ラジカルとは
ラジカルとは、プラズマの中で分子の結合が切れてできた、電気的に中性でありながら反応する力の強い粒子です。 中性のまま表面へ届き、膜と化学反応して気体へ変えます。
削れるかどうかは、気体になれるかで決まります
Section titled “削れるかどうかは、気体になれるかで決まります”ドライエッチングは削り取る作業と呼ばれますが、中身は化学反応です。アルバックテクノは真空技術辞典で、プラズマエッチングという言葉を、反応性ガスの低温プラズマに生まれた活性化原子、つまりラジカルが試料と化学反応を起こし、揮発しやすい化合物へ変えて加工する技術としています。同社の辞典に沿えば、削るという言葉の実体は、固体の膜を気体へ移し替えて運び去ることです。
ラジカルの役目は、膜の原子と結びついて、装置の温度でも気体になる化合物へ変えるところにあります。反応してできた化合物が気体になり、真空ポンプが運び去ったところで一区切りです。この最後の一歩が滞ると、加工は途中で止まります。オプトランは技術と応用のドライエッチングのページで、反応生成物の蒸気圧温度が高いと、削り取ったものが固体のまま積もって反応を邪魔し、装置の内壁やICP石英板へも付着してパーティクルの発生要因になるとしています。同社が示すガスと反応副生成物の表では、SiにCF4やSF6を当ててSiF4を作る、AlにCl2やBCl3を当ててAlCl3を作るというように、気体になる相手を軸にエッチングガスが並びます。
同じプラズマから、電荷を持つ側と中性の側が生まれます
Section titled “同じプラズマから、電荷を持つ側と中性の側が生まれます”産業技術総合研究所(産総研)は2024年8月28日の発表で、プラズマ加工の仕組みとして、プラズマの中では電子が原子や分子へぶつかって相手が電荷を帯び、また電子が分子へぶつかると分子の結合が切れて、反応する力の強い粒子である活性種、すなわちラジカルができるとしています。同発表は、プラズマからシリコンウェーハの表面へ飛んでくる活性種とイオンが、化学反応と物理的な衝撃の両面から同じ表面へ作用することで微細加工が成り立つとしています。
同じ電子の衝突から、二種類の粒子が生まれます。片方は電荷を帯びたイオン、もう片方は中性のラジカルです。この差が、そのまま届き方の差になります。ウェーハの手前にはシースと呼ばれる電位の落差があり、電荷を帯びたイオンはここで縦へ加速されます。中性のラジカルはこの落差の影響の外にあり、気体の分子と衝突しながら、あらゆる向きから表面へ届きます。
産総研の同じ発表は、四フッ化炭素(CF4)プラズマでシリコン酸化膜を加工した実験について、CF3+イオンの酸化膜への侵入長が数ナノメートル程度、CF3活性種は数原子層程度としています。イオンのほうが深く入り込み、ラジカルは表面の数原子層で反応を済ませます。
現場で動かす手は、ガスと圧力と電力です
Section titled “現場で動かす手は、ガスと圧力と電力です”ラジカルの量と種類は、ガス分子がどれだけ解離したかで決まります。手元にあるつまみは、ガスの種類、流量、圧力、投入する高周波の電力です。オプトランは、エッチング速度が反応性ガスの種類、基板へのイオン衝撃の強さ、圧力、プラズマ密度といった条件によって異なるとし、速度を上げると形や選択比といった他の項目も一緒に動くため、全体を通して条件を最適化するとしています。以上は同社の技術ページの記述です。
測るほうで使うのは、プラズマそのものの光です。産総研は同じ発表で、加工中のプラズマを分光して得た発光スペクトルから、フッ化炭素活性種(CF3)とフッ素活性種(F)を検出したとしています。装置の窓から届く光を波長ごとの強さへ分ければ、どの活性種がどれだけ居るかの手がかりになります。エッチングの終点検出にプラズマ発光が使われるのも同じ理屈で、オプトランは終点検出の手段としてプラズマ発光、イオン質量分析、レーザー膜厚計を挙げています。
速さと形は、引き換えの関係にあります
Section titled “速さと形は、引き換えの関係にあります”中性のラジカルはあらゆる向きから届くため、そのままではマスクの下へも回り込みます。横も縦も似た速さで進むので、線幅が痩せ、寸法が設計から離れます。オプトランは、活性種であるフリーラジカルが対象の材料と反応して進むケミカルエッチング、イオンが自己バイアスなどの電場で加速されて衝突する物理エッチングやスパッタエッチング、その両方を合わせたイオンアシストエッチングを区別し、合わせたほうが単独のエッチングより高速になるとしています。同社の技術ページの記述です。
つまり削る量を稼ぐ側はラジカルが担い、垂直な形を作る側はイオンが担います。イオンを強めれば縦方向がそろい速さも上がりますが、引き換えにマスクの目減りと下地のダメージを受け取ります。産総研は同じ発表の今後の予定として、プラズマ加工で使うイオンエネルギーを下げる技術と、活性種の反応性を制御する技術の研究開発を挙げています。削る力をラジカル側とイオン側のどちらへ厚く配分するかが、そのまま形とダメージの取引になります。イオン側の数字はイオンエネルギーとはにまとめています。
ラジカルだけを届ける工程もあります
Section titled “ラジカルだけを届ける工程もあります”フォトレジストを剥がすアッシングは、ラジカルの化学反応をほぼそのまま使う工程です。SCREENは初心者のための半導体入門のレジスト剥離のページで、プラズマアッシャがプラズマ化したガス(一般には酸素)とレジストを反応させ、炭素と酸素と水素からできたレジストをCO2、H2O、O2という気体へ変えて取り除くとし、この方法をレジスト剥離で最もポピュラーな方法としています。
アルバックテクノは真空技術辞典のアッシャーの項で、有機物のフォトレジストを酸素のプラズマで灰にし、炭酸ガスと水蒸気の形で排気するとし、ウェーハが受けるプラズマダメージを抑えるために、マイクロ波で励起するダウンフロー型や、RIEと組み合わせた型も使われるとしています。同社の辞典の記述です。ダウンフロー型は、プラズマを作る場所とウェーハを離し、寿命の続く中性のラジカルを下流へ流す構えです。届くイオンの量が絞られるぶん、下地への衝撃も小さくなります。代わりに縦方向をそろえる力を手放すため、垂直な溝を彫る場面はICPのようにイオンの衝撃を強める装置の側へ回します。
サムコは半導体製造装置入門で、高周波をかけてガスをプラズマにし、そこで生まれたイオンとラジカルで半導体を加工する方式をRIE(反応性イオンエッチング)と呼んでいます。削る工程も剥がす工程も、同じプラズマから生まれた二種類の粒子をどう配分するかという話に行き着きます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ラジカルとは何ですか?
