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パワーアンプとは

パワーアンプとは、送信する高周波信号を、電波として飛ばせる電力まで増幅する半導体デバイスです。 村田製作所は、高周波モジュールの構成要素として、送信回路の高出力増幅器(PA)を挙げています。

東芝は研究開発の紹介ページで、無線基地局向けパワーアンプを、基地局から携帯電話などの端末へ向けて送り出す無線信号を、増幅するための装置としています。同ページはあわせて、この装置の消費電力が大きく、無線基地局全体の消費電力が増える主な要因になっていると述べています。

信号を大きくすること自体は、増幅段を重ねれば届きます。設計で難所になるのは、そこへ注ぎ込んだ電力のうち、どれだけが電波として出ていくかです。同ページの注記は電力効率を、外部電源から入る電力と入力信号の電力を足した分に対して、出力信号の電力がどれだけの割合になるかで表しています。残りは熱になります。

効率は、出力の大きさで変わります

Section titled “効率は、出力の大きさで変わります”

同ページは、パワーアンプで使うトランジスタについて、運ぶ情報に応じて出力が絶えず変わる送信信号では、その瞬時の出力電力が低くなったときに電力効率が大幅に落ちると述べています。

出力が下がる理由も、同ページの注記が示しています。一度に送る情報が増えるほど変調信号の振幅の振れ幅が広がり、平均の電力に比べて瞬間的に立つピーク電力が高くなる、という記述です。たくさんの情報を運ぶ信号ほど、ピークだけが高く、ふだんは低い形になります。パワーアンプはピークに耐えられる大きさで作られますが、動いている時間の大半は、その大きさよりずっと小さい出力を出しています。

5Gではこの差がさらに開きます。同ページは、5G基地局では通信方式が高度になるぶん瞬時出力電力の振れる範囲が広く、低い出力での電力効率の改善が従来以上に大きな課題になると述べています。

対策として実用化されてきた構成も紹介されています。同ページの注記によれば、ドハティアンプはキャリアアンプとピークアンプなどで構成され、高出力時には2個のアンプが同時に動作し、低出力時にはピークアンプの動作が休止してキャリアアンプだけが動作します。アウトフェージングアンプは、変調信号を電力の等しい2つに分けたうえで、それぞれ別のトランジスタで増幅し、最後に合わせて元の信号の増幅版を得る方式です。瞬時電力が一定になるため、トランジスタを常時飽和状態で使えるとされています。

同ページは、こうした構成を採ってもなお、平均電力がピークの10分の1という条件で出せる電力効率は、およそ60%どまりだったと述べています。

送る信号は、ピークと平均が大きく離れています
ピークは高く、平均はずっと低い信号です電力時間ピーク平均東芝が示した条件は、平均がピークの10分の1ですその平均電力で出せる電力効率100%古典的なアンプの想定値25%ドハティ/アウトフェージング約60%2つを組み合わせた開発品70%同じ平均電力どうしで比べています東芝が2019年に公表した開発品と、従来の到達点です
変調信号はピークだけが高く、平均はその10分の1まで下がります。同じ平均電力で比べると、従来のアーキテクチャの約60%に対し、東芝の開発品は70%に届いています。

同社が2019年に公表した開発品は、アウトフェージングアンプが持つ2つのトランジスタのそれぞれを、トランジスタ2個からなるドハティアンプで置き換え、合計4個という構成をとっています。ここに高次高調波の負荷の最適化を重ね、ピーク電力の10分の1という低い平均電力でも70%の電力効率を達成したとしています。消費電力の削減幅は64%で、古典的なパワーアンプの電力効率を25%と想定した比較だと注記されています。以上は同社の開発品の値です。

効率を上げると、ひずみが出ます

Section titled “効率を上げると、ひずみが出ます”

効率だけを追うと、別の代償が出ます。

NEDOは、三菱電機と湘南工科大学によるポスト5G向け基地局用GaN増幅器の開発を公表しています。同ニュースの注記は、ACLR(隣接チャネル漏えい電力比)を、送信チャネル帯域内の電力を基準にした、隣接するチャネル帯域の電力との相対比とし、隣のチャネルに信号が漏れ出る度合いを表すと述べています。業界水準は−45dBcで、数値が小さいほど通信の品質が上がるとしています。

