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STI(素子分離)とは

STI(素子分離)とは、シリコン基板の表面へ細い溝を掘り、そこへ絶縁膜を埋めて、隣り合う素子どうしを電気的に切り離す構造です。 トランジスタそのものより先に、トランジスタが入る区画の輪郭を引く工程にあたります。

素子を作り込む前に、区切りを引きます

Section titled “素子を作り込む前に、区切りを引きます”

ウェーハは1枚のつながったシリコンです。区切りを作らずにトランジスタを作り込むと、隣どうしがそのシリコンを通じて電流をやりとりします。JEITA(電子情報技術産業協会)の半導体用語集は、アイソレーション(素子間分離)を、ICで同一基板内の各素子が干渉し合って悪影響がおよぶことを避けるため、互いを電気的に絶縁分離することとしています。同用語集は、代表例としてLOCOSを挙げています。

分離のやり方は複数あります。日新イオン機器のイオン注入ディクショナリーは、隣り合うトランジスタを電気で切り離す手段を2つの系統に分けています。ひとつは誘電体分離で、厚い酸化膜を育てるLOCOSと、酸化膜を溝へ埋めるトレンチ分離が挙がります。もうひとつはPN接合分離です。同社は、誘電体分離を使う場合、上部配線の電圧で表面が反転する事象とパンチスルーを抑えるため、ソースドレインとは逆の導電型のイオンをチャネルストップとして打ち込むとしています。絶縁膜を埋める工程に、イオン注入が重ねて使われます。PN接合分離について同社は、ソースドレインとは逆の導電型を打ち込んで逆バイアスをかけ、その状態で電流の行き来を断つと述べています。化合物半導体については、イオン注入で結晶欠陥を入れて高抵抗にし、電気的に切り離す方式が使われるとも述べています。分離という言葉が指す中身は、材料と方式によって入れ替わります。

LOCOS法では、酸化膜が窓の外側まで太ります

Section titled “LOCOS法では、酸化膜が窓の外側まで太ります”

日本半導体歴史館(半導体産業人協会)のSTIの解説は、1970年代から素子分離にLOCOS法が長く使われてきたとしています。同館の記述では、LOCOS法は窒化シリコン膜をマスクにしてシリコンを酸化し、必要な箇所だけに厚い酸化膜を作る方法です。JEITAの半導体用語集も、LOCOSを、窒化膜でIC素子を作る領域を覆って高温で酸化すると、窒化膜のある領域の外側に酸化膜が育つ局所酸化膜技術としています。同用語集はLOCOSを、素子どうしの間隔を詰められるため高集積化にきわめて有効な技術だとしています。LOCOS法そのものが、集積度を上げるための工夫でした。

ここに面積の問題が出ます。日本半導体歴史館は、LOCOS法ではシリコンが横方向にも酸化されるため、微細にパターンを作っても酸化後の寸法が大きくなってしまう欠点があったとしています。設計側が窓を細くしても、酸化を経たあとの分離幅はその窓より広くなります。

同じ窓から出発しても、分離が取る幅は入れ替わります
LOCOS法:酸化膜が横へ太りますSTI:溝の幅が分離の幅になりますシリコン基板設計した窓酸化膜が取る幅シリコン基板設計した窓溝が取る幅窒化膜の窓の外側までシリコンが酸化します窓を細くしても、酸化後の寸法は大きくなりますRIEで掘った溝は横方向への広がりを抑えます窓の幅が、そのまま分離の幅になります分離が面積を取るほど、同じ面積へ載せられる素子の数が減ります。断面の幅の比は模式です
左のLOCOS法では、酸化が横方向にも進むため、設計した窓より広い幅を分離に取られます。右のSTIでは、溝の幅がそのまま分離の幅になります。微細化が進むほど、この差がチップ面積を左右します。

溝を掘って埋めると、窓の幅が分離の幅になります

Section titled “溝を掘って埋めると、窓の幅が分離の幅になります”

JEITAの半導体用語集は、STI(shallow trench isolation)を素子分離方法の一種に数えています。同用語集をたどると、まずドライエッチングでシリコン基板の表面へ溝を切り、次にCVDなどで絶縁膜を積み、最後にCMPなどで平らに削って分離を仕上げる、という順序になります。ACCRETECH(東京精密)の技術用語集も、Si基板に素子分離のための溝をドライエッチング加工で形成した後、絶縁膜として酸化膜を埋め込み、その後に不要な酸化膜をCMP技術で除去するとしています。

日本半導体歴史館は、溝の形成にRIEを用いればLOCOSのような横方向への広がりを抑えられるため、微細化にとって有利としています。JEITAの半導体用語集も、STIならLOCOSより分離領域を小さく収められるとしています。掘った幅がそのまま分離の幅になる、という一点が、この構造の値打ちです。

