アウトガスとは
アウトガスとは、真空チャンバーやその中の部品から放出される気体です。 コスモ・テックの用語辞典はこのように記しています。
圧力が途中で止まるとき、最初に疑うのは漏れです。ところが漏れをすべて塞いでも、圧力がそこで止まったままになることがあります。ガスが容器そのものの内側から出ているためです。
北野精機の技術資料「真空容器内の残留ガス」は、真空チャンバー内の主な残留ガスとして、真空容器表面に吸着しているガス、真空容器の材料内部に溶け込んでいるガスの拡散、チャンバー外部から透過してくるガスを挙げています。三つとも、容器そのものを出どころにする経路です。漏れを塞ぐ作業とは、別の手当てが要ります。
コスモ・テックの用語辞典は、真空チャンバー内で使うものはアウトガスの少ないものを選定する必要があるとしています。対処が部品の選定から始まる理由がここにあります。
10のマイナス6乗パスカル台までは、ほとんど水です
Section titled “10のマイナス6乗パスカル台までは、ほとんど水です”北野精機の同じ資料は、チャンバーを排気し始めてからしばらくはどのガス種も一様に値が高くなるとし、真空度が10のマイナス6乗パスカル台に到達するまでにチャンバー表面から放出されるガスの主成分として、内面に吸着している水を挙げています。短時間で超高真空領域に到達させるには、吸着している水を効率よく排気することが重要で、ベーキングが非常に有効になる、と続きます。
ベーキングをすると水などのガスが排気され、水素だけが残留ガスとして残ると同資料は述べています。この水素は真空容器の材料内部からの拡散で発生しており、同資料はこの状態を理想的な超高真空環境としています。コスモ・テックの用語辞典も、表面には主に水分が吸着していることが多く、チャンバー内を数時間高温にさらすことでアウトガスを減らせるとしています。
圧力の桁が、表面のもち時間になります
Section titled “圧力の桁が、表面のもち時間になります”北野精機の技術資料「各到達真空環境下での残留ガスによる汚染」は、残留ガス分子の吸着に起因して、分析や成膜の対象物が短時間で汚染されることを大きな問題として挙げ、目標とする到達真空領域以上に、より質の良い真空環境の作成と維持へ注意を払う必要があると述べています。
同資料は参考としてラングミュア式による比較を載せ、10平方ミリメートルの試料表面に単原子層が吸着するまでの時間を並べています。1.33×10のマイナス4乗パスカルで約1秒、マイナス5乗で約10秒、マイナス6乗で約100秒、マイナス7乗で約1000秒、マイナス8乗で約1万秒(約2.78時間)、マイナス9乗で約1667分(約27.83時間)です。同社は、数値が実験環境および試料の性質とガス種との相性によって異なると添えています。
圧力の桁は、洗ったばかりの表面が何秒そのままでいられるかに直結します。到達真空度を1桁上げる作業は、作業できる時間を10倍に伸ばす作業でもあります。
ベーキングでは熱と時間を差し出します
Section titled “ベーキングでは熱と時間を差し出します”北野精機は技術資料「真空ベーキング処理効果の検証」で、同じ工程(機械加工、溶接加工、バフ研磨、電解研磨)で作った2台の実験用チャンバーを比べています。片方はリボンヒーターによる通常のベーキングを約200℃で36時間行い、もう片方は真空ベーキング炉に入れて約3時間で450℃まで昇温させ、24時間の冷却を経て取り出したうえで、同じベーキングを行いました。同社は結果として、初期排気と到達真空度にともに約1桁の差が認められたとしています。同社の実験結果です。
同社が挙げるベーキング炉の仕様は、最高温度が450℃、到達圧力が1×10のマイナス5乗パスカル以下、排気にターボ分子ポンプ(500 L/s)、ワーキング寸法が700ミリメートル角です。差し出すものは、この炉の熱と、昇温と冷却に費やす時間です。到達真空度の1桁は、部品を作る段階で先に払っておく形で買うことになります。
樹脂には、別の払い方が要ります
Section titled “樹脂には、別の払い方が要ります”450℃の炉に入れられる部材は、金属や石英に限られます。
電子情報通信学会の知識ベース「クリーン化技術」は、FOUPなどボックスを用いたシステムがパーティクル汚染の制御を中心に考えられており、ボックスを構成する樹脂からのアウトガスやプロセスガスなどによるクロスコンタミネーションでのボックス内汚染への対策は完全にはとられておらず、今後の課題として挙げられると述べています。ボックス内の清浄化にはクリーンドライエアーなどを用いた技術が注目されている、とも続きます。
樹脂の部材には、材料を選ぶ側と、中の雰囲気を入れ替える側で払います。石英や金属で作れるところは石英部材などに寄せ、樹脂が要るところは低アウトガスの品目を選ぶ、という順序になります。
出る量を測ります
Section titled “出る量を測ります”ニチアス技術時報の技術レポート「前処理方法を用いたGC-MSによる分析」は、GC-MSがガスの定性・定量分析を行える装置で、加熱して発生するガスや臭気物質の分析に使われるとしています。同社は、製品から使用中の加熱で発散するごくわずかな付着物・残存成分の測定や、作業環境などの空気を捕集したガスの測定に多用しているとも述べています。同レポートは前処理の方法ごとに加熱温度の範囲を並べ、35〜210℃から50〜1050℃までの区分を示しています。
空気の側へ出たあとの話は、有機・化学汚染のページで続けます。装置の外へ出たアウトガスは、そのままクリーンルームの化学汚染になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”アウトガスとは何ですか?
