オゾン水とは
オゾン水とは、超純水にオゾンガスを溶かした洗浄液です。 硫酸のような強い薬液に頼らず、水に溶けたオゾンの酸化力で有機物を分解し、同時にシリコン表面へ薄い酸化膜を作ります。
SCREENセミコンダクターソリューションズの洗浄工程の入門解説は、これまでの洗浄装置が酸などの薬液や純水でウェーハを洗ってきたとしたうえで、そのやり方が環境へかける負荷の大きさゆえに、新しい洗浄技術を起こす動きが半導体業界で盛んになっていると述べています。同じ解説は、そこで検討されている技術の一つとして機能水洗浄を挙げ、酸に代えてオゾンなどを含んだ純水でウェーハを洗う技術とし、これが普及すれば毒性や腐食性の強い廃液が減るとしています。
応用物理学会の基礎講座(有馬健太「Si表面のウェット洗浄」応用物理 第84巻 第11号、2015年)も、環境負荷を考えた薬液使用量の低減や、工程数をしぼって室温に近いシークエンスが望まれる背景を挙げ、新たな洗浄液の代表例として、オゾン水のような純水をベースとした機能水を挙げています。
貯めておける薬液と、作った先から薄まる水
Section titled “貯めておける薬液と、作った先から薄まる水”この液がふつうの薬液と最も異なる点は、貯蔵の可否です。野村マイクロ・サイエンスは、オゾン水装置NOMUREXON O3を、超純水に特定のガスを溶かした機能水を作る装置として公開し、半導体、FPD、太陽電池、MEMSなどの洗浄工程で薬品洗浄の代わりに使われるとしています。同社は、オゾンガスを溶かした清浄なオゾン水を立ち上がりよく送り出せるとし、独自の技術で150ppm以上の高濃度オゾン水も供給できること、オゾン水流量5〜40 L/minという仕様を示しています。
明電舎は、超高濃度・高純度ピュアオゾン水生成装置について、ほぼ100%のピュアオゾンガスと減圧生成方式によって、300mg/Lの超高濃度ピュアオゾン水を安定的に連続生成すると述べ、濃度50〜300mg/L、水温5〜15℃、流量0.5〜5 L/min、純度は主要金属イオンでsub-pptレベル、という仕様を示しています。いずれも各社が公表する製品仕様です。
仕様に水温の欄が入っている点が、この液の性格を表しています。同社は特長として、減圧生成方式により急激な濃度の減衰が起きにくく、濃度が長時間持続することを挙げています。裏を返せば、オゾン水では濃度の減衰そのものが管理対象になります。だからこそ、工場の外で作って運ぶ薬品のデリバリーに代えて、使う場所での生成が選ばれます。SEAJの半導体製造装置用語集も、高純度の原料ガスを使う場所で超純水へ溶かし、狙った濃度の薬液をそこで作って洗浄装置へじかに送るやり方を、POUCG方式として記しています。
現場で何を測り、どう動かすか
Section titled “現場で何を測り、どう動かすか”測る対象は、まず溶存オゾン濃度です。野村マイクロ・サイエンスは、NOMUREXON O3にオゾン水濃度計と環境オゾンガス検知器を標準装備しているとしています。液の中の濃度と、部屋の空気中のオゾン、その両方に計器が付きます。
次に、濃度と時間の組み合わせです。SEAJの用語集は、オゾン水を使う洗浄シークエンスをいくつか記しています。東北大学の大見教授の研究グループが開発した室温四工程洗浄では、第1工程のオゾン水(O3濃度5ppm、炭酸添加でpH4)が有機汚染の除去にあたり、一部の金属汚染も除去できるとしています。欧州のデバイスメーカーが発表したDDC法では、オゾン純水20ppmを流しながら5分間洗って有機汚染を除去し、後段で3ppmのオゾン純水を10分、最後に0.01%の塩酸を含むオゾン水を7分間流してウェーハ面へ酸化パッシベーション膜を形成するとしています。いずれもSEAJの用語集が載せる手順の例です。
そして、供給の仕方です。同じ用語集は、ソニーが開発した枚葉式スピン洗浄のSCROD法を、回転するウェーハへジェットノズルからオゾン水とDHFを交互にかけ、これを何度も重ねる洗浄法として記しています。1回あたりの薬液をかける時間は約10秒で、重ねる回数は汚れの度合いと狙う清浄度に応じて増減させるとしています。微細なパターンのあるウェーハへ適用できるよう、メガソニックを避けた方式です。枚葉式洗浄の装置では、この10秒単位の切り替えがレシピの単位になります。
有馬健太による基礎講座も、室温で行うウルトラクリーンテクノロジー洗浄法として、O3濃度5ppmのオゾン水で有機物を除去し、続いて水素溶解アルカリ水とメガソニック振動で微粒子を除去する手順を示しています。オゾン水の担当は、有機物と、次の工程のための酸化膜です。
酸化するからこそ、DHFとセットになります
Section titled “酸化するからこそ、DHFとセットになります”SEAJの用語集は、IMECが開発した洗浄シークエンスの第1工程について、オゾンを含む液が有機物を落とすと同時に、次の工程でパーティクルがよく取れるように化学酸化膜を作らせるとしています。同じ用語集によれば、第2工程の希フッ酸はその化学酸化膜を溶かし、あわせてパーティクルと金属汚染を取り去り、安定な水素終端表面まで残します。
つまり、オゾン水の酸化力は、有機物を分解する力であると同時に、汚れごと持ち上げる下敷きを作る力です。ですからDHF洗浄と組にして、酸化と除去を交互に重ねます。SCROD法がオゾン水とDHFを約10秒ずつ交互にかけるのも、同じ考え方です。
差し出すもの
Section titled “差し出すもの”第一に、酸化膜の後始末です。オゾン水を使うたびに化学酸化膜が生まれるため、ゲート酸化膜の直前のように余分な酸化膜を嫌う場面では、DHFで落とす工程がセットで付きます。工程数と純水の量が、その分だけ増えます。
