光トランシーバとは
光トランシーバとは、電気の信号と光の信号を相互に変換して、光ファイバとやり取りする送受信部品です。 NTTフォトニクス研究所によるNTT技術ジャーナル2006年7月号の解説記事は、光トランシーバを、送信と受信を担う光伝送システム構成部品の1つと位置づけ、機能としては送信部と受信部から構成され、光信号と電気信号の変換を行うとしています。
光ファイバの中を進むのは光です。基板の上を進むのは電気です。両者の間には翻訳が要ります。その翻訳を、装置の前面パネルへ差し込める小さな箱に収めたものが光トランシーバです。
中身は、送る側と受ける側の2組
Section titled “中身は、送る側と受ける側の2組”同記事は、光モジュールがOSA(Optical SubAssembly)という小型モジュールを土台にしているとし、送信部をTOSA、受信部をROSAと呼ぶとしています。これらの光モジュールには、半導体レーザー(LD)、受光素子(PD)、レンズなどの光学部品、プリアンプIC、受動電気部品が実装されるとしています。
送る側の役目は、電気の0と1を光の強弱へ移すことです。同記事は、送信器がLDと駆動IC、そして自動光出力制御(APC)回路から主に構成されるとし、LDの光出力を低速信号用のPDで監視して直流の電気信号へ変えた後、演算増幅器で基準値と比べて駆動回路の電流源制御端子へ送り返すことで、光出力の強さを一定に保つとしています。
受ける側は逆の順路です。同記事は、受信器が高速通信用のPDと増幅回路から構成されるとし、プリアンプが受光電流を電圧へ変えて増幅し、ポストアンプが識別再生回路の入力に合う振幅まで等化増幅するとしています。
1本の光ファイバで両方向を通す工夫も同記事にあります。波長分割多重(WDM)フィルタが送信光の波長を透過し、受信光の波長を反射することで、TOSAとROSAとWDMフィルタが1つの筐体へ組まれるとしています。ここまではPON向けの構成として2006年に書かれた記述です。
外形と電力の枠は、業界規格が決めます
Section titled “外形と電力の枠は、業界規格が決めます”住友電気工業のSEIテクニカルレビュー第183号(2013年7月)は、光トランシーバではベンダ間の相互互換性を目的として、サイズ、ピン配置、機能、光と電気のコネクタ形状、監視制御インタフェースを共通規格として策定することが一般的になっているとし、これをMulti-Source Agreement(MSA)と呼ぶとしています。
中身は各社が競い、外枠は共通にします。装置メーカーは差し込む口を用意すれば、どの会社の製品でも同じ場所へ挿せます。
同じ40Gbit/sでも、枠は複数あります。同記事は、40Gbit/s用のMSA規格として2009年にCFPが策定され、その後にQSFP+が導入されたとしています。同記事の表によると、全長はCFPが144.75mm、QSFP+が72.4mm、全幅は82.0mmと19.0mm、端子数は148と38です。消費電力クラスはCFPが8W、16W、24W、32W、QSFP+が1.5W、2.0W、2.5W、3.5Wです。そして1枚のラインカードへの最大搭載数は、CFPが8(クラス1の場合)、QSFP+が44です。
同記事は、CFPが公衆通信網への適用を念頭に開発されたため制御と監視の機能が豊富で、クロックデータリカバリを内蔵することでシグナルインテグリティに優れる一方、サイズは大きくなり、高密度実装での採用は難しいとしています。QSFP+は大幅な小型化と低消費電力化を実現した代わりに、制御と監視の機能を一部簡略化しているとしています。
同社は開発したQSFP+で、LDと並列のトランジスタをスイッチングしてLDの電流を変調するシャント駆動を4チャネルへ拡張したとし、消費電力の目標を、MSAで許容される最大値の3.5W(クラス4)よりも低い2.5W(クラス3)に定めたとしています。2013年に報告された同社の開発品の値です。
低消費電力が届く先も同記事にあります。電力費の削減に加えて、放熱の要件が緩むことで光トランシーバの小型化へつながり、それが機器の小型化や高密度実装を通じて、単位面積あたりで運べるデータ量の改善へ届く、という順です。
速度が上がると、中の光源が入れ替わります
Section titled “速度が上がると、中の光源が入れ替わります”住友電工テクニカルレビュー第202号(2023年1月)は、データセンタ内の光ネットワークで400Gbit/sの光トランシーバを導入する動きが本格化しているとし、DR4やFR4といった規格では、変調速度53GBaudのPAM4動作に対応した電界吸収型変調器集積レーザー(EML)が使われるとしています。同誌は、1271nm、1291nm、1311nm、1331nm帯のEMLを開発し、4波長帯すべてで400Gbit/s光トランシーバの要求仕様を満たしたと報告しています。住友電工グループの開発品での結果です。
短い距離では別の光源が向きます。電子情報通信学会の知識ベース9群5編2章は、VCSELが1990年代後半に、イーサネットに代表される1Gbps以上の高速光データリンク用の低価格光源として実用化されたとしています。
枠そのものを動かす流れもあります。古河電気工業の古河電工時報第144号(2025年3月)は、情報通信研究機構のBeyond 5G研究開発促進事業の委託研究において、Co-Packaged Optics向けの超小型VCSELトランシーバを開発しているとし、電気インタフェースに0.3mmピッチのLGAを採用して7.7mm×15.9mmのフットプリントを実現し、400Gb/s信号伝送で良好な符号誤り率特性を得たと報告しています。前面パネルへ挿す枠から、スイッチICのそばへ移す方向です。古河電気工業の開発品での値です。
この向きは先進パッケージングの考え方と重なります。電気で運ぶ距離を短くして、残りを光へ渡す構成です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”光トランシーバとは何ですか?
