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GAAのロードマップと次の構造候補

先端ロジックの構造ロードマップでは、GAA nanosheet の次に forksheetCFET が並び、どれも「ポストFinFET」の名で語られます。ところが 2026-04-20 時点で各社の量産計画を比べると、Samsung は 2022 年に 3nm GAA の量産を始め、TSMC は N2/A16/A14、Intel は 18A/18A-P/14A と、いずれも nanosheet 系のまま複数世代を進める計画です。量産の中心構造はまだしばらく GAA nanosheet 系で、その先の高密度候補として forksheet と CFET が並びます。

GAA(Gate-All-Around) とは、チャネルの全周をゲートで囲む一群のトランジスタ構造を指し、量産で使われているのはその中の nanosheet 系です。forksheet は n と p の間隔を絶縁壁で縮める GAA nanosheet の延長構造、CFET は nMOS と pMOS を縦に積む次段の構造です。この記事は、量産の中心構造・密度ブースター・次段候補・長期候補という 4 段の分類を軸に、各社の公開ロードマップがどの段に当たるかを読み分けます。

GAAの次がすぐ量産に来る というより、GAAの中で複数世代を稼ぎながら、その先の構造を準備している のが実態です。

01 / FinFET から CFET までの断面の違い
A. FinFET 前世代 ゲート フィン=チャネル ゲートが 3 面を覆う 縮めると締めにくい B. GAA nanosheet 量産の中心構造 ゲート 積層シート=チャネル ゲートが全周を囲む 実効幅を積層で稼ぐ C. forksheet 密度ブースター ゲート 絶縁壁 n 側 p 側 絶縁壁で n-p 間隔を縮める 延長構造で密度を上げる D. CFET 次段候補 ゲート 上段 下段 上段と下段のシート n と p を縦に積む 標準セル密度を大きく上げる
図1 FinFET はゲートがフィンの 3 面を覆うだけですが、GAA nanosheet は積層シートの全周をゲートが囲み、実効チャネル幅を積層で稼ぎます。forksheet はその n-p 間に絶縁壁を入れて間隔を縮める延長構造、CFET は n と p を縦に積んで標準セル密度を上げる次段の構造です。

図1 の B が現在の量産の中心で、C は B の n-p 間隔を絶縁壁で詰めた延長構造、D は n と p の横並びを縦積みに変えた次段の構造です。各社の公開ロードマップも、この B → C → D の順番で読めます。

ここ数年の大きな変化は、GAAが研究テーマから量産テーマに移った ことです。

  • Samsung は 2022 年に 3nm GAA の初期量産開始を公表した
  • TSMC は N2 を first-generation nanosheet、A16 を nanosheet + backside power rail、A14 を second-generation nanosheet として公開している
  • Intel は 18A を RibbonFET + PowerVia の世代として打ち出し、さらに 18A-P、14A へと展開している

公開ロードマップで読み取れるのは、各社ともポストFinFETの最初の構造に GAA nanosheet を選び、それを複数世代の主力構造にしていることです。CFET はその後の段に並びます。

2. なぜ業界はGAAを重視するのか

Section titled “2. なぜ業界はGAAを重視するのか”

GAA は、先端ロジックで一番苦しいポイントを緩和する構造として、FinFET の後継に選ばれています。

ゲートがチャネルの周囲により深く回り込むため、electrostatics(ゲートがチャネル電位を静電的に制御する力)が上がり、短チャネル効果、リーク、Vmin の制御がしやすくなります。
FinFET よりも 小さくしても締めやすい のが大きいです。

積層シートで実効チャネル幅を稼げるため、同じ footprint あたりの駆動力を伸ばしやすくなります。
IBM は 2017 年の stacked nanosheet 論文で、GAA nanosheet が FinFET の有力な置換候補であることを示しました。

GAA の効果が及ぶ範囲は単体デバイスより広く、標準セル、SRAM、配線、backside power delivery、ライブラリ、PDK まで含めた DTCO(design-technology co-optimization、設計と製造技術の同時最適化)の余地が大きいので、先端ノード全体の PPA(性能・電力・面積)を押し上げる武器になります。

GAA は、チャネルをゲートが囲む一群のアーキテクチャの総称で、nanowire も nanosheet もこの中に含まれます。

初期の GAA 研究で多かったのが nanowire です。
制御性は非常に高い一方、実効幅の確保や量産性では不利になりやすい構造です。

現在の量産・量産直前の中心構造はこの系統です。
薄いシートを複数枚積層し、ゲートで包むことで、electrostatics と drive current のバランスを取りやすくなります。