第二に、生成と安全の設備です。オゾン水は、貯蔵よりも使う場所での生成に向く液です。明電舎は安全対策として、減圧下でオゾンガスとオゾン水を生成する方式と、高純度・低温・減圧にして危険な反応を避けるという設計思想を挙げ、安全性は第三者機関によるトレーサガステストで実証済みとしています。同社の装置は連続方式で運転しますが、120時間ごとに5時間の停止(自動再生工程)が入るとも記しています。野村マイクロ・サイエンスが環境オゾンガス検知器を標準装備としているのも、同じ方向の備えです。
第三に、水へ溶ける量という上限です。明電舎は、ピュアオゾン水だからこそ成り立つ、酸化を強く促す方法をOURプロセス技術として発明したとし、半導体プロセスの高イオン注入レジスト除去への適用に期待するとしています。裏を返せば、イオン注入を受けた重いレジストのような相手には、濃度と酸化力を上げる工夫が前提になります。SCREENの入門解説も、機能水洗浄と超臨界水洗浄には技術面の課題とコスト面の課題が数多く残り、量産の現場へ本格的に広がるのはこれから先だとしています。
まとめると、オゾン水が差し出すものは、酸化膜を落とす一手間と、生成装置およびオゾンの安全設備、そして水へ溶ける量という上限です。得るものは、室温付近での運転と、毒性や腐食性の強い廃液の減少です。洗浄の薬液を選ぶとき、この取引がそのまま比較の材料になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”オゾン水とは何ですか?
超純水にオゾンガスを溶かした洗浄液です。野村マイクロ・サイエンスは、超純水に特定のガスを溶かした機能水を作る装置としてオゾン水装置を公開し、半導体、FPD、太陽電池、MEMSなどの洗浄工程で薬品洗浄の代わりに使われるとしています。
どのくらいの濃度で使いますか?
用途で幅があります。SEAJの用語集が記す室温四工程洗浄の第1工程はO3濃度5ppm、DDC法は20ppmと3ppmを段階で使います。装置側では、野村マイクロ・サイエンスが150ppm以上の高濃度オゾン水の供給を可能とし、明電舎は50〜300mg/Lを仕様に示しています。各社製品の公表仕様です。
なぜ使う場所で作るのですか?
濃度が時間とともに下がるためです。明電舎は、減圧生成方式によって急激な濃度の減衰が起きにくく、濃度が長時間持続することを特長に挙げています。裏を返せば、濃度の減衰そのものが管理対象になります。
現場では何を測りますか?
液の中の溶存オゾン濃度と、部屋の空気中のオゾンです。野村マイクロ・サイエンスは、オゾン水濃度計と環境オゾンガス検知器を標準装備としています。明電舎の仕様には、濃度と流量に加えて水温5〜15℃の欄が入っています。
DHFと組み合わせるのはなぜですか?
オゾン水が化学酸化膜を作るためです。SEAJの用語集は、IMECの洗浄シークエンスについて、オゾンを含む液が有機物を落としながら化学酸化膜を作り、次の希フッ酸がその膜を溶かしてパーティクルと金属汚染を運び去り、安定な水素終端表面まで残すとしています。
レジストの剥離にも使えますか?
相手によります。明電舎は、ピュアオゾン水で酸化を強く促す方法をOURプロセス技術として発明したとし、半導体プロセスの高イオン注入レジスト除去への適用に期待するとしています。濃度と酸化力を上げる工夫が前提になります。
何を差し出しますか?
酸化膜を落とすDHFの工程と、生成装置およびオゾンの安全設備です。SCREENの入門解説は、機能水洗浄と超臨界水洗浄について、技術とコストの課題が数多く残るため、本格的に広まるのはこれから先だとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- SPM洗浄とは ── 高温の硫酸と過酸化水素で有機物を分解する側
- DHF洗浄とは ── オゾン水が作った酸化膜を落とす側
- オゾン水洗浄とは ── 液そのものに対し、洗浄工程としての位置づけ
- 超純水とは ── オゾンを溶かす前の水そのもの
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- 日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 室温四工程洗浄の第1工程の濃度とpH、DDC法の濃度と時間、SCROD法の交互供給と約10秒、IMECクリーンの化学酸化膜、POUCG方式
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「洗浄工程」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 機能水洗浄の位置づけ、毒性や腐食性の強い廃液の減少、実用化までの課題
- 野村マイクロ・サイエンス「オゾン水装置 NOMUREXON O3」公式製品ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 機能水としての位置づけ、150ppm以上の供給、流量5〜40 L/min、オゾン水濃度計と環境オゾンガス検知器の標準装備
- 明電舎「超高濃度・高純度ピュアオゾン水生成装置」公式製品ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 濃度50〜300mg/Lと水温5〜15℃と流量の仕様、減圧生成方式と濃度の持続、安全設計、高イオン注入レジスト除去への期待、120時間ごとの自動再生
- 応用物理学会 応用物理 第84巻 第11号 基礎講座「Si表面のウェット洗浄」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 純水をベースとした機能水という位置づけ、室温シークエンスの背景、ウルトラクリーンテクノロジー洗浄法の手順