SC-1とSC-2とは
SC-1とSC-2とは、どちらも過酸化水素を土台にしながら、片方をアルカリ性、もう片方を酸性に振ることで、落とす相手を分けた2つの洗浄液です。 SC-1が有機物とパーティクルを、SC-2が金属汚染を受け持ちます。
1種類の薬液では、有機物・パーティクル・金属のどれかを取りこぼします
Section titled “1種類の薬液では、有機物・パーティクル・金属のどれかを取りこぼします”ウェーハに付く汚れは、5種類あります。株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズの入門解説「洗浄工程」は、ウェーハから取り除く汚れを、ゴミ、金属汚染、有機汚染、油脂、自然酸化膜に分けて挙げています。同社の解説では、ゴミの大きさは最大で数マイクロメートル、最小では0.1マイクロメートル以下とされ、業界ではこれをパーティクルと呼ぶと記されています。金属汚染の例には蒸発した汗に含まれるナトリウムや薬液中の微量な重金属が、有機汚染の例には人のフケや垢に含まれる炭素、純水配管の中のバクテリアが挙げられています。
性質がここまで隔たったものが、同じ1枚の面に乗っています。有機物は膜のように広がり、パーティクルは表面に載り、金属は表面に取り込まれます。作用する化学が相手ごとに別なので、1種類の薬液でまとめて狙うと、この3つのどれかを取りこぼします。取りこぼしたものは次の工程へそのまま持ち越されます。洗浄という工程が受け持っているのは、この持ち越しを断つことです。
同じ過酸化水素を、pHの逆側で使います
Section titled “同じ過酸化水素を、pHの逆側で使います”一般社団法人 半導体産業人協会が運営する半導体歴史館の「RCA洗浄」の項は、SC-1をアンモニア水と過酸化水素の水溶液、SC-2を塩酸と過酸化水素の水溶液とし、SC-1が有機物の溶解除去と非溶解性パーティクルの剥離除去を、SC-2が金属イオン汚染物の除去を受け持つとしています。同項は、RCA洗浄の考案者をWerner Kern、開発の時期を1965年ごろとし、RCA Review誌への公表を1970年としています。
つまり過酸化水素は両方に入っており、別なのはpHだけです。アンモニアを加えればアルカリ性、塩酸を加えれば酸性になります。この振り分けが、落ちる相手を決めます。
落ちた分だけ、表面が減ります
Section titled “落ちた分だけ、表面が減ります”表面技術 第67巻第8号(2016年)に載った、グローバルウェーハズ・ジャパンの泉妻宏治氏による解説「シリコンウエハの最新の市場および技術動向」は、鏡面研磨ウェーハの洗浄のほとんどをRCA法かその改良法が占めるとしたうえで、それぞれの洗浄に金属不純物の付着とパーティクル再付着という副作用があると述べています。同解説は、SC-1洗浄時の金属汚染を減らすために洗浄液へキレート剤を加える方法も挙げています。
表面の荒れは、測定値として示されています。同解説の図には、1200℃・1時間の水素アニールで整えたシリコン(100)面のウェーハについて、アニール直後の表面粗さRmsが0.075ナノメートル、オゾン水と希フッ酸で洗った後が0.098ナノメートル、SC-1で洗った後が0.132ナノメートルと示され、本文ではSC-1後に原子ステップの構造がランダムに変わり粗さが約2倍に増えたと述べられています。ミスオリエンテーションが0.04度以下の試料を原子間力顕微鏡で測った、この解説の条件での値です。
SC-1は「荒らすから落ちる」薬液です。したがって濃度と時間の設計は、どこまで削ってよいかの設計とほぼ同じ話になります。DHF洗浄が自然酸化膜だけを落とし、オゾン水洗浄が表面の荒れをより小さく抑える方向へ伸びてきたのも、この一点への答えです。
レシピの温度より、ずれていく濃度を見張ります
Section titled “レシピの温度より、ずれていく濃度を見張ります”同解説によれば、SC-1は温度を40〜60℃程度まで上げるため、アンモニアの蒸発が激しくなります。そこでインラインで薬液濃度を測り、アンモニアと過酸化水素の適切な量を継ぎ足すフィードバックの仕組みが使われています。あわせて、槽内の温度と循環流量の安定化、薬液濃度の最適化、液交換時間の短縮が機能として挙げられています。パーティクルを減らす側では、超純水と薬液のクリーン化、薬液の循環と濾過効率の増大、洗浄槽内の流れの制御が重要だとしています。
