裏面照射型(BSI)とは
裏面照射型(BSI)とは、シリコンウェーハを反転させ、配線層と反対の面から光を入れるイメージセンサーの構造です。 ソニーセミコンダクタソリューションズの技術ページは、シリコン基板を裏側から照らす形にすれば、配線やトランジスタを避けて1画素あたりの受光量を増やせるうえ、光の入射角が変わったときの感度低下も抑えられるとしています。
イメージセンサーは、シリコンの上に光を電気へ変える受光部(フォトダイオード)を並べ、その上へ信号を運ぶ金属配線を何層も重ねて作ります。従来の形は、この配線層の側から光を入れていました。表面照射型と呼びます。
応用物理学会誌の解説記事(2020年掲載、著者はソニーセミコンダクタソリューションズ所属)は、表面照射型の場合、画素回路の制御と信号の取り出しに使うメタル配線が網の目のように受光部の上を覆い、光はそのすきまを抜けて深いところのフォトダイオードへ届くと述べています。そして、画素の微細化が進むほどすきまは狭まり、入射光の一部がさえぎられて感度が落ちるとしています。
画素を小さくするほど、光の入口も一緒に小さくなります。解像度を上げたい要求と、光を集めたい要求が、同じ画素の中で正面からぶつかります。
裏面照射型は、この衝突を層の並べ替えで解きます。同記事は、受光部と配線を作り込んだセンサウェーハを支持基板へ貼り合わせ、その裏面を薄くしたうえで、薄くなった側にオンチップレンズを載せると述べています。レンズの真下にフォトダイオードが来るため、メタル配線層は光の入射経路の外側へ移ります。
「裏面」が指すのはウェーハの裏側です
Section titled “「裏面」が指すのはウェーハの裏側です”カメラの裏側という意味に読めますが、表と裏を分ける基準はシリコンウェーハの側にあります。ソニーの技術ページは、シリコン基板をひっくり返した側、つまり裏面を光の入口にすると書いています。配線を作り込んだ面が表で、その反対の面が裏です。
キヤノンは、同社のコンパクトデジタルカメラの製品技術ページで、同じ構造を、受光面が配線層より上側に来る形だとしています。光から見て配線層が受光面の向こう側へ回る、という位置関係の言い方です。
向きを変えると、工程が増えます
Section titled “向きを変えると、工程が増えます”日本表面真空学会誌の研究紹介(2019年掲載、著者はソニーセミコンダクタソリューションズ所属で、同社の構造を例にした記述です)は、裏面照射型の作り方を次の順で示しています。まず配線層まで仕上げたシリコンウェーハの上下をひっくり返し、支持基板へ接合します。次に、裏側から光を取り込めるよう、フォトダイオードの受光面の手前までウェーハを削ります。同記事は、こうするとフォトダイオードまでの光路から配線層が消えるため、入射光の失われる分が少なくなるとしています。
半導体製造装置メーカーのディスコの技術資料は、裏面照射型CMOSセンサの製造工程で酸化膜接合による貼り合わせが用いられるとし、外周部に接合の弱い領域を残したまま研削すると、ピーリングなどの不良を招くおそれがあると述べています(同社が推奨するエッジトリミング工程についての記述です)。貼り合わせと薄化は、歩留まりの難所を1つ増やします。
構造を変えると代償も生じます
Section titled “構造を変えると代償も生じます”ソニーの技術ページは、裏面照射型について、従来の表面照射型と比べたとき、その構造と工程から来るノイズ、暗電流、欠陥画素、混色が画質を落とし、S/N比を下げる課題があったと記しています。そのうえで同社は、裏面照射型に合わせた独自の受光部構造を考案して感度を上げ、ノイズと暗電流と欠陥画素を減らしたとしています。
数字にも条件が付きます。同ページは、2009年に商品化した製品について、同社の従来の表面照射型に対して感度がおよそ2倍になり、ノイズも下がったとしています。測定条件は同ページの外にあります。
積層型とは別の段階です
Section titled “積層型とは別の段階です”裏面照射型と積層型は、しばしば同じものとして紹介されます。ソニーの積層構造の技術ページは、裏面照射型で支持基板が担っていた土台の役を、信号処理の回路を作り込んだチップへ渡し、画素側と重ねたものが積層型だと位置づけています。裏面照射型がまずあり、その一番下の板の正体を差し替えたものが積層型です。
日本表面真空学会誌の研究紹介は、積層型が生まれた理由も書いています。裏面照射型は画素とロジック回路が同一基板上にあるため、画素数を増やす場合もロジック回路の規模を広げる場合もチップサイズが大きくなります。加えて、画素側はノイズとリークを抑えるプロセスを求め、ロジック回路側は速さと抵抗の低さを求めます。この両立が技術的に難しく、トレードオフを解消するために積層型が開発されたと同記事は述べています(同社の構造を例にした記述です)。
2枚のチップの間は、TSVなどの貫通電極が信号を渡します。応用物理学会誌の解説記事は、TSVが画素チップのシリコン層を貫くため、画素アレイの外側周辺部へ配置する必要があるとしています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”裏面照射型(BSI)とは何ですか?
