焦点深度とは
焦点深度とは、露光でパターンの寸法が規格に収まる、ウェーハ表面の高さの幅です。 その幅の中に表面が入っていればパターンは仕様どおりに出来上がり、その幅を超えれば同じ設計でも寸法が動きます。
SEAJの半導体製造装置用語集は、焦点深度を、パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光焦点の深さとしています。例として、寸法の10パーセントのスペックを満たすフォーカスの範囲を、フォーカスの広さで表すとしています。同用語集の書き方です。
この書き方には、現場で働く性質が入っています。焦点深度の数値は、レンズの仕様と、合格とする寸法ずれの幅の両方から得られます。合格の幅を狭くとれば、同じ装置でも焦点深度は小さくなります。層ごとに要求が異なれば、同じ露光機でも層ごとに焦点深度が異なります。
与えられる深さの大きさは、光の波長とレンズの開口数で決まります。SEAJの用語集は、レイリーの式として、解像度が波長を開口数で割った値に比例し、焦点深度が波長を開口数の2乗で割った値に比例するとしています。
ここに引き換えの関係があります。解像度は開口数の1乗に反比例し、焦点深度は2乗に反比例します。電子情報通信学会の知識ベースは、開口数が大きくなると、解像度が小さくなる以上に焦点深度は小さくなってしまうと述べ、そこで微細化が進むとウェーハの平坦性への要求も厳しくなり、CMP技術が用いられるようになったとしています。細かく描く能力を1段買うたびに、高さの余裕はそれより速い割合で減っていきます。
それが無いと、現場で何が起きるのか
Section titled “それが無いと、現場で何が起きるのか”焦点の合う範囲を超えた場所では、パターンの寸法が規格の上下限を超えます。同じ露光の一区画の中でも、表面が高い場所と低い場所で仕上がりが変わります。設計は1つでも、出来上がりはウェーハの中の場所ごとに異なります。
その幅を使ってしまうものは、露光機の外にあります。日本半導体歴史館が公開する解説記事は、ウェーハに必要とされる平坦度が露光装置の焦点深度から逆算されるとしたうえで、露光時のウェーハ表面の凹凸が、ウェーハ自身の平坦度、デバイス工程で生じる段差、リソグラフィプロセスのバラツキ、ウェーハチャックの平坦性などの影響を受けるとし、これらのバラツキをすべて合わせたものを焦点深度の範囲内へ収める必要があるとしています。同記事は、経験的にウェーハ自身の平坦度は焦点深度の3分の1から4分の1以下が必要とされ、デザインルールとほぼ同等になるとも述べています。65ナノメートル世代へ向けた当時の記述です。
裏面の異物も同じ幅を食います。SEAJの技術ロードマップは、ウェーハ裏面のパーティクルがリソグラフィのときにウェーハ面の上下位置を変動させるとして問題になってきたと述べています。同ロードマップは、リソグラフィ装置の焦点深度が年々改良され、ウェーハの保持方法もピンで支える方法に変わってきたとしたうえで、ITRS2011がリソグラフィにおける2011年以降の基準として、100ナノメートルの粒でウェーハ1枚あたり200個と定めたことを記しています。2012年版の記述です。ウェーハの裏に付いた粒が、表のパターンを崩します。
何を測り、どう動かすのか
Section titled “何を測り、どう動かすのか”焦点深度は、層ごとに実測して求める数値です。手順は、フォーカスと露光量を意図的に振って露光し、出来上がったパターンの寸法を測ることになります。
SEAJの用語集は、こうして得られる寸法とフォーカスの関係をCDフォーカスカーブと呼び、パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光量とフォーカスをプロットしたときのフォーカスマージンや露光量マージンをプロセスウィンドウとしています。同用語集は、寸法への要求が比較的ゆるい層では、寸法の10パーセントのスペックを満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多いとしています。焦点深度は、その窓の横幅にあたります。
同用語集はまた、露光領域内の焦点位置のバラつきを焦点位置精度と呼んでいます。窓の広さに加えて、実際に露光する面の中で焦点がどれだけそろっているかを、別に測る必要があります。
深さを買う手と、差し出すもの
Section titled “深さを買う手と、差し出すもの”窓が狭いと分かったとき、動かせるつまみは3方向にあります。
1つ目は、光の当て方とマスクです。SEAJの用語集は、光軸の中心を外した位置に絞りを入れてレチクルへ斜めに光を入れる変形照明で、解像度と焦点深度が向上するとしています。同用語集は、位相シフトマスクについても、光学コントラストを改善して解像性と焦点深度を増やすとしています。SEAJの技術ロードマップは、偏光照明とダイポール照明を組み合わせた開口数1.30の液浸露光で39ナノメートルのラインアンドスペースを解像した例を挙げ、800ナノメートルという比較的大きな焦点深度を得ているとしています。2012年版が引く1つの実験例の値です。
差し出すものは、計算の時間と費用です。同ロードマップは、自由な形の補助パターンを使えば焦点深度が拡大する一方で計算の時間が長くなり、現実的な解から遠ざかると述べ、補助パターンの種類の選択がコストと性能のトレードオフになるとしています。
