サイクルタイムとは
サイクルタイムとは、ロットが工程へ入ってから出てくるまでにかかる時間です。 装置がウェーハを加工している時間へ、運ばれている時間と待っている時間を足した長さになります。
一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)が公開する半導体製造装置用語集(Factory Integration)は、TAT(Turn Around Time)を、工程の一部または全部を加工するに要する時間として、入れてから出るまでの総時間、としています。工場ではこの入りから出までの長さをサイクルタイムとも呼びます。
同じ用語集は、この長さの中身を切り分けるための語をもう一つ備えています。RPT(Raw Process Time)を、装置で加工するための正味の時間として、搬送と待ち時間を除いた量、としています。1枚のウェーハがエッチング装置の中で削られていた時間がRPTで、そのロットが工程へ入ってから出るまでの全体がサイクルタイムにあたります。
両者の比をX-Factorと呼びます。同用語集はX-Factorを、TATまたはサイクルタイムをRPTで割った指数、としています。この割り算の答えが3なら、装置の中にいた時間の3倍を工程で費やした勘定になり、残りの3分の2は運ばれる時間と待つ時間です。同用語集はこの式を示すにとどまります。
待ちは装置の前と工程の間に生まれます
Section titled “待ちは装置の前と工程の間に生まれます”前工程は同じ装置群を何度も往復します。SEAJの半導体製造工程は、前工程の流れを平坦化まで進めたあと、レジスト塗布から先を繰り返す、と示しています。1枚のシリコンウェーハは、露光装置と洗浄装置と成膜装置の間を何十回も行き来します。
装置の前には順番待ちの列が伸びます。同じFactory Integration用語集は、RTD(Real Time Dispatcher)を、装置前の仕掛りから最適のロットを選ぶ仕組みまたはシステム、としています。選ぶ相手が装置の前に並んでいる前提の語です。工場全体の出来高を抑える工程をボトルネックと呼びます。
工程と工程の間にも待ち場があります。同用語集はダイレクト搬送の項で、いまのファブの搬送は工程間と工程内の2つから成り、各ベイには工程を調整するための自動棚があって、そこへいったん預けてから次工程へ渡している、と述べています。村田機械は保管システム・バッファの公式製品ページで、キャリア保管ストッカーの目的を、製造装置の加工完了タイミングと次工程製造装置の加工開始タイミングのズレを吸収すること、としています。ズレを吸収する場所が、そのまま待ち時間の置き場になります。
縮める手は、順番と運び方と配置に及びます
Section titled “縮める手は、順番と運び方と配置に及びます”順番を選び直す手があります。同じFactory Integration用語集は、ディスパッチャを、スケジューラが作った生産計画のガントチャートを土台に、ロットの進み具合と装置の空き具合を見たうえで、その装置でつぎに流す1ロットを選び出して割り当てる機能、としています。この順番付けそのものを指す語がディスパッチ(投入順序)です。
運ぶ距離を削る手があります。同用語集はダイレクト搬送を、搬送リードタイム短縮の方法として、加工の完了した装置のロードポートから次の製造装置のロードポートへFOUPを直接搬送すること、としています。棚を経由する区間がまるごと消えます。この搬送を担う設備がAMHSです。
装置の配置を変える手があります。同用語集は、フローショップを、プロセスステップに従って装置を配置するレイアウトとして、材料が装置間を最短距離で移動できるもの、としています。同用語集のジョブショップは、同じ種類の加工ができる装置どうしを1か所へまとめて据えるレイアウトです。
装置の直前で待たせる秒数を削る製品もあります。村田機械は同じ公式製品ページで、装置前FOUPバッファ Tool Station TS300を、製造装置のロードポートの上へかぶせて据えるバッファ装置として、加工済みのFOUPを引き取ってから次のFOUPを差し出すまでのFOUP入替時間を縮め、検査の時間が短い検査装置での稼働率を上げることを志向する、としています。同社が示すTS300のシステム仕様は、サイクルタイム15秒、保管数4〜12 FOUPです。この節の数値は同社製品のものです。
速さと引き換えに差し出すものがあります
Section titled “速さと引き換えに差し出すものがあります”急ぎのロットには別のレーンを用意します。同じFactory Integration用語集は、QTAT(Quick TAT)を、標準のスピードで流れるロットとは別に2〜3倍のスピードで流れる超特急ロット、としています。標準の流れと別立てにするという設計そのものが、全部を一律に速くする手段の限界を示します。
装置の時間の使い道にも取引があります。同用語集はOEE(Overall Equipment Efficiency)を設備の総合効率として、設備の稼動時間のうち製品を作ることへ回る時間の割合を高めることとし、そのためには設備の故障とメンテナンス、およびNPWへ充てる時間を減らす必要がある、としています。同用語集のNPW(Non Product Wafer)は、製品デバイスを作るために使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称で、装置の品質を定期的に見張るためのウェーハを含みます。装置の状態を見張るほど、製品へ回せる装置時間は削られます。近い指標に装置稼働率があります。
待たせた時間そのものが歩留まりへ響きます。村田機械は同じ公式製品ページで、N2パージについて、微細化にともなうプロセス工程間の酸化や水分などによる品質影響への対策として、工程と工程の間に許される時間の枠をN2パージで広げ、歩留の低下を防ぐ、としています。工程と工程の間には待たせてよい上限があり、その上限を延ばすためだけに専用の装備が要ります。
