仕掛品(WIP)とは
仕掛品(WIP)とは、工場のラインへ入っていて、完成までの途中にあるウェーハやロットのことです。 いま加工の列の中にいる分を指し、出荷を待つ製品在庫や入荷したままの材料とは別の枠で数えます。
一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)が公開する半導体製造装置用語集(Factory Integration)は、WIP(Work In Process)を、製品ウェーハの仕掛りの意味で、ロット数またはウェーハ枚数で示される、としています。金額より先に枚数とロット数へ落ちるため、現場ではどの工程に何ロット溜まっているかという実数の話になります。
ラインの中にある量と、ラインから出ていく速さは別の量です。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が公開するICガイドブック用語解説は、スループットを、単位時間内にこなせる仕事量として、LSIや電子機器・部品工場では製造ラインの能力を表すもの、としています。同用語解説は、入出力のための準備や後始末などの待ち時間もこの中へ含む、とも述べています。装置の側が出ていく速さの上限を握る以上、仕掛を積み増した分は、工場の中で待つ量へ回ります。工場全体の出来高を抑える工程をボトルネックと呼びます。
数える対象にも線が引いてあります。同じ用語集はNPW(Non Product Wafer)を、製品デバイスを作るために使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称として、装置の品質を定期的に見張るためのウェーハを挙げています。仕掛として数える対象は製品ウェーハのほうです。装置の状態を見張るためのウェーハまで数え込むと、工場が抱えている製品の量が実際より多く出ます。
仕掛がゼロなら、装置1台の停止でラインが止まります
Section titled “仕掛がゼロなら、装置1台の停止でラインが止まります”装置は止まります。同じ用語集はMTBFを平均故障間隔(内生産)時間として、故障から次の故障までの間に装置が計画どおりの働きを保っていた時間の平均値とし、MTTRを平均修理時間として、修理を終えて装置が計画どおりの働きへ戻るまでにかかる時間の平均、としています。故障の間隔と修理の長さの両方へ平均値の語を用意する工場は、装置が止まる前提で組んであります。
止まった装置の下流を守るのが仕掛です。村田機械は保管システム・バッファの公式製品ページで、キャリア保管ストッカーを、クリーンルーム内の一時保管庫として、ある装置が加工を終える時刻と次工程の装置が加工を始める時刻とのズレを吸収する役目を担う、としています。ダイフクも半導体生産ライン向けシステムの公式ページで、クリーンルーム内の半導体生産工程でウエハの工程間搬送を24時間・365日続けるため、信頼性を高めた保管・搬送システムを掲げ、生産設備の稼働率を最大限まで引き上げる仕組みを挙げています。
仕掛の置き場は三段になります
Section titled “仕掛の置き場は三段になります”工場の床に据える大きな棚があります。同じFactory Integration用語集は、ストッカーを、保管棚とスタッカクレーンと入出庫部から成る自動倉庫の一種として、預けた物をクリーンな環境のまま保つところに特徴がある、としています。同用語集は、庫内のどこに何があるかを管理するため棚一つ一つへ番地を振り、これをストッカー内棚アドレスと呼ぶ、とも記しています。仕掛は、どの棚のどの番地にあるかまで管理される対象です。
天井の軌道の下にも棚があります。同用語集はLocal Buffer Station(UTS、ZFS、OHBとも呼びます)を、OHTの軌道の下や横へ据えたFOUPの仮置き棚として、宙に浮かせて預けるためフロアの場所が不要になり、ストッカーの容量も削減できる、としています。村田機械も同じ公式製品ページで、OHB軌道バッファについて、FOUPへいつでも手が届き、何か所でもビークルが荷を移せるので搬送の時間が短い、としています。この軌道を走らせる設備がAMHSです。
装置の真ん前にも棚があります。村田機械は同じ公式製品ページで、装置前FOUPバッファ Tool Station TS300を、製造装置のロードポートにかぶせる形で設置するバッファ装置として、製造装置に最も近い位置でFOUPをバッファし、加工完了FOUPの取り去りから次FOUPの供給までのFOUP入替時間を短縮して、検査時間の短い検査装置の稼働率向上を志向する、としています。同社が示すシステム仕様は、サイクルタイム15秒、保管数4〜12 FOUPです。この節の数値は同社製品のものです。
厚くするほど、床と時間と歩留を差し出します
Section titled “厚くするほど、床と時間と歩留を差し出します”床面積を差し出します。村田機械は同じ公式製品ページで、ベアウエハストッカーCDWXを、FOUPから取り去ったウエハを専用のケース(セル)へ高密度に保管する仕組みとして、床面積 約9.8m²、保管枚数1,725〜4,325枚(最大20,825枚)というシステム仕様を示しています。同社によれば、ウエハのピッチをFOUP比で約6割削減した高密度保管でこの数字です。この節の数値は同社製品のものです。クリーンルームの床面積は費用そのものであり、仕掛の置き場は装置を据える場所と取り合います。
工程の時間を差し出します。同じFactory Integration用語集はRTD(Real Time Dispatcher)を、装置前の仕掛りから最適のロットを選ぶ仕組みまたはシステム、としています。装置の前へ積んだ量が、そのまま選択の待ち行列です。同用語集はダイレクト搬送を、搬送リードタイムを縮める方法として、いったん棚へ預ける現在の流れの代わりに、加工を終えた装置のロードポートから次に加工する装置のロードポートへ、FOUPをそのまま運ぶこと、としています。棚で待つ区間を省くことが短縮策として挙がる以上、棚へ積む量は工程の時間の側に載ります。1ロットが工程へ入ってから出るまでの長さをサイクルタイムと呼びます。
歩留まりも差し出します。村田機械は同じ公式製品ページで、N2パージについて、微細化にともなうプロセス工程間の酸化や水分などによる品質影響への対策として、工程と工程の間に許される時間の枠をN2パージで広げ、歩留の低下を防ぐ、としています。工程と工程の間で待たせてよい時間には上限があり、その上限を延ばすためだけに専用の装備が要ります。仕掛は、待たせるほど品質の側の予算を食います。