  • Intel: RibbonFET
  • Samsung: MBCFET
  • TSMC: nanosheet

名称は違っても、三社とも公開資料上では GAA nanosheet family に含まれる構造です。

Samsung は 2022 年に 3nm GAA の初期量産開始を公表しました。
現在の logic node 公開ページでも、SF3 を GAA 世代として位置づけています。

ここでのポイントは、Samsung が GAAの量産開始を最初に公表したファウンドリ であることです。
GAA は 2022 年の時点で量産フェーズへ入っています。

TSMC は N2 を first-generation nanosheet として 2025 年量産予定で公開しました。A16 では nanosheet に backside power rail を組み合わせる計画を示しています。
さらに 2025 年 4 月 24 日の発表では、2028 年予定の A14 を N2から進化した second-generation nanosheet の文脈で示しています。

ここから読み取れるのは、TSMC の見立てでも 2nm以降もしばらくは nanosheet 系が主流 だということです。

Intel は 18A を RibbonFET + PowerVia の世代として公開し、2025 年 1 月 30 日時点で 2025 年後半の high-volume production へ進んでいると発表しました。
さらに 2025 年 10 月の公開情報では、18A が量産へ向けて立ち上がりつつあり、18A-P は RibbonFET と PowerVia の second implementation として続きます。Intel Foundry のロードマップ図では、14A は PowerDirect を伴う次段としてロードマップ化されています。

公開ロードマップを基準にすると、Intel も GAA + backside power を数世代磨き込む シナリオを取っています。

02 / 公開ロードマップの世代順と構造の帯
公開ロードマップ上の世代順(左 → 右) Samsung 3nm GAA 2022 年 量産開始 SF3 GAA 世代 TSMC N2 第1世代・2025 量産 A16 + backside power rail A14 第2世代・2028 予定 Intel 18A RibbonFET + PowerVia 18A-P second implementation 14A PowerDirect を伴う 3 社の量産計画はこの帯(GAA nanosheet 系)に収まる imec ロードマップ nanosheet 現在の中心構造 outer wall forksheet A10 まで延長 CFET A7 以降 CFET + 2D materials 長期の研究候補 GAA nanosheet 系(量産の中心) forksheet(延長構造) CFET(次段候補)
図2 Samsung・TSMC・Intel の公開ロードマップは、2022 年の 3nm GAA から 2028 年予定の A14 まで、すべて GAA nanosheet 系の帯の中で世代を重ねます。nanosheet から forksheet(A10)、CFET(A7 以降)へ構造を変える順番を示しているのは imec のロードマップです。

図2 のとおり、Samsung・TSMC・Intel の公開計画は複数世代先まで nanosheet 系の帯の中にあり、forksheet と CFET へ移る順番を示しているのは imec のロードマップです。backside power をどの世代で組み合わせるかは会社ごとに異なり、TSMC は A16 で backside power rail を足し、Intel は 18A から PowerVia を組み合わせています。

GAA が強いのは確かですが、難しさもはっきりしています。

Si/SiGe 積層から犠牲層を選択的に除去してチャネルを解放する工程は、GAAの心臓部です。
エッチ選択性、形状ばらつき、界面品質が少し崩れるだけで性能と歩留まりが揺れます。

GAA nanosheet では inner spacer(シート端でゲートと S/D を隔てる絶縁膜)が必須で、これが寄生容量、寄生抵抗、短チャネル制御、S/D 形成に強く絡みます。
imec も nanosheet 時代の主要な難所として inner spacer を繰り返し挙げています。詳しくは GAA inner spacerとcontact resistanceの量産ボトルネック で独立に取り上げています。

03 / チャネル解放の前と後
A. Si/SiGe 積層(チャネル解放前) SiGe が犠牲層、Si がチャネルになる S/D S/D SiGe = 犠牲層(後で除去する) Si = チャネルになる層 犠牲層を選択除去 B. チャネル解放後(GAA 完成形) 犠牲層の位置をゲートと inner spacer が埋める S/D S/D ゲートが各シートの全周を包む inner spacer(シート端でゲートと S/D を隔てる) Si シート(チャネル) エッチ選択性・形状ばらつき・界面品質が少し崩れるだけで、性能と歩留まりが揺れる inner spacer は寄生容量・寄生抵抗・短チャネル制御・S/D 形成に絡む
図3 チャネル解放は、Si/SiGe 積層のうち犠牲層の SiGe だけを選択的に除去し、残った Si シートの全周をゲートで包む工程です。SiGe があった位置のシート端には inner spacer が入り、ゲートと S/D を隔てるので、エッチ選択性と形状ばらつきがそのまま寄生容量・寄生抵抗と歩留まりに響きます。