同ニュースはまた、ポスト5G通信で求められる動作効率を40%とし、これを発熱を考慮しても高密度実装が可能な電力効率と注記しています。効率とひずみと帯域が、同じ設計の上で取り合いになります。

そのうえで同ニュースは、2入力型構成のGaN増幅器へ入る2つの高周波入力信号をAIでデジタル制御し、ACLR −45dBcと動作周波数帯域幅4000MHzを両立させた動作実証に成功したと述べています。2つの入力信号の電力分配比と位相差には膨大な組み合わせがあるため、182,160回の測定を30秒以下で終える高速評価システムもあわせて構築したとしています。以上は2023年11月時点の公表です。

効率とひずみは、同じつまみの両端にあります
効率を取りにいくほど、隣のチャネルへ漏れます効率を上げるには飽和に近づけますそのぶん波形がゆがみ隣のチャネルへ漏れますポスト5Gの効率の目安は40%電力周波数送りたい信号漏れ漏れ業界水準は−45dBc隣のチャネル送信チャネル隣のチャネルACLRは、送信チャネル帯域内の電力を基準にした隣接チャネル帯域の電力の比です
送りたい信号の外側には、隣の通信が使っているチャネルが並んでいます。効率を求めて飽和へ近づけるほど、そこへ漏れる電力が増えるため、効率とひずみは同時に追いかける対象になります。

周波数によって、示される効率が変わります

Section titled “周波数によって、示される効率が変わります”

三菱電機はGaN高周波デバイスの製品ページで、5G基地局用の16W電力増幅器モジュールについて400MHz帯域で電力付加効率41%、5G massive MIMO基地局用の16Wモジュールについて500MHz帯域で40%(標準値)、同8Wモジュールについて400MHz帯域で43%以上を挙げています。一方、Ka帯の衛星通信地球局用GaN MMIC電力増幅器では、最大線形出力電力での電力付加効率を20%以上としています。以上は同社の製品仕様です。

同社はこの製品群について、NEDOの助成事業の成果の一部を活用していると記しています。高い周波数と広い帯域を受け持つ増幅器は、公的な研究開発の対象になってきた分野です。

携帯端末の側では、材料が変わります。村田製作所の論文紹介は、GaAsの化合物半導体パワーアンプを使って検証したと記しています。基地局が出す電力と端末が出す電力は桁が離れているため、選ばれる材料も別になります。

電源の揺れまで増幅してしまいます

Section titled “電源の揺れまで増幅してしまいます”

村田製作所の技術記事は、携帯端末のパワーアンプについて、電源ラインを伝導するノイズが電源を揺らし、そのノイズが出力へ乗って高周波信号に影響すると述べています。同記事によれば、電源ラインのノイズはパワーアンプの2次歪特性によって、送信周波数の両側にスプリアスとして出てきます。

どの周波数のノイズが効くのかも示されています。同記事は、ACLRの評価帯域幅がW-CDMAで25MHz、LTEで50MHzであることから、片側ではW-CDMAで12.5MHz、LTEで25MHz以下の周波数のノイズが信号品位に影響すると述べています。そして、一般的なパワーアンプ用DC/DCコンバータのスイッチング周波数が2〜10MHzであるため、この帯域が主な原因になるとしています。以上は同記事の検討条件です。

パワーアンプは、入力した信号と一緒に、電源に乗った揺れも出力へ運びます。 村田製作所の論文紹介はさらに、パワーアンプの出力部はRFフロントエンドで最も高い電力を扱う場所にあたり、そこでどれだけの電力に耐えられるかが課題になると述べています。強い電力を扱う場所は、周囲へ影響を与える場所でもあります。

パワーアンプとは何ですか?

送信する高周波信号を、電波として飛ばせる電力まで増幅する半導体デバイスです。東芝は、無線基地局向けパワーアンプを、基地局から携帯電話などの端末へ向けて送り出す無線信号を、増幅するための装置としています。

電力効率とは何ですか?

