拡散炉とは
拡散炉とは、多数枚のウェーハをまとめて高温で熱処理する炉です。 名前は不純物を熱で拡散させる工程に由来しますが、酸化、アニール、成膜も同じ構造の炉で行われます。
炉という装置の特徴は、まとめて熱処理することにあります。高温を作って保つには時間がかかります。昇温と降温にも時間を要する以上、1枚ずつ流すと装置あたりの枚数が頭打ちになります。数十枚から百枚以上をまとめて入れることで、1枚あたりの時間を下げます。
同じ構造で複数の工程を担える点も特徴です。KOKUSAI ELECTRICは公式製品ページで、同社グループがLP-CVD技術、酸化技術、アニール(低温、高温)技術、拡散技術、ALD技術に対応する成膜プロセス装置を提供していると述べています。炉の中へ何のガスを流し、どんな温度履歴を与えるかで、酸化にも拡散にも成膜にもなります(ウェット酸化、ドライ酸化、LPCVD(減圧CVD))。
配置には縦型と横型があります。ジェイテクトサーモシステムは公式ページで、縦型および横型の炉ファミリー、ランプアニールおよびRTPシステム、SiCパワー半導体向け熱処理装置を掲載しています。300mm世代では、設置面積を抑えられることと、粒子が落ちてウェーハ面へ乗る経路を減らせることから、ウェーハを水平に保って縦に積む縦型が主流です(パーティクル)。
まとめて流す方式が残る理由は、生産性の側にあります。SCREENの初心者のための半導体入門「成膜工程」は、熱酸化が酸素などのガスを入れた炉の中でウェーハを加熱する方法で、まとめて流せるため生産性が高いと記しています。東京エレクトロンはTELINDYシリーズの公式製品ページで、TELINDY PLUSがバッチ式ならではのホットウォール内の熱均衡空間で流すことにより、良好な膜質とクリーンルーム面積あたりの生産性の高さを両立させるとし、同シリーズが累計1万台を超える実績を持つとしています。
1バッチの枚数と温度域
Section titled “1バッチの枚数と温度域”炉の性格は、1バッチに入る枚数と常用温度で決まります。東京エレクトロンはTELINDYシリーズの公式製品ページで、TELINDY PLUSに125枚仕様のオプション、FTPSヒーター、短TAT、2ボート運用を挙げています。TATとは、ウェーハを投入してから回収するまでの時間のことです。同社は最新機のEVAROSについて、300mmウェーハで従来比最大となる一度に200枚を流せるとし、200mm縦型のALPHA-8SE iは150/200mmに対応して一度に流せる枚数が最大150枚だとしています。KOKUSAI ELECTRICは公式製品ページで、200mm対応のVERTEX Revolutionに175枚の高生産性炉と100枚の低天井対応炉のオプションを用意したと述べています。
温度域は用途ごとに異なります。ジェイテクトサーモシステムはSiCパワー半導体向けの公式特集ページで、8インチ100枚対応の量産装置を業界に先駆けて市場へ投入したとし、イオン注入後の活性化アニール装置が常用温度1900℃、1バッチ100枚のVF-5300HLPと50枚のVF-3000HLPをラインアップすること、ゲート絶縁膜形成用の酸窒化装置が常用温度1400℃、オーミックコンタクト層向けのランプアニール装置が常用1200℃に対応することを公開しています。同社の研究・開発向けページは、小型ボックス炉が400℃から1800℃までの温度域をラインアップし、1150℃、1250℃、1500℃、1700℃、1800℃の各シリーズを持つとしています(SiCウェハ、ゲート酸化膜、窒化処理)。
炉の中で起きていること
Section titled “炉の中で起きていること”炉の中は、ヒーターで囲まれた石英の空間です。東京エレクトロンは、TELINDY PLUSがホットウォール内の熱均衡空間で流すことによって良好な膜質を実現するとし、EVAROSでは新開発のマルチゾーン制御ヒーターで動特性を高めて高い均熱性を実現し、昇降温と温度安定にかかる時間を大きく縮めたと述べています。ゾーンを分けて温度を持たせる理由は、縦に積んだウェーハの上と下で熱の入り方が異なるためです。
ガスの側にも同じ事情があります。KOKUSAI ELECTRICは公式製品ページで、Advanced TSURUGI Plus-IIIが独自の構造によってローディング効果を抑え、膜厚均一性を高め、反応ガスの置換効率の向上によって成膜の時間を短縮したと述べています。ローディング効果とは、まとめて入れた枚数や表面積の分だけ原料ガスが消費され、位置によって膜厚が変化する現象のことです。東京エレクトロンはEVAROSで排気配管の大口径化により優れたコンダクタンス特性を実現したとし、TELFORMULAではリアクター内部を完全石英面化してドライガスクリーニングでその清浄度を維持するとしています(石英部材、膜厚測定)。
