両面研磨(DSP)とは
両面研磨(DSP)とは、ウェハの表と裏を同時に研磨する加工です。 上下の定盤で挟んで両面を同じ条件で削り、平行度と平坦度を同時に整えます。
片面だけを磨く場合、裏面をどこかで保持する必要があります。すると裏面の凹凸や、保持する力による歪みが、そのまま表面の仕上がりへ写ります。基準にした面が完全な平面でなければ、磨いた面もその通りに歪みます。
両面研磨は、この写り込みを断ちます。上下の定盤でウェハを挟み、両面へ同じ条件で研磨材を作用させます。どちらの面も基準面の役を負わずに済むため、片方の歪みがもう片方へ写る経路が断たれます。結果として、平行度と平坦度が同時に整います。
平行度が要るのは、露光のためです。ウェハの厚みが場所によって違えば、装置が吸着して保持しても表面の高さがばらつきます。ASMLは公式製品ページで、High NAが開口数0.55の光学系を用いて8nmの解像度で描画できると述べています。解像度を上げるほど焦点が合う範囲は狭くなるため、ウェハ側の平坦度への要求も厳しくなります。
工程順のどこに入るのか
Section titled “工程順のどこに入るのか”両面研磨は、ウェーハ加工の真ん中に置かれた「一次研磨」です。SUMCOの公式ページは、ウェーハ加工工程を、01の切断(スライシング)で厚さ1mm程度にスライス、02の粗研磨(ラッピング)でアルミナ研磨材によりウェーハ両面を平行になるように整えて所定の厚さへ、03のエッチングで前工程までについた機械加工によるダメージを除去、04の研磨(ポリッシング)でウェーハ表面の凹凸をなくし平坦度の高い鏡面仕上げを行うためコロイダルシリカ液を用いてメカノケミカル研磨、05の洗浄・検査、という5段で示しています。粗研磨がアルミナ、仕上げの研磨がコロイダルシリカで、砥粒の系統が途中で切り替わります。
研磨材の側から見ると、段の切れ目がさらに細かく分かれています。フジミインコーポレーテッドの公式ページは、シリコンウェハーの加工プロセスと製品の対応を、単結晶引き上げ、インゴットの外周研削加工、スライス加工(GCシリーズ)、ヘベル加工(外周面取り)、ラップ加工(FOシリーズ、PWAシリーズ)、一次研磨(両面研磨、GLANZOX1000シリーズ)、エッジ研磨(GLANZOX Eシリーズ)、二次研磨・ファイナル研磨(GLANZOX 2000シリーズ、GLANZOX 3000シリーズ)、洗浄、検査、梱包・出荷の順で並べています。両面研磨に当てられているのはGLANZOX1000シリーズで、その後に二段の仕上げが続きます。両面研磨が担うのは鏡面の最終品質より、厚みと平行度という土台です。
装置の側 ── 1バッチ何枚を挟むのか
Section titled “装置の側 ── 1バッチ何枚を挟むのか”装置の仕様は公開されています。スピードファムの公式製品ページは、300mm又は200mmウェーハ向け両面ポリッシュ装置DSM20B-5P-4Dが1バッチあたり300mmで5枚、200mmで15枚を安定量産するとし、平坦度管理・自動化・メンテナンスに最も適した装置サイズで厳しい精度要求に応えるとしています。同ページの300mmウェーハ向け両面ラップ装置DSM28B-5L-4Dは1バッチあたり15枚で、精密な定盤荷重制御と渦電流式定寸制御などの機能を搭載してナノトポグラフィーを適正化するとされています。同じ300mmで、ラップは15枚、ポリッシュは5枚です。
同ページは、両面研磨装置がラップとポリッシュに対応し、キャリアサイズ30インチクラスから2インチまで、精度と生産性を両立しながらあらゆるサイズの加工対象物に適用できるとし、シリコンウェーハ、磁気ディスク基板、石英ウェーハ、セラミックス基板などへの納入実績を挙げています。汎用機ではキャリアサイズ30インチのDSM30B-5L/P-V、16インチのDSM16B-5L/P-V、9インチのDSM9B-5L/P-Vが並び、小型のDSM2B-9L/P-Vは水晶を厚み16ミクロンまで研磨できると書かれています。1バッチの枚数が減るほど枚間のばらつきの母数は小さくなりますが、1枚あたりの装置時間は増えます。
