SRAMとは
SRAMとは、電源が入っているあいだ、書き直さなくても内容を保ち続ける半導体メモリです。 JEITAの半導体用語集は、記憶保持動作(リフレッシュ動作)が不要な随時書き込み読み出しメモリとし、メモリセルがフリップフロップ回路で構成されていると記しています。
DRAMの記事で見たとおり、DRAMは電荷をためて情報を保ちます。ためた電荷は自然に漏れるので、定期的に読み直して同じ値を書き込み直す必要があります。これがリフレッシュです。
東京エレクトロンの常設展は、この違いを並べて書いています。DRAMは記憶データをコンデンサの電荷として蓄えているため、一定時間が経過すると自然放電によってデータが消えてしまうとしています。
対してSRAMは記憶部にフリップフロップ回路を用いており、リフレッシュが不要だとしています。記憶部の回路が複雑なため高価ですが、DRAMより動作は高速だとも述べています。
同ページは、フリップフロップ回路そのものにも注を付け、「0」と「1」の値によって1ビットの情報を表現し、それを保持することができる電気回路だと記しています。
産業技術総合研究所のプレスリリースは、その構造をもう一段細かく記しています。SRAMセルの中で(0,1)の情報を保持する回路要素は、インバータ(論理信号を反転する回路)2つを環状に組んだ構造を持ち、CMOS式の場合は合計4つのトランジスタで構成されるとしています。
信号を反転する回路2つを、輪にしてつなぎます。一方の出力がもう一方の入力になるので、いったん決まった0と1の組み合わせを互いに維持します。だから、外から書き直さなくても状態が保たれます。
名前の由来は、DRAMのほうにあります
Section titled “名前の由来は、DRAMのほうにあります”「Static」という語は、なぜ付いているのでしょうか。電子情報通信学会の公開知識ベースが答えを書いています。
記憶保持のためにリフレッシュ動作が必要なRAMであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)が登場したことにより、区別するためStaticという修飾詞が加えられたものだとしています。
つまり、先にRAMがあり、後からDRAMが出てきたので区別のために名前が付いた、という順序です。同知識ベースは、SRAMをRAMの基本形だとも書いています。
SRAMと呼ぶ条件は、リフレッシュ動作の要否です
Section titled “SRAMと呼ぶ条件は、リフレッシュ動作の要否です”ここは、多くの入門記事が省いてしまう点です。
同知識ベースは、記憶保持のために内部回路の動作が不要な揮発性RAMを、SRAM(Static Random Access Memory)と呼べるとしています。
フリップフロップについては、一般に記憶を保持する手段として使用するもので、RAMの基本形だとしています。
そのうえで、この条件から考えれば、必ずしもフリップフロップ動作しなくても、トランジスタと受動素子で構成された回路的手段で記憶するデバイスであって、リフレッシュ動作が不要ならばSRAMと考えられるとしています。
SRAMと呼べる条件の核は、リフレッシュ動作が不要である点にあります。 フリップフロップは、その条件を満たす代表的な実装です。
この区別が実物の製品名で問われる例があります。JEITAの用語集は、SRAMの見出し語の中で、メモリセルがDRAM構造でリフレッシュ用の補助回路を内蔵した疑似SRAM(Pseudo SRAM)があると記しています。
使う側は、リフレッシュの制御を内部の補助回路に任せたまま読み書きします。しかし同知識ベースは、擬似SRAMをリフレッシュが必要なRAMとし、SRAMと呼べるのはリフレッシュ動作が不要なものに限るとしています。
名前にSRAMと付いていても、内部でリフレッシュを行う製品は、擬似SRAMという呼び方のままです。
速いのに、使い所が限られます
Section titled “速いのに、使い所が限られます”ここが階層の話の入口にあたります。SRAMが速いのに、主記憶がDRAMなのはなぜでしょうか。
答えは面積です。電子情報通信学会の同知識ベースは、CMOS型のメモリセルについて、バルクトランジスタ数がPチャネル2個・Nチャネル4個の合計6個であり、2種類のトランジスタの分離も必要なため、メモリセルサイズが大きくコストが高くなるという問題を持つとしています。
