認定試験とは
認定試験とは、設計した製品と、それを作る工程を、量産へ移してよいかどうか合否判定する試験です。 合否が付く相手は、製品そのものより先に、その製品を生む設計と工程です。
ソニーセミコンダクタソリューションズが公開している「半導体品質・信頼性ハンドブック 第3版」には、品質保証体系図が載っています。商品企画から設計、試作へと進む流れの途中に「認定試験」の枠があり、そこから合格と不合格の二本の線が伸びています。合格すれば生産準備へ進み、不合格なら前の段階へ戻ります。同ハンドブックは、設計成果物が製品要求事項を満たしているかの検証と、意図した用途を達成しているかの妥当性の審査を行うとし、この妥当性の審査に品質保証担当部署が実施する信頼性認定試験が含まれ、顧客の立場に立って信頼性を検証するとしています。同社の体制についての記述です。
名前は会社ごとに違います。キオクシアの信頼性ハンドブックは、製品としての信頼性の検証を開発認定試験(DAT: Design Approval Test)と呼び、寿命試験や各種環境試験を行って要求仕様と品質・信頼性目標を満たしているかを調べるとしています。ルネサス エレクトロニクスの信頼性ハンドブックは、これを品質認定と呼び、デバイスの設計試作の時期に実施するとしています。
名前が別でも、位置は共通しています。試作したものを、量産へ渡す手前でいったん止め、まとめて調べる場所です。
検査とは、合否が付く相手が違います
Section titled “検査とは、合否が付く相手が違います”出荷前の検査と混ざりやすいので、並べてみます。
ルネサスのハンドブックは、量産段階の最終検査で電気的特性を全数について測るとしています。キオクシアのハンドブックは、製品認定試験に合格したものについて、出荷時にその出荷ロットへ初期品質保証検査を行い、初期的な電気的特性や外観を製造ロットごとに調べるとしています。どちらも、出荷される製品そのものを相手にした、繰り返しの作業です。
認定試験は違います。キオクシアのハンドブックによると、製品の試験ではデザインルールやパッケージによってファミリー分類を行い、そのファミリーの代表製品を用いて信頼性試験を実施します。代表製品以外は、主な電気的特性と少量のサンプルによる試験です。1品種ずつ全部を試すかわりに、設計と工程が同じものを一つの群へ分類し、代表で合否をつけます。同社の手順についての記述です。
合格の重みは、試験個数で決まります
Section titled “合格の重みは、試験個数で決まります”認定試験の結果は「何個試して、何個壊れたか」として書かれます。故障0個という結果は、試験個数とセットで読み取ります。
ロームが公開している「品質・信頼性ハンドブック」は、信頼性試験を数十個のサンプリングによる加速寿命試験とし、期待される結果を故障の発生ゼロとしています。2026年8月のRev.001に載っている記述です。
個数の決め方には二つの流儀があります。同ハンドブックは、想定する故障メカニズムごとに故障分布と加速率を考え、目標の累積故障確率を満たすように個数と時間を計算する方法をパラメトリック手法と呼びます。この方法は個数も時間も可変ですが、故障分布の形状パラメータや活性化エネルギーといった値があらかじめ分かっている必要があります。もう一方は、AEC-Qに代表されるように試験個数・試験時間・試験条件があらかじめ決まっている方法で、同ハンドブックはこれをノンパラメトリック手法と呼びます。個数は二項分布から求まり、計算は簡単ですが、加速条件や市場での稼働時間は計算の外にあります。
同ハンドブックは、後者の計算例も載せています。許容故障が0個、信頼度90%、LTPD10%のとき、試験個数は22個になります。許容故障が1個、信頼度90%、LTPD5%のときは77個です。基準を厳しくするほど、必要な個数が増えます。
合否は、設計と工程に付きます
Section titled “合否は、設計と工程に付きます”ルネサスのハンドブックは、製品品質認定を行うときの考え方として五つを挙げています。顧客の立場から客観的に行うこと、過去の事故例とフィールド情報を十分に盛り込むこと、設計変更や作業変更に際しても認定を実施すること、材料・部品とプロセスを重点的に認定すること、工程能力とばらつき要因を検討して量産時の管理ポイントを設定することです。同ハンドブックは2017年改訂の版です。