キャリアと研磨布が挟み方を決めます
Section titled “キャリアと研磨布が挟み方を決めます”上下の定盤の間でウェハを支えるのはキャリアです。スピードファムの消耗副資材のページは、両面研磨用キャリアの材質としてEG、PVC、布入りベーク、SK、BS、SUSなどを挙げ、強度のある金属キャリアのワークホール部を樹脂化して加工対象物端面のダメージを軽減するウェッジキャリアと、SUSキャリアに薄いエポキシ樹脂をコーティングしてワークのチッピングを防ぐコーティングキャリアを並べています。同ページは後者をシリコンウェーハ、化合物半導体ウェーハ、ガラスのポリッシュ加工に最適だとしています。キャリアの厚みはウェハの仕上がり厚みの下限を、材質はウェハ端に入る欠けの量を決めます。
研磨布の側も同じページに載っています。同ページは、シリコンウェーハのメカノケミカルポリッシュに最適な多孔性研磨パッドとして、しなやかでベースに根を張ったマイクロレイアーにより耐久性に優れ、ポリウレタン表面の気孔から研磨剤が押し流されることで優れた研磨品質とレートを実現するものを挙げています。気孔が研磨剤の通り道になるため、目詰まりすればレートと面内分布が同時に動きます。上下2枚の研磨布の状態が揃っていることが、両面研磨で平行度が出る前提です。
現場のつまみと、動かした代償
Section titled “現場のつまみと、動かした代償”定盤の荷重を上げるとレートは上がりますが、面内の圧力分布の乱れもそのまま拡大します。フジミインコーポレーテッドの森永均氏による公開解説は、圧力の均一化が平面研磨では平坦な定盤と平滑なパッドによって実現されるとし、パッドは目詰まりや摩耗によって平滑性が損なわれるため精密研磨ではダイヤモンドドレッサによる平滑化や定期的なパッド洗浄が要るとしています。同氏は、軟質パッドによる研磨ではパッドの復元力により加工面の端部に圧力が集中しやすく、対策にリテーナリングやテンプレートが用いられるとも書いています。荷重を下げれば端部の集中は和らぎますが、足りないレートを時間で埋めることになります。
回転数は摩擦と発熱を同時に動かします。同解説は、研磨における摩擦が加工面の摩耗だけでなく摩擦熱を引き起こし、加工面が数十度加温される例も多いとしたうえで、化学作用は一般に10℃程度の加温で2倍程度促進されると書いています(反応の活性化エネルギーが51 kJ/molの場合の目安です)。同氏は、大型基板の研磨では中心部に熱がこもりやすく中心部の研磨速度が増大して平坦性へ悪影響を及ぼすとし、対策として研磨定盤のチラー機能の活用、スラリー流量の最適化、パッドへの溝構造形成によるスラリー排出の促進を挙げています。300mmの両面研磨は、この中心部の温度上昇がそのまま厚みの面内分布になる寸法です。
砥粒の粒径と個数は、面粗さの側で逆向きに働くことがあります。同解説は、砥粒の個数を一定にして砥粒径を大きくすると砥粒1個あたりの接触面積と摩擦が増えて研磨速度が向上する一方、砥粒濃度を一定にした場合は粒径が大きくなるほど単位容積あたりの砥粒数が減って作用点が減るため研磨速度の向上に限界が生じるとしています。同氏は、表面粗さの低減には砥粒数すなわち作用点の増大による圧力分散が効くとし、小粒でも数が少なければ粗さは増大し、大粒でも数が多ければ粗さを低減できる(粒径が揃っていることが前提)と述べています。濃度を下げてレートを落とす操作は、粗さの側では裏目に出ることがあります。
スラリーの温度と組成の安定は、面内分布の下支えです。同解説は、環境からの二酸化炭素の溶解がアルカリ性スラリーのpH低下やイオン強度増大を引き起こして砥粒凝集や研磨不良の原因になるとし、水中の溶存酸素が研磨直後のシリコンや銅の表面酸化やラフネス増大を引き起こすとしています。超精密研磨や直後の洗浄では空気成分さえ汚染になり得る、という書き方です。供給系を閉じる側へ振れば安定は増しますが、設備と保全の手間を渡します。
