実験計画法(DOE)とは
実験計画法(DOE)とは、どの条件をどの順番で何回試すのかを実験の前に定めておき、切り詰めた回数で要因ごとの効果を切り分ける方法です。 データが出てからの解析よりも前の段階を組み立てる方法だと考えると近くなります。
大分大学の統計学講義資料は、実験計画法を、管理された因子(要因)の水準のもとで得た実験データから、因子の水準の差の推定や検定を行う枠組みとしています。同資料は、実験にあたって反復、無作為化、局所管理の3つが要るとし、これをフィッシャーの三原則と呼んでいます。
割り付けの道具として広く使われているのが直交表です。日科技研は直交表を、任意の2つの因子(列)について、その水準のすべての組合せが同数回ずつそろう性質をもつ、実験のための割り付け表としています。同社は表記に L の記号を使い、行数が実験の大きさ、水準数と列数がかっこの中に入る書き方を示したうえで、行数から1を引いた値を水準数から1を引いた値で割ると列数になる、という関係を挙げています。
条件出しは、回数がそのまま費用になります
Section titled “条件出しは、回数がそのまま費用になります”産総研は、工程数が数百にもなるLSIのようなデバイスでは、全工程について条件出しを行い、連続して動かしたときにきちんと作れるところまで調整する必要があり、人の経験だけに頼るには限界があると述べています。同研究所の記事は、洗浄工程ひとつを取っても、洗浄液の温度や成分、洗浄時間や手順といった条件を定める必要があると具体例を挙げています。
条件を1つ試すたびに、ウェーハと装置の時間が出ていきます。SEAJの半導体製造装置用語集は、製品デバイスの製造に使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハをまとめてNPWと呼び、装置の総合効率を上げるにはNPWに費やす時間も減らす必要があるとしています。実験の回数を減らすという話は、この分母を守るという話でもあります。
総当たりだと、回数のほうが先に足りなくなります
Section titled “総当たりだと、回数のほうが先に足りなくなります”日科技研は、多元配置の実験では少なくとも因子の水準数の積の回数だけ実験が要り、因子数が多くなると実験回数が膨大になると述べています。そのうえで、求める交互作用が数えるほどであれば、直交表を使うことで多くの因子の実験を比較的わずかな回数で行えるとしています。
数にすると差が大きく出ます。2つの水準を持つ因子が7つある場合、総当たりでは2を7回かけた128回です。一方、同社が挙げる関係にあてはめると、8行の2水準系直交表であるL8は7列を持ちます。7つの因子をこの7列へ割り付ければ8回で済みます。回数は16分の1です。以上はこちらで計算した値です。応用統計学会の学会誌に載った公開のフォーラム記事も、8行7列の2水準直交表L8を表として示しています。
工程の実験では、順番そのものが結果を左右します
Section titled “工程の実験では、順番そのものが結果を左右します”装置は、同じレシピを流し続けても内側が少しずつ動きます。ここが半導体の工程で実験計画法が力を持つ場所です。仮に因子Aの水準1を午前にまとめて流し、水準2を午後にまとめて流したとすると、出てきた差が水準の差なのか、その間に進んだ装置の変化なのかを、後から切り分ける手立てを失います。
大分大学の資料は、無作為化を、実験の順序から来る条件差や測る人の慣れといった誤差を偶然誤差へ移すために要る原則としています。反復については推定値の精度向上と誤差の測定に要るとし、局所管理については実験ブロックの中での管理と実験順序の無作為化を行うとしています。同資料は、1日にできる実験の回数が機材や結果を得るまでの時間の関係で限られる場合を例に挙げ、各ブロックの中で水準を無作為な順序に割り付ける実験を乱塊法と呼んでいます。ブロックとしては実験日のほか、測る人や装置なども挙がるとしています。
装置と日をブロックに取るという発想は、そのまま現場の言葉になります。同資料は、乱塊法によってブロック間の誤差変動を分離でき、要因効果の推定と検定の精度が上がるとしています。
効果の有無は、分散比で確定します
