ディスパッチ(投入順序)とは
ディスパッチ(投入順序)とは、装置の前で順番を待っているロットの中から、次に流す1つを選んで割り当てることです。 工場の予定表を先に作る仕事とは別に、目の前の行列を見て今この瞬間の1つを指名する仕事があり、そちらをこう呼びます。
SEAJ(日本半導体製造装置協会)の半導体製造装置用語集は、ディスパッチャを、スケジューラが作った生産計画のガントチャートをもとに、ロットの進捗情報や装置の稼動状況などを考慮して、各装置で流すべきロットを選び、振り分ける機能としています。同用語集は、この機能が生産実行システム(MES)の一部として組み込まれる場合と、スケジューラとともに独立した部品として動く場合があるとしています。同協会が公開している用語集の記述です。
同用語集には、装置の前の仕掛りから最適なロットを選ぶ仕組みを指すRTD(Real Time Dispatcher)という語も載っています。名前が示すとおり、選ぶ場所は装置の前です。
ディスパッチは、計画づくりとは別の仕事です。計画を持ったうえで、装置が空いた瞬間に、待っているFOUPの中から1つを指名します。
順番の決め方が、そのまま日数になります
Section titled “順番の決め方が、そのまま日数になります”半導体の工場では、ロットが動いている時間より、待っている時間のほうが桁で長くなります。
JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が公開している平成20年度の報告は、ウェーハ1枚ごとに数えると、装置で加工している時間のおよそ70倍の待ち時間を経て生産されているとしています。同報告は、その内訳として、ロードポートで順番を待つ時間、加工を終えたあとの待ち、同じロットの他のウェーハを待つ時間、次の工程へ運ばれるのを待つ時間を挙げています。同報告が示した当時の数字です。
同報告はあわせて、現場の課題として、装置の空きやオペレータ待ちが出ること、決められたサイクルタイムから作業がずれること、ロットの優先度が崩れることを挙げています。
待ちが支配的である以上、納期を左右するのは、装置の速さより順番の決め方です。
実際に何を見て、どう動かすのか
Section titled “実際に何を見て、どう動かすのか”JEITAが公開しているITRS 2003のファクトリインテグレーション日本語版は、材料が流せる状態のときに装置の待ち時間を減らすため、装置から情報を集めるとしています。挙げられているのは、装置の稼動状態、ロードポートの空き状態、予知保全、スケジューリング、工期の見込みです。同資料は、これらを、次に流す材料を示す動的なディスパッチ・リストと照らす必要があるとしています。
同資料はさらに、次の材料をいつ送るかについて、AMHSの待ち行列と、いま材料がどこにあるかから見積もった走行時間に対しても判断する必要があるとしています。装置の前だけを見ても足りず、そこへ届くまでの時間まで含めて選ぶ形です。同委員会が公開している日本語版の記述です。
優先の付け方は、ITRS 2007のファクトリインテグレーション日本語版に段が示されています。装置から装置へ直接運ぶ搬送では、まず仕掛りの1%未満にあたるスーパーホットロットと、仕掛りの5%ほどにあたるホットロットが先頭に来ます。次に、ボトルネック装置を常に動いている状態に保つことが来ます。その次に、重要な計測工程、先行ウェーハ、タイミングを合わせたいロットが続きます。2007年版の記述です。
急ぎのロットの速さについては、SEAJの用語集にQTATという語があります。同用語集は、標準の速さで流れるロットとは別に、2倍から3倍の速さで流れる超特急のロットを指すとしています。
取引:何を差し出しているのか
Section titled “取引:何を差し出しているのか”順番を1つ入れ替えれば、誰かが後ろへ動きます。ディスパッチは、この移し替えを毎回選び直す作業です。
JEITAの平成20年度の報告は、待ちのムダを表す指標として、通常の製品ロットのサイクルタイムから、最速で流したスーパーホットロットのサイクルタイムを引いた差を挙げています。同報告はこれをWTW(Wait Time Waste)と呼び、ロット1本あたりの枚数ごとに目標値をロードマップの表へ加える方針を示しています。同報告が示した内容です。最速のロットを基準にしているため、この差は、割り込ませてもらえなかったロットが払った分を測る形になります。
装置の側にも理由があります。ITRS 2007のファクトリインテグレーション日本語版は、主要な装置の購入コストがウェーハ工場の主要なコストの75%以上を占めるとしています。2007年版の数字です。高い装置を空けておく損は大きく、だからこそ優先の段の2番目にボトルネック装置への供給が入っています。急ぎのロットを通すことと、高い装置を動かし続けることは、同じ行列の中で競合します。
工場の間取りも、順番を選ぶ仕事の重さを左右します。SEAJの用語集は、同じ加工ができる装置をまとめて配置するレイアウトをジョブショップ、工程の順に装置を配置して材料が最短距離で動けるようにするレイアウトをフローショップとしています。あわせて同協会が公開している半導体製造工程の案内は、ウェーハプロセスについて、レジスト塗布から露光・現像・エッチング・イオン注入までを一組とし、すべてのパターンができあがるまでレジスト塗布から繰り返すとしています。同じ加工の装置がまとまっていて、しかも同じ並びを何度も通るため、1台の前には行き先の異なるロットが集まります。ディスパッチの重さは、建物の設計時点である程度決まっています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ディスパッチとは何ですか?