資金も差し出します。同じFactory Integration用語集はSCM(Supply Chain Management)について、部品と製品の在庫を切り詰めるほど企業活動は効率化し、企業の手元に残る資金の余力が高まる、としています。
量を動かす手は、順番付けと直接搬送です
Section titled “量を動かす手は、順番付けと直接搬送です”同じ用語集はディスパッチャを、スケジューラが作った生産計画のガントチャートを土台に、ロットの進み具合と装置の空き具合を見たうえで、その装置でつぎに流す1ロットを選び出して割り当てる機能、としています。この順番付けそのものを指す語がディスパッチ(投入順序)です。同用語集のダイナミックスケジューリングは、搬送対象FOUP数の増減や、故障などによる搬送経路の変化といった不確実な状況下でも、その変化へ即座に付いていき、そのときできる限りの最適さを追う組み方です。仕掛の量そのものが刻々と動く前提で組んだ語です。
後工程では、人手と流し方の見直しが国の事業の題目になっています。経済産業省がポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業で公開した半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発の資料は、半導体の製造工程の中でも人手に頼る度合いが高い後工程から組立と検査を選び、完全自動化へ要る装置とシステムのつなぎ目に標準インタフェース(IF)を作る、としています。同資料は、半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)のパイロットラインのイメージを、完全自動化、並列処理、効率・集約レイアウトとして示しています。並べ方と流し方が変われば、途中で抱える量も動きます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”仕掛品(WIP)とは何ですか?
工場のラインへ入っていて、完成までの途中にあるウェーハやロットのことです。日本半導体製造装置協会が公開する半導体製造装置用語集は、WIP(Work In Process)を、製品ウェーハの仕掛りの意味で、ロット数またはウェーハ枚数で示されるもの、としています。
どうやって数えますか?
ロット数とウェーハ枚数で数えます。同じ用語集がこの二つの単位を挙げています。金額の前に枚数へ落ちる語であるため、現場ではどの工程に何ロット溜まっているかという単位で数えます。
ダミーウェーハも仕掛に数えますか?
別枠です。同じ用語集はNPW(Non Product Wafer)を、製品デバイスを作るために使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称として、装置の品質を定期的に見張るためのウェーハを挙げています。仕掛として数える対象は製品ウェーハのほうです。
なぜ仕掛が要るのですか?
装置が止まるためです。同じ用語集はMTBF(平均故障間隔時間)とMTTR(平均修理時間)を掲げ、装置の故障と修理へ平均値を与えています。村田機械は保管システム・バッファの公式製品ページで、キャリア保管ストッカーの目的を、製造装置の加工完了タイミングと次工程製造装置の加工開始タイミングのズレを吸収すること、としています。
仕掛はどこへ保管しますか?
三段の置き場があります。同じ用語集は、ストッカーを保管棚とスタッカクレーンと入出庫部で構成される自動倉庫の一種とし、Local Buffer StationをOHTの軌道の下や横へ据えたFOUPの仮置き棚としています。村田機械は同じ公式製品ページで、製造装置のロードポートにかぶせる装置前FOUPバッファを掲げています。
仕掛を厚くする代償は何ですか?
床面積と工程の時間と歩留です。村田機械は同じ公式製品ページで、ベアウエハストッカーCDWXのシステム仕様として床面積 約9.8m²、保管枚数1,725〜4,325枚を示し、N2パージについてはプロセス工程間の時間制限を緩和し歩留低下を防止する、としています。工程と工程の間で待たせてよい時間には上限があります。
仕掛の量はどう調整しますか?
順番付けと運び方で調整します。同じ用語集は、ディスパッチャをその装置でつぎに流す1ロットを選び出して割り当てる機能とし、ダイレクト搬送を搬送リードタイムを縮める方法として、加工を終えた装置のロードポートから次に加工する装置のロードポートへ、FOUPをそのまま運ぶこと、としています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- サイクルタイムとは ── 仕掛はラインの中にある量で、サイクルタイムはその量が出てくるまでの時間です
- AMHS(自動搬送システム)とは ── 仕掛を棚から棚へ、棚から装置へ運ぶ設備です
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会「半導体製造装置用語集(Factory Integration)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── WIP、NPW、MTBF、MTTR、ストッカー、Local Buffer Station、RTD、ディスパッチャ、ダイナミックスケジューリング、ダイレクト搬送、SCMの語義
- 村田機械「保管システム・バッファ(機器)」公式製品ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── キャリア保管ストッカーの目的、OHB軌道バッファ、Tool Station TS300の仕様、N2パージ、ベアウエハストッカーCDWXの床面積と保管枚数
- ダイフク「半導体生産ライン向けシステム」公式ページ(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 24時間・365日の工程間搬送を支える保管・搬送システムと、生産設備の稼働率を引き上げる仕組み
- 一般社団法人電子情報技術産業協会「ICガイドブック用語解説」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── スループットの語義と、待ち時間まで含む適用範囲
- 経済産業省「半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 後工程の組立・検査への着目と、SATASパイロットラインのイメージ