図3 の左右の差は、SiGe があった位置がゲートと inner spacer に置き換わる点だけですが、その置き換えの均一さが、5.1 のエッチ選択性と 5.2 の寄生容量・寄生抵抗の差になります。

チャネル制御が良くなっても、アクセス抵抗や contact resistance が悪いままだと回路速度が頭打ちになります。
さらにシート積層構造では熱の逃げ道も狭くなり、自己発熱と信頼性の検証が重要になります。

5.1〜5.3 の性能は研究試作でも測れますが、量産でそろうことは別の問題です。
GAA 世代では寸法、しきい値、応力、接触、材料界面をまとめて制御して初めて、5.1〜5.3 で得た性能が量産ロット全体でそろいます。

6. その先として何が見えているのか

Section titled “6. その先として何が見えているのか”

ここが本題です。
GAAの次 として語られる候補は主に forksheetCFET です。

forksheet は imec が提案してきたアーキテクチャで、n と p の間隔をさらに縮小するために絶縁壁を導入します。
目的は、GAA nanosheet の延長で、より高い密度を実現すること です。

imec は 2025 年の VLSI で outer wall forksheet を示し、公開記事ではこの構造が nanosheet 時代を A10 ノードまで延長する中間構造になりうると示しています。
特に面積面では、A10 outer wall forksheet SRAM cell が A14 nanosheet ベースより 22% 面積削減できるというシミュレーションを公開しています。

forksheet は、GAAを捨てる次世代 というより、GAA nanosheet family のスケーリングブースター として位置づけられます。

CFET は Complementary FET の略で、nMOS と pMOS を縦に積む構造です。
プレーナは横並び、FinFET/GAA も基本は横方向の n-p 配置ですが、CFET では n と p を縦方向へ積む ので、標準セル密度を大きく押し込めます。

imec の 2025 年公開記事では、outer wall forksheet で A10 まで延長し、その後 A7 and beyond で CFET へ移るロードマップが示されています。
この図では、CFET は「その先」の候補として描かれ、量産投入までになお準備期間を要します。

もっと長期の候補として、imec は WS2 やモリブデン系などの 2D monolayer 材料を CFET と組み合わせる可能性も挙げています。
ただしここは研究ロードマップの領域で、量産ノードとしては最も遠い候補です。

outer-wall forksheet の構造差、CFET の専用モジュール、A7 / A5 / A3 で追加される booster の違いは、フォークシートとCFETのロードマップ に切り出して分類しています。

その CFET 側で、double-row celldirect backside contactM0 power rail をどの node で足すかは、CFETのM0 railとbackside contact に切り出してあります。

7. 実務ではどう位置づけるべきか

Section titled “7. 実務ではどう位置づけるべきか”

公開ロードマップからは、構造候補を次の 4 段に分けられます。

  • 近未来の中心構造: GAA nanosheet + backside power delivery + DTCO
  • その次の密度ブースター: forksheet
  • 本格的な次段アーキテクチャ候補: CFET
  • さらに長期: CFET + 2D materials

この分類では、GAAを何世代も使いながら、その間に forksheet や CFET の量産性を作り込む という順番になります。

よくある誤解は、GAAの次 という言葉の受け取り方です。forksheet と CFET が近いうちに GAA を置き換える と受け取られやすいが、実際には forksheet は GAA nanosheet family の延長構造で、CFET も imec のロードマップでは forksheet の後、A7 以降の候補として並びます。置き換えの時期と受け取ると、Samsung・TSMC・Intel が nanosheet 系を複数世代続ける公開計画と食い違います。

その backside power delivery 自体の中身は、Backside Power Delivery とは何か で独立に分類しています。

GAA は量産本流に入ったアーキテクチャです。
一方、その先の forksheet と CFET には、量産投入までの準備期間がまだ残っています。

現時点の公開ロードマップでは、業界はまず nanosheet 系GAAを複数世代で継続採用する 方向に動いています。 その後に、密度改善用の forksheet と、長期候補の CFET が並びます。

この分類は、設計担当がどのノードの PDK と標準セルライブラリを前提に DTCO を進めるか、プロセス担当がチャネル解放と inner spacer の均一性をどこまで作り込むか、解析担当が自己発熱と contact resistance をどの構造で測るか、という判断で使います。次に比べる軸は、backside power delivery をどの世代で組み合わせるかと、forksheet が A10、CFET が A7 以降というノード割り当てです。構造ごとの断面の差は プレーナMOS、FinFET、GAAの違い、A10 / A7 以降の booster の差は フォークシートとCFETのロードマップ で続けて比べられます。

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