DISCO DFL7162/7363/7563、後工程ダイシングはどこでレーザへ切り替わるか
ダイシング工程で装置選定を難しくするのは、「レーザで切れるか」より手前にある失敗モードの違いです。Low-k膜が剥がれる、薄いSiやMEMSを水や機械負荷から遠ざけたい、直線ストリートに加えて曲線や保護材の選択除去まで工程に含めたい。後工程のレーザソーは、この失敗モードの違いで用途を分けます。
レーザソーとは、ダイヤモンドブレードで切る代わりに、レーザ光でウェーハのストリートを溝加工(グルービング)または切断(フルカット)する、あるいはウェーハ内部に改質層を作ってテープエキスパンドで個片化するダイシング装置です。DISCOの2025年12月15日公式発表は、300mm対応のレーザソーとしてDFL7162、DFL7363、DFL7563の3機種を開発したという内容です。発表本文だけを製品紹介として分類すると、3つの型番と販売開始予定が並ぶだけで完了します。しかし、機種ごとの方式と機能を分けると、7162はLow-k/多材料の直線加工、7363は乾式個片化と装置内検査、7563は自由形状とマスクレス応用へ伸びる用途として分類可能です。この記事を読み終えた時点で、Low-k剥離、乾式個片化、自由形状加工という3つの失敗モードから、どの機種を候補に入れるかを分けられます。
この記事では、DISCOの公式リリース、レーザ加工解説、Low-kグルービング、レーザフルカット、Stealth Dicing、既存レーザソー製品ページを根拠に、3機種を後工程の比較軸へ変換します。公式出典確認日は2026年6月16日です。
三機種は方式ではなく失敗モードで異なる
Section titled “三機種は方式ではなく失敗モードで異なる”公式発表では、3機種はいずれも300mm対応ですが、用途は機種ごとに別です。DFL7162はアブレーション方式で、2ロードポート、グルービング/フルカット向けのレーザヘッド・光学系、ウェーハ搬送とテープフレーム搬送の両対応が示されています。DFL7363はStealth Dicing対応で、2チャックテーブル、高出力エンジン、加工と測定・検査の並行実施、装置内加工品質検査を主要機能として挙げています。DFL7563はアブレーション方式のまま、スキャニング光学系と駆動ステージで複雑形状、自由曲線、保護材の選択的除去まで対象にします。
発表時点の販売開始予定も、機種の成熟度や目的の違いを示します。DFL7563は2026年1月ごろ、DFL7363は2026年度下期、DFL7162は2027年4月ごろとされています。この記事では、これらをDISCOが発表時点で示した製品化ロードマップとして分類し、実販売や出荷実績は対象外とします。
| 機種 | 方式 | 避けたい失敗モード | 公開情報で読み取れる焦点 |
|---|---|---|---|
| DFL7162 | アブレーション | Low-k膜剥離、チッピング、多材料の切断難度 | グルービング/フルカット、2ロードポート、ウェーハ/フレーム搬送 |
| DFL7363 | Stealth Dicing | 水・表面ダメージ・加工くずを嫌う個片化 | 2チャックテーブル、加工と測定/検査の並行化、装置内検査 |
| DFL7563 | アブレーション | 曲線・複雑形状の加工、保護材の選択除去 | スキャニング光学系、駆動ステージ、自由曲線、マスクレス応用 |
Low-k剥離、乾式個片化、自由形状加工では、前後工程へ持ち越すと不良になる損傷、汚染、位置ずれ、形状要求が異なります。同じ「レーザソー」でも、7162、7363、7563は切断原理の違いに加えて、この失敗モードの違いで分類します。
図2のとおり、アブレーション(7162、7563)はレーザでウェーハ表面側の材料を除去する方式で、Low-k配線層の溝加工から多材料のフルカットまで表面から加工が進む代わりに、加工くず(デブリ)が表面に付着します。Stealth Dicing(7363)はレーザでワーク内部に改質層を形成し、テープエキスパンドで割って個片化する方式で、表裏面に傷が付きにくく、加工くずの発生を抑え、水を使わずに加工します。この加工位置の違いが、Low-k剥離を先に抑える用途と、水と表面傷を避ける用途を分ける根拠になります。
DFL7162はLow-k剥離を先に抑える