現場のつまみ
Section titled “現場のつまみ”- バッチ枚数を増やすと1枚あたりの時間は下がりますが、昇降温とガス置換の時間が伸び、1バッチ分がまとめて不良になる影響も大きくなります。減らすとTATとQタイムの管理は楽になり、装置あたりの枚数が落ちます。
- 温度を上げると反応の速さが上がって時間を詰められますが、熱バジェットの消費が増え、既に作り込んだ構造の寸法が動きます。下げるとバジェットは残り、同じ膜厚や同じ拡散長を得るための時間が伸びます。
- ゾーンごとの温度の傾斜を付けると、縦に積んだウェーハの上下で生じる膜厚や抵抗の差を詰められますが、ゾーン間の設定値が増えてレシピの再現性の管理に手間がかかります。傾斜を消すと管理は単純になり、面間のばらつきが出ます。
- 圧力とガス流量を下げると、減圧側で分子の移動が長くなって深い溝の底まで原料が届きますが、成膜の速さが落ちます。上げると速さは取れますが、ローディング効果と面内分布が悪化します(LPCVD(減圧CVD)、均一性)。
差し出すもの
Section titled “差し出すもの”炉が差し出すものは、まず熱の総量です。昇温、保持、降温のすべてに時間がかかるため、同じ最高温度でも枚葉のRTPやレーザアニールより熱バジェットを多く消費します。工程順が進むほど炉は使いにくくなり、RTA(急速熱処理)やレーザアニールへ移ります。
2つ目はリスクの粒度です。1バッチが100枚から200枚に及ぶため、温度やガスの異常が1回で数百枚へ波及します。ロットの切り方と抜き取りの設計が、そのまま損失の上限を決めます。
3つ目はメンテナンスの周期です。炉内の反応生成物が積もるとパーティクルの源になるため、クリーニングと部品交換の周期を管理します。ジェイテクトサーモシステムはSiC向けの酸窒化装置で炉内にメタルフリー構造を採用してクリーニング頻度を軽減したとし、東京エレクトロンはドライガスクリーニングによる清浄度の維持と微小パーティクルの制御を挙げています。環境の側の数字も公開されており、同社はEVAROSがTELINDY PLUSと比べてウェーハ1枚あたりのCO₂排出量を約25%減らすとしています(予防保全とシーズニング)。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 2社/3family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22
- Annealsys
- Zenith high-temperature RTP furnaceSiC Thermal / High Temperature Anneal
- JTEKT Thermo Systems
- SiC power semiconductor heat treatment equipmentSiC Power Semiconductor / Thermal
- Vertical / horizontal furnace familyThermal / Furnace
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 酸化・拡散の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- アニール・熱処理の工程ページ ── 炉を共有する熱処理
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”拡散炉とは何ですか?
多数枚のウェーハをまとめて高温で熱処理する炉です。もともとは不純物を熱で拡散させる工程に使われたためこの名で呼ばれますが、実際には酸化、アニール、成膜も同じ構造の炉で行われます。
縦型と横型の違いは何ですか?
ウェーハを配置する向きが異なります。縦型はウェーハを水平に保って縦に積み、横型は垂直に立てて横方向へ配置します。ジェイテクトサーモシステムは公式ページで、縦型および横型の炉ファミリーを掲載しています。300mm世代では設置面積と粒子の落下の観点から縦型が主流です。
なぜまとめて熱処理するのですか?
高温を保つのに時間がかかるためです。昇温と降温に時間を要する以上、1枚ずつ流すと装置あたりの枚数が頭打ちになります。数十枚から百枚以上をまとめて入れることで、1枚あたりの時間を下げます。
拡散炉ではどの工程を行いますか?