掘って、埋めて、削るまでが揃って初めてSTIになります
1. 溝を掘りますドライエッチング(RIE)2. 絶縁膜で埋めますCVDによる酸化膜の堆積3. 削って平らにしますCMPによる余分な酸化膜の除去代償として引き受けるもの溝を作る面に欠陥が生じる余地代償として引き受けるもの微細な溝への埋め込み性の要求代償として引き受けるもの平坦化にCMPが要ること面積を節約する代わりに、掘る面の質と、埋める膜の質を引き受けます。埋めた酸化膜には、出来上がった後の耐エッチング性も要求されます。
掘る、埋める、削るの3工程で分離が仕上がります。面積を節約する代わりに、溝を掘る面の欠陥、微細な溝への埋め込み性、平坦化のためのCMPを引き受けることになります。

面積と引き換えに、掘る面と埋める膜を引き受けます

Section titled “面積と引き換えに、掘る面と埋める膜を引き受けます”

溝を掘る以上、掘られた面の状態が結果を左右します。JEITAの半導体用語集は、STIについて、溝を形成する基板表面に欠陥が生じることを避ける工夫が必要としています。この一文が、STIを工程として難しくしている部分です。

埋める側にも条件が付きます。日本半導体歴史館は、STIの着想そのものは1980年ごろに早々と出ていたものの、平坦化と埋め込み酸化膜が壁になって実用化は遠く、CMPが平坦化に使われるようになって初めて実地に乗ったとしています。同館はさらに、埋め込み酸化膜へ微細な溝を隅まで満たす性能と、仕上がった後の耐エッチング性が求められ、そのために枚葉式のCVD酸化膜装置が要ることになったとしています。リフロー性の酸化膜、HDPを用いた異方性デポ、塗布型の酸化膜が登場して実用化が進んだ、というのが同館の記述です。

量産への到達時期も同館が記述しています。製品への採用はIBMが早く0.35μmのDRAMで使用し、日本メーカーでは東芝が1996年にDRAMで量産に採用したとしています。以上は同館が公開する記述にもとづきます。

前工程の順序では、いちばん手前にあたります

Section titled “前工程の順序では、いちばん手前にあたります”

日新イオン機器のイオン注入ディクショナリーは、FEOL(前工程)に含まれるプロセスとして、分離を先頭に、ウェル、ゲート絶縁膜とゲート電極、ソースドレイン、層間絶縁膜、そしてコンタクトホールの形成までを挙げています。この並びで分離のすぐ次に来るのがウェルです。区画の輪郭を先に引き、その中を作り込んでいく順序になっています。

STI(素子分離)とは何ですか?

シリコン基板の表面へ細い溝を掘り、そこへ絶縁膜を埋めて、隣り合う素子どうしを電気的に切り離す構造です。JEITAの半導体用語集は、STI(shallow trench isolation)を素子分離方法の一種としています。

素子分離が無いと何が起きますか?

隣の素子どうしが1枚のシリコンを通じて干渉します。JEITAの半導体用語集は、アイソレーション(素子間分離)を、同一基板内の各素子が干渉し合って悪影響がおよぶことを避けるため、互いを電気的に絶縁分離することとしています。

STIはどうやって作りますか?

掘って、埋めて、削ります。JEITAの半導体用語集をたどると、ドライエッチングでシリコン基板の表面へ溝を切り、CVDなどで絶縁膜を積み、CMPなどで平らにならして分離を仕上げる順序になります。ACCRETECH(東京精密)の技術用語集も、溝をドライエッチングで加工し、酸化膜を埋めたうえで、余った酸化膜をCMPで取り除くと述べています。

LOCOS法と比べて何が入れ替わりますか?

分離が取る面積です。日本半導体歴史館は、LOCOS法ではシリコンが横方向にも酸化されるため、微細にパターンを作っても酸化後の寸法が大きくなる欠点があったとしています。同館は、溝の形成にRIEを用いれば横方向への広がりを抑えられるため微細化に有利としており、JEITAの半導体用語集も、STIならLOCOSより分離領域を小さく収められるとしています。

絶縁膜を埋めれば分離は完了しますか?

イオン注入も組み合わせます。日新イオン機器のイオン注入ディクショナリーは、誘電体分離を使う場合、上部配線の電圧で表面が反転する事象とパンチスルーを抑えるため、ソースドレインとは逆の導電型のイオンをチャネルストップとして打ち込むとしています。

溝を掘る代償は何ですか?

溝を掘った面と、そこへ埋める膜の質です。JEITAの半導体用語集は、溝を形成する基板表面に欠陥が生じることを避ける工夫が必要としています。日本半導体歴史館は、埋め込み酸化膜へ微細な溝を隅まで満たす性能と、仕上がった後の耐エッチング性が求められ、そのために枚葉式のCVD酸化膜装置が要ることになったとしています。

いつから量産で使われていますか?

日本半導体歴史館は、コンセプトが1980年ごろの早い時期から提案されていたものの、平坦化と埋め込み酸化膜の点で実用化には遠く、平坦化にCMPが使われるようになって実用化が進んだとしています。同館は、製品への採用としてIBMが0.35μmのDRAMで早くに使用し、日本メーカーでは東芝が1996年にDRAMで量産採用したと記述しています。

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