産総研の同リリースも、1ビットの記憶を保持する最小構成要素であるセルが、標準的なCMOS式の場合は6つのトランジスタで構成されるとしています。
JEITAが記すDRAMのセル構成と比べると差が分かります。DRAMのメモリセルはトランジスタ1個とキャパシタ(コンデンサ)1個で構成され、情報の記憶はキャパシタに蓄えた電荷の有無によって行うとしています。
1ビットあたり6個か、1個と1個か ── この差が、そのまま容量と単価の差になります。
ルネサス エレクトロニクスのエンジニアスクールは、実務上の帰結を書いています。シングルチップマイコンではSRAMが内蔵RAMの用途でよく用いられ、高速アクセスが可能ですが、内部構造が複雑であるために高密度な実装が困難で、大容量メモリには不向きだとしています。
そして、DRAMが周辺回路の側に回る理由も添えています。DRAMは集積化しやすい構造のためSRAMに比べて大容量ですが、高速な論理回路とDRAMを一つのウェハー上に形成するのが難しいため、一般的なシングルチップマイコンではDRAMをチップの外部に搭載し、周辺回路としてつなぐことがほとんどだとしています。
マイコンの中がSRAMなのは、速さと、ロジックと同じウェーハ上に一緒に作れることの2つが理由です。 高速な論理回路とDRAMを1枚のウェーハに同居させる難しさが、この選択の背景にあります。
チップの中での存在感
Section titled “チップの中での存在感”SRAMは外付けの部品というより、ロジックチップの中に入っているものとして考えるほうが現在の姿に近くなっています。
電子情報通信学会の同知識ベースは、単体SRAMがマイコンなどから見れば外付けSRAMにあたるとしたうえで、最近は外付けSRAMを用いず内蔵SRAMのみで構成する場合が増えているため、SRAMといえば専ら内蔵SRAMを指すことが多いと述べています。
その内蔵SRAMは、チップの中でどれだけの場所を取っているのでしょうか。産総研の同リリースは、システムLSIやマイクロプロセッサの50%以上の面積を占めるSRAMでは、最小寸法のトランジスタを多用するための影響を受けやすいと書いています。
チップ面積の半分以上という規模です。同知識ベースはセルサイズについても、平均的なSRAMのメモリセルサイズがデザインルールをFとすると120 F2程度だとしています。
この2つの数値は、いずれも2008年から2010年の資料にあるもので、産総研の値は22nm世代を論じた文脈での記述です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”SRAMとは何ですか?
JEITAの半導体用語集は、スタテックRAMとし、記憶保持動作(リフレッシュ動作)が不要な随時書き込み読み出しメモリで、メモリセルがフリップフロップ回路で構成されており、一度書き込まれた情報は電源を切るまで残ると記しています。
電源を切っても残るのですか?
消えます。JEITAの同用語集は揮発性メモリを、電源を切ると記憶しているデータが消えてしまうメモリとし、SRAM、DRAMが代表的であるとしています。不要になるのはリフレッシュ動作だけで、電源はSRAMでも要ります。
SRAMと呼ぶ条件はフリップフロップを使うことですか?
条件はリフレッシュ動作の要否です。電子情報通信学会の公開知識ベースは、記憶保持のために内部回路の動作が不要な揮発性RAMをSRAMと呼べるとしたうえで、フリップフロップ動作以外の回路であっても、リフレッシュ動作が不要ならばSRAMと考えられると述べています。
なぜStaticと付くのですか?
同知識ベースは、記憶保持のためにリフレッシュ動作が必要なRAMであるDRAMが登場したことにより、区別するためStaticという修飾詞が加えられたものであると記しています。
大容量のメモリでDRAMが選ばれるのはなぜですか?
SRAMは高密度な実装が困難なためです。ルネサス エレクトロニクスの解説は、SRAMが高速アクセス可能だが内部構造が複雑であるために高密度な実装が困難で、大容量メモリには不向きだとしています。
1ビットに何個のトランジスタが要りますか?
同知識ベースは、CMOS型メモリセルのバルクトランジスタ数がPチャネル2個、Nチャネル4個で合計6であり、2種類のトランジスタの分離も必要ということでメモリセルサイズが大きくコストが高くなるという問題を持っていると述べています。
擬似SRAMもSRAMですか?