KOKUSAI ELECTRICは公式製品ページで、同社グループがLP-CVD技術、酸化技術、アニール(低温、高温)技術、拡散技術、ALD技術に対応する成膜プロセス装置を提供していると述べています。炉という同じ構造の上で、流すガスと温度履歴を変えて別の工程を行います。
拡散炉の弱点は何ですか?
与える熱の総量が大きくなることです。昇温、保持、降温のすべてに時間がかかるため、熱バジェットを多く消費します。工程順が進むほど使いにくくなり、短時間で済むRTPやレーザアニールが選ばれます。
炉のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、炉や熱処理に一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。KOKUSAI ELECTRIC、ジェイテクトサーモシステム、Annealsysなどが該当します。
1バッチに何枚入りますか?
機種で異なります。東京エレクトロンは公式製品ページで、TELINDY PLUSに125枚仕様のオプションがあり、EVAROSは一度に200枚の300mmウェーハを流せるとしています。200mm縦型のALPHA-8SE iは最大150枚です。KOKUSAI ELECTRICはVERTEX Revolutionに175枚の高生産性炉と100枚の低天井対応炉のオプションを挙げています。
温度はどこまで上がりますか?
用途ごとに異なります。ジェイテクトサーモシステムは公式特集ページで、SiC向けの活性化アニール装置が常用温度1900℃、ゲート絶縁膜形成用の酸窒化装置が常用温度1400℃、オーミックコンタクト層向けのランプアニール装置が常用1200℃に対応すると公開しています。同社の研究・開発向けの小型ボックス炉は400℃から1800℃までの温度域をラインアップしています。
現場のつまみは何ですか?
バッチ枚数、温度、ゾーンごとの温度の傾斜、圧力とガス流量です。枚数を増やすと1枚あたりの時間は下がりますが、昇降温とガス置換の時間が伸び、1バッチ分の一括不良の影響も大きくなります。
炉の生産性はどこで上がりますか?
熱制御と搬送です。東京エレクトロンはEVAROSの案内で、新開発のマルチゾーン制御ヒーターで動特性を高めて高い均熱性を実現し、昇降温と温度安定にかかる時間を大きく縮めたとしています。同社は、排気配管の大口径化とウェーハ搬送時間の短縮も挙げ、TELINDY PLUSと比べてウェーハ1枚あたりのCO₂排出量を約25%減らすと述べています。
炉のメンテナンスで管理するのはどこですか?
炉内の材質とクリーニングです。東京エレクトロンはTELFORMULAでリアクター内部を完全石英面化し、その維持にドライガスクリーニングを採用したとしています。ジェイテクトサーモシステムはSiC向けの酸窒化装置で炉内にメタルフリー構造を採用し、クリーニング頻度を軽減したと公開しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 酸化・成膜工程の全体像 ── 炉を共有する成膜側
- アニールと熱予算 ── 熱処理と熱予算
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- KOKUSAI ELECTRIC「製品」公式ページ(2026年8月22日実測、200)── LP-CVD・酸化・アニール・拡散・ALD、VERTEX Revolutionの175枚と100枚、ローディング効果の低減
- ジェイテクトサーモシステム「半導体」公式ページ(2026年8月22日実測、200)── 縦型と横型の炉ファミリー、ランプアニールとRTP
- 東京エレクトロン「成膜 TELINDYシリーズ」公式製品ページ(2026年9月3日実測、200)── 累計1万台超、ホットウォール内の熱均衡空間、125枚仕様と2ボート運用、EVAROSの200枚、ALPHA-8SE iの最大150枚、TELFORMULAの完全石英面化
- 東京エレクトロン「EVAROS 販売開始のお知らせ」(2025年12月15日、2026年9月3日実測、200)── 一度に200枚、マルチゾーン制御ヒーター、排気配管の大口径化、CO₂排出量が約25%減
- ジェイテクトサーモシステム「SiCパワー半導体」公式特集ページ(2026年9月3日実測、200)── 8インチ100枚対応、活性化アニール1900℃と1バッチ100枚/50枚、酸窒化1400℃、ランプアニール1200℃、メタルフリー構造
- ジェイテクトサーモシステム「研究・開発向け装置」公式ページ(2026年9月3日実測、200)── 小型ボックス炉の400〜1800℃と各温度シリーズ
- SCREEN「成膜工程」初心者のための半導体入門(2026年9月3日実測、200)── 熱酸化をまとめて流せるため生産性が高いこと
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成