電気の信号と光の信号を相互に変換して、光ファイバとやり取りする送受信部品です。NTTフォトニクス研究所による解説記事は、送信と受信を担う光伝送システム構成部品の1つと位置づけています。
中には何が入っていますか?
同記事は、送信部をTOSA、受信部をROSAと呼び、そこに半導体レーザー(LD)、受光素子(PD)、レンズなどの光学部品、プリアンプIC、受動電気部品が実装されるとしています。これらと駆動ICが1つの筐体へ収まります。
電気を光へ変えるのは、どの部品ですか?
半導体レーザーです。同記事は、送信器がLDと駆動IC、そして自動光出力制御(APC)回路から主に構成されるとしています。受信側では、受光素子が光を電流へ変え、プリアンプが電圧へ変えて増幅します。
MSA(Multi-Source Agreement)とは何ですか?
住友電気工業のSEIテクニカルレビュー第183号は、寸法、ピン配置、機能、光と電気のコネクタ形状、監視制御インタフェースをベンダ間の相互互換性のために共通規格として定めることが一般的になっているとし、これをMSAと呼ぶとしています。
CFPとQSFP+はどこが違いますか?
同記事の表によると、全長はCFPが144.75mm、QSFP+が72.4mm、端子数は148と38です。消費電力クラスはCFPが8Wから32W、QSFP+が1.5Wから3.5Wで、1枚のラインカードへの最大搭載数はCFPが8(クラス1の場合)、QSFP+が44です。
消費電力を下げると何が良いのですか?
同記事は、電力費の削減に加えて放熱の要件が緩むため小型化へつながり、それが機器の小型化や高密度実装を通じて、単位面積あたりで運べるデータ量の改善へ届くとしています。
400Gbit/sではどんな光源を使いますか?
住友電工テクニカルレビュー第202号は、DR4やFR4といった規格で、変調速度53GBaudのPAM4動作に対応した電界吸収型変調器集積レーザー(EML)が使われるとしています。短い距離ではVCSEL(面発光レーザー)を光源にする構成もあります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- VCSEL(面発光レーザー)とは ── 光トランシーバの中で光源を担う素子です
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- NTT技術ジャーナル 2006年7月号「PON用高感度・低コスト光トランシーバ技術」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 光トランシーバの位置づけ、TOSAとROSA、送信器と受信器の構成、WDMフィルタ
- SEIテクニカルレビュー 第183号「データセンタ用低消費電力光トランシーバ」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── MSA、CFPとQSFP+の寸法と端子数と消費電力クラスと最大搭載数、シャント駆動
- 住友電工テクニカルレビュー 第202号「データセンタ向け53GBaud変調器集積レーザ」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 400Gbit/s光トランシーバとEML、4波長の中心波長
- 古河電工時報 第144号「Co-Packaged Optics用超小型VCSELトランシーバと高密度電気プラガブルインターフェースを用いた評価ステーションの開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 0.3mmピッチLGA、7.7mm×15.9mm、400Gb/s信号伝送
- 電子情報通信学会 知識ベース「9群5編2章 半導体レーザー」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── VCSELが低価格光源として実用化された時期