CMP(化学機械研磨)とは
CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)とは、化学反応と機械研磨を組み合わせてウェーハ表面を平坦化する技術および装置です。 配線を多層に積むたびに、表面を平坦へ削り直す役目を担います。
CMPが要る理由は、多層配線の積み上がり方にあります。配線を1層作るたびに表面には凹凸が残り、その上へ次の層を作ると凹凸が引き継がれます。凹凸が残ったままリソグラフィを行うと、面内で焦点が揃わずパターンが崩れます。層を重ねるたびに表面を平坦へ削り直す工程が要ります。
東京エレクトロンの公式用語集は、CMPを、化学反応と機械研磨を組み合わせてウェーハ表面を平坦化する技術および装置として記述しています。同用語集は続けて、典型的なCMPプロセスでは、研磨パッドで覆われた回転するテーブルへウェーハを押し当て、コロイダルシリカ研磨剤を含むスラリーをウェーハとパッドの間へ供給すると述べています。
化学と機械を組み合わせる点が、この工程の要です。機械研磨だけであれば傷が入り、化学反応だけであれば形状が崩れます。スラリーの化学作用で表面を反応させ、その反応層をパッドと研磨剤が機械的に取り除くという組み合わせが、平坦さと表面品質を両立させます。同じ用語集は、除去するウェーハ表面の材料によっては研磨剤を除いたスラリーを使う場合があるとも述べています。
化学と機械の分担は、粗さの波長ごとに異なります
Section titled “化学と機械の分担は、粗さの波長ごとに異なります”フジミインコーポレーテッドの森永均氏による解説(トライボロジスト 第70巻 第5号、2025年、263〜270ページ)は、アルミニウム合金 AL5052 をサンドペーパ #800 で前加工した面で、薬液のみの化学研磨とCMPを同じ土俵で並記しています。研磨前の面は Sa 272nm、P-V 3405nm でした。リン酸 79wt% と硝酸 2.1wt% の水溶液で 20μm を溶かした化学研磨では Sa 81nm、P-V 531nm まで下がります。同じ面をコロイダルシリカと水酸化カリウム(pH 10)のスラリーとスエードパッドで 15μm 研磨すると、Sa 1nm、P-V 49nm へ届きます。粗さの測定は ZYGO NV9000、視野 100μm×100μm、XYピッチ 0.1μm です。
同じ解説は、薬液による溶解が活性な突起部から始まるため微小な粗さは化学作用のみでも下がるものの、うねりの凹部にも薬液が作用するため長波長のうねり成分の除去と平坦性の改善が難しいと述べています。平らな定盤と砥粒で凸部から表層を強制的に取り去る機械側が、うねりに対して有利になります。CMPスラリーの配合とCMPパッドの硬さは、どちらの側をどれだけ強めるかという配分そのものです。
除去レートは圧力と相対速度の積へ乗ります
Section titled “除去レートは圧力と相対速度の積へ乗ります”東亞合成のグループ研究年報 TREND 2025 第28号は、研磨量RAを、プレストン係数k、研磨圧力p、相対速度ν、研磨時間tの積として RA=k・p・ν・t と書いています。プレストン式の骨組みはこの4つで、装置レシピから直接動かせるのは p と ν と t の3つです。砥粒、パッド表面の状態、温度、界面を流れるスラリーは、すべて k という1文字へ畳まれます。
森永氏の解説は、その k の中身を摩擦として測っています。荏原製作所の EPO-222 を使い、研磨圧力 5psi(35kPa)、定盤回転速度 110rpm でシリコン酸化膜を研磨した実測では、研磨速度が砥粒と加工対象物の間の摩擦エネルギーとよく相関しました。摩擦エネルギーは、定盤を駆動する電流の値から換算しており、シリカスラリーと酸化セリウムスラリーの研磨速度は 0〜400nm/min の目盛りの上に並びます。摩擦の大きさは、作用する砥粒個数、砥粒1個あたりの接触面積、転がりにくさの3つで増えるとも同解説は述べています。球形より異形の砥粒が転がりにくく、摩擦エネルギーを増やして研磨速度を上げます。
何を測ると、この工程が管理できるか
Section titled “何を測ると、この工程が管理できるか”SEAJ(日本半導体製造装置協会)の半導体製造装置用語集は、CMP装置の項へ11語(EPD、均一性、研磨レート、シンニング、スクラッチ、スラッジ、選択比、ダマシン、ドレッシング、Prestonの式、平坦性)を収めています。語数は当サイトで数えました。土台になるのは次の4つです。
- 研磨レートは、研磨前後の膜厚差を、要した研磨時間で割った値です。膜厚測定の精度がそのままレートの精度になります。
- 均一性は、研磨レートの最大と最小の差、あるいは平均自乗誤差を研磨レートで割った値です。異なる研磨ヘッド間の均一性も同用語集は挙げ、装置間の差はツールマッチングの対象になります。
- 選択比は、同一スラリーで異なる材料を研磨したときのレート比です。材料AとBのレートをa、bとすると、A基準の選択比は 1:b/a と書きます。
- 平坦性の指標は段差緩和性(Step Height Reduction Ratio)で、研磨前後の段差の差を研磨前の段差で割った SHR(Step Height Ratio)という比で表します。グローバル平坦性とローカル平坦性を区切る領域の一般的な基準値は 10μm です。
同用語集はEPDを、研磨量が目標値へ達したことまたは近づいたことの自動検出と記述し、理想的な研磨面を越えて削り込んで膜が薄くなる状態をシンニングと呼びます。JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会によるITRS 2013 配線章の和訳は、装置側の重点がエンドポイントと測定機能へ移り、レシピ調整に時間を要するインライン測定よりエンドポイントが好まれると書いています。
