サンプリングとは
サンプリングとは、連続したアナログ信号の値を決まった周期ごとに切り出すことです。 ロームの技術解説は、この段を標本化と呼び、切り出す周期をサンプリング周期Ts、その逆数をサンプリング周波数Fsとしています。
ロームは、A/D変換を標本化・量子化・符号化の3段に分けています。同社の記述では、最初の段の標本化が、連続したアナログ信号の振幅値を離散的な周期Tsで切り出す役目を持ちます。サンプリング周期Tsはサンプリング周波数Fsの逆数であり、この段を担当する回路はサンプル&ホールド回路と呼ばれます。
キーエンスは同じ動作を計測の側から示しています。同社によれば、サンプリング周波数とは、標本化を単位時間あたりに何回行うかを表した値で、単位には一般にHzを使い、サンプリングレートという呼び方もあります。
切り出す回数が定まるということは、切り出した瞬間の値だけが記録として残るということでもあります。どれくらいの速さで測るかが、記録される波形の形をそのまま決めます。
速さが不足すると、同じ波が別の波として記録されます
Section titled “速さが不足すると、同じ波が別の波として記録されます”キーエンスは、サンプリング周波数を信号波形の周波数で割った比によって、記録される波形への影響を3つに区分しています。以下は同社の区分です。10倍以上であれば正確な波形の表示と記録が可能になります。2倍以上10倍未満では波高値が小さくなり、波形の形状が荒くなります。2倍未満ではエイリアシングが発生し、実際とはまったく異なる波形が表示されます。同社は、計測したい信号波形の周波数の10倍以上を持つ機器の選定を目安に挙げています。
同社は具体例として、AC100Vで60Hzの電源を、サンプリング周期だけ変えて3通りに計測した結果を示しています。1kHzでは正しい波形が得られます。100Hzではサンプリング周期が遅く、波形が崩れます。10Hzでは一見正しい波形に近く見えながら、エイリアシングを起こして0.08Hzというまったく異なる波形になります。
下限を定めるのがサンプリング定理です
Section titled “下限を定めるのがサンプリング定理です”小野測器は、サンプリング周波数をどこまで上げれば足りるかの指標としてサンプリング定理を挙げています。同社の記述によれば、入力信号に含まれる最高の周波数をfmとしたとき、その周波数帯域を正確に分析するには2fm以上の周波数でサンプルする必要があります。これを下回る周波数でサンプルした場合、分析後のスペクトルに誤差が乗ることがあり、その誤差をエイリアシング(折り返し)と呼びます。
同社は、入力アナログ信号の周波数帯域と比べてサンプリング周波数を高くしたほうがよいとしたうえで、ハードウェア資源の関係で高められる範囲に限りがあるとも記しています。速くすれば済む話に指標が要るのは、この上限があるためです。
上限側を守るのがアンチエイリアシングフィルタです
Section titled “上限側を守るのがアンチエイリアシングフィルタです”小野測器は、サンプリング時に生じうる折り返し誤差を防ぐためのローパスフィルタを、アンチエイリアシングフィルタとしています。以下は同社の記述に沿います。入力信号に含まれる最高の周波数fmは通常不明なため、FFTアナライザで周波数分析する場合はサンプリング周波数fsを先に決め、fsの2分の1以上の周波数帯域のパワーをローパスフィルタで十分に減衰させ、そのあとでサンプリングします。このfsの2分の1の周波数がナイキスト周波数です。
つまり、実際の機器はサンプリング周波数を先に決め、そこから上の帯域を入り口で削り落として、定理の条件を満たします。入力の中身を調べる前に、受け入れる帯域のほうを確定させる順序です。
CDとハイレゾという実際の値で確かめます
Section titled “CDとハイレゾという実際の値で確かめます”ソニーは、CDやハイレゾ音源が原音をデジタル化したものであり、その細かさを表すのがサンプリング周波数(kHz)と量子化ビット数(bit)だとしています。同社によれば、CDの情報量は44.1kHz/16bitで、ハイレゾ音源は96kHz/24bitや192kHz/24bitが主流です。192kHz/24bitの場合はCDの約6.5倍の情報量になるとしています。同社のハイレゾ紹介ページの記述です。
日本オーディオ協会は、ハイレゾオーディオロゴの条件として、録音フォーマットや入出力インターフェース、デジタル・アナログ変換など、同協会が挙げるデジタル側の各項目のいずれもが96kHz/24bitに対応することを求めています。同協会が参考として示すJEITA公告の事例では、44.1kHz/16bitと48kHz/16bitがCDスペックにあたり、96kHz/16bitはサンプリング周波数がCDスペックより高いためハイレゾ、32kHz/24bitはサンプリング周波数が低いため対象外と区分されます。ビット数が24bitでも、サンプリング周波数が32kHzなら区分が入れ替わるところに、この値の重さが出ています。
速く測ること自体を武器にする方法もあります
Section titled “速く測ること自体を武器にする方法もあります”サンプリング周波数を上げる意味は、高い周波数まで扱える点のほかにもあります。ロームは、ΔΣ型A/Dコンバータの動作としてオーバーサンプリングを挙げ、本来のサンプリング周波数を上回る速さで標本化し、量子化誤差を小さくするとしています。同社によれば、ΔΣ変調で低ビットのデータへ直したあと、デジタルフィルタが帯域外のノイズを取り除きつつデータを間引き、本来のサンプリング周波数のデジタル信号として変換を終えます。同社は、この方式が基本形の中で最も高分解能で、32ビット程度まで届くとしています。
上げられる速さには方式ごとの天井があります。同社の技術解説が挙げる目安では、逐次比較(SAR)型はサンプリング周波数で10MHz程度までです。変換に分解能プラスαのクロックサイクルが要るためです。どこまで速く切り出せるかは、変換回路の作り方と一体で決まります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”サンプリングとは何ですか?
