メガソニック洗浄とは
メガソニック洗浄とは、およそ500キロヘルツから3メガヘルツの超音波を洗浄液へ放射し、液そのものを速く動かしてウェーハ表面の微粒子を落とす洗浄です。 台所の超音波洗浄機と同じ原理でありながら、泡を作る力をあえて捨てた側に振ってあります。
超音波が汚れを落とす経路は、3本あります。カイジョーの超音波洗浄の原理のページは、超音波洗浄をキャビテーション、加速度、物理化学的反応促進作用という3つの相互作用によるものとしたうえで、作動周波数によって3つの強さに差が出ると述べています。同じページは、周波数が低いほどキャビテーションが起こりやすく、周波数が高くなるほど加速度が大きくなるとしています。
帯域の割り振りは、業界団体の資料に載っています。超音波工業会の洗浄原理の解説は、実用化されている超音波洗浄機の作動周波数を15キロヘルツから3メガヘルツとし、油汚れの付いたプレス部品や金属加工部品には26キロヘルツから38キロヘルツ、レンズやハードディスクの部品といった精密な相手には70キロヘルツから400キロヘルツ付近を使うと述べています。そして、液晶ガラスや半導体ウェーハに付いた無機質の汚れ、つまりパーティクルの除去には、メガソニックと呼ばれる500キロヘルツから3メガヘルツの洗浄機を用いるとしています。
泡を手放して、水を速く動かします
Section titled “泡を手放して、水を速く動かします”低い周波数の超音波洗浄では、キャビテーションが汚れを落とします。カイジョーの用語集は、液体中の微小な泡が膨張と収縮を繰り返しながら真空の泡へ育ち、洗浄物の表面に張り付いたまま崩壊すると記し、そのときの衝撃波で油汚れなどを除くと書いています。同じ用語集は、長時間の照射によって硬い洗浄物の表面や振動子の表面まで侵食されるエロージョンが起き、アルミ系やシリコンウェーハの表面に生じる場合もあると述べています。
ウェーハにとって、この衝撃波は諸刃です。カイジョーはメガソニック洗浄の製品ページで、750キロヘルツと950キロヘルツの高周波では主に加速度で洗い、キャビテーションの発生がごくわずかになるとしたうえで、キャビテーションが起こす侵食や、定在波が生む洗浄ムラを抑える用途に向くとしています。同社の製品ページとしての記述です。
得られる力の桁も、同社の用語集に載っています。一般的な26キロヘルツの超音波洗浄器が液の中へ放つ音波の加速度はおよそ1000G、950キロヘルツではおよそ100000Gとされています。周波数を上げるほど、泡を育てる力を手放す代わりに、水そのものを速く動かす力を得ます。
現場では何を測り、どう動かすのか
Section titled “現場では何を測り、どう動かすのか”この数字は、東北大学の平野栄樹らが電気学会論文誌Eで報告したものです。研究グループは、ダイシングソーで20ミリ角に切ったシリコンウェーハと、厚さ1.3マイクロメートル・幅5マイクロメートル・長さ23マイクロメートルと28マイクロメートルの片持ち梁を用意し、パーティクル除去率と微細構造の損傷率を同時に測りました。2013年の論文の条件です。0.75メガヘルツのメガソニック洗浄では、出力を500ワット以上にすると、折れた片持ち梁が見つかり、その損傷は長い方の28マイクロメートルの梁に集中しました。一方、損傷が生じずに済む400ワットでは、純水の除去率が10パーセント程度に留まり、希釈したアンモニア過酸化水素水で80パーセント、界面活性剤を加えた水で90パーセントに届きました。
現場が同時に測るのは、落ちた微粒子の数と、壊れた構造の数です。片方だけを追えば、もう片方が悪化します。出力を上げて除去率を稼ぐか、液の側で稼いで出力を抑えるかという選択が、レシピづくりの中身になります。
液の中の音の形にも気を配ります。カイジョーの用語集は、超音波洗浄槽では液表面と振動面で音波が繰り返し反射して定在波が生じると記し、周波数変調によって定在波の位置を周期的に動かすと洗浄ムラを減らせると書いています。同じ用語集は、振動面のエロージョンが進むと洗浄効果が下がる場合があるとも述べています。装置の側も消耗します。
使える工程が先に絞られます
Section titled “使える工程が先に絞られます”微細化が進んだ面では、この物理力そのものが問題になります。表面技術協会のウェハ洗浄技術の解説は、ノズルの先に発振子を持たせ、高周波の超音波を乗せた純水を点で当てるメガソニックスクラブという方式について、洗浄力が高い反面、デバイスが細かくなるにつれてこの物理的な力がパターンを壊す問題が表に出て、使える工程が限られてきたと述べています。1999年時点の記述です。同じ解説は、微細なパターンが受ける損傷の大きさがパーティクルの除去力と相関し、よく落ちる条件ほど壊れる量も増えること、そしてメガソニックスクラバーでは除去力そのものを加減しにくいことを挙げています。
そこで、工程の側で外す組み方も生まれました。SEAJの用語集は、ソニーが開発した枚葉式スピン洗浄のSCROD法について、オゾン水と希フッ酸をジェットノズルから回転中のウェーハへ交互に供給する方法と記し、微細なパターンのあるウェーハへ適用するためにメガソニックを使わずに組み立てていると書いています。希フッ酸洗浄の化学の力で微粒子まで落とし、物理力を持ち込まずに済ませる道です。
逆に、積極的に組み込む洗浄もあります。同じ用語集は、東北大学の大見教授の研究グループによる室温四工程洗浄について、第2工程でアンモニアを加えた水素溶解水にメガソニックを併用して微粒子を除き、第4工程では水素溶解純水とメガソニックの照射で薬液のリンスと水素終端化を進め、自然酸化膜の抑制も兼ねると記しています。表面技術協会の解説も、アンモニア過酸化水素水の処理槽におよそ1メガヘルツの超音波を印加すると、化学の力と物理の力が重なって微粒子の落ち方がよくなると述べています。
何を差し出すことになるのか
Section titled “何を差し出すことになるのか”第一に、除去力と損傷が同じつまみに乗ります。出力を上げれば小さな粒まで届く代わりに、細い構造が折れる確率も上がります。適用できる工程が、パターンの形と高さで先に絞られます。
第二に、液の側で稼ぐ道を選ぶと、薬液の管理が増えます。純水だけで済んでいた工程に界面活性剤やアンモニア過酸化水素水が加われば、濃度の維持と廃液の手当てが付いてきます。
第三に、装置の消耗を受け入れます。振動子の振動面はエロージョンで痩せていくため、洗浄効果の維持には交換の計画が要ります。
第四に、洗浄ムラという固有の癖と付き合います。定在波がよく立つ液の深さは周波数や液温に応じて動くとされているため、周波数変調のような対策と、条件を作り直す手間が日常業務になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”メガソニック洗浄とは何ですか?
