様なパワースペクトル密度を示し、白色ノイズとも呼ばれます。二つが等しくなる周波数がコーナー周波数で、この周波数が低いデバイスほど静かなデバイスといえる、という見立てです。微細MOSFETのコーナー周波数はMHzからGHzの領域にある、とも書かれています。2015年に受領された記述です。

小さくすると、かえって目立つノイズがあります

Section titled “小さくすると、かえって目立つノイズがあります”

同じ章は、ランダムテレグラフノイズ(RTN)を、現在大きな問題になっているノイズとして挙げています。ゲート絶縁膜の中でキャリアの捕獲と放出が繰り返され、チャネルの伝わりやすさが飛び飛びに動く現象です。キャリア1個の出入りに伴うしきい値電圧の変動幅は、ゲート絶縁膜容量をおおよその分母とする形で与えられ、デバイスの寸法が小さくなるほど顕在化するとしています。分母が小さくなるので、同じ1個の電荷でもしきい値電圧の振れ幅が大きくなる、という理屈です。

微細化が進むほど不利になるノイズがある、という点がここの要になります。同章は、RTNがまずフラッシュメモリの信頼性の問題になり、その後SRAMのノイズマージンを減らす要因として注目されるようになったと書いています。RTNの時定数は大部分がマイクロ秒以上で、デジタル回路のクロック周期であるナノ秒程度と比べて遅いため、同じデバイスの特性がスイッチングのたびに別の値として観測されることになります。同章は、デジタル回路の当面の主要なノイズをRTNとし、熱ノイズ・ショットノイズがRTNを上回るクロスオーバ周波数を、ナノワイヤ型デバイスの場合で数10GHzから100GHz程度と見積もっています。

引き算で消せる場合もあります

Section titled “引き算で消せる場合もあります”

内部雑音の一部は、引き算で取り除けます。学会の固体撮像デバイスの章は、電荷を検出する部分をリセットするとき、リセットの経路に熱雑音(kTC雑音)が生じ、リセット完了後もその値が保たれ、次のリセットまで同じレベルで居座ると述べています。基準の側と信号の側が同じ熱雑音を含むため、両方を測って差をとれば雑音成分が打ち消せる、という筋立てです。これが相関二重サンプリング(CDS)と呼ばれる手順で、同章は、ソースフォロア回路が生む低周波の1/f雑音も実質的に取り除けるとしています。

この引き算が使えるのは、雑音がしばらく同じ値で留まり、その間に2回測れるときだけです。外から来るノイズは置き方で減らし、中から湧くノイズは温度と電流が下限を決め、留まっている分だけは引き算で消せます。 この三段が、ノイズと付き合うときの全体像になります。

ノイズとは何ですか?

本来の信号に重なってしまう、余計な変動です。電子情報通信学会の公開知識ベースは、ノイズを理想的な電気信号に重なる余計な変動としています。

ノイズと信号は、どうやって見分けるのですか?

先が読めるかどうかで見分けます。同学会の通信測定の章は、雑音の波形をオシロスコープで観測すると規則性が見当たらず、映っている部分から他の部分を推し量ることが難しいと述べ、この点が雑音を特徴づけるとしています。

内部雑音と外部雑音では、対策がどう変わりますか?

届く手立てが変わります。同章は、機器の内部から発生する雑音を内部雑音、外部から到来する雑音を外部雑音と呼ぶ分け方を挙げています。外部雑音は距離や遮蔽やフィルタで振れ幅が縮み、内部雑音は素子そのものが源のため、同じ手立ての先でも下限の幅がそのまま残る、という線引きです。

熱雑音には、なぜ下限が残るのですか?

温度そのものが源だからです。同章は、熱雑音を抵抗体から発生する雑音とし、絶対零度まで冷やしてはじめて排除できるとしています。増幅しても足し引きしても得られるのは熱雑音であり、動くのは電力密度やスペクトルにとどまる、とも述べています。

ノイズ対策に、代償はありますか?

あります。ロームの技術解説は、リンギングを吸収するスナバ回路について、その追加によって損失が生じるとしています。同社が挙げた計算例では、抵抗が受け持つ損失が0.144Wになり、定格0.25W以上の抵抗が必要になります。

微細化すると、ノイズは減りますか?

増える種類があります。同学会の微細デバイスの章は、ランダムテレグラフノイズ(RTN)について、キャリア1個の出入りに伴うしきい値電圧の変動幅がゲート絶縁膜容量に反比例するため、デバイスの寸法が小さくなるほど顕在化するとしています。

ジッタとノイズは、別のものですか?