プラズマの中で電子が分子に衝突し、分子の結合が切れてできる、電気的に中性で反応する力の強い粒子です。産業技術総合研究所は2024年8月28日の発表で、これを活性種(ラジカル)と呼び、反応性が高い粒子種としています。
イオンとの違いは何ですか?
電荷の有無と、届く向きです。イオンは電荷を持つため、ウェーハ手前のシースの電界で縦へ加速されます。ラジカルは中性のため、その電界の外を進み、あらゆる向きから表面へ届きます。産総研の同じ発表は、活性種による化学反応とイオンによる物理的な衝撃が重なって微細加工が成り立つとしています。
ラジカルはどうやって膜を削りますか?
固体の膜を気体へ移し替えます。アルバックテクノは真空技術辞典で、プラズマエッチングを、低温プラズマに生まれた活性化原子つまりラジカルが試料と化学反応を起こし、揮発しやすい化合物へ変えて加工する技術としています。できた化合物が気体になり、真空ポンプが運び去ったところで一区切りです。
ラジカルが多いと形はどうなりますか?
横へ広がります。中性のラジカルはあらゆる向きから届くため、マスクの下へも回り込み、線幅が痩せます。垂直な溝を彫る場面では、縦へ加速されたイオンを足して進む向きをそろえます。
ラジカルの量は何で測りますか?
プラズマそのものの光です。産総研は同じ発表で、加工中のプラズマを分光して得た発光スペクトルから、フッ化炭素活性種(CF3)とフッ素活性種(F)を検出したとしています。オプトランも、ドライエッチングの終点検出の手段としてプラズマ発光、イオン質量分析、レーザー膜厚計を挙げています。
アッシングもラジカルの反応ですか?
そうです。SCREENは初心者のための半導体入門で、プラズマアッシャがプラズマ化した酸素とレジストを反応させ、CO2、H2O、O2という気体へ変えて取り除くとしています。アルバックテクノも真空技術辞典のアッシャーの項で、酸素プラズマによる灰化と、炭酸ガスと水蒸気としての排気を挙げています。
ダウンフロー型とは何ですか?
プラズマを作る場所とウェーハを離し、中性のラジカルを下流へ流す構えです。アルバックテクノは真空技術辞典で、ウェーハが受けるプラズマダメージを抑えるために、マイクロ波で励起するダウンフロー型や、RIEと組み合わせた型も使われるとしています。イオンの衝撃が小さくなる代わりに、縦方向をそろえる力は手薄になります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- イオンエネルギーとは ── ラジカルが化学で削る側、イオンエネルギーが物理で叩く側の強さ
- ドライエッチングとは ── ラジカルとイオンを使う削り方そのもの
- 選択比(エッチング)とは ── ラジカルの選び方が結果に出る指標
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- 産業技術総合研究所「半導体の微細加工ダメージを診る」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ラジカルとイオンの生まれ方、CF3活性種とCF3+イオンの侵入長、発光スペクトルからわかる活性種
- アルバックテクノ「プラズマエッチング(plasma etching)」真空技術辞典(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ラジカルと試料の化学反応で揮発性の化合物を作るという加工の筋道
- アルバックテクノ「アッシャー(asher)」真空技術辞典(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 酸素プラズマによる灰化と、ダウンフロー型でのプラズマダメージ低減
- オプトラン「ドライエッチング」技術と応用(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 活性ラジカルとイオンの役割、反応生成物が気化する前に堆積する場合、ケミカルと物理とイオンアシストの区別
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「レジスト剥離」初心者のための半導体入門(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 酸素プラズマとレジストの反応でCO2、H2O、O2になる筋道
- サムコ「ドライエッチング装置とは」半導体製造装置入門(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── イオンとラジカルで加工するRIEの位置づけ