ランダム欠陥とは
ランダム欠陥とは、設計や場所と結び付かず、ウェーハ上のどこにでも確率で入り込む欠陥です。 パーティクルの付着が代表で、同じ場所や同じ形のパターンに繰り返し出る系統欠陥と対になります。
現場で詰まるのは、犯人が同時に何人もいるところです。1件ずつ原因を潰す進め方には工程の数だけ時間がかかり、数そのものを予算として装置へ配る運用に切り替える必要が出ます。減らすには清浄度への費用がかかり、検査の感度を上げれば拾う手間が増えます。どこまで払うのかの見当を、公開資料の数値からたどります。
ランダム欠陥の発生源は多岐にわたります。JEITAの平成21年度報告は、歩留低下を引き起こす汚染や機構として、環境中もしくは装置内で発生した気中分子状汚染、無機および有機のパーティクル、プロセス中で発生するパーティクル、欠陥、重ね合わせ不良、ストレスなどを挙げています。SCREENセミコンダクターソリューションズの公開解説も、洗浄で取り除く汚れとして、工場の外気などから付着するゴミ、金属汚染、有機汚染、油脂、自然酸化膜を挙げ、ゴミのサイズを最大で数μm、最小では0.1μm以下としています。同社解説での区分です。
これだけ発生源が並ぶと、1つずつ因果をたどる進め方には工程の数だけ時間がかかります。そこで現場は、発生源の区別をいったん保留して、単位面積あたり何個という1つの数字にまとめます。これが欠陥密度で、SEAJの用語集は1cm²あたりの欠陥数で表記することが多いとしています。
数にまとめたあとは、面積との掛け算が結果を左右します。日本信頼性学会誌に載った公開解説は、歩留まりの式について、ダイ面積が大きいほど、欠陥密度が大きいほど、クラスター因子が大きいほど歩留まりは低くなるとしています。同解説はさらに、不良ダイがランダムに一様に散るほどクラスター因子が大きくなり、最後はポアソン分布に行き着くとも述べています。一様に散るという性質そのものが、面積に対する落ち方の急さを決めています。
面積が増えるほど、確率は一方向に積み上がります
Section titled “面積が増えるほど、確率は一方向に積み上がります”同じ公開解説は、512個のダイのうち良品が440個で歩留まり85.93%になるウェーハについて、隣り合うダイを統合していったときの歩留まりを計算しています。不良が一様に散った分布では、2ダイぶんで75.00%、4ダイぶんで50.78%、8ダイぶんで31.25%、16ダイぶんで12.50%です。同じ16ダイぶんでも、局所に集まった分布は31.25%ですから、面積を増やしたときの落ち方の差が数字で出ます。ランダムに散っている状態ほど、大きなチップを作る製品には厳しく響きます。
この落ち方の差は、回路の種類ごとの欠陥密度にも出ます。同解説が130nm世代の実績値に当てた近似曲線の欠陥密度は、アナログ回路が0.2個/cm²、ロジック回路が0.3個/cm²、ROMが0.8個/cm²、SRAMが3.0個/cm²、DRAMが15.0個/cm²です。同解説での近似値です。メモリ回路の歩留まりが極端に低いため、これらの面積が大きい場合は冗長救済が用いられるとしています。適正な冗長回路が用意されれば、歩留まりが10%以下でも冗長救済によって90%以上の歩留まりを得ることができるとも述べています。
出荷の側にも尾を引きます。同解説は検査の品質を欠陥レベルという指標で表し、同じ故障検出率でも歩留まりが高いほど検査品質は高くなるとしています。ランダム欠陥を減らす仕事は、歩留まりを上げる仕事であると同時に、出荷後の品質を上げる仕事でもあります。
何を測り、どう動かすのですか