半導体歴史館の記述では、元のRCA洗浄は溶融石英の容器に入れ、75〜80℃でウェーハを浸すものでした。温度は上げれば落ちますが、上げるほどアンモニアが飛んで組成が動きます。現場が見ているのは、レシピに書かれた温度そのものよりも、時々刻々ずれていく濃度のほうです。
同解説は、300mmの多槽バッチ式洗浄装置ではクロスコンタミネーションとケミカルキャリーオーバーを抑えるため、専用ボートキャリアや洗浄槽内の受け台によるキャリアレスの方式が採られていると述べています。さらに、2016年時点の見通しとして、25ナノメートルの大きさのパーティクルの管理も必要になると見ています。
槽の並べ方にも同じ取引が出ます。SCREENの入門解説によれば、ふつうのウェットステーションでは1つの槽で使える薬液が1種類にとどまるため、複数の汚れを相手にするほど薬液槽の数が増え、薬液が混ざるのを避ける都合から槽の編成は薬液と純水が交互に並ぶ形になります。SCREENの同じ解説は、薬液と純水で洗うこの方式が環境へ与える負荷の大きさも挙げ、オゾンなどを含む純水で洗う機能水洗浄が広まれば、腐食性や毒性の高い廃液を減らせるとしています。
装置の側でも取引になります
Section titled “装置の側でも取引になります”一般社団法人 日本半導体製造装置協会(SEAJ)の用語集は、RCA洗浄を、硫酸と過酸化水素水、室温の希フッ酸、アンモニア水と過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水などによる洗浄方法の総称としています。同用語集はこの考案時期を1975年ごろとしており、半導体歴史館の1965年ごろ開発・1970年発表という記述とは幅があります。どちらも公開資料であり、年の記述に10年の幅がある点は、そのまま示しておきます。
装置としてどう回すかも、そのまま取引になります。東京エレクトロン株式会社のバッチスプレー式洗浄装置ZETA+シリーズの製品ページは、この装置がRCA洗浄や希フッ酸のウェットエッチなどに適用でき、最大8種類の薬液供給に対応し、混合比や濃度、温度をレシピで設定できるとしています。同社は、ミニエンバイロメント機構を備えた全自動機について、枚葉式洗浄装置と比べてはるかに優れた経済性を発揮するとしています。同社製品についての記述です。
表面技術の解説は、枚葉式洗浄がウェーハ搬送とウェーハ面内特性の均一性でバッチ式より有利だと述べています。SCREENの入門解説も、半導体工場では費用と狙う工程に応じて両方を併用するのが通例だとしています。安く大量に流すか、1枚ずつ揃えるかという選択が、SC-1とSC-2をどちらの装置で流すかに重なります。
最後に乾かすところで壊れます
Section titled “最後に乾かすところで壊れます”薬液が汚れを落としても、工程はもう1段続きます。SEAJの用語集は、シリコンが露出したゲート酸化前などの表面に純水の水滴が残ると、シリコンの溶解や水滴のふちでの酸化が起き、乾いた跡にシリコン水和物がクレーター状に残るとしています。これがウォーターマークで、続くゲート酸化膜などの欠陥を誘発するとされています。
株式会社SCREENホールディングスは2022年、北海道大学低温科学研究所との共同研究として、洗浄後の乾燥でナノ構造物が倒壊する挙動を透過型電子顕微鏡で観察したと発表しています。同社の発表によれば、倒壊は液体の表面張力によって起き、洗浄液を表面張力の低い2-プロパノール(IPA)へ置き換えてから乾かすことで防がれてきましたが、7nmや5nmといった世代ではIPAでも倒壊を防ぐことが難しくなってきています。SC-1とSC-2をどれだけ丁寧に流しても、最後の一瞬で構造が倒れれば、その洗浄の結果は失われます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”SC-1とSC-2とは何ですか?