東芝の注記では、外部電源から入る電力と入力信号の電力を足した分に対して、出力信号の電力がどれだけの割合になるかを指します。この割合が高いほど電力効率が高く、残りは熱として捨てられます。

なぜ効率がそこまで問題になるのですか?

東芝は、無線基地局向けパワーアンプの消費電力が大きく、無線基地局全体の消費電力が増える主な要因になっていると述べています。装置1台の効率が、基地局全体の電気代と冷却の設計を左右します。

出力が小さいときは効率が良くなるのですか?

逆になります。東芝は、送信信号の瞬時出力電力が低くなると電力効率が大幅に低下すると述べています。一度に送る情報が多いほどピーク電力と平均電力の差が開くため、実働では低い出力で動く時間が長くなります。

ドハティアンプとは何ですか?

東芝の注記によれば、キャリアアンプとピークアンプなどで構成される高効率のアンプです。高出力時には2個のアンプが同時に動作し、低出力時にはピークアンプの動作が休止してキャリアアンプだけが動作することで、消費電力を抑えます。

ACLRとは何ですか?

NEDOの注記では、隣接チャネル漏えい電力比を指します。送信チャネル帯域内の電力を基準にした、隣接するチャネル帯域の電力との相対比で、隣のチャネルに信号が漏れ出る度合いを表します。業界水準は−45dBcで、数値が小さいほど通信の品質が上がります。

どんな材料で作られますか?

用途によって別の材料が選ばれます。三菱電機は基地局や衛星通信の地球局に向けたGaN高周波デバイスを製品化しています。携帯端末側では、村田製作所の論文紹介がGaAsの化合物半導体パワーアンプを使った検証を記しています。

この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。

  • 東芝 研究開発ライブラリ「消費電力を64%削減した無線基地局向け高効率パワーアンプを開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 無線基地局向けパワーアンプの定義と基地局全体の消費電力に占める位置、電力効率の定義、瞬時出力電力が低いと電力効率が大幅に低下すること、変調信号の振幅変化とピーク電力の関係、5G基地局での課題、ドハティアンプとアウトフェージングアンプの動作、ピーク電力の10分の1の平均電力での従来効率およそ60%、4個のトランジスタ構成と高次高調波の負荷最適化による70%、消費電力64%削減と古典的アンプの効率25%という想定
  • NEDO ニュース「世界初、AIデジタル制御機能を備えたポスト5G向け基地局用GaN増幅器を開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── ACLR(隣接チャネル漏えい電力比)の定義と業界水準−45dBc、ポスト5G通信で求められる動作効率40%とその意味、2入力型構成のGaN増幅器をAIでデジタル制御しACLR −45dBcと帯域幅4000MHzを両立した動作実証、182,160回の評価を30秒以下で終える高速評価システム、2023年11月時点の公表であること
  • 三菱電機 半導体・デバイス 製品情報「GaN高周波デバイス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 5G基地局用16W電力増幅器モジュールの400MHz帯域で電力付加効率41%、5G massive MIMO基地局用16Wモジュールの500MHz帯域で40%(標準値)、同8Wモジュールの400MHz帯域で43%以上、Ka帯衛星通信地球局用GaN MMIC電力増幅器の最大線形出力電力で電力付加効率20%以上、NEDO助成事業の成果を活用していること
  • 村田製作所 技術記事「PAの電源ラインのノイズ対策技術」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 電源ラインを伝導するノイズが電源を揺らし出力に現れること、2次歪特性によって送信周波数の両側にスプリアスが現れること、ACLRの評価帯域幅がW-CDMAで25MHz・LTEで50MHzであること、一般的なPA用DC/DCコンバータのスイッチング周波数が2〜10MHzであること
  • 村田製作所 技術広報誌metamorphosis20号 論文紹介「次世代RFフロントエンド回路に向けた低受信帯ノイズPAの開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── GaAsの化合物半導体パワーアンプを用いた検証、パワーアンプの出力部がRFフロントエンドの中で最も電力が高い箇所であり耐電力の課題が生じること
  • 村田製作所 事業紹介「高周波・通信」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 高周波モジュールの構成要素として送信回路の高出力増幅器(PA)が挙げられていること
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