ISSG(その場水蒸気生成)とは
ISSG(その場水蒸気生成)とは、酸化に使う水蒸気を、加熱したウェーハのある反応室の中でその場で作りながら進める、枚葉式の酸化のやり方です。 高エネルギー加速器研究機構(KEK)で公開されているセミナー資料「LSI製造技術の基礎」は、酸化の装置をファーネス(炉)酸化と枚葉酸化へ分け、枚葉酸化の側にISSG(In situ Steam Generation)を挙げています。
酸化そのものの手順は単純です。SCREENセミコンダクターソリューションズの解説は、熱酸化を、酸素などのガスの中でウェーハを加熱し、表面に酸化シリコンの膜を作る方法としています。難しいのは、どれだけの厚さを、どれだけそろえて、どれだけ短い時間で作るかのほうです。膜そのものの役割はゲート酸化膜の側にまとめてあります。
酸化は長いあいだ、炉の仕事でした。神戸大学の学位論文は、酸化拡散の装置がバッチ式と枚葉式の二つに大別されること、バッチ式では数十枚のウェーハを一定間隔に並べ、電気ヒータで800〜1200℃に数十分から数時間加熱することを記しています。SCREENの解説も、熱酸化はまとめて流せるため生産性が高いとしています。1回に数十枚を通せる装置は、量産の土台になります。
この土台では手が届きにくい相手が出てきました。SCREENは、枚葉式の赤外線ランプアニール装置を数十秒で1,000℃まで上げられる装置とし、その利点として厚さ10nm以下の超薄型シリコン酸化膜が作れることを挙げています。ここまでの枚数と温度と時間は、いずれも各資料が装置の種類ごとに挙げた一般的な範囲です。ISSGは、この枚葉の側に並ぶ酸化です。名前が指しているのは、水蒸気をその場、つまりウェーハのある反応室の中で作るという点です。
薄い膜と、掘った溝の内壁が相手になります
Section titled “薄い膜と、掘った溝の内壁が相手になります”理由はもう一つあります。電子情報通信学会の知識ベースは、素子分離のSTIプロセスで、エッチングで掘った溝の内壁を10nm程度だけ先に酸化し、そのうえで酸化膜を埋めると書いています。溝の側面と底と角までを同じ厚さで酸化したい工程が、実際にあります。同知識ベースは別のところで、ラジカルの反応力で進む酸化はすべての面方位のシリコン表面に同じ速度で膜を作れるため、3次元の立体構造に向くとも述べています。2010年に受領された章の記述です。
炉の側も進んでいます。東京エレクトロンは、バッチ式の熱処理装置がホットウォール内の熱均衡空間での加熱によって良好な膜質を実現し、クリーンルーム面積あたりの高い生産性を届けると述べています。同社は、TELFORMULAが常圧および減圧の酸化、ラジカル酸化、酸窒化、各種アニールに対応するとも書いています。目標の温度までの昇温時間と反応後の急速冷却を短くするために高速昇降温ヒーターを開発し、リアクターの熱容量を最小化したとしています。バッチ式でも、ウェーハを入れてから取り出すまでの時間を詰める方向へ進んでいます。
ずれると、現場で何が起きるのか
Section titled “ずれると、現場で何が起きるのか”酸化がずれたときにいちばん重いのは、やり直しのきく工程が限られることです。KEKの公開資料は、LSIの製造でやり直しがきくのはホトリソくらいで、洗浄にも回数の制限があるものがあると述べています。同資料は、各工程がばらつきを持ち、同じレシピを使っても結果が毎回ずれることも、製造の問題点として挙げています。
しかも、気づくのが遅れます。同資料は、量産では定常的にウェーハが流れているため最終のテストで不具合が分かっても既に遅く、中程度の生産量で低コストの製品でもウェーハの仕損費用は億円の単位になると述べています。この見積りは、8インチ工場の規模とウェーハ価格を参考値として添えた2014年の資料のものです。工程が長いぶん納期にも響くとしています。したがって、酸化を工程の中で締めておく意味は、膜の出来を超えて費用と納期にまで及びます。
何を測り、何を動かすのか
Section titled “何を測り、何を動かすのか”測る対象ははっきりしています。KEKの公開資料は、炉酸化でも枚葉酸化でも、ロットごとの管理項目として膜厚とn/kを挙げています。n/kは膜の光学定数で、厚さと合わせて膜の性質を映します。同資料は、どのパラメータにどれだけの許容値を持たせるかを書き出し、工程ごとの管理値を設けて統計的に追うことを、対策として示しています。
厄介なのは温度です。神戸大学の学位論文は、高温のウェーハが汚れてしまうため熱電対のような接触式の温度計を当てられず、現場では焼く前に、石英のさやへ収めた熱電対で反応管の内側の温度を先に読み、そこが均一になるヒータ設定を選んでからウェーハを流していたと記しています。同論文は、加熱の時間が短くなるほど反応管の内側とウェーハの温度が離れ、ばらつきを抑えにくくなったことも述べています。
枚葉のランプ加熱では、触れずに測って、光を配ります。ハイソルの製品ページは、同社の大気圧ランプアニール装置について、最高到達温度1250℃、最高昇温速度150℃/秒、非接触加熱、450〜1250℃を測るパイロメータ、10ゾーンに分けたランプ出力制御による面内温度の均一性を挙げています。同社製品の仕様値です。動かす手は、ゾーンごとのランプ出力と、ガスの流量と、時間になります。
何を差し出すのか
Section titled “何を差し出すのか”短くできるかわりに、まとめて流す道を手放します。KEKの公開資料は、装置の種類ごとに熱をかける時間の桁を並べ、炉の拡散を分から時間、RTAを秒、FLAとLSAをミリ秒とし、いずれも1200℃までの温度としています。
同じ熱の話は、後ろの工程にも及びます。先に打ち込んだ不純物は、その後の高温で動きます。枚葉で短く焼く選択は、熱バジェットの節約と、1時間あたりの枚数との取り替えになります。どちらを取るかは、その膜が薄いかどうか、溝の内壁が相手かどうかで決まります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ISSGとは何ですか?
