NOR型フラッシュメモリとは
NOR型フラッシュメモリとは、メモリセルを並列につなぎ、どの番地にも直接手が届くようにしたフラッシュメモリです。 JEITAの半導体用語集は、メモリセルの構造がDRAMと同じように並列につなぐ形のためランダムアクセスが可能だとし、NAND型に比べて高速アクセスが可能で、プログラム格納用メモリとしての用途が多いとしています。
フラッシュメモリには、NOR型とNAND型の2種類があります。両者を隔てるのはセルのつなぎ方でした。
キオクシアの技術用語集は、両者を1つの見出しで書き分けています。NOR型はメモリセルを並列に配置することでランダムアクセスやデータの高速読み出しを可能にしたメモリで、NAND型はメモリセルを直列に配置することでNOR型に比べて高密度の配置となり、大容量化を実現しているとしています。
応用物理学会の2010年の解説記事は、この構造の違いが速さに直結する理由を書いています。以下の数値は、その時点の記述です。NOR型は1個のメモリーセルごとにビット線・ソース線へ直につながるため読み出しが数十nsと高速で、携帯電話・PC・デジタルテレビ・DVDプレーヤーなどのプログラムの格納に使われているとしています。
1つ1つのセルが、配線に直接つながっています。だから目的の番地へ一足飛びに届きます。
対してNAND型は違います。同記事は、NAND型が32〜64個のメモリーセルを直列につなぐ形で構成され、コンタクト領域を複数個のメモリーセルで共有しているため、小面積・大容量を実現できるとしています。
数珠つなぎになっているので、目的のセル1つへ直接手が届くのは並列につなぐNOR型の側です。そのかわりNAND型は、配線との接点を共有できるぶん、詰め込めます。
集積度で劣る理由は、接点の数にあります
Section titled “集積度で劣る理由は、接点の数にあります”「NOR型は集積度が低い」という一言の先に、理由があります。公開資料は具体的に書いています。
電子情報通信学会の公開知識ベースは、NOR型フラッシュメモリがデータストレージ用途のNAND型と異なり、信頼性が高く、読出し速度が高速で、高速なランダムアクセスを特徴とすると述べています。そのうえで、並列につなぐメモリセル2個につき1個の割合でビット線コンタクトを設けるため、コンタクトがレイアウト面積に影響し、高集積化には限界があるとしています。
セル2個につき、接点が1個です。記憶する部分と並んで、そこへ届くための配線の口が場所を取ります。
NAND型はこの負担を減らしています。同知識ベースは、記憶素子を直列につなぐことで面積のオーバヘッドの影響を減らし、NOR型の1/2以下の実効セル面積を実現するとしています。
読み出しは速く、書き込みは遅い
Section titled “読み出しは速く、書き込みは遅い”NOR型には、方向によって性能が逆を向くという特徴があります。
応用物理学会の2010年の解説記事は、書き込みの機構から書いています。以下はいずれもその時点の記述です。NOR型ではホットエレクトロン書き込みを行うためにソースとドレインの間に5Vの電位差があり、チャネルを100nm以下に縮小することが困難だとしています。
そして、そのことが書き込み速度も左右します。同記事は、書き込み時にソースとドレインの間に電流が流れるため消費電流が大きく、そのために並列書き込みが困難で、書き込みの速度が遅いという問題があるとしています。
一度に大量に書こうとすると、電流が大きくなりすぎます。だから並べて同時に書くことができず、書き込みが遅くなります。
東京エレクトロンの用語集も、長所と短所を1文にまとめています。NAND型に比べて読み出し速度やランダムアクセス性は高いものの、集積率は劣り、書き込みが遅いなどの欠点もあるとしています。
そのまま実行できる、という用途
Section titled “そのまま実行できる、という用途”NOR型がなぜ残っているのでしょうか。答えは、プログラムを格納する場所としての性質にあります。
インフィニオンの日本語公式ページは、NORフラッシュメモリを、電源がなくてもデータを保持する不揮発性ストレージの一種であり、組み込みシステムでの実行インプレース(XIP)機能を可能にするものだとしています。
実行インプレース(XIP)とは、プログラムを別のメモリへ移さず、格納したままの場所で実行することです。同ページは、NANDフラッシュとは異なり高速なランダムアクセスが可能なため、コードの保存や直接実行に最適だとしています。
NAND型は、別の道を通ります。電子情報通信学会の同知識ベースは、一般にプログラムコードの格納用に使われるNOR型と異なり、NAND型はランダムアクセスが遅く、プログラムの実行はDRAMなどへデータを転送したうえで行われるとしています。