現場のつまみと、その両側
Section titled “現場のつまみと、その両側”研磨圧力 p を上げると、プレストン式の1乗でレートが上がります。差し出すのは段差緩和性と摩擦熱です。森永氏の解説は、研磨中の加工面が摩擦熱で数十度加温されることが珍しくなく、活性化エネルギーが 51kJ/mol の反応であれば 10℃ 程度の加温で化学作用が2倍程度促進されるとしています。加温で化学作用のみが過剰へ振れると、表面荒れや局部腐食が出ます。アルミニウム合金 Al6063 の例では、研磨時の温度を 40℃ から 25℃ へ下げるだけで表面荒れが大幅に改善しています。下げる側では、ITRS 2013 配線章の和訳が、装置が低ストレス用に低面圧で設計されていると書いています。脆い低誘電率膜への最大応力を下げる代わりに、レートとスループットを差し出します。
相対速度 ν は定盤とヘッドの回転数で動き、上げると同じ圧力でもレートが上がります。差し出すのはスラリーの滞留時間と面内分布です。東亞合成の研磨条件は研磨盤回転数 60rpm、森永氏の Si3N4 の実測はヘッドと定盤をどちらも 300rpm で、装置形式と対象で1桁ぶんの幅があります。下げる側では、界面へスラリーが行き渡る時間が伸びる代わりに、レートと1枚あたりの時間を差し出します。
スラリーの砥粒濃度と化学の比率 も1本のつまみです。砥粒濃度を上げると作用点が増えてレートと粗さが同時に良くなる領域がありますが、粗大粒子の混入確率も上がります。森永氏の解説は、粗大な砥粒や異物が混ざるとその1点へ圧力が集中し、スクラッチや凹凸状の欠陥が出ると述べています。化学側へ振るとディッシングと腐食の管理が厳しくなり、機械側へ振るとパーティクルとスクラッチの管理が厳しくなります。
研磨時間 t とパッドの状態 は連動します。目詰まりでレートが落ちた分を研磨時間で埋めると、削り込みの総量が増えてディッシングとエロージョンが進みます。時間を短く切る側では、残膜のばらつきが増えます。ここはパッドコンディショニングの頻度と一体で決まります。
取引:CMPが次の工程へ渡す代償
Section titled “取引:CMPが次の工程へ渡す代償”ITRS 2013 配線章の和訳は、CMP界面がBEOL絶縁破壊で最も懸念される箇所に常に入ると書いています。CMPプロセス中、およびCMPと絶縁バリア成膜の間に起きる銅の酸化とイオン化がTDDB寿命を縮める主要因だという結果が積み上がってきたとし、銅CMP後の保持時間が長いほど絶縁破壊電圧が下がる測定を挙げています。同章は、途中まで加工したダマシン基板を用いて残留銅の量と絶縁信頼性の関係を量で示した報告も紹介し、残留銅の上限値が 1平方センチメートルあたり10の12乗個(atoms/cm²)と設定されたと書いています。平坦さを買った代わりに、CMP後の待ち時間と洗浄がそのまま信頼性のバジェットへ乗ります。
工程数が増える側の話
Section titled “工程数が増える側の話”同じ和訳は、CMPの最初の目的が層間絶縁膜(ILD)の平坦化で、1980年代の初めに導入されたと記述しています。以後、各技術世代でCMPのステップ数は着実に上昇しました。銅とバリアのCMPは他の層より平坦化工程が多く、銅の研磨、タンタル系バリア層の研磨、メタルハードマスク材料の研磨、最終の形状と膜厚の合わせ込みまで複数段で回します。タングステンのCMPでは、パターンアレイの両端でエロージョンが深く進む EOE(Edge Over Erosion)という課題が残り、スラリーとパッドの開発で改善してきたと同章は述べています。
装置形式については、洗浄機を組み込んだロータリー型のポリッシャー(Dry-in、Dry-out)が主流だと同章は記述し、450mm への移行ではエッジエクスクルージョン 2mm で回せるハードウェア設計が挙がっています。東京精密(ACCRETECH)のCMP装置ページも、同じ複合作用で記述しています。ダマシン法とCu-CMP、STIまで含めると、1枚のウェーハが前工程で通るCMPの回数は世代ごとに積み上がります。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 5社/5family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22
- ACCRETECH / Tokyo Seimitsu
- ChaMP CMP / polish grinder familyCMP / Planarization
- AMAT
- EBARA
- F-REX CMP / bevel polishing familyCMP / Planarization
- HORIBA
- HORIBA process-stage solutionsDeposition / Etch / CMP Control
- Hwatsing Technology
- HSC-F3400 / 12 inch CMP equipmentCMP / Planarization
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- CMP(平坦化)の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- CMPの求人一覧 ── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”CMPとは何ですか?
CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)は、化学反応と機械研磨を組み合わせてウェーハ表面を平坦化する技術および装置です。東京エレクトロンの公式用語集は、CMPをこのように記述しています。
CMPはどうやって平坦化しますか?
同じ公式用語集は、典型的なCMPプロセスでは、研磨パッドで覆われた回転するテーブルへウェーハを押し当て、その間にコロイダルシリカ研磨剤を含むスラリーをウェーハとパッドの間へ供給すると述べています。化学的な作用と機械的な作用が同時に働きます。
なぜ平坦化が要るのですか?
配線を多層に積むと、下の層の凹凸が上の層へ引き継がれるためです。凹凸が残ったままリソグラフィを行うと、焦点が面内で揃わずパターンが崩れます。層を重ねるたびに表面を平坦へ削り直す工程がCMPです。
スラリーには必ず研磨剤が入っていますか?
材料によります。東京エレクトロンの公式用語集は、除去するウェーハ表面の材料に応じて、研磨剤を除いたスラリーを使う場合があると述べています。ITRS 2013の配線章の和訳も、砥粒濃度を下げて化学反応を強める傾向と、砥粒レスの配合が出てくる可能性を挙げています。
CMPで起きる代表的な問題は何ですか?
削れ方の差から生じる形状のずれです。広い配線の中央がへこむディッシングと、配線が密な領域が全体的に低くなるエロージョンが代表例です。どちらも、材料やパターン密度によって削れる速さが異なることに由来します。
CMP装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、CMPに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。Applied Materials、荏原製作所、ACCRETECH(東京精密)、Hwatsingなどが該当します。
除去レートは何で決まりますか?
東亞合成のTREND 2025 第28号は、研磨量RAをプレストン係数k、研磨圧力p、相対速度ν、研磨時間tの積 RA=k・p・ν・t と書いています。装置側のつまみはp、ν、tの3つで、砥粒、パッド表面、温度、界面の流れはkへ畳まれます。
除去レートの均一性はどう測りますか?
SEAJの半導体製造装置用語集は、均一性を、研磨レートの最大と最小の差、あるいは平均自乗誤差を研磨レートで割った値と記述しています。同じ条件で別の研磨ヘッドを回したときのヘッド間均一性も同用語集は挙げています。
平坦性の規格はどう表しますか?
SEAJの同用語集は、平坦性を、段差緩和性(SHR:Step Height Ratio)という指標で表し、研磨前後の段差の差を研磨前の段差で割ると記述しています。グローバル平坦性とローカル平坦性を区切る一般的な基準値は10μmです。
研磨圧力を上げるとどうなりますか?
プレストン式の上ではレートが1乗で上がります。差し出すものは段差緩和性と摩擦熱です。フジミインコーポレーテッドの森永均氏の解説は、研磨中の加工面が数十度加温されることが珍しくなく、活性化エネルギーが51kJ/molの反応であれば10℃の加温で化学作用が2倍程度促進されるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CMP:平坦化、欠陥、低k/新金属の判定項目 ── 低k、BEOL新金属、計測、歩留まりを同じ軸で比較
- CMPスラリー、パッド、コンディショナ ── 消耗品側の深掘り
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 東京エレクトロン 公式用語集「CMP / Chemical Mechanical Polishing」(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── CMPという語、回転テーブルとパッドとスラリーの配置を裏づけます。
- SEAJ 半導体製造装置用語集「ウェーハプロセス」CMP装置の項(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 研磨レート、均一性、選択比、SHR、10μm の区切り、EPD を裏づけます。
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2013 和訳 配線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── 1980年代初めのILD CMP採用、W-CMPのEOE、450mm と 2mm、CMP界面とTDDB、残留銅の上限を裏づけます。
- フジミインコーポレーテッド 森永均「化学機械研磨(CMP)の原理と進化:半導体・多様な素材への応用」(トライボロジスト 第70巻 第5号、2025年、263〜270ページ/2026年9月3日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── Sa と P-V の実測、EPO-222 の研磨条件、摩擦熱と 10℃ で約2倍を裏づけます。
- 東亞合成グループ研究年報「TREND 2025 第28号 CMP用ポリマー添加剤の開発」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200、application/pdf)── プレストン式と 60rpm を裏づけます。
- 東京精密(ACCRETECH)「CMP装置」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 装置としてのCMPを裏づけます。
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成