Section titled “DFL7162はLow-k剥離を先に抑える”Low-k配線層を持つロジックデバイスでは、ストリートをブレードでそのまま切ると、機械的強度の低い膜が剥がれるリスクがあります。DISCOのLow-k Grooving公式ページは、Low-k膜を含む配線層をレーザグルービングで先に除去し、その後にブレードでダイシングする構成を示しています。ここでレーザは、ブレードが苦手な最表層の損傷を先に加工する役割を持ち、残りのSiの切断はブレードが受け持ちます。
DFL7162がこの用途で役割を持つ理由は、公式発表がグルービングとフルカットの両方、さまざまな素材へ対応した発振器・光学系、ウェーハ搬送とテープフレーム搬送の両方を挙げているためです。既存のDFL7161公式ページも、Low-kグルービング、ストリート上のTEG除去、Siや化合物半導体のフルカットを対象に含めています。7162は、既存の7161系が担ってきた低損傷・多材料の直線加工を、2ロードポートと内部レイアウト最適化で量産セル向けに引き継ぐ機種として読み取れます。
アブレーションでは、レーザで表面側を除去するため、デブリ付着も工程リスクになります。DISCOのレーザ加工解説は、アブレーション加工で加工くずが表面に付着すると不具合原因になり得ること、水溶性樹脂で付着を抑えることを示しています。HogoMax公式ページも、レーザ加工面へ水溶性保護膜を塗布して、粒子付着を抑える関連製品として公開されています。つまり7162の選定条件は、切る速度に加えて、Low-k剥離、デブリ付着、搬送、洗浄までを一つのダイシングセルとしてどう組むかにあり、洗浄や搬送をどの装置が受け持つかは工程別の装置と材料の工程区分で確かめられます。
DFL7363は乾式個片化と検査を同じセルへ集約する
Section titled “DFL7363は乾式個片化と検査を同じセルへ集約する”DFL7363は、Low-kグルービングよりも、薄いSiやMEMSのように水・表面傷・加工くずを嫌うワークに近い用途です。DISCOのStealth Dicing公式解説は、ワーク内部に改質層を形成し、テープエキスパンドで個片化する方式としてStealth Dicingを示しています。日本語のレーザ加工解説では、ワーク内部を加工するため表裏面に傷が付きにくく、加工くずの発生を抑え、水を使わずに加工するドライ加工で、MEMSなど負荷に弱い対象に適するとされています。
既存のDFL7362公式ページは、50µm以下の極薄Siを高い抗折強度を保ちながら高速に個片化できると示しています。さらに、ウェーハ厚測定やノンストップカーフチェックのような品質・生産性オプションも示されています。新しいDFL7363では、公式発表が従来機比約50%の生産性向上、2チャックテーブルによる加工と測定・検査の並行化、装置内での加工品質検査を挙げています。
この組み合わせは、Stealth Dicingの高速化に加えて、検査の場所を加工セルの中へ移します。レビューや測定を加工セルの外の後工程へ回すほど、薄いワークでは後戻りが難しくなります。7363は、乾式個片化、並行測定、装置内検査を同じ装置側へ集約することで、ダメージを後工程で発見する構成から、加工直後に工程データへ返す構成へ近づきます。検査項目や合否条件は公開情報に未掲載のため、この記事では装置内検査の中身を公式発表の語の範囲で書きます。次に確かめる先は、製品ページやカタログに掲載される検査機能の粒度です。
DFL7563は直線ダイシングから自由形状へ伸びる
Section titled “DFL7563は直線ダイシングから自由形状へ伸びる”DFL7563は、3機種の中で最も「ダイシング装置」という言葉の幅を広げます。公式発表は、スキャニング光学系と駆動ステージによる高速・高精度加工、複雑形状や自由曲線、保護材の選択的除去、マスクレスプロセスへの応用を挙げています。これは、直線ストリートを切る装置というより、後工程で選択除去や形状加工を担うレーザ微細加工セルに近い機能構成です。
既存のDFL7562公式ページは、固定光学系とスキャニング光学系を選べる多目的レーザソーとして、Low-k層のグルービング、Si/化合物半導体のフルカット、最大330µm幅のグルービング、テーパ形状やラウンド形状の加工を示しています。DFL7360LF公式ページも、LEAFプロセスに対応し、CADデータを取り込んだ自由形状加工、曲線、マスクレス加工、難加工材料への対応を公開しています。