後工程では、流し方そのものが国の事業の題目になっています。経済産業省がポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業で公開した半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発の資料は、半導体の製造工程の中でも人手に頼る度合いが高い後工程から組立と検査を選び、完全自動化へ要る装置とシステムのつなぎ目に標準インタフェース(IF)を作る、としています。同資料は、半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)のパイロットラインのイメージを、完全自動化、並列処理、効率・集約レイアウトとして示しています。
同じ言葉が別の区間を指すことがあります
Section titled “同じ言葉が別の区間を指すことがあります”一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が公開するICガイドブック用語解説は、サイクルタイムを、メモリの読み出しや書き込みといった動作を繰り返すのにかかる時間、としています。同じ半導体の語でありながら、工場の時間とは別物です。
同じ用語解説のTATは、注文を受けてから製品を届けるまでにかかる日数で、TATの短縮は設計から製造まであらゆる部門が合理化の目標の一つに掲げている、と述べています。SEAJのTATが工程の入りから出までを指すのに対して、JEITAのTATは受注から供給までを指します。サイクルタイムやTATという語を受け取ったら、どの区間の時間なのかを先に聞くだけで、話の食い違いが減ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”サイクルタイムとは何ですか?
ロットが工程へ入ってから出てくるまでにかかる時間です。日本半導体製造装置協会が公開する半導体製造装置用語集は、TAT(Turn Around Time)を、工程の一部または全部を加工するに要する時間として、入れてから出るまでの総時間としています。
装置が加工している時間と同じですか?
別の量です。同じ用語集は、RPT(Raw Process Time)を、装置で加工するための正味の時間として、搬送と待ち時間を除いた量としています。サイクルタイムからRPTを引いた残りが、運ばれる時間と待つ時間にあたります。
X-Factorとは何ですか?
同じ用語集によれば、TATまたはサイクルタイムをRPTで割った指数です。答えが3なら、装置の中にいた時間の3倍を工程で費やした勘定になります。同用語集はこの式を示すにとどまります。
待ちはどこで生まれますか?
装置の前と、工程と工程の間です。同じ用語集は、RTD(Real Time Dispatcher)を、装置前の仕掛りから最適のロットを選ぶ仕組みまたはシステムとしています。ダイレクト搬送の項では、いまのファブは各ベイに工程調整のための自動棚を備え、いったん保管してから次工程へ供給している、と述べています。
どうすれば短くなりますか?
順番と運び方と配置を動かします。同じ用語集は、ディスパッチャがロットの進捗情報や装置の稼動状況を考慮して最適なロットを選び、ダイレクト搬送が装置のロードポートから次の装置のロードポートへFOUPを直接運び、フローショップが材料を装置間の最短距離で移動させる、としています。
急ぎのロットはどう流しますか?
別レーンを用意します。同じ用語集は、QTAT(Quick TAT)を、標準のスピードで流れるロットとは別に2〜3倍のスピードで流れる超特急ロットとしています。
短くする代償は何ですか?
工程調整の場と、装置の時間です。同じ用語集はOEE(設備の総合効率)について、設備の故障、メンテナンス、およびNPWへ費やす時間を減少させる必要がある、としています。村田機械は保管システム・バッファの公式製品ページで、N2パージがプロセス工程間の時間制限を緩和し歩留低下を防止する、としています。待たせてよい時間には上限があります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 仕掛品(WIP)とは ── ラインの中にある量を数える語で、サイクルタイムはその量が出てくるまでの時間です
- AMHS(自動搬送システム)とは ── 待ち時間のうち運ばれている区間を担う設備です
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会「半導体製造装置用語集(Factory Integration)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── TAT、RPT、X-Factor、QTAT、RTD、ディスパッチャ、ダイレクト搬送、フローショップ、ジョブショップ、OEE、NPWの語義
- 一般社団法人電子情報技術産業協会「ICガイドブック用語解説」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── メモリ動作としてのサイクルタイム、受注から製品供給までを指すTAT
- 村田機械「保管システム・バッファ(機器)」公式製品ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── キャリア保管ストッカーの目的、Tool Station TS300の仕様、N2パージと工程間の時間制限
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会「半導体製造工程とは」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 前工程がレジスト塗布から先を繰り返す流れ
- 経済産業省「半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 後工程の組立・検査への着目と、SATASパイロットラインのイメージ