同知識ベースは、擬似SRAMをリフレッシュが必要なRAMに分類し、SRAMと呼べるのはリフレッシュ動作が不要なものに限るとしています。JEITAも、メモリセルがDRAM構造でリフレッシュ用の補助回路を内蔵した疑似SRAMがあると記しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- JEITA(電子情報技術産業協会)半導体部会「半導体用語集」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── SRAMの見出し語による記述(スタテックRAMであること、記憶保持動作(リフレッシュ動作)が不要な随時書き込み読み出しメモリであること、メモリセルがフリップフロップ回路で構成されており一度書き込まれた情報は電源を切るまで残ること、動作タイミングが容易で高速性能も得られやすいため高速を要求するキャッシュメモリや小型電子機器に使用されること、メモリセルがDRAM構造でリフレッシュ用の補助回路を内蔵した疑似SRAMがあること)。あわせて揮発性メモリの見出し語による記述(電源を切ると記憶しているデータが消えてしまうメモリであり、SRAM、DRAMが代表的であること)、DRAMの見出し語による記述(メモリセルがトランジスタ1個とキャパシタ(コンデンサ)1個で構成され、情報の記憶をキャパシタに蓄えた電荷の有無によって行うこと)、キャッシュメモリの見出し語による記述(容量は小さいが動作速度が速いのが特徴であること)も、それぞれ別の見出し語から採っています。なお「スタテックRAM」は原文ママの表記です
- 電子情報通信学会『知識の森』10群4編2章「揮発性高速RAM」公開PDF、2-2節「SRAM」、2008年9月受領・ver.1/2010.4.14(2026年8月30日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── 記憶保持のために内部回路の動作が不要な揮発性RAMをSRAMと呼べること、一般に記憶を保持する手段としてフリップフロップを使用しRAMの基本形であること、DRAMの登場により区別するためStaticという修飾詞が加えられたこと、必ずしもフリップフロップ動作しなくてもリフレッシュ動作が不要ならばSRAMと考えられること、擬似SRAMがリフレッシュを必要とするRAMであるためSRAMと呼べるのはリフレッシュ動作が不要なものに限ること、最近は内蔵SRAMのみで構成する場合が増えているためSRAMといえば専ら内蔵SRAMを指すことが多いこと、CMOS型メモリセルのバルクトランジスタ数がPチャネル2・Nチャネル4で合計6でありメモリセルサイズが大きくコストが高くなるという問題を持つこと、平均的なSRAMのメモリセルサイズがデザインルールをFとすると120 F2程度であること
- 産業技術総合研究所「フィン型トランジスタのばらつき要因を解決した新型SRAM回路の試作に成功」プレスリリース、2008年12月18日(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── SRAMがDRAMでは必須のリフレッシュと呼ばれる記憶内容の書き直し操作が不要で高速動作が可能であること、1ビットの記憶を保持するセルが現在標準的なCMOS式の場合6つのトランジスタで構成され電源を切ると情報が失われること、情報を保持する回路要素がインバータ2つを環状に組んだ構造を持ちCMOS式の場合合計4つのトランジスタで構成されること、システムLSIやマイクロプロセッサの50%以上の面積を占めるSRAMでは最小寸法のトランジスタを多用するための影響を受けやすいこと。いずれも2008年時点、22nm世代を論じる文脈での記述です
- 東京エレクトロン nanotec museum 常設展「メモリとは?」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── RAMがDRAMとSRAMに大別されること、DRAMが記憶データをコンデンサの電荷として蓄えているため一定時間が経過すると自然放電によってデータが消えてしまうこと、SRAMが記憶部にフリップフロップ回路を用いておりリフレッシュが不要で、記憶部の回路が複雑なため高価だがDRAMより動作は高速であること、フリップフロップ回路が「0」と「1」の値によって1ビットの情報を表現しそれを保持することができる回路であること
- ルネサス エレクトロニクス エンジニアスクール「マイコンの基本構成、動作」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── データの読み書きは自由に行えるが電源を切ると内容が消えるメモリをRAMと呼ぶこと、シングルチップマイコンではSRAMが内蔵RAMの用途でよく用いられ高速アクセス可能だが内部構造が複雑であるために高密度な実装が困難で大容量メモリには不向きであること、DRAMは集積化しやすい構造であるためSRAMに比べて大容量だが高速な論理回路とDRAMを一つのウェハー上に形成するのが難しいため一般的なシングルチップマイコンではDRAMをチップの外部に搭載し周辺回路としてつなぐことがほとんどであること