ジッタは、ルネサス エレクトロニクスが挙げる電気ノイズの主な種類の一つです。同社は、繰り返される信号のタイミングに揺らぎが生じる現象としています。同学会の通信測定の章も、ジッタを時間軸方向のタイミング変動としています。

この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。

  • 電子情報通信学会『知識の森』12群6編6章「通信測定」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── 雑音の波形に規則性が見当たらず一部から他を推し量ることが難しいこと、発生源による分類として内部雑音と外部雑音があること、熱雑音が抵抗体から発生し絶対零度まで冷やしてはじめて排除できること、温度Tの抵抗体の1Hz当たりの電力密度がkT〔W/Hz〕で常温ではマイナス174dBm/Hzになること、宇宙通信で増幅器を液体窒素などで冷却する例があること、熱雑音を増幅しても足し引きしても得られるのは熱雑音であること、ジッタが時間軸方向のタイミング変動であること
  • 電子情報通信学会『知識の森』S2群1編3章「微細デバイスの諸問題」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── ノイズが理想的な電気信号に重なる余計な変動であること、熱ノイズが熱平衡状態のキャリアのブラウン運動で生じ電流ノイズのパワースペクトル密度が4kT/Rで与えられること、ショットノイズが非熱平衡状態でキャリアの離散性から生じ2qIで与えられること、1/fノイズがフリッカーノイズとも低周波ノイズとも呼ばれ周波数にほぼ反比例すること、熱ノイズとショットノイズが遮断周波数(kT/h、およそ6THz)以下で一様な白色ノイズであること、二つが等しくなる周波数をコーナー周波数と呼びこれが低いデバイスほど静かなデバイスといえること、微細MOSFETのコーナー周波数がMHzからGHzの領域にあること、RTNがゲート絶縁膜中のキャリアの捕獲と放出でチャネル伝導度が不連続に動く現象でしきい値電圧の変動幅がゲート絶縁膜容量に反比例しデバイス寸法が小さいほど顕在化すること、RTNが最初にフラッシュメモリの信頼性問題となりその後SRAMのノイズマージンを減らす要因になったこと、RTNの時定数が大部分マイクロ秒以上でクロック周期より遅いこと、デジタル回路の当面の主要なノイズがRTNでクロスオーバ周波数がナノワイヤ型デバイスで数10GHzから100GHz程度と見積もられること
  • ルネサス エレクトロニクス「電気ノイズの主な種類」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 電気ノイズを電源系と信号系に分ける分類があること、同時スイッチングノイズがトランジスタの切り替えタイミングの重なりで電源とグラウンドの電位を大きく動かし誤動作の可能性を高めること、クロストークノイズが平行する信号線どうしの影響であり線が近いほど平行距離が長いほど大きくなること、反射ノイズが特性インピーダンスの異なる区間のつなぎ目で生じること、減衰が周波数の高いほど大きく1GHzを超える帯域で大きな問題になること、ジッタが繰り返し信号のタイミングに揺らぎが生じる現象であること
  • ローム TechWeb「スイッチングノイズとは?スイッチング電源で発生するノイズと対策」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── スイッチングノイズが急な電流の入り切りによる高周波のリンギングであること、配線に一般に1mmあたり1nHほどのインダクタンスがあること、100MHz・1マイクロアンペアの条件でディファレンシャルモード(ループ面積20平方センチメートル)が1m地点で0.26マイクロボルト毎メートル・コモンモード(ケーブル長20cm)が25.1マイクロボルト毎メートルという計算例になり後者が約100倍大きいこと、対策の原則がディファレンシャルモードではループ面積の削減・コモンモードではケーブルの短縮であること、配線が直交する場合は浮遊容量や相互インダクタンスがかなり小さくなること、スナバ回路が抵抗とコンデンサでリンギングの高周波エネルギーを消費させる一方で損失が生じ10オーム・1000pF・12V・1MHzの計算例で0.144Wとなり定格0.25W以上が必要になること、ブートストラップ端子への抵抗挿入で立ち上がりを緩やかにできること、配線をできるだけ短くすることがノイズ低減に大きく寄与すること
  • 電子情報通信学会『知識の森』8群4編1章・2章「固体撮像デバイス」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── 電荷検出部のリセット時にリセットチャネル内へ熱雑音(kTC雑音)が生じリセット完了後も次のリセットまで同一レベルを保つこと、基準側と信号側が同じ熱雑音を含むため両者をサンプリングして差をとると雑音成分を相殺できること、この手順が相関二重サンプリング(CDS)と呼ばれること、CDSでソースフォロア回路が発生する低周波の1/f雑音も実質的に除去できること
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