研磨で使った砥粒や薬液が表面に残れば、それ自体が汚染になります。SUMCOは公式製品ページで、切り出した円盤の表面を丁寧に研磨し、洗浄して完成させると述べています。研磨と洗浄は一続きの工程です。
裏面の仕上げは用途ごとに異なります。表面はデバイスを作るため鏡面が要ります。裏面は保持と搬送のために一定の状態が要りますが、表面と同じ仕上げにする場合は限られます。裏面の粗さが吸着の安定性や粒子の発生を左右するため、そこも設計項目になります。運用はウェーハ裏面と静電チャック(ESC)のページへ続きます。
何を測ると平行度が分かるか
Section titled “何を測ると平行度が分かるか”厚みの到達点は装置側で管理されます。前掲のスピードファムの装置ページは、300mmウェーハ向け両面ラップ装置に精密な定盤荷重制御と渦電流式定寸制御などの機能を搭載してナノトポグラフィーを適正化するとしています。両面研磨でも同じく、狙った厚みへ追い込む仕組みと、その結果としての局所の起伏が別の指標として並びます。面内の分布はウェハ平坦度、露光側の許容は焦点深度と開口数(NA)で書かれ、ASMLが公開する開口数0.55と8nmという数字が、その許容の外枠になります。
出口の管理は次工程と地続きです。前掲のフジミの解説は、粗大な砥粒や異物の混入が局所的な圧力集中を引き起こしてスクラッチや凹凸状欠陥の原因になるとし、加工対象物自身が持ち込む汚染として粗研磨で用いた一回り大きな砥粒の仕上げ工程への混入や基板端部の割れかけを挙げ、対策に加工工程ごとの装置とエリアの分離、粗研磨後の洗浄、エッジの面取りを挙げています。ラッピングから両面研磨へ渡る境目が、この持ち込みの管理の要所です。反りやパーティクル、洗浄の指標も同じ列に並びます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- ラッピング・鏡面研磨の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- ウェーハ・基板(全体)の工程ページ ── ウェハ製造の全体
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”両面研磨とは何ですか?
ウェハの表と裏を同時に研磨する加工です。上下の定盤でウェハを挟み、両面へ同じ条件で研磨材を作用させます。表裏を同時に削ることで、平行度と平坦度を同時に整えられます。
片面研磨と何が違いますか?
基準面の扱いが違います。片面研磨では裏面を保持して表面だけを磨くため、裏面の凹凸や保持の歪みが表面へ写ります。両面研磨は保持面に頼らないため、この写り込みが起きません。
なぜ平行度が重要なのですか?
露光で焦点が合う範囲が狭いためです。ウェハの厚みが場所によって違えば、表面の高さも変わります。装置がウェハを吸着して保持しても、厚みのばらつきはそのまま表面の高さのばらつきになります。
露光とどう関係しますか?
開口数を上げるほど焦点深度が浅くなるためです。ASMLは公式製品ページで、High NAが開口数0.55の光学系で8nmの解像度を実現すると述べています。解像度を上げるほど、ウェハ側の平坦度への要求が厳しくなります。
研磨のあとは何をしますか?
洗浄します。SUMCOの公式製品ページは、切り出した円盤の表面を丁寧に研磨し、洗浄して完成させると述べています。研磨で使った砥粒や薬液が残れば、それ自体が汚染になります。
裏面も鏡面にするのですか?
用途によります。表面はデバイスを作るため鏡面が要ります。裏面は保持と搬送のために一定の状態が要りますが、必ずしも表面と同じ仕上げにはしません。
両面研磨は工程順のどこに入りますか?
一次研磨として、ラッピングとエッチングのあとに入ります。フジミインコーポレーテッドの公式ページは、シリコンウェハーの加工プロセスと製品の対応を、スライス加工、ヘベル加工(外周面取り)、ラップ加工、一次研磨(両面研磨、GLANZOX1000シリーズ)、エッジ研磨、二次研磨・ファイナル研磨(GLANZOX 2000/3000シリーズ)、洗浄、検査の順で並べています。
1バッチ何枚を研磨しますか?