Section titled “効果の有無は、分散比で確定します”材料になるのは分散分析表です。大分大学の資料は、要因ごとに平方和、自由度、不偏分散を並べ、要因側の不偏分散を誤差側の不偏分散で割った分散比を求める表を示しています。式そのものより、ここで何を比べているのかが大事です。分散比は、水準を変えたときに動いた分が、そのままでも揺れる分に比べてどれだけ大きいかを表しています。
同資料の乱塊法の例では、ある合成反応の反応温度4水準を、1日に4回ずつ3日かけて調べています。得られた分散比は10.94で、有意水準5%のときの基準値4.76を上回ったため、4つの温度水準の効果に有意差が認められています。実験全体はわずか12回です。
日科技研は、この先の手順も示しています。同社の解析例では、分散比の小さい要因を誤差項へ組み入れるプーリングを行い、残った要因を推定式に取り込んだうえで、すべての水準の組合せについて推定値を計算します。効果の大きい要因を選び、その要因の中で最も良い水準の組合せを探す、という流れです。
こうして得た関係を関数のかたちで持っておく考え方もあります。SEAJの半導体製造装置用語集は応答曲面を、条件パラメータと出力の応答量の関係を表す関数だとし、解析や実験点のパラメータ設定に実験計画法が、関数の近似に最小二乗法が使われるのが一般的だとしています。同用語集は感度解析についても、応答に対して複数ある因子のうちどれが大きく影響するかを解析する手法として載せています。
減らした分だけ、分からなくなる部分が出ます
Section titled “減らした分だけ、分からなくなる部分が出ます”回数を減らせるのには前提があります。日科技研は、直交表で実験を比較的わずかな回数に収められるのは、求める交互作用が数えるほどの場合だとしています。交互作用とは、ある因子の効果が別の因子の水準によって動くことです。
L8の列は7本ですから、7つの因子をすべて割り付けると、交互作用へ回す列は0本になります。応用統計学会の学会誌に載った公開のフォーラム記事は、直交表への交互作用の割り付けと解析を線点図で行う方法を紹介しており、交互作用を調べる場合には列を使うことを前提にしています。同記事は、混合系の直交表L18について、列と列の交互作用がほかの列にかなり均等にばらまかれる性質を挙げています。一か所に溜まらずに散るぶん、特定の交互作用だけを取り出す道は細くなります。
繰り返しの側にも代償があります。大分大学の資料は、反復が推定値の精度向上と誤差の測定に要るとしています。繰り返しを削ると、要因の効果を比べる相手である誤差そのものの見積もりが細くなります。回数を減らす方向には、こうした2つの出口があります。
探索そのものを機械に任せる動きもあります
Section titled “探索そのものを機械に任せる動きもあります”日立製作所は2024年の報告で、電子顕微鏡で撮って数値化した加工形状とプロセス条件の関係をAIで解析し、最適な条件を自動で探す技術を示しています。同社の実験では、初期の学習データは72条件で、1サイクルから7サイクルまでに良い形状が期待できるとして探索し実験した条件数は、順に5、14、5、7、5、7、8です。同社は溝幅750nmのパターンでの垂直加工と、溝幅と線幅が12.5nmの密なパターンでの加工最適化を例に挙げています。以上は同社の実証実験での値です。
産総研も、工程内あるいは工程間の製造条件をAIで最適化して自動化できれば、現場の省力化に大きく貢献できるとし、人が試行錯誤した過程そのものも学習データとして外に蓄積できる点を挙げています。どちらの取り組みも、実験の回数が費用であるという前提の上に立っています。回数を切り詰めたまま要因ごとの効果を切り分けるという実験計画法の目的が、使う道具を替えて続いています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”実験計画法とは何ですか?
どの条件を、どの順番で、何回試すのかを実験の前に定める方法です。大分大学の統計学講義資料は、管理された因子の水準のもとで得た実験データから、水準の差の推定や検定を行う枠組みとしています。
直交表とは何ですか?
