ボイドとは
ボイドとは、はんだや樹脂の接合部の中に取り残された空隙です。 接合部の表面が整っていても、中に空気の粒が居座っている場合があります。
弘輝は、低ボイドの技術ページで、ボイドをはんだ接合部内の空隙とし、発生要因として気泡、はんだ不濡れ、気泡排出不良の3つを挙げています。同社はボイドを6つに分けており、はんだ組織中のボイド、はんだ不濡れによるボイド、はんだ接合界面近傍のボイド、マイクロビア部のボイド、ピンホール(ブローホール)、カーケンダルボイドが並びます。
困る理由は面積です。同社は、ボイドがはんだ接合部の断面積を減らすため、熱伝導性能と電気伝導性能の低下を引き起こすとしています。接合の強さと働きも同時に落ち、接合の信頼性へ響く懸念があるため、発生を可能な限り抑えた低ボイド実装が望ましい、というのが同社の立場です。この段落の記述は、同社の技術ページによります。
現場の感覚へ置き換えると、話は単純です。チップが生んだ熱は、はんだの金属を通って基板へ流れます。電流も同じ道を通ります。空隙のところでは、その道が途切れます。外観の大きさが同じ接合部でも、中に空隙が広がっているほど、熱と電気が通る実質の断面は細くなります。ダイボンディングやアンダーフィルのように、面で受け持つ部位ほど、この差が響きます。
積むほど、同じ接合部が何度も温まります
Section titled “積むほど、同じ接合部が何度も温まります”弘輝は、真空リフローの技術ページで、モジュールメーカーが部品の内部実装を行う場合を挙げています。そのモジュール部品は、客先で再びリフローへ投入されます。同社によれば、内部実装の段階で生まれた空隙が後続の加熱を受けて大きくなり、接合の信頼性へ響く懸念があるため、低ボイドが求められています。
ここが3D積層の急所です。積むという仕事は、加熱の回数を増やす仕事でもあります。1段目を接合し、2段目を積み、できたパッケージを基板へ実装します。いちばん下の接合部は、そのたびに温度を受けます。1回目に取り残された小さな空隙が、2回目、3回目の加熱で育ちます。
同社はまた、放熱特性を持たせたパッケージ部品の採用が進む中で、はんだ接合部のボイドが放熱特性へ影響するとの懸念から低ボイドが要求されているとも述べています。以下の記述も含め、この節は同社の真空リフローの技術ページによります。
空隙は、音の返り方から分かります
Section titled “空隙は、音の返り方から分かります”日立パワーソリューションズは、超音波映像装置の技術ページで、超音波検査の原理を述べています。水などの液体を媒体にして固体へ超音波を伝え、内部で反射源となるボイド、剥離、クラックからの反射信号(エコー)を計測します。音波は伝わる途中で徐々に減衰しますが、音響インピーダンスが急に切り替わるところで一部が反射して戻ります。
空隙では、この反射がもっと極端になります。同社は、音波が物質の連続している部分をゆっくり減衰しながら伝わる一方、空隙のところでは面で大部分が反射するとしています。そのため薄い空隙にもよく反応し、同社の実績としては厚さ5nmの隙間まで見分けた例が挙がっています。
X線と比べると、担当が別になります。同社は、超音波検査が音波の伝播経路の性質や距離の差を測るため、経路上の材質や密度の差と内部の連続性が分かるとしています。X線検査は透過経路でのX線の吸収量の差を測るため、部品形状の観察が得意である一方、部品どうしが接していても多少離れていても同じ像になるとしています。同社の比較表では、剥離の検出は超音波が◎、X線が×、X線CTが△であり、厚みのあるボイドは超音波が◎、X線が○、X線CTが◎です。
積層の現場に近い事例も挙がっています。チップ2段構造のスタックドICパッケージでは、上下のチップに挟まれたダイアタッチフィルムの剥離を映像にしています。CSPについては、アンダーフィルの剥離とボイドの検査に有効であり、バンプ間と周辺部までボイドの有無を観察できるとしています。貼り合わせウェーハでは、条件によって10μm径の未接合部の検出も可能としています。この節の記述と数値は、同社が公開する技術ページと事例ページによります。
周波数を上げるほど、届く深さは上の層までになります
Section titled “周波数を上げるほど、届く深さは上の層までになります”同じ技術ページは、この取引も書いています。同社は、超音波が物質内を伝わる透過力と分解能が、周波数に対して相反する関係にあるとしています。周波数を下げると深いところまで音が届いて反射も返ってきますが、細かいものの見分けは粗くなります。周波数を上げると細かいものが分かる代わりに、音の届く深さが手前で止まります。検査対象に合わせた周波数の選定が要る、というのが同社の結論です。
ビーム径でも同じ構図になります。同社は、ビーム径70μmでは解像度を測るためのパターンがぼやけ、近接したパターンの分離も困難になる一方、ビーム径8μmでは理想的な条件下で10μmピッチのパターンを独立したパターンとして認識できる場合があるとしています。この段落の数値も、同社の技術ページによります。
積層で困るのは、この2つが同時に影響するためです。段を増やすほど、いちばん下の接合部は表面から遠いところへ移ります。深さを取れば微小な空隙の判別が粗くなり、細かさを取れば届く範囲が上の層までになります。TSVやハイブリッドボンディングで段数を増やす計画は、検査の届く範囲の計画とセットで進むことになります。
減らす手には、代償が付きます
Section titled “減らす手には、代償が付きます”工程の側にも手はあります。弘輝は、大気雰囲気とN2雰囲気が主流だったリフロー環境について、低ボイドの要求が強まるにつれて真空雰囲気を選ぶ例が増えているとしています。千住金属工業は、リフロー炉の製品ページで、真空N2リフロー炉SVR-625GT-Cの特長に、独自の真空制御によるボイドの低減と飛散の抑制、そして最高380℃までの温度設定によるパワー半導体向け高温プロファイルへの適応を挙げています。同社は、SVR-1040GT-PCを通常のリフロー炉としても使えるハイブリッド機とし、真空ゾーンの加熱能力の向上と400mm幅の大型基板への対応を挙げています。この段落の仕様は、同社が公表する製品ページによります。