真空チャンバーやその中の部品から放出される気体です。コスモ・テックの用語辞典はこのように記し、真空チャンバー内で使うものはアウトガスの少ないものを選ぶ必要があるとしています。
漏れ(リーク)とどう違いますか?
出どころが違います。漏れは容器の外から入るので、塞げば止まります。アウトガスは容器や部品そのものが出どころなので、出し切るまで排気します。
何が出ていますか?
北野精機の技術資料は、真空容器内の主な残留ガスとして、容器表面に吸着しているガス、容器の材料内部に溶け込んでいるガスの拡散、外部から透過してくるガスを挙げています。同資料は、10のマイナス6乗パスカル台に到達するまでの主成分を、内面に吸着した水としています。
ベーキングとは何ですか?
容器を高温にして、吸着したガスを気体として排気する工程です。コスモ・テックの用語辞典は、チャンバー内を数時間高温にさらすことでアウトガスを減らせるとしています。
ベーキングでどれくらい変わりますか?
北野精機の検証では、リボンヒーターによる約200℃・36時間のベーキングだけを行ったチャンバーと、その前に真空ベーキング炉で450℃まで昇温させたチャンバーとで、初期排気と到達真空度にともに約1桁の差が認められたとしています。同社の実験結果です。
樹脂の部材はどうしますか?
材料を選ぶ側で払います。電子情報通信学会の知識ベースは、FOUPを構成する樹脂からのアウトガスなどによるボックス内の汚染対策が完全にはとられておらず今後の課題として挙げられるとし、クリーンドライエアーなどを用いた技術が注目されていると述べています。
何で測りますか?
加熱して出たガスを捕まえて分析します。ニチアスの技術レポートは、GC-MSがガスの定性・定量分析を行える装置で、加熱して発生するガスの分析に使われるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 有機・化学汚染とは ── 部材が放ったガスを、空気の側で汚染として数える見方
- ターボ分子ポンプ(TMP)とは ── 出たガスを引き抜く側
- FOUP(フープ)とは ── 樹脂でできた搬送容器
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- コスモ・テック 用語辞典「アウトガス(放出ガス)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── アウトガスの意味、部品選定の考え方、ベーキングで減らせること
- 北野精機 技術資料「真空容器内の残留ガス」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 残留ガスの三つの出どころ、水が主成分になる圧力域、ベーキング後に水素が残ること
- 北野精機 技術資料「各到達真空環境下での残留ガスによる汚染」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 単原子層が吸着するまでの時間の比較と、その限定条件
- 北野精機 技術資料「真空ベーキング処理効果の検証」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 2台のチャンバーの比較条件と、約1桁の差という結果
- 電子情報通信学会 知識ベース 10群2編5章「クリーン化技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── FOUPの樹脂からのアウトガスが今後の課題として挙げられること、クリーンドライエアーの活用
- ニチアス技術時報 技術レポート「前処理方法を用いたGC-MSによる分析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── GC-MSで加熱発生ガスを定性・定量すること、前処理ごとの加熱温度の範囲