ただし、7563とDFL7360LFやLEAFとの対応関係は公式発表に記載が無く、この記事では別機種として比較します。公開情報で読み取れるのは、DISCOが既存製品群でスキャニング光学系、自由形状、マスクレスという語を公開しており、7563の発表でも同じ方向の機能語が並ぶことです。したがって7563は、Low-k直線グルービングとは別に、複雑形状、保護材の選択的除去、マスクレス応用を比較する用途として分けるのが安全です。
ブレードは消えず、レーザが受け持つ領域が明確になる
Section titled “ブレードは消えず、レーザが受け持つ領域が明確になる”よくある誤解として、今回の発表は「レーザがブレードを置き換える話」と受け取られやすいが、実際にはDISCOの公式発表(英語版)は、ブレードダイシングが1970年代以降の主流であり、Low-k膜やMEMSなど加工が難しいデバイスに対してレーザダイシングが補完手法として増えてきた、と示しています。Low-kグルービングでも、レーザで配線層を先に除去し、残りをブレードで切る構成が示されています。
一方で、ブレード側の苦しい領域も公式ページから読み取れます。DISCOのLaser Full Cut Dicingページは、GaAsなどの化合物半導体では既存ダイヤモンドブレードの送り速度が遅くなりやすいこと、薄ウェーハほどブレードダイシングの難度が上がることを示しています。GaAs加工例ページも、GaAsはチッピングが出やすく、結晶方位の影響や送り速度の上限があることを示しています。
図3の4レーンのうち、ブレードが残るのはLow-k配線層を除去した後の切断だけで、薄いSi・MEMS、化合物半導体、直線ストリートの外の形状加工では、レーザが切断そのものを受け持ちます。Low-k、乾式個片化、自由形状加工の違いを装置選定へ移すと、「レーザかブレードか」より、「どの損傷をどの工程で先に切り離すか」が先に来ます。Low-k膜剥離を先に抑えるなら7162、乾式で内部改質から個片化し同じ装置内で検査まで受け持つなら7363、曲線加工や保護材の選択除去まで含めるなら7563が候補になります。
次に突き合わせるべき公開比較軸
Section titled “次に突き合わせるべき公開比較軸”DISCOの発表は3機種の存在を示しましたが、装置選定へ使うには今後の公開情報が必要です。7162では、グルービング用とフルカット用の発振器・光学系が製品ページでどう分類されるか。7363では、装置内検査がどの測定・観察機能として公開されるか。7563では、保護材の選択的除去とマスクレス応用が、どの工程カテゴリやアプリケーション例へ広がるか。この3点が、次の公式ページで確かめる比較軸です。
現時点で公開情報から言えるのは、DISCOがレーザソーを失敗モード別の装置群として分けて示していることです。後工程では、ダイシングが薄化、パッケージング、検査と近づくほど、切断装置の比較軸も「切れるか」から「損傷、汚染、形状、検査をどこで切り分けるか」へ移ります。
この記事では、顧客採用、出荷実績、歩留まり値、シェア、市場反応は対象外です。公開情報で読み取れるのは、3機種の方式、発表時点の予定、既存製品・技術ページとの対応関係、そして後工程の失敗モード別にレーザソーの役割が異なりつつあることです。
この分類を使う場面は、設計担当がLow-k配線層の有無やストリート上のTEG除去を前提にダイシング方式を選ぶとき、プロセス担当が50µm以下の極薄Siや化合物半導体で水・機械負荷・チッピングのどれを避けるかを選定するとき、検査担当が加工品質検査を装置内で受け持つか後工程に回すかを分けるとき、そして解析担当がLow-k剥離、チッピング、デブリ付着のどれが起点かを切り分けるときです。次に比較する軸は、切断後の損傷が歩留まりにどう出るかで、歩留まりと欠陥管理へ進むと、装置選定と歩留まり管理を同じ表で比べられます。
- DISCO, レーザソー3機種「DFL7162」「DFL7363」「DFL7563」を開発, 2025年12月15日
- DISCO, Development of Three Laser Saws: DFL7162, DFL7363, DFL7563, December 15 2025
- DISCO, レーザーによる切削加工
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