Section titled “何を測り、どう動かすのですか”管理の単位は、装置1台ぶんの許容枠です。JEITAの平成20年度報告は、2008年10月のJEITA会合で協議したサーベイ用の記入案を載せています。塗布現像やリソグラフィのスキャナ、熱処理炉やRTPといった装置タイプごとに、歩留まりへの影響度を高・中・低で選び、ウェーハ1パスあたりの付着数、いわゆるPWPの管理レベルを、1000未満、1000〜1999、2000以上という区分で記入する形です。影響度と枠はどちらも3段階で、記入欄としては横に並ぶ別々の列になっています。同報告での案です。
枠を守るための操作は、工程の側と環境の側の2つに並びます。工程の側では洗浄が中心で、SCREENの解説は、薬液の槽と純水の槽を並べた多槽型のウェットステーションと、特に高い洗浄度が求められる成膜工程直前の洗浄を分けて挙げ、後者にはウェーハが大気に触れずに済むワンバス型が使われるとしています。環境の側では、JEITAの平成21年度報告が超純水中の金属不純物の管理値を挙げ、Ag・Au・Ca・Cu・Fe・Na・Ni・PtをCritical metalsとして1ppt未満、そのほかの金属を10ppt未満と定めたとしています。ITRS2009年版への日本側提案が反映された値です。
粒子が小さくなると、働く力そのものが入れ替わります。同報告は、50nm以下の粒子では重力や慣性力よりもブラウン拡散や静電気や熱泳動による移動が支配的になり、粒子が小さくなるほどミニエンバイロメントの清浄度維持は困難になるとしています。数を減らす道具立ても、サイズによって組み替える必要が出ます。
感度を上げるほど、選り分ける手間が増えます
Section titled “感度を上げるほど、選り分ける手間が増えます”検査の感度を上げる判断には、裏側の負担が付いて回ります。SEAJの用語集は、疑似欠陥という語に2つの意味を挙げています。1つは検査装置が疑似的に検出したもの、もう1つは実在してもデバイスに無害なため無視してよいものです。感度を上げるほど、この2種が検出結果に混ざり込みます。JEITAの平成20年度報告も、システム欠陥の抽出について、疑似欠陥をも含む大量の検出欠陥の中からいかに抽出し分類するかという問題があるとしています。
だから感度は、場所ごとに向きを変えて設定されています。同報告のDDC改定の内容は、電子ビーム検査装置でのVC欠陥検出感度を厳しく、エッジ検査の感度を緩く、SEMレビューでの座標精度と再検出感度を厳しく見直したというものです。場所ごとに向きが逆になっています。同報告での改定要旨です。
選り分けを速くする道具も用意されています。SEAJの用語集は自動欠陥分類(ADC)を、欠陥画像をあらかじめ定めたルールで発生原因ごとにクラス分けする仕組みとし、分類された情報は歩留り管理システム(YMS)や工場ホストに上げて、欠陥の発生原因追求や解析に用いられるとしています。ランダム欠陥の管理は、数を減らす投資と、増えた検出結果を選り分ける投資の両方で回ります。数がある水準で残る前提に立つ逃げ道が冗長救済で、面積と回路を足すかわりに、欠陥が入ることを前提にした設計へ切り替える取り引きになります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ランダム欠陥とは何ですか?
設計や場所と結び付かず、ウェーハ上のどこにでも確率で入り込む欠陥です。JEITAの平成21年度報告は、歩留低下を引き起こす汚染や機構として、環境中もしくは装置内で発生した気中分子状汚染、無機および有機のパーティクル、プロセス中で発生するパーティクル、欠陥、重ね合わせ不良、ストレスなどを挙げています。
どのくらいの大きさのゴミが問題になりますか?
SCREENセミコンダクターソリューションズの公開解説は、工場の外気などから付着するゴミのサイズを、最大で数μm、最小では0.1μm以下とし、この小さなゴミを半導体業界では一般にパーティクルと呼ぶとしています。同解説は取り除く汚れとして、ほかに金属汚染、有機汚染、油脂、自然酸化膜も挙げています。
ランダム欠陥は歩留まりへどう影響しますか?