三つ目が、認定試験の性格をよく表しています。合格が付いているのは設計と工程なので、そこへ手を入れれば合格も付け直しになります。同ハンドブックは認定のステップを材料・部品認定、特性認定、製品品質認定の三つに分け、材料・部品と製品それぞれの設計検証を前の二つで、設計の妥当性の審査を製品品質認定で行うとしています。
ロームの品質・信頼性ハンドブックは、変更の側から同じことを書いています。同社では品質部門が変更の受け付けと管理を一括して行い、計画段階でDRBFMやFMEAによるリスク分析を実施し、抽出されたリスクに応じて信頼性の検証を行います。結果に問題がなければ承認プロセスへ進み、製品や製造の品質基本設計に関わる変更では、顧客への変更申請と承認を経て実施します。同社の運用についての記述です。
ロームが公開している品質保証体系のページは、開発検討、設計審査、初期流動、量産の各段階で検証を行うとしています。認定試験は、この並びの中で量産へ渡す直前の関門にあたります。
初期故障は、認定試験の外にあります
Section titled “初期故障は、認定試験の外にあります”認定試験が相手にする故障には、範囲があります。
ロームのハンドブックは、信頼性試験の主目的を真性の劣化、つまり摩耗故障の検証としています。そして、欠陥に起因して確率的に起きる初期故障の検証には数十個のサンプル数では不足するとし、初期故障の検証はバーンインスタディやHVS(High Voltage Stress)スタディで実施するとしています。同ハンドブックは、AEC-Q100の信頼性試験基準に規定されている初期故障率試験が2400個での実施であることにも触れ、この規模でも初期故障率を正確に求めるのは難しいとしています。
だから量産に入ってからの試験が続きます。キオクシアのハンドブックは、認定試験に合格したものへ出荷ロットごとの初期品質保証検査を行い、さらに出荷製品の信頼性レベルを調べるために、プロセスやパッケージのファミリー単位で寿命試験や環境試験を定期的に行うとしています。これを信頼性モニタと呼んでいます。
ソニーのハンドブックも、開発段階でつくり込まれた摩耗故障に関する信頼性レベルが量産以降も維持されているかを調べるため、量産品を抜き取って定期的に製品レベルの信頼性の検証を行うとしています。抜き取りは、ウェーハプロセス、組立プロセス、製造場所などの組み合わせを考慮して各製品ファミリーから行います。同社の運用についての記述です。
試験条件は、業界の規格から来ます
Section titled “試験条件は、業界の規格から来ます”認定試験で何をどれだけ加えるかは、業界の規格と団体のガイドラインが用意しています。
ロームのハンドブックは、北米や欧州で知られるJEDECと、国内規格であるJEITAをベースに信頼性試験を実施しているとしています。規格間の差はハーモナイズが進み、JEDECやJEITAから国際規格として提案されたIEC規格も増えています。一方で、AEC(Automotive Electronics Council)やVDAといった車載基準については、工業団体のガイドラインという位置づけだとしたうえで、これらへの準拠に取り組んでいるとしています。
同ハンドブックは、半導体デバイスが製品寿命を通して受ける温度・湿度・温度変化・通電状態と時間の関係をまとめたものをミッションプロファイルと呼び、この考え方がJEITAのEDR-4708「半導体集積回路 信頼性認定ガイドライン」やAEC-Q100/Q101/Q102でも示されているとしています。認定という語は、規格の名前そのものに入っています。
つまり認定試験は、規格が用意した条件表を選び、自社の製品と工程へ当てて、量産へ移してよいかを決定する作業です。条件を作る側の話はJEDECのページに書いています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”認定試験とは何ですか?
設計した製品と、それを作る工程を、量産へ移してよいかどうか合否判定する試験です。ソニーセミコンダクタソリューションズの品質保証体系図には認定試験の枠があり、そこから合格と不合格の二本の線が伸びています。
出荷前の検査とどこが違いますか?
合否が付く相手が違います。キオクシアの信頼性ハンドブックによると、製品認定試験に合格したものについて、出荷時に出荷ロットへ初期品質保証検査を行い、電気的特性や外観を製造ロットごとに調べます。認定試験の合否は設計と工程に、出荷検査の合否は製品そのものに付きます。
何個くらい試すのですか?