シリコンウェーハを反転させ、配線層と反対の面から光を入れるイメージセンサーの構造です。ソニーセミコンダクタソリューションズの技術ページは、シリコン基板を裏側から照らす形にすれば、配線やトランジスタを避けて1画素あたりの受光量を増やせるうえ、光の入射角が変わったときの感度低下も抑えられるとしています。
なぜ「裏面」と呼ぶのですか?
表と裏を決めているのがシリコンウェーハだからです。同社の技術ページは、シリコン基板をひっくり返した側、つまり裏面を光の入口にすると記しています。配線を作った側が表で、その反対側が裏という呼び分けです。
表面照射型とは何が違いますか?
光の通り道に配線層があるかどうかが違います。応用物理学会誌の解説記事は、表面照射型では配線の網目に空いたすきまを通してシリコンの奥にあるフォトダイオードまで光を届ける必要があり、画素を細かくするほどそのすきまが狭まって感度が落ちるとしています。
どうやって作るのですか?
日本表面真空学会誌の研究紹介によれば、配線層まで仕上げたシリコンウェーハの上下をひっくり返して支持基板へ接合し、続けてフォトダイオードの受光面の手前までウェーハを削ります。仕上げに、薄くなった裏面側へオンチップレンズを作ります。
裏面照射型にすれば画質は必ず上がりますか?
課題も伴います。ソニーの技術ページは、従来の表面照射型と比べたとき、その構造と工程から来るノイズ、暗電流、欠陥画素、混色が画質を落とし、S/N比を下げる課題があったと記しています。同社は、裏面照射型に合わせた独自の受光部構造でこれらを改善したとしています。
積層型(積層構造)と同じものですか?
別の段階の技術です。ソニーの積層構造の技術ページは、裏面照射型で支持基板が担っていた土台の役を、信号処理の回路を作り込んだチップへ渡し、画素側と重ねたものが積層型だと位置づけています。裏面照射型がまずあり、その一番下の板を差し替えたものが積層型です。
感度が2倍になると考えてよいですか?
条件つきの値として読んでください。ソニーの技術ページは、2009年に商品化した製品について、同社の従来の表面照射型に対して感度がおよそ2倍になり、ノイズも下がったとしています。比較の相手は同社の従来品で、測定条件は同ページの外にあります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CMOSイメージセンサとは ── 裏面照射型が組み込まれる側のデバイス
- フォトダイオードとは ── 光を電気へ変える受光部そのもの
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- ソニーセミコンダクタソリューションズ「裏面照射構造」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 裏面照射型の構造、入射角変化に対する感度低下の抑制、構造や工程に起因する課題、2009年商品の約2倍の感度という自社の性能主張
- ソニーセミコンダクタソリューションズ「積層構造」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 積層型が、裏面照射型で支持基板だった位置へ回路チップを持ってきたものであること
- 応用物理学会「応用物理」第89巻第2号 解説「CMOSイメージセンサの現状と将来展望」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 表面照射型で開口が狭まって感度が低下すること、貼り合わせと薄肉化を経て裏面側にオンチップレンズを作ること、TSVの位置が画素アレイの外側周辺部になること
- 日本表面真空学会「表面と真空」第62巻第11号 研究紹介「積層型CMOSイメージセンサの進化と最新技術」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 裏面照射型の製造工程の順序、光路と配線層の位置関係、チップサイズとプロセス両立という積層型への動機
- キヤノン「共通特長 PowerShot/IXY」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 受光面が配線層より上側に来るという位置関係の言い方
- ディスコ「DISCO TECHNICAL REVIEW エッジトリミングの効果」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 裏面照射型CMOSセンサの製造工程で酸化膜接合による貼り合わせが用いられること