連続したアナログ信号の振幅値を、決まった周期ごとに切り出す段です。ロームはこれを標本化と呼び、A/D変換の3段のうち最初の段としています。切り出す周期がサンプリング周期Tsで、その逆数がサンプリング周波数Fsです。
サンプリング周波数とは何ですか?
キーエンスは、アナログ波形をデジタルデータへ変換するための標本化を単位時間あたりに何回行うかを表した値としています。単位には一般にHzを使い、サンプリングレートという呼び方もあります。
サンプリング周波数はどれくらい必要ですか?
キーエンスは、計測したい信号波形の周波数の10倍以上を目安に挙げています。同社の区分では、10倍以上で正確な波形の表示と記録が可能になり、2倍以上10倍未満では波高値が小さくなって形状が荒くなり、2倍未満ではエイリアシングが発生します。
エイリアシングとは何ですか?
小野測器は、サンプリング定理に違反して低い周波数でサンプルしたときに分析したスペクトルへ生じる誤差をエイリアシング(折り返し)と呼んでいます。キーエンスの例では、60Hzの交流を10Hzでサンプリングすると、一見正しい波形に近く見えながら0.08Hzというまったく異なる波形になります。
サンプリング定理とはどういう指標ですか?
小野測器の記述によれば、入力信号に含まれる最高の周波数をfmとしたとき、その周波数帯域を正確に分析するには2fm以上の周波数でサンプルする必要がある、という指標です。
ナイキスト周波数とは何ですか?
小野測器は、サンプリング周波数fsの2分の1にあたる周波数をナイキスト周波数としています。同社は、この周波数以上の帯域のパワーをアンチエイリアシングフィルタと呼ぶローパスフィルタで十分に減衰させてからサンプリングすると記しています。
CDとハイレゾではサンプリング周波数がどれくらい異なりますか?
ソニーによれば、CDの情報量は44.1kHz/16bitで、ハイレゾ音源は96kHz/24bitや192kHz/24bitが主流です。同社は192kHz/24bitの場合にCDの約6.5倍の情報量になるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- アナログとデジタルとは ── 切り出す前と後で、量の並び方がどう変化するかを扱えます
- ADC(A/Dコンバータ)とは ── 標本化を含む3段の変換をひとつの回路として行います
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- ローム「A/Dコンバータ 基本動作」エレクトロニクス豆知識(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 標本化がサンプリング周期Tsで振幅値を切り出す段であること、TsとFsが逆数の関係にあること、担当回路がサンプル&ホールド回路であること
- キーエンス「サンプリング周波数選択のポイント」計測器ラボ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── サンプリング周波数の記述、10倍以上・2倍以上10倍未満・2倍未満という3区分、60HzのAC100V電源を1kHz・100Hz・10Hzで計測した例
- 小野測器「エイリアシング(折り返し)とは何ですか?」FFT基本FAQ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── サンプリング定理が2fm以上を求める指標であること、違反時の誤差がエイリアシングと呼ばれること
- 小野測器「アンチエイリアシングフィルターとは何ですか?」FFT基本FAQ(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ナイキスト周波数がfsの2分の1であること、fsを先に決めてからローパスフィルタで減衰させる手順
- ソニー「ハイレゾとは?」ハイレゾ・オーディオサイト(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── CDが44.1kHz/16bitであること、ハイレゾ音源の主流が96kHz/24bitと192kHz/24bitであること、192kHz/24bitで約6.5倍の情報量になること
- 一般社団法人日本オーディオ協会「ハイレゾオーディオロゴの付与条件と運用」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ハイレゾオーディオロゴの96kHz/24bit要件と、JEITA公告を参考に示した44.1kHz/16bitから32kHz/24bitまでの区分事例
- ローム「ADC 基本形4(ΔΣ型)」エレクトロニクス豆知識(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── オーバーサンプリングが量子化誤差を小さくすること、デジタルフィルタでノイズ除去と間引きを行うこと、32ビット程度という目安
- ローム「ADC 基本形3(逐次比較<SAR>型)」エレクトロニクス豆知識(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 分解能プラスαのクロックサイクルが要ることと、サンプリング周波数で10MHz程度までという目安