酸化に使う水蒸気を、加熱したウェーハのある反応室の中でその場で作りながら進める、枚葉式の酸化のやり方です。名前のIn Situ Steam Generationが、その場で水蒸気を作るという意味を表しています。
炉でまとめて焼く酸化と、何が異なるのですか?
1回に載せるウェーハの枚数と、熱をかける時間です。神戸大学の学位論文は、バッチ式では数十枚を一定間隔に並べ、800〜1200℃で数十分から数時間加熱すると記しています。枚葉のランプ加熱では、SCREENの解説によれば数十秒で1,000℃まで上げられます。
なぜ枚葉で短く焼くやり方が要るのですか?
薄い膜を作るためです。SCREENの解説は、赤外線ランプアニール装置の利点として、厚さ10nm以下の超薄型シリコン酸化膜が作れることを挙げています。多品種小ロットの生産にも向くとしています。
現場では何を測っているのですか?
膜の厚さと光学定数です。KEKの公開資料は、炉酸化でも枚葉酸化でも、ロットごとの管理項目として膜厚とn/kを挙げています。
温度はどうやって測るのですか?
ウェーハに触れずに測ります。神戸大学の学位論文は、高温のウェーハが汚れてしまうため接触式の温度計を当てられず、現場では石英のさやへ収めた熱電対で反応管の内側の温度を先に読み、そこが均一になるヒータ設定を選んでいたと記しています。ランプ加熱の装置では放射温度計が使われ、ハイソルの製品ページは450〜1250℃の範囲を測るパイロメータを挙げています。
酸化がずれると、どうなりますか?
多くの場合、そのまま流れます。KEKの公開資料は、LSIの製造でやり直しがきくのはホトリソくらいで、洗浄にも回数の制限があるものがあると述べています。
炉は使われているのですか?
使われています。東京エレクトロンは、バッチ式の熱処理装置がホットウォール内の熱均衡空間での加熱によって良好な膜質を実現すると述べ、同社のTELFORMULAが常圧および減圧の酸化、ラジカル酸化、酸窒化、各種アニールに対応するとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 高エネルギー加速器研究機構(KEK)「LSI製造技術の基礎」測定器開発室セミナー資料(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 酸化をファーネス酸化と枚葉酸化へ分ける区分とISSGの位置、ロットごとの管理項目としての膜厚とn/k、炉の拡散とRTAとFLA・LSAの時間の桁、やり直しのきく工程が限られることと仕損の話
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「成膜工程」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 熱酸化の作り方とまとめて流せる理由、赤外線ランプアニール装置が数十秒で1,000℃に達すること、10nm以下の膜と多品種小ロットへの適性
- 神戸大学 学術成果リポジトリ「半導体酸化拡散・化学気相成長装置の高精度熱処理・成膜反応プロセスに関する研究」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── バッチ式と枚葉式の大別、数十枚を800〜1200℃で数十分から数時間加熱すること、熱電対による接触測定が難しい事情
- ハイソル「大気圧ランプアニール装置(RTP・RTA)AccuThermo AW820M」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 最高到達温度と昇温速度、非接触加熱とパイロメータ、10ゾーンのランプ出力制御
- 東京エレクトロン「成膜 TELINDYシリーズ」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── バッチ式のホットウォールでの加熱、TELFORMULAが対応する酸化とラジカル酸化と酸窒化、高速昇降温ヒーターと熱容量の最小化
- 電子情報通信学会 知識ベース「集積回路プロセス技術概論」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── STIで掘り込んだ内壁を10nm程度直接酸化すること、ラジカルの反応が面方位によらず同じ速度で進むこと