転送のひと手間の有無が、電源を入れてすぐ動く必要のある機器で起動時間を左右します。
同知識ベースは、マイコンの事情も具体的に書いています。マイコンは通常キャッシュをもたずにフラッシュメモリから直接プログラムを読み出し、プログラムがランダムアクセスを要求するため、連続した読出しだけでなくランダムアクセスも高速である必要があるとしています。
用途も具体的です。インフィニオンの同ページは、信頼性の高いブートコードの保存が必須な自動車用ECU、産業用コントローラー、通信インフラで不可欠だとしています。東京エレクトロンの用語集も、マイコンをはじめ高い信頼性が求められるルーター、プリンタ、デジタルカメラ、GPS、車載機器、携帯電話など、HDDに代わる記憶装置が要る環境で、ファームウェアの格納に使われると挙げています。
「NORは割高」は、条件付きの話
Section titled “「NORは割高」は、条件付きの話”よく言われる使い分けがあります。ただし、それを書いた当事者自身が留保を付けています。
ウィンボンドの技術記事は、まず通説を挙げています。コードストレージ向けには、信頼性が高く長期間データ保持が可能なNORフラッシュを選択する、というものです。同記事は自社のSLC NANDをNOR型の代替として提案する立場で書かれた2018年の記事で、比較の部分は同社の主張です。
そのうえで、これは業界の一般的な想定であって、実際に当てはまる範囲は限られると続けています。NORフラッシュとNANDフラッシュの技術の進化速度が異なるため、相対的な利点や欠点も日々変化しているからです。
コストについても、容量しだいだとしています。最大で256Mbのコードを有する組込みアプリケーションでは、NORフラッシュの価格がNANDフラッシュ以下にとどまります。256Mb以下の低容量では、メモリ・セル・アレイと並んで、ロジック回路やチャージ・ポンプ回路などの周辺機能がチップ面積の大部分を占めるためです。
容量が小さければ、チップ面積の大部分は周辺回路が占めます。 セルの小ささが面積に響くのは、大容量の側です。
同記事には、NOR型の微細化の歩みも記されています。1986年には1.5µmノードが最先端の製造技術でしたが、約20年後には65nmノードで製造されるようになりました。130nmノードで製造されたNORフラッシュは、1メモリ・セル当たり4,000個の電子を蓄えているとしています。
なぜ書き換えられる必要があったのか
Section titled “なぜ書き換えられる必要があったのか”電子情報通信学会の同知識ベースは、この技術が求められた背景を書いています。1990年代まではプログラムをマスクROMに格納することが主流でしたが、マスクROMではプログラムにバグがあった場合に製造プロセスまで戻らなければ変更できず、開発期間が長くなるとしています。
間違いが見つかったとき、工場からやり直しになります。書き換えられるということは、そこから解放されるということでした。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”NOR型フラッシュメモリとは何ですか?
JEITAの半導体用語集は、フラッシュメモリの一種で、メモリセルの構造がDRAMと同じように並列につなぐ形のためランダムアクセスが可能とし、NAND型に比べて高速アクセスが可能でプログラム格納用メモリとしての用途が多いとしています。
NAND型との差はどこですか?
セルのつなぎ方です。JEITAの同用語集は、NAND型をビット線へ直列につなぐ単純な構造のためNOR型に比べて集積度を上げやすいとし、データ格納用の大容量メモリとしての用途が多いとしています。
なぜ集積度で劣るのですか?
電子情報通信学会の公開知識ベースは、並列につなぐメモリセル2個につき1個の割合でビット線コンタクトを設けることによりコンタクトがレイアウト面積に影響するため、高集積化には限界があるとしています。
どのくらい速いのですか?
応用物理学会の解説記事は、NOR型が1個のメモリーセルごとにビット線・ソース線へ直につながるため読み出しが数十nsと高速だとしています。
何に使われているのですか?
インフィニオンの日本語公式ページは、組み込みシステムでの実行インプレース(XIP)機能を可能にするとし、信頼性の高いブートコードの保存が不可欠な自動車用ECU、産業用コントローラー、通信インフラで不可欠だとしています。
読み出しが速いなら書き込みも速いのですか?
違います。応用物理学会の同解説記事は、書き込み時にソースとドレインの間に電流が流れるため消費電流が大きく、そのために並列書き込みが困難で書き込みの速度が遅いという問題があると述べています。
NOR型は常に割高なのですか?