装置の前で順番を待っているロットの中から、次に流す1つを選んで割り当てることです。SEAJの半導体製造装置用語集は、ディスパッチャを、ロットの進捗情報や装置の稼動状況などを考慮して、各装置で流すべきロットを選び、振り分ける機能としています。
スケジューリングとはどう違いますか?
作る対象が異なります。SEAJの用語集は、ディスパッチャを、スケジューラが作った生産計画のガントチャートをもとに動くものとしています。予定表を先に作るのがスケジューリング、その予定表を持ったうえで目の前の行列から1つを選ぶのがディスパッチです。
何を見て選ぶのですか?
JEITAが公開しているITRS 2003のファクトリインテグレーション日本語版は、装置から集める情報として、装置の稼動状態、ロードポートの空き状態、予知保全、スケジューリング、工期の見込みを挙げ、それらを、次に流す材料を示す動的なディスパッチ・リストと照らすとしています。
優先されるロットがあるのですか?
あります。JEITAが公開しているITRS 2007のファクトリインテグレーション日本語版は、装置から装置へ直接運ぶ搬送の優先として、仕掛りの1%未満にあたるスーパーホットロットと仕掛りの5%ほどにあたるホットロットを最初に挙げ、次にボトルネック装置を常に動いている状態に保つこと、その次に重要な計測工程や先行ウェーハを挙げています。
待ち時間はどれくらいあるのですか?
JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が公開している平成20年度の報告は、ウェーハ1枚ごとに数えると、装置で加工している時間のおよそ70倍の待ち時間を経て生産されているとしています。同報告が示した当時の数字です。
順番を変えると、何が犠牲になりますか?
後ろに回されたロットの日数です。同じ報告は、待ちのムダを表す指標として、通常の製品ロットのサイクルタイムから、最速で流したスーパーホットロットのサイクルタイムを引いた差を挙げています。割り込みを増やせば、この差が広がる側へ動きます。
装置の並べ方は関係しますか?
関係します。SEAJの用語集は、同じ加工ができる装置をまとめて配置するレイアウトをジョブショップ、工程の順に装置を配置するレイアウトをフローショップとしています。同じ加工の装置がまとまっているほど、1台の前に行き先の異なるロットが集まり、選ぶ回数が増えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- AMHS(自動搬送システム)とは ── 選んだロットを実際に運ぶ側であり、走行時間の見積もりがディスパッチの判断材料になります
- ロードポートとは ── 順番待ちが目に映る場所であり、空いているかどうかが次の1つの選択を左右します
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- SEAJ「半導体製造装置用語集(Factory Integration)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ディスパッチャとRTDの役割、QTAT、仕掛り、ジョブショップとフローショップというレイアウトの呼び分け
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2007 ファクトリインテグレーション 日本語版」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ダイレクト搬送の優先の段、スーパーホットロットとホットロットの比率、装置の購入コストが工場の主要なコストの75%以上を占めるという記述
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成20年度報告 第9章 WG8 ファクトリ・インテグレーション」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 加工時間のおよそ70倍という待ち時間、待ちの内訳、WTWという指標の中身、現場の課題の列挙
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2003 ファクトリインテグレーション 日本語版」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 装置から集める情報の項目、動的なディスパッチ・リスト、搬送の待ち行列と走行時間の見積もりを含めた判断
- SEAJ「半導体製造工程とは」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ウェーハプロセスがレジスト塗布から同じ並びを繰り返す工程であるという記述