2つ目は、下地を平らにすることです。電子情報通信学会の知識ベースが述べるとおり、CMPが広く使われるようになった動機の1つがここにあります。SEAJの用語集は、レジストの下に敷く下層膜にも平坦化の効果があるとし、多層レジストプロセスを、レジスト表面を平坦化して解像力を向上させる方法としています。露光機の焦点深度を広げにくい場合は、そこへ持ち込む凹凸のほうを減らします。
3つ目は、1回で描くのをやめることです。SEAJの技術ロードマップは、2012年に量産が始まる32ナノメートル世代では超解像技術のみでは焦点深度とパターン解像度が不足するため、マスクを2枚あるいはそれ以上使うダブルパターニングで実現する方法が提案されている、としています。工程数と重ね合わせの負担を引き受けるかわりに、1回あたりの露光を楽にする選び方です。
ニコンは公式の解説ページで、露光装置の性能を左右する技術として、投影レンズの解像度、重ね合わせ精度、スループットの3つを挙げています。焦点深度は、この3つのどれを取りにいっても跳ね返ってきます。露光装置を選ぶ場面でも、工程を組む場面でも、同じ幅の取り合いが続きます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”焦点深度とは何ですか?
露光でパターンの寸法が規格に収まる、ウェーハ表面の高さの幅です。SEAJの用語集は、パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光焦点の深さとしています。
焦点深度の数値は何で上下しますか?
合格とする寸法ずれの幅です。SEAJの用語集は、例として寸法の10パーセントのスペックを満たすフォーカスの範囲で表すとしています。合格の幅を狭くとれば、同じ装置でも焦点深度は小さくなります。
焦点深度は何によって決まりますか?
光の波長とレンズの開口数です。SEAJの用語集はレイリーの式として、焦点深度が波長を開口数の2乗で割った値に比例するとしています。解像度は開口数の1乗に反比例するため、細かく描くほど深さは速く失われます。
深さが不足すると、現場では何が起きますか?
ウェーハ表面の高さがその幅を超えた場所で、パターンの寸法が規格の上下限を超えます。同じ設計でも、ウェーハの中の場所によって仕上がりが変わります。
何がその幅を使ってしまうのですか?
日本半導体歴史館が公開する解説記事は、露光時のウェーハ表面の凹凸が、ウェーハ自身の平坦度、デバイス工程で生じる段差、リソグラフィプロセスのバラツキ、ウェーハチャックの平坦性などの影響を受けるとしたうえで、これらをすべて合わせた凹凸を焦点深度の範囲内へ収める必要があるとしています。
どうやって測るのですか?
フォーカスと露光量を振って、出来上がった寸法を測ります。SEAJの用語集は、そこから得られるフォーカスマージンと露光量マージンをプロセスウィンドウと呼び、寸法の10パーセントのスペックを満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多いとしています。
焦点深度を広げる方法はありますか?
照明とマスクを変える方法があります。SEAJの用語集は、変形照明や位相シフトマスクで解像度と焦点深度が向上するとしています。ただし計算の時間とマスクの費用が増えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 焦点深度とプロセスウィンドウと露光量裕度の記述、レイリーの式、焦点位置精度、変形照明と位相シフトマスクが焦点深度を上げること、下層膜と多層レジストの平坦化効果
- 電子情報通信学会 知識ベース「プロセス要素技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 焦点深度が波長を開口数の2乗で割った形になること、開口数を上げると解像度以上に焦点深度が縮むこと、CMPが使われるようになった経緯
- SEAJ 半導体製造装置技術ロードマップ「リソグラフィ」2012年版(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 開口数1.30の液浸で39ナノメートルを解像した例と焦点深度800ナノメートル、補助パターンで焦点深度が拡大するかわりに計算の時間が伸びること、32ナノメートル世代で焦点深度が不足しダブルパターニングが提案されたこと
- SEAJ 半導体製造装置技術ロードマップ「ウェーハプロセス」2012年版(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 裏面パーティクルがウェーハ面の上下位置を変動させること、保持方法がピン支持へ変わったこと、ITRS2011の裏面パーティクル基準
- 日本半導体歴史館「65ナノ時代のシリコン材料技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 平坦度が焦点深度から逆算されること、表面の凹凸に関わる4つの要因、平坦度が焦点深度の3分の1から4分の1以下という経験則
- ニコン「露光から計測・検査まで」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 露光装置の性能を左右する3つの技術