FZ法(浮遊帯域溶融)とは
FZ法(浮遊帯域溶融)とは、多結晶シリコンの棒を立てたまま一部だけを溶かし、その溶けた帯を棒に沿って移動させて単結晶へ変える方法です。 石英ルツボを工程から省く点が、CZ法との違いです。
シリコンの単結晶を育てる主流はCZ法です。石英ルツボの中で融かし、種結晶を触れさせ、回転させながら引き上げます。FZ法は、このルツボを工程から省きます。棒の一部だけを溶かし、溶けた帯を棒の端から端へ移動させることで、通り過ぎた後ろが単結晶として固まります。
東北大学金属材料研究所 附属新素材共同研究開発センターの装置紹介資料「光学式浮遊帯域溶融炉」は、浮遊帯域溶融法について、るつぼを使うブリッジマン法やチョクラルスキー法と比べてるつぼ材から試料への不純物混入を避けられるため高純度の単結晶づくりに向き、一方で大口径の単結晶づくりには向きにくいと述べています。加熱源として光学式、高周波式、電子ビーム式を挙げ、育成の手順を、原料棒の先端を溶かして種結晶と触れさせ、溶融帯を作ってからその帯を移動させる流れとして示しています。この資料は酸化物や金属を対象にした共同利用装置の紹介で、標準の作製サイズを直径5〜15mm、長さ30〜100mmとする規模です。
シリコンの量産側では、SUMCOが「シリコンウェーハの製造方法」で、客先の要望に応じて、石英ルツボを使わずに酸素濃度の低い単結晶インゴットを育てるFZ法を用いる場合があると述べています。
現場で動かすものは、帯の位置と口径です。東北大学金属材料研究所の同じ資料は、同じ口径の棒材から、上軸側(原料棒)の移動速度を下軸側の移動速度(育成速度)より速くすると単結晶の口径が太くなるため、口径を制御する手立てになると述べています。溶かす熱源の出力と、上下の軸の速度差が、そのまま形の指示になります。
るつぼを省くと高い抵抗率が得られます
Section titled “るつぼを省くと高い抵抗率が得られます”日本原子力研究開発機構の原子力百科事典ATOMICAは「中性子照射によるシリコン半導体製造の原理」で、抵抗率の範囲としてCZ単結晶に0.001〜50 Ω・cm、MCZ単結晶に1〜500 Ω・cm、FZ単結晶に10〜20000 Ω・cmを挙げています。2006年11月更新の記述です。FZ法の側だけが、1万Ω・cmを超える領域まで届きます。
理由も同資料が記しています。CZ法は石英るつぼに含まれる不純物が融液へ溶け込むため、ドーパントの添加を控えた場合でも低い抵抗率になりやすく、抵抗率の高い高純度の単結晶は得にくくなります。FZ法については、高周波コイルの移動を繰り返すことで純度を99.999999999%、9が11個並ぶ水準まで高められると述べています。
高い耐圧の素子を作る側にとって、この差はそのまま材料の選択になります。ATOMICAはFZ単結晶の用途として主にサイリスタやパワートランジスタなどのディスクリート素子を挙げ、CZ単結晶の用途としてはICやLSIなどの集積素子を挙げています。
そのかわりに口径と支えを差し出します
Section titled “そのかわりに口径と支えを差し出します”るつぼを省くと、融けた部分を支える器も工程から消えます。東北大学金属材料研究所の資料が大口径の単結晶づくりに向きにくいと述べる背景が、ここにあります。
規模の比較として、グローバルウェーハズ・ジャパンは「製造プロセス」で、CZ法で育てた直径300mmウェーハ用の結晶が長さ2m、重さ300kgを超える大きさになると述べています。同社が公表している値です。この規模の塊を器の支え無しで保つ難しさが、FZ法の適用範囲を限ります。
供給の実態にも、その差が表れています。ATOMICAは、汎用性の高いCZ単結晶とMCZ単結晶を合わせた年間製造量が全体の約94%を占め、残る約6%がFZ単結晶にあたり、その内訳をガスドープ法4%、NTD法2%としています。2006年11月更新の記述です。
なお、るつぼそのものが1つの産業になっています。信越化学工業は「電子材料事業」の製品一覧に、シリコン単結晶引き上げ用石英るつぼを掲げています。CZ法はこの消耗品を毎回要し、FZ法ではこの費目が消えます。
抵抗率を揃えるために工程を足します
Section titled “抵抗率を揃えるために工程を足します”高い抵抗率が取れることと、その値が面内で揃うことは別の話です。ATOMICAは、シリコン中へ一様に存在する同位体の30Siが中性子を吸収して31Siになり、ベータ崩壊を経て安定同位体のリン31Pへ核変換する反応を利用し、リンを均一にドープする方法をNTD法(Neutron Transmutation Doping)として挙げています。同資料は、6インチ口径のシリコン単結晶では、在来法の±20%に対してNTD法なら±5%の均一度に届くと言われていると記しています。2006年11月更新の記述です。
代償も同じ資料に並んでいます。中性子の照射で生じる各種の欠陥を取り除くため、照射のあとに熱処理が要ります。面内については、照射のあいだインゴットの軸を中心に定速で回転させます。軸方向については、フィルター法、反転法、定速移動法などがあり、国内の原子炉では反転法が採られていると同資料は述べています。
照射へ回すインゴットは、取扱重量の都合から多くの場合、長さ約20cmまたは約30cmのブロック(6インチ径でおよそ11kg)へ短くしてから原子炉へ入れ、照射を終えたインゴットはスライスマシンで厚さ1mm以下へ切断されると同資料は記しています。1本の塊の長さが、原子炉の照射孔の寸法に合わせて切られます。
高い耐圧と低い酸素濃度を要する場面で選びます
Section titled “高い耐圧と低い酸素濃度を要する場面で選びます”ATOMICAが挙げるサイリスタやパワートランジスタという用途は、SUMCOが挙げる低酸素濃度という特徴と重なります。石英ルツボを工程から省けば、るつぼ由来の酸素が結晶へ入る経路も同時に消えます。酸素の濃度を低く保ちたい製品と、高い抵抗率を要する製品は、多くの場合で同じ側にあります。
裏を返すと、汎用のICやLSI向けにFZ法を選ぶ理由は薄くなります。口径の上げやすさと安定した供給量で、CZ法の側が有利になるためです。材料の選択は、素子が支える電圧と、必要な口径の2つを判断材料にします。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 単結晶育成・インゴットの工程ページ ── 工程分類と、この工程に紐づく公開求人
- ウェーハ・基板(全体)の工程ページ ── ウェーハ製造の全体
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”FZ法とは何ですか?