ダイ面積と欠陥密度の積で影響します。日本信頼性学会誌の公開解説は、歩留まりの式について、ダイ面積が大きいほど、欠陥密度が大きいほど、クラスター因子が大きいほど歩留まりは低くなるとしています。同解説の計算例では、一様に散った不良分布のウェーハで、1ダイぶんの85.93%が16ダイぶんでは12.50%まで下がります。
回路の種類で欠陥密度は違いますか?
同解説が130nm世代の実績値に当てた近似曲線では、アナログ回路が0.2個/cm²、ロジック回路が0.3個/cm²、ROMが0.8個/cm²、SRAMが3.0個/cm²、DRAMが15.0個/cm²です。同解説での近似値であり、クラスター因子を2として引いた曲線です。
現場では何を管理するのですか?
装置1台ごとの許容枠です。JEITAの平成20年度報告が示したサーベイ用の記入案は、装置タイプごとに歩留まりへの影響度を高・中・低で選び、ウェーハ1パスあたりの付着数(PWP)の管理レベルを1000未満、1000〜1999、2000以上という区分で記入する形です。2008年10月のJEITA会合で協議した案です。
検査の感度は上げるほど良いのですか?
場所ごとに向きが逆になります。JEITAの平成20年度報告のDDC改定は、電子ビーム検査装置でのVC欠陥検出感度を厳しく、エッジ検査の感度を緩く、SEMレビューでの座標精度と再検出感度を厳しく見直したとしています。SEAJの用語集は疑似欠陥という語に2つの意味を挙げ、装置が疑似的に検出したものと、実在してもデバイスに無害なため無視してよいものを区別しています。
ランダム欠陥へ払う費用に逃げ道はありますか?
冗長救済があります。日本信頼性学会誌の公開解説は、適正な冗長回路が用意されれば、歩留まりが10%以下でも冗長救済によって90%以上の歩留まりを得ることができるとしています。面積と回路を足すかわりに、欠陥が入ることを前提にする設計です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 系統欠陥とは ── 形を読み解いて原因を1つに絞る側で、こちらは数を予算として配る側です
- 歩留まり(イールド)とは ── ランダムと系統の積として分解される、上位の指標です
- パーティクルとは ── ランダム欠陥の代表的な発生源そのものです
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 日本信頼性学会誌「大規模集積回路半導体の歩留まりと検査起因品質に関する考察」Vol.34 No.1(2012)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ダイ面積と欠陥密度とクラスター因子が歩留まりへ向かう向き、一様に散るほどポアソン分布へ近づくこと、130nm世代の実績に当てた0.2から15.0個/cm²という欠陥密度、85.93%から12.50%までの落ち方、冗長救済で10%以下から90%以上を得られること、欠陥レベルと歩留まりの関係
- JEITA「半導体技術ロードマップ専門委員会 平成20年度報告 第13章 WG11 歩留向上」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 装置タイプごとの歩留まり影響度とPWP管理レベルの区分、DDC改定での感度見直しの向き、疑似欠陥を含む大量の検出欠陥からの抽出という課題
- JEITA「半導体技術ロードマップ専門委員会 平成21年度報告 第13章 WG11 歩留向上」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 歩留低下を引き起こす汚染と機構の一覧、超純水中のCritical metalsと金属の管理値、50nm以下の粒子で支配的になる力
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「洗浄工程」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ゴミのサイズが最大で数μmから最小で0.1μm以下であること、パーティクルという呼称、金属汚染と有機汚染と自然酸化膜という区分、ワンバス型が使われる場面
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 欠陥密度を1cm²あたりの欠陥数で表記すること、疑似欠陥という語が持つ2つの意味
- SEAJ「半導体製造装置用語集(計測)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 自動欠陥分類(ADC)の中身と分類情報の行き先、歩留まり管理システム(YMS)の役割