日科技研は、任意の2つの因子(列)について、その水準のすべての組合せが同数回ずつそろう性質をもつ、実験のための割り付け表としています。この性質のおかげで、ある列の水準ごとに結果を集めても、ほかの列の水準の出方が同じ回数ずつになります。
直交表を使うとどれくらい実験が減りますか?
日科技研は、多元配置の実験では少なくとも因子の水準数の積だけ実験回数が要り、因子数が増えると膨大になると述べています。同社が示す記号の関係にあてはめると、8行の2水準系直交表L8は7列を持ちます。2水準の因子を7つ総当たりで調べると128回で、L8なら8回です。こちらで計算した値です。
フィッシャーの三原則とは何ですか?
反復、無作為化、局所管理の3つです。大分大学の資料によれば、反復は推定値の精度向上と誤差の測定に要り、無作為化は実験順序から来る条件差や慣れによる誤差を偶然誤差へ移すために要ります。局所管理では、実験ブロックの中での管理と実験順序の無作為化を行います。
乱塊法とは何ですか?
大分大学の資料は、1日にできる実験の回数が限られるような場合に、各ブロックの中で水準を無作為な順序に割り付ける実験を乱塊法と呼んでいます。ブロックには実験日のほか、測る人や装置なども挙がります。同資料は、乱塊法によってブロック間の誤差変動を分離でき、要因効果の推定と検定の精度が上がるとしています。
効果の有無はどの数字で確定するのですか?
分散分析表です。大分大学の資料が示す乱塊法の例では、反応温度の4水準を1日4回ずつ3日かけて実験し、分散比が10.94となって、有意水準5%の基準値4.76を上回ったため、温度の効果に有意差が認められています。日科技研は、分散比の小さい要因を誤差項へ組み入れるプーリングを行い、そのうえで水準の組合せごとに推定値を計算する手順を示しています。
実験を減らすと何を失いますか?
2因子の組合せの効果を別に取り出す余地です。日科技研は、直交表で回数を減らせるのは求める交互作用が数えるほどの場合だとしています。L8の列は7本なので、7本とも1因子ずつで埋めると、交互作用へ回す列は0本になります。また、繰り返しを削ると誤差そのものの見積もりが細くなります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- SPC(統計的工程管理)とは ── 動いている工程を見張る側で、こちらは条件を決めにいく側です
- 予防保全とシーズニングとは ── 実験の順番を混ぜる理由になっている、装置そのものの動き方を追います
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- 日科技研「直交表とは(実験計画法)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 直交表がそろえる性質、多元配置では水準数の積の回数が要ること、行数と水準数から列数が求まる関係、プーリングと推定の手順、2水準系と3水準系と混合系の直交表の一覧
- 大分大学「7. 実験計画法」統計学講義資料(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── フィッシャーの三原則とそれぞれの役割、乱塊法とブロックの取り方、分散分析表の構成、反応温度4水準を3日で調べた例と分散比10.94という結果
- SEAJ「半導体製造装置用語集(Modeling and Simulation)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 応答曲面が何を表す関数か、実験点の設定に実験計画法が使われること、感度解析の中身
- SEAJ「半導体製造装置用語集(Factory Integration)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── NPWが指す範囲と、装置の総合効率を上げるにはNPWに費やす時間も減らす必要があること
- 産総研マガジン「半導体製造の全自動化に挑戦」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 工程数が数百になるデバイスの条件出しが人の経験だけに頼るには限界であること、洗浄工程で定める条件の例、試行錯誤の過程を学習データとして蓄積できること
- 日立評論「半導体製造の開発・保守・生産を効率化するスマート技術」2024年11月(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── プロセス条件の自動探索、初期の学習データ72条件と各サイクルの条件数、溝幅750nmと12.5nmの実験例
- 応用統計学「実験計画法・タグチメソッドの活用」Vol.42 No.3(2013)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 8行7列の2水準直交表L8、線点図による交互作用の割り付け、混合系直交表L18で交互作用がほかの列に均等にばらまかれること