どちらも過酸化水素を含むウェーハ洗浄液で、pHを逆側に振ってあります。SC-1はアンモニア水を加えたアルカリ性で、有機物とパーティクルを落とします。SC-2は塩酸を加えた酸性で、金属汚染を落とします。半導体歴史館のRCA洗浄の項が、この2つの役割分担を記しています。
なぜ薬液を2種類に分けるのですか?
落とす相手の性質が別だからです。有機物は膜のように広がり、パーティクルは表面に載り、金属は表面に取り込まれます。作用する化学が相手ごとに別なので、1種類でまとめて狙うと有機物・パーティクル・金属のどれかを取りこぼします。取りこぼしたものは、そのまま次の工程へ持ち越されます。
SC-1でパーティクルが落ちるのはなぜですか?
表面をわずかに溶かすためです。パーティクルが載っていた面そのものが薄く削れると、足場を失って液の中へ浮きます。有機物も同じアルカリ側で分解されます。つまり除去の力と表面を削る作用は、同じ働きの表と裏になります。
SC-1の代償は何ですか?
表面が荒れることです。表面技術に載った解説は、高温の水素アニールで整えた面をSC-1で洗うと原子ステップの構造がランダムに変わり、表面粗さが約2倍に増えたと報告しています。同解説は、SC-1やSC-2に金属の付着とパーティクル再付着という副作用があることも挙げています。
現場ではSC-1の何を見ていますか?
薬液の濃度と温度です。同じ解説によれば、SC-1は40〜60℃程度まで温度を上げるためアンモニアの蒸発が激しく、インラインで濃度を測り、アンモニアと過酸化水素を継ぎ足すフィードバックの仕組みが使われています。槽内の温度と循環流量を安定させることもあわせて挙げられています。
SC-1とSC-2は今も使われていますか?
基礎として使われています。同解説は、鏡面研磨ウェーハの洗浄がほとんどRCA法かその改良法だとしています。東京エレクトロンのバッチスプレー式洗浄装置の製品ページも、RCA洗浄が適用できるプロセスとして挙げられています。一方で、オゾン水や希フッ酸との組み合わせへ置き換える動きも並行しています。
洗浄の最後に何が起きますか?
乾燥です。SEAJの用語集は、水滴が残るとウォーターマークができ、続くゲート酸化膜などの欠陥を誘発するとしています。SCREENホールディングスは2022年、乾燥時に細いナノ構造物が液体の表面張力で倒れる挙動を観察したと発表しています。薬液が汚れを落としても、乾かすところで構造が倒れれば、その洗浄の結果は失われます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- RCA洗浄とは ── SC-1とSC-2を含む薬液体系の全体像
- DHF洗浄(希フッ酸洗浄)とは ── 自然酸化膜だけを落とす、目的の異なる薬液
- SPM洗浄(硫酸過酸化水素水洗浄)とは ── 厚いレジストや有機残さを落とす、より強い酸化側
- オゾン水洗浄とは ── 表面を荒らしにくい方向への置き換え
- 枚葉式洗浄(シングルウェハ洗浄)とは ── 同じ薬液を1枚ずつ当てる装置の側
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- 一般社団法人 半導体産業人協会「半導体歴史館 RCA洗浄」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── SC-1とSC-2の薬液構成と役割分担、開発と発表の年、溶融石英容器での75〜80℃という条件
- 一般社団法人 日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── RCA洗浄の薬液の並びと1975年ごろという考案時期、ウォーターマークの生成と後工程への影響
- 株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ「初心者のための半導体入門 洗浄工程」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 取り除く汚れの分類、パーティクルの大きさ、バッチ洗浄と枚葉洗浄の併用、薬液槽と純水槽の並べ方と廃液の負荷
- 泉妻宏治「シリコンウエハの最新の市場および技術動向」表面技術 第67巻第8号(2016年)389ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── SC-1の温度と濃度フィードバック、SC-1後の表面粗さの測定値、副作用とキレート剤、バッチと枚葉の比較
- 東京エレクトロン株式会社「洗浄 ZETA+シリーズ」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── バッチスプレー式装置でのRCA洗浄の適用、薬液の種類数とレシピ設定、経済性についての同社の記述
- 株式会社SCREENホールディングス「半導体洗浄時におけるナノ構造物の倒壊メカニズムを解明」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 乾燥時の倒壊が表面張力によること、IPA置換の限界についての同社の発表