スピードファムの公式製品ページは、300mm又は200mmウェーハ向け両面ポリッシュ装置DSM20B-5P-4Dが1バッチあたり300mmで5枚、200mmで15枚を安定量産するとし、平坦度管理、自動化、メンテナンスに最も適した装置サイズだとしています。同社の300mmウェーハ向け両面ラップ装置DSM28B-5L-4Dは1バッチあたり15枚です。
何を使ってウェハを保持するのですか?
キャリアです。スピードファムの公式製品ページは、両面研磨用キャリアの材質としてEG、PVC、布入りベーク、SK、BS、SUSなどを挙げ、SUSキャリアに薄いエポキシ樹脂をコーティングしてワークのチッピングを防ぐコーティングキャリアを、シリコンウェーハや化合物半導体ウェーハ、ガラスのポリッシュ加工に最適だとしています。
研磨布は何が使われますか?
同社の公式製品ページは、シリコンウェーハのメカノケミカルポリッシュに最適な多孔性研磨パッドを挙げ、ポリウレタン表面の気孔から研磨剤が押し流されることで研磨品質とレートを実現するとしています。しなやかでベースに根を張ったマイクロレイアーにより耐久性も高いと書かれています。
研磨材は何を使うのですか?
コロイダルシリカです。SUMCOの公式ページは、ウェーハ表面の凹凸をなくし平坦度の高い鏡面仕上げを行うため、コロイダルシリカ液を用いてメカノケミカル研磨が施されると述べています。前段のラッピングでアルミナ研磨材を使うのと対照的です。
面内の分布が崩れたときは何を疑いますか?
圧力と温度の均一性です。フジミインコーポレーテッドの森永均氏による公開解説は、圧力の均一化が平坦な定盤と平滑なパッドで実現されるとし、軟質パッドではパッドの復元力により加工面の端部に圧力が集中しやすく対策にリテーナリングやテンプレートが用いられるとしています。同解説は、大型基板では中心部に熱がこもりやすく中心部の研磨速度が増大して平坦性へ悪影響を及ぼすとも述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ウェーハと基板 ── 工程としてのウェーハ製造
- ラッピング(遊離砥粒研磨)とは ── 両面研磨の前段で厚みを作る工程
- 鏡面研磨とは ── 両面研磨のあとに続く二段の仕上げ
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- SUMCO「Products」公式製品ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── 切り出した円盤を研磨し洗浄して完成させる流れ
- ASML「EUV lithography systems」公式製品ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── High NAが開口数0.55の光学系で8nmの解像度を実現すること
- SUMCO 公式「シリコンウェーハの製造方法(ウェーハ加工工程)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 厚さ1mm程度へのスライス、アルミナ研磨材による粗研磨、エッチングによる機械加工ダメージの除去、コロイダルシリカ液によるメカノケミカル研磨という5段
- スピードファム 公式製品ページ「Double Side Polisher/Lapper」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── DSM20B-5P-4Dの300mmで5枚・200mmで15枚と平坦度管理に最も適した装置サイズという記述、DSM28B-5L-4Dの1バッチ15枚と渦電流式定寸制御、キャリアサイズ30インチから2インチ、DSM30B/DSM16B/DSM9Bという機種、水晶の厚み16ミクロン
- スピードファム 公式製品ページ「Consumables」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 両面研磨用キャリアの材質、ウェッジキャリアとコーティングキャリアの構造と用途、多孔性研磨パッドの気孔から研磨剤が押し流される仕組み
- フジミインコーポレーテッド 公式「シリコンウェハーの加工プロセスと製品」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 一次研磨(両面研磨)にGLANZOX1000シリーズが当たり、二次研磨・ファイナル研磨にGLANZOX 2000/3000シリーズが続くという対応
- フジミインコーポレーテッド 森永均氏「化学機械研磨(CMP)の原理と進化:半導体・多様な素材への応用」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 圧力の均一化に平坦な定盤と平滑なパッドが要ること、軟質パッドの復元力による端部への圧力集中とリテーナリング、摩擦熱による加温と10℃で2倍という目安と51 kJ/mol、大型基板中心部の研磨速度増大と温度均一化の対策、砥粒濃度一定と砥粒数一定の違い、二酸化炭素の溶解によるpH低下と溶存酸素によるラフネス増大、粗研磨砥粒の持ち込み対策