レーザーダイオードとは
レーザーダイオードとは、pn接合に順方向の電流を流して電子と正孔を再結合させ、そこで生まれた光を反射構造の間で往復させて増やし、波長と位相のそろった光として取り出す半導体素子です。 半導体レーザー、LDとも呼ばれます。
電子情報通信学会の知識ベースは、半導体レーザーを、バンドをまたぐ電子の移りかわりで発光と増幅をあわせて起こし、素子の内側か外側につくられた反射構造が共振器をなす小さなレーザーとしています。同じ解説によれば、着想が生まれたのは1950年代で、室温で切れ目なく動かせるようになったのは1970年代に入ってすぐです。東京エレクトロンの公式用語集も、順方向の電流を流し込んだpn接合で電子と正孔が結び付き、その誘導放出によって光を放つダイオードとしています。
出発点はLEDと同じ発光再結合です
Section titled “出発点はLEDと同じ発光再結合です”ロームの技術解説によれば、pn接合に順方向の電圧をかけると正孔と電子が接合部へ向かって移動し、双方が結び付いたときに余ったエネルギーが光になります。これを発光再結合と呼びます。放たれる光の波長は、再結合するときのバンドギャップの大きさで決まります。
同じ解説は、シリコンを発光遷移確率の低い間接遷移型半導体とし、発光素子にはGaAs系やGaN系のような直接遷移型の化合物半導体が使われるとしています。ここまではLEDと共通する部分です。
LEDとの境目は、光を往復させるかどうかです
Section titled “LEDとの境目は、光を往復させるかどうかです”ロームの技術解説は、光の放出に自然放出と誘導放出の2つがあるとしています。自然放出は、伝導帯の電子がそれぞれ独立に価電子帯の正孔と再結合して発光するもので、1回の再結合で1個のフォトンが出て完結します。この光の偏光と位相はばらばらです。
誘導放出はここが違います。バンドギャップに相当するエネルギーの光が通りかかると、その光に刺激されて伝導帯の電子が価電子帯へ移り、元の光と同じ波長・同じ位相のフォトンが放たれます。1個が2個に、2個が4個にと増えていきます。
増幅を発振まで持っていくには利得を大きくする必要があり、そのためにレーザーダイオードは2枚の反射面を向かい合わせに配置し、その間で光を往復させます。ロームの技術解説は、この構造をファブリ・ペロー共振器と呼び、片側の反射面の反射率を下げて光の一部を外へ透過させるとしています。一般には半導体のへき開面が反射面に使われ、そこから光が出る構造を端面発光レーザーと呼びます。
電流には、ここから先がレーザーという境目があります
Section titled “電流には、ここから先がレーザーという境目があります”ロームの技術資料は、順電流に対する光出力の関係をI-Lカーブと呼び、自然発光の領域とレーザー発振の領域に区切っています。発振が始まる電流の値がしきい値電流です。しきい値より下の電流では、同じ素子が自然発光にとどまります。
この境目は温度で動きます。同社の資料が示す例では、ケース温度25℃のときに光出力5mWを得るために30mAが必要なのに対し、70℃では44mAが要ります。温度が上がると光出力が下がり、それを補って電流を増やすと発熱がさらに進むという循環が起こるため、放熱の設計が要点になります。
そろった光にも広がりがあります
Section titled “そろった光にも広がりがあります”ロームの技術資料は、レーザーダイオードの発光がコヒーレンス性の高い、スペクトル幅の狭い、指向性の高いものであるとしています。一方で同じ資料は、レーザー光が回折によって広がりながら進むこと、チップ端面から十分離れた場所での強度分布をファーフィールドパターンと呼ぶことも示しています。チップ内の共振器は垂直方向が数10nm、水平方向が数μmで作られるため、広がりは活性層に垂直な方向のほうが大きくなります。単色性については、ロームの技術解説が、幅広い波長で光るLEDに対してレーザーダイオードはほとんど一定の波長で発光するとしています。
使うときには相応の注意が要ります
Section titled “使うときには相応の注意が要ります”ロームの技術資料は、レーザーダイオードにサージ電流が加わると光学的損傷(COD)が起こりやすく、一般のディスクリート製品と比べて静電気耐性が低いとしています。CODは破壊前の光学特性を失ったままになる永久的な損傷で、短い時間で発生するため予防が要点になります。出射光そのものも危険で、目を直接向けた場合はもちろん、レンズ越しに見た場合にも失明の恐れがあると同社は注意を促しています。
寿命の目安は資料によって幅があります。ロームは一般的な条件(ケース温度25℃)の連続点灯で平均寿命を約10,000時間としています。日亜化学工業は自社製品について、超高圧水銀ランプの3,000〜6,000時間に対しLDは約20,000時間としています。条件の置き方が各社で異なるため、条件を添えた目安として比べる必要があります。
使われる場所
Section titled “使われる場所”電子情報通信学会の知識ベースは、光ディスクのピックアップにCDで780nm、DVDで650nm、次世代光ディスクで405nmの半導体レーザーが使われるとしています。同じ解説によれば、基板の材料でおおよその波長帯が決まり、GaNは青紫から青、GaAsは赤色から1μm付近の赤外、InPは1.3μmと1.55μmを含む通信波長帯にあたります。ロームは近年の用途として、数百ワット級の高出力品と自動運転向けLiDARの光源を挙げています。日亜化学工業は、露光機やプロジェクターで水銀ランプを置き換える例を示しています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”レーザーダイオードとは何ですか?