ロームの品質・信頼性ハンドブックは、信頼性試験を数十個のサンプリングによる加速寿命試験としています。同ハンドブックの計算例では、許容故障0個・信頼度90%・LTPD10%で22個、許容故障1個・信頼度90%・LTPD5%で77個になります。
試験個数はどう決まるのですか?
二つのやり方があります。同ハンドブックは、故障分布と加速率から個数と時間を計算する方法をパラメトリック手法、AEC-Qのように試験個数・試験時間・試験条件があらかじめ決まっている方法をノンパラメトリック手法と呼び分けています。
一度合格すれば、ずっと有効ですか?
変更のたびにやり直します。ルネサス エレクトロニクスの信頼性ハンドブックは、製品品質認定の考え方の一つとして、設計変更や作業変更に際しても認定を実施することを挙げています。
認定試験の外に残る故障はありますか?
初期故障です。ロームのハンドブックは、欠陥に起因する初期故障の検証には数十個のサンプル数では不足するとし、その検証をバーンインスタディやHVSスタディで行うとしています。
試験の条件は誰が定めるのですか?
業界の規格と団体のガイドラインです。同ハンドブックは、JEDECと国内のJEITAをベースに信頼性試験を実施しているとし、AECやVDAなどの車載基準を工業団体のガイドラインという位置づけとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- ローム「品質・信頼性ハンドブック」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 信頼性試験が数十個のサンプリングによる加速寿命試験であり期待される結果が故障の発生ゼロであること、主目的が摩耗故障の検証にあること、初期故障の検証をバーンインスタディやHVSスタディで行うこと、AEC-Q100の初期故障率試験が2400個であってもこの規模で初期故障率を正確に求めるのは難しいこと、パラメトリック手法とノンパラメトリック手法の違い、許容故障0個・信頼度90%・LTPD10%で22個と許容故障1個・信頼度90%・LTPD5%で77個という計算例、変更管理でDRBFMやFMEAによるリスク分析と信頼性の検証を経て承認と顧客への変更申請へ進むこと、JEDECとJEITAをベースに試験を実施しIEC規格の提案も増えていること、AECやVDAが工業団体のガイドラインという位置づけであること、ミッションプロファイルの考え方がJEITA EDR-4708「半導体集積回路 信頼性認定ガイドライン」やAEC-Q100/Q101/Q102でも示されていること
- ローム「品質保証体系」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 開発検討、設計審査、初期流動、量産の各段階で検証を行うこと
- キオクシア「信頼性ハンドブック」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 製品としての信頼性の検証を開発認定試験(DAT: Design Approval Test)で行うこと、製品の試験でデザインルールやパッケージによりファミリー分類を行い代表製品で試験し代表以外は主な電気的特性と少量サンプルで行うこと、認定試験に合格したものへ出荷ロットごとの初期品質保証検査を行うこと、ファミリー単位で寿命試験や環境試験を定期的に行う信頼性モニタ
- ソニーセミコンダクタソリューションズ「半導体品質・信頼性ハンドブック 第3版」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 品質保証体系図に認定試験の枠があり合格と不合格で流れが別々になること、意図した用途を達成しているかの妥当性の審査に品質保証担当部署が実施する信頼性認定試験が含まれ顧客の立場に立って信頼性を検証すること、量産品を抜き取りウェーハプロセス・組立プロセス・製造場所の組み合わせを考慮してファミリーごとに定期的な信頼性の検証を行うこと
- ルネサス エレクトロニクス「半導体信頼性ハンドブック(日本語版)」公開PDF(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── デバイスの設計試作時期に品質認定を実施すること、製品品質認定の五つの考え方(顧客の立場から客観的に行う、過去の事故例とフィールド情報を盛り込む、設計変更や作業変更に際しても認定を実施する、材料・部品とプロセスを重点的に認定する、工程能力とばらつき要因を検討し量産時の管理ポイントを設定する)、認定のステップが材料・部品認定・特性認定・製品品質認定の三つに分けられていること、量産段階の最終検査で電気的特性を全数について測ること