代償はすぐ隣にあります。弘輝は、真空リフローでははんだが溶けている状態で真空減圧が行われるため、フラックス飛散やはんだボールが発生する場合があるとしています。飛散やはんだボールが多く出た場合は、リフローのあとに基板を洗う工程が要ると同社は述べています。同社は、真空リフロー用にフラックスを調整したソルダーペーストを用いることで、飛散とはんだボールの発生を抑制できるとしています。空隙を抜く力を上げると、こんどは洗う工程が増える、という関係です。
材料の側にも同じ形が出ます。同社はギ酸還元リフローの技術ページで、パワーデバイスの実装ではボイドを極力抑えた接合部が要求されるとしています。従来ははんだ箔を用いたギ酸還元リフローで接合してきましたが、材料のコストが高いこと、柔軟なサイズ変更が難しいこと、部品を据えるための治具が要ることが課題でした。ソルダーペーストへ置き換えると材料コストは約50%削減できる、というのが同社の値です。一方、ロジンのような樹脂を含む従来のソルダーペーストは、加熱の途中で軟らかくなって熱ダレを起こし、はんだ粉どうしの隙間が詰まるため、還元ガスであるギ酸ガスの浸透が妨げられます。同社は、予熱時にはんだ粉どうしを結合させて隙間を作る特許技術(予熱揮発法)でこれへ対応したとしています。この段落の数値と条件は、同社の技術ページによります。
まとめると、ボイドへの手は2種類です。気泡が生まれる元を材料と濡れ性で減らす手と、生まれた気泡を減圧や還元ガスで抜く手です。どちらを強めても、洗浄、材料コスト、装置の温度域といった別の負担が同時に増えます。ボイド率の目標値は、この負担と釣り合うところで決まります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ボイドとは何ですか?
はんだや樹脂の接合部の中に取り残された空隙です。弘輝は、はんだ接合部内の空隙をボイドとし、発生要因として気泡、はんだ不濡れ、気泡排出不良の3つを挙げています。
ボイドがあると何が起きますか?
熱と電気の通り道が細くなります。同社は、ボイドがはんだ接合部の断面積を減らすため、熱伝導性能と電気伝導性能の低下を引き起こすとしています。加えて、はんだ接合強度と機能を低下させ、接合信頼性へ影響する懸念があるとしています。
ボイドには種類がありますか?
同社は6つを挙げています。はんだ組織中のボイド、はんだ不濡れによるボイド、はんだ接合界面近傍のボイド、マイクロビア部のボイド、ピンホール(ブローホール)、カーケンダルボイドです。
なぜ積層でボイドの影響が大きくなるのですか?
同じ接合部が何度も温まるためです。弘輝は、モジュール部品の内部実装でできた空隙が客先での再加熱を受けて大きくなり、接合の信頼性へ響く懸念があるため、低ボイドが求められているとしています。
ボイドはどうやって見つけるのですか?
超音波映像装置が使われます。日立パワーソリューションズは、水などの液体を媒体にして固体へ超音波を伝え、ボイド、剥離、クラックからの反射信号を計測するとしています。音波は空隙のところで面の大部分が反射するため、厚さ5nmの隙間も明確に検出できた例があるとしています。
X線検査との違いは何ですか?
測っている量が異なります。同社は、X線検査が透過経路でのX線の吸収量の差を測るため部品形状の観察が得意である一方、部品どうしが接していても多少離れていても同じ像になるとしています。同社の比較表では、剥離の検出は超音波が◎、X線が×、X線CTが△です。
ボイドを減らす代償は何ですか?
洗浄と材料の手間です。弘輝は、真空リフローではんだが溶けた状態で減圧するとフラックス飛散やはんだボールが発生する場合があり、多い場合はリフロー後に基板洗浄を行う必要性が出てくるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 弘輝「低ボイド」技術ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ボイドの意味、6種類、3つの発生要因、断面積の減少による熱と電気の性能低下、接合強度への影響
- 弘輝「真空リフロー」技術ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 内部実装で生じたボイドが再度のリフロー加熱で成長する懸念、放熱部品での要求、真空減圧に伴うフラックス飛散とはんだボール、洗浄の必要性
- 弘輝「ギ酸還元リフロー」技術ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── パワーデバイス実装でのボイド要求、はんだ箔の課題、材料コスト約50%削減、熱ダレによるギ酸ガス浸透の阻害と予熱揮発法
- 千住金属工業「リフロー炉」製品ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 真空N2リフロー炉SVR-625GT-Cのボイド低減と飛散抑制、最高380℃、SVR-1040GT-PCの真空ゾーン加熱能力と400mm幅対応
- 日立パワーソリューションズ「超音波の基礎」技術ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 超音波検査の原理、周波数に対する透過力と分解能の相反、空隙での反射、厚さ5nmの隙間の検出例、ビーム径70μmと8μmの差、X線との比較表
- 日立パワーソリューションズ「超音波検査の事例」技術ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── スタックドICパッケージのダイアタッチフィルム剥離、CSPのアンダーフィル内ボイド、貼り合わせウェーハでの10μm径未接合部