条件によります。ウィンボンドの技術記事は、最大で256Mbのコードを有する組込みアプリケーションではNORフラッシュの価格がNANDフラッシュ以下にとどまるとし、低容量の場合はメモリセルアレイと並んでロジック回路やチャージポンプ回路などの周辺機能がチップ面積の大部分を占めるためだとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- NAND型フラッシュメモリとは ── 詰め込む側
- フラッシュメモリとは ── 両者の上位にあたる総論
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- JEITA(電子情報技術産業協会)半導体部会「半導体用語集」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── NOR型フラッシュメモリの見出し語の記述(メモリセルの構造がDRAMと同じように並列につなぐ形のためランダムアクセスが可能であること、NAND型に比べて高速アクセスが可能でプログラム格納用メモリとしての用途が多いこと)。あわせてNAND型フラッシュメモリおよびフラッシュメモリの各見出し語も、それぞれ別の見出し語から採っています
- 東京エレクトロン nanotec museum 半導体用語集「NOR型フラッシュメモリ」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 1984年に舛岡富士雄氏(当時東芝勤務)が発明し1988年にインテルが商用のNOR型フラッシュメモリを発売したこと、NAND型に比べて読み出し速度やランダムアクセス性は高いが集積率は劣り書き込みが遅いなどの欠点もあること、マイコンをはじめルーター、プリンタ、デジタルカメラ、GPS、車載機器、携帯電話などHDDに代わる記憶装置が要る環境でファームウェアの格納に使用されること
- 電子情報通信学会『知識の森』8群2編4章「フラッシュメモリ」公開PDF、ver.1/2011.6.6(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── NOR型が信頼性が高く読出し速度が高速で高速なランダムアクセスが特徴であること、並列につなぐメモリセル2個につき1個の割合でビット線コンタクトを設けることによりコンタクトがレイアウト面積に影響するため高集積化には限界があること、NAND型が記憶素子を直列につなぐことで面積オーバヘッドの影響を減らしNORの1/2以下の実効セル面積を実現すること、NANDフラッシュメモリがランダムアクセスが遅くプログラムの実行はDRAMなどにデータを転送したうえで行われること、マイコンが通常キャッシュをもたずにフラッシュメモリから直接プログラムの読み出しを行うこと、1990年代までプログラムをマスクROMに格納することが主流だったがバグがあった場合に製造プロセスにまで戻らなければ変更できず開発期間が長くなること
- 応用物理学会「応用物理」第79巻第12号(2010年)解説「フラッシュメモリーの現状と今後の展望」J-STAGE 無料公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── フラッシュメモリーにNOR型とNAND型の2種類があること、NOR型が1個のメモリーセルごとにビット線・ソース線へ直につながるため読み出しが数十nsと高速であること、NOR型ではホットエレクトロン書き込みのためソースとドレインの間に5Vの電位差がありチャネルを100nm以下に縮小することが困難であること、書き込み時に電流が流れるため消費電流が大きく並列書き込みが困難で書き込みの速度が遅いこと、NAND型が32〜64個のメモリーセルを直列につなぎコンタクト領域を共有することで小面積・大容量を実現すること。いずれも2010年時点の記述です
- キオクシア「技術用語集」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── NOR型がメモリセルを並列に配置することでランダムアクセスやデータの高速読み出しが可能なメモリであること、NAND型がメモリセルを直列に配置することでNOR型に比べて高密度の配置となり大容量化を実現していること。なお発明の帰属について同社は自社によるものと記しており、東京エレクトロンの用語集は同じ年を個人名で記しています
- インフィニオン テクノロジーズ 日本語公式「NORフラッシュ」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── NORフラッシュメモリが不揮発性ストレージの一種であり組み込みシステムでの実行インプレース(XIP)機能を可能にすること、NANDフラッシュとは異なり高速なランダムアクセスが可能なためコードの保存や直接実行に最適であること、信頼性の高いブートコードの保存が不可欠な自動車用ECU・産業用コントローラー・通信インフラで不可欠であること
- ウィンボンド 日本語公式 技術記事「高性能SLC NANDフラッシュは車載システム向けコードストレージとしての道を拓けるか」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── コードストレージ向けにNORフラッシュを選択するというのが業界の一般的な想定だが実際には全てが事実とは言いきれず、両技術の進化速度が異なるため相対的な利点や欠点も日々変化していること、最大256Mbのコードを有する組込みアプリケーションでNANDフラッシュがNORフラッシュより安くなることはなく低容量では周辺機能がチップ面積の大部分を占めること、1986年に1.5µmノードが最先端だったNORフラッシュが約20年後には65nmノードで製造されるようになったこと、130nmノードで製造されたNORフラッシュが1メモリ・セル当たり4,000個の電子を蓄えていること。同記事は同社のSLC NANDをNOR型の代替として提案する立場で書かれており、比較部分は同社の主張です。また記事本文には「2018年2月現在」「2018年3月現在」という時点の記載があります