およそ500キロヘルツから3メガヘルツの超音波を洗浄液へ放射し、液そのものを速く動かしてウェーハ表面の微粒子を落とす洗浄です。超音波工業会は、この帯域の洗浄機を液晶ガラスや半導体ウェーハのパーティクル除去に用いると述べています。
ふつうの超音波洗浄との違いは何ですか?
洗浄の担い手が、泡の破裂から液の加速度へ移ります。カイジョーは、周波数が低いほどキャビテーションが起こりやすく、高くなるほど加速度が大きくなるとしています。メガソニックの帯域では、泡の破裂よりも液の加速度が前に出ます。
なぜ泡を避けるのですか?
泡の崩壊がウェーハ表面を傷めるためです。カイジョーの用語集は、長時間の照射で硬い洗浄物の表面や振動子の表面が侵食されるエロージョンが起き、アルミ系やシリコンウェーハの表面に生じる場合もあると述べています。
出力を上げると何が起きますか?
落ちる量とともに、壊れる量も増えます。東北大学の研究グループは、0.75メガヘルツのメガソニック洗浄で500ワット以上の出力にすると、片持ち梁構造の損傷が観察されたと報告しています。2013年の論文の条件です。
出力を下げても微粒子は落とせますか?
洗浄液を替えると落とせます。同じ研究では、損傷が生じずに済む400ワットで、純水の除去率が10パーセント程度だった一方、希釈したアンモニア過酸化水素水では80パーセント、界面活性剤を加えた水では90パーセントに届きました。
どの工程で使いますか?
微粒子を落としたい場面です。SEAJの用語集は、東北大学の研究グループによる室温四工程洗浄で、アンモニアを加えた水素溶解水にメガソニックを併用して微粒子を除く工程を挙げています。
メガソニックを外す洗浄もありますか?
あります。SEAJの用語集は、ソニーが開発した枚葉式スピン洗浄のSCROD法について、微細なパターンのあるウェーハへ適用するためにメガソニックを使わずに組み立てていると書いています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 枚葉式洗浄(シングルウェハ洗浄)とは ── メガソニックを組み込むか外すかを選べる装置の形
- RCA洗浄とは ── メガソニックを併用する相手になる薬液のレシピ
- パーティクルとは ── メガソニックが落とそうとしている相手そのもの
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- 超音波工業会「超音波洗浄機の洗浄原理と構成」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 実用化されている作動周波数が15キロヘルツから3メガヘルツであること、用途ごとの周波数帯の割り振り、メガソニックが500キロヘルツから3メガヘルツで液晶ガラスや半導体ウェーハのパーティクル除去に使われること、洗浄の3つの相互作用
- カイジョー「クオーバ メガソニック洗浄(超音波精密洗浄)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 750キロヘルツと950キロヘルツでは主に加速度で洗うこと、キャビテーションの発生がごくわずかになること、エロージョンと定在波による洗浄ムラを抑える用途への位置づけ
- カイジョー「超音波洗浄の原理」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── キャビテーション・加速度・物理化学的反応促進作用の3つと、作動周波数による強さの差
- カイジョー「超音波洗浄関連用語集」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── キャビテーションの成り立ちと衝撃波、エロージョンとシリコンウェーハ表面への影響、26キロヘルツで約1000Gと950キロヘルツで約100000Gという加速度、定在波と周波数変調による洗浄ムラの低減
- 電気学会論文誌E Vol.133 No.5(2013)「MEMS構造に損傷を与えないパーティクル除去方法」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 20ミリ角の試料と片持ち梁を用いた実験条件、0.75メガヘルツで500ワット以上の損傷、400ワットでの純水10パーセント・希釈アンモニア過酸化水素水80パーセント・界面活性剤水90パーセントという除去率
- 表面技術協会「表面技術」Vol.50 No.10(1999)解説「ウェハ洗浄技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── メガソニックスクラブの方式、パターンダメージの顕在化と適用工程の制限、除去力とダメージの相関、アンモニア過酸化水素水の槽への1メガヘルツ程度の印加による相乗効果
- 日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 室温四工程洗浄の第2工程と第4工程でのメガソニックの使い方、SCROD法がメガソニックを使わずに組み立てられていること