pn接合に順方向の電流を流し、電子と正孔の再結合で生まれた光を反射構造の間で往復させて増やし、波長と位相のそろった光として取り出す半導体素子です。半導体レーザー、LDとも呼ばれます。
LEDとの境目はどこにありますか?
誘導放出が起こるかどうかです。ロームの技術解説は、LEDが発生した光をそのまま放つのに対し、半導体レーザーは共振する構造で自分の光を活性層内に往復させて増やし、位相のそろった強い光として発振するとしています。
しきい値電流とは何ですか?
レーザー発振が始まる電流の値です。ロームの技術資料は、順電流と光出力の関係を自然発光の領域とレーザー発振の領域に区切っており、しきい値電流はその境目にあたります。しきい値より下の電流では、同じ素子が自然発光にとどまります。
レーザー光は完全な平行光ですか?
広がりを持ちます。ロームの技術資料は、レーザー光が回折によって広がりながら進むとしており、遠方での強度分布をファーフィールドパターンと呼びます。共振器の断面が垂直方向で数10nm、水平方向で数μmと差があるため、広がりは活性層に垂直な方向のほうが大きくなります。
温度が上がるとどうなりますか?
同じ光出力を得るために必要な電流が増えます。ロームの資料が示す例では、ケース温度25℃で光出力5mWに30mAが必要なのに対し、70℃では44mAが要ります。電流を増やすと発熱がさらに進むため、放熱の設計が要点になります。
静電気に弱いというのは本当ですか?
本当です。ロームの技術資料は、サージ電流が加わると光学的損傷(COD)が起こりやすく、一般のディスクリート製品と比べて静電気耐性が低いとしています。CODは永久的な損傷で、一度起きた素子は破壊前の光学特性を失ったままになります。
どこで使われていますか?
光ディスクの読み書き、光通信、レーザープリンタ、光学センサ、産業用の切断や溶接などです。ロームは自動運転向けLiDARの光源を、日亜化学工業は露光機やプロジェクターでの水銀ランプの置き換えを挙げています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- LED(発光ダイオード)とは ── 同じ発光再結合を使う素子で、共振器の有無がレーザーダイオードとの境目になります
- VCSEL(面発光レーザー)とは ── 反射構造を基板と垂直に重ね、チップの面から光を取り出すレーザーです
- ダイオードとは ── 電流を一方向に流す2端子素子で、レーザーダイオードはその光る仲間にあたります
- フォトカプラとは ── 発光素子と受光素子を組み合わせ、光を絶縁のために使う部品です
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- 電子情報通信学会「知識ベース 9群5編2章 半導体レーザー(レーザーダイオード,LD)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 半導体レーザーの位置づけ、室温連続動作の実現時期、基板材料と波長帯、光ディスクの波長を裏づけます
- ローム「レーザーダイオード(半導体レーザー)とは?」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 発光再結合、自然放出と誘導放出の違い、ファブリ・ペロー共振器、端面発光レーザー、単色性、平均寿命の目安を裏づけます
- ローム TechWeb「レーザーダイオードの特性・使用上の注意・駆動回路設計」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── I-Lカーブとしきい値電流、温度による必要電流の増加、ファーフィールドパターン、CODと静電気対策を裏づけます
- 日亜化学工業「レーザーダイオード (LD)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 同社製品の寿命の目安と、水銀ランプを置き換える用途を裏づけます
- 東京エレクトロン「公式用語集 半導体レーザー」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 誘導放出で光を放つダイオードという記述を裏づけます