多結晶シリコンの棒を立てたまま一部だけを溶かし、その溶けた帯を棒に沿って移動させて単結晶へ変える方法です。浮遊帯域溶融法、フローティングゾーン法とも呼ばれます。石英ルツボを工程から省く点が特徴です。
CZ法との違いは何ですか?
るつぼを使うかどうかです。SUMCOは、石英ルツボを使わずに酸素濃度の低い単結晶インゴットを育てる方法としてFZ法を挙げています。東北大学金属材料研究所の資料は、るつぼ材からの不純物混入を避けられる一方、大口径の単結晶づくりには向きにくいと述べています。
なぜ高い抵抗率の結晶が得られるのですか?
ATOMICAは、CZ法では石英るつぼに含まれる不純物が融液へ溶け込むため、ドーパントの添加を控えた場合でも低い抵抗率になりやすく、抵抗率の高い高純度の単結晶は得にくいと述べています。抵抗率の範囲としてCZ単結晶に0.001〜50 Ω・cm、FZ単結晶に10〜20000 Ω・cmを挙げています。2006年11月更新の記述です。
大口径にしにくいのはなぜですか?
るつぼを省くと、融けた部分を支える器も工程から消えるためです。東北大学金属材料研究所の資料は、浮遊帯域溶融法が大口径の単結晶づくりに向きにくいと述べています。参考として、グローバルウェーハズ・ジャパンはCZ法で育てた直径300mmウェーハ用の結晶が長さ2m、重さ300kgを超えると公表しています。
NTD法とは何ですか?
中性子照射でリンを均一にドープする方法です。ATOMICAは、シリコン中へ一様に存在する同位体の30Siが中性子を吸収して31Siになり、ベータ崩壊を経て安定同位体のリン31Pへ核変換する反応を利用すると述べています。同資料は、6インチ口径では在来法の±20%に対し、NTD法なら±5%の均一度に届くと言われていると記しています。
中性子を当てたあとに熱処理をするのはなぜですか?
照射で生じた欠陥を除くためです。ATOMICAは、中性子の照射で生じる各種の欠陥を取り除くため、照射のあとに熱処理が要ると述べています。重水炉のほうが抵抗率の回復が早い傾向も記されています。2006年11月更新の記述です。
FZ法はどのくらいの割合で使われていますか?
ATOMICAは、汎用性の高いCZ単結晶とMCZ単結晶を合わせた年間製造量が全体の約94%を占め、残る約6%がFZ単結晶にあたり、その内訳をガスドープ法4%、NTD法2%としています。2006年11月に更新された資料の記述です。用途としてはサイリスタやパワートランジスタなどのディスクリート素子を挙げています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- チョクラルスキー法(CZ法)とは ── るつぼを使って引き上げる主流の方法
- インゴットとは ── 切る前の塊として共通する話
- シリコンインゴットとは ── 円柱の形と1本あたりの取れ高
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- 日本原子力研究開発機構 原子力百科事典ATOMICA「中性子照射によるシリコン半導体製造の原理」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CZ・MCZ・FZの抵抗率の範囲、FZ法の純度、NTD法の反応と均一度、照射後の熱処理、照射用ブロックの寸法、製造量の内訳と用途
- 東北大学金属材料研究所 附属新素材共同研究開発センター「光学式浮遊帯域溶融炉」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 浮遊帯域溶融法の原理、加熱源の種類、育成の手順、上下の軸の速度差による口径の制御、標準の作製サイズ
- SUMCO「シリコンウェーハの製造方法」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 石英ルツボを使わずに酸素濃度の低い単結晶インゴットを育てるFZ法の位置
- グローバルウェーハズ・ジャパン「製造プロセス」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CZ法で育てた直径300mmウェーハ用の結晶の長さ2m・重さ300kg超
- 信越化学工業「電子材料事業」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── シリコン単結晶引き上げ用石英るつぼの製品化