フォトダイオードとは
フォトダイオードとは、pn接合に光を当てると光の量に応じた電流が流れる、光を受けるための半導体素子です。 浜松ホトニクスの技術資料は、この素子を、PN接合部へ光が当たると電流や電圧が生じる受光用の部品として位置づけています。
ダイオードは、pn接合を持つ2端子の素子です。加わる電圧の向きだけで、電流を流すか遮るかが決まります。
フォトダイオードも、同じpn接合を持っています。JEITAの半導体用語集は、フォトダイオードを、pn接合へ光がよく届く作りにして、光伝導電流が流れやすいようにしたダイオードとしています。素子の骨格は整流用のダイオードのままで、変えたのは光が届くように作るという一点です。
光は3つの段階を通って電流に変わります
Section titled “光は3つの段階を通って電流に変わります”電子情報通信学会の知識ベース「知識の森」は、この過程を次のように書いています(9群5編3章、執筆者は田中滋久氏、2019年1月受領)。
- 半導体へ、そのバンドギャップを超えるエネルギーの光を当てると、光が吸収されて電子と正孔の対が生じます。
- pn接合の空乏層の付近でできた電子と正孔の対は、空乏層の内部電界によって、電子は正極側へ、正孔は負極側へ集められます。
- 外部回路と結んだpn接合ダイオードに光を当てると、そこに電流(光電流)が流れます。
浜松ホトニクスの技術資料も、Siフォトダイオードについて同じ筋道を書いています。P層とN層が接する真性領域を空乏層と呼ぶこと、入射光量に比例して電子と正孔の対ができること、P層とN層から電極を取り出して外部回路と結べば電流が発生することです。
光の量に比例して対ができるという部分が、この素子の値打ちにあたります。光の強さという測りにくい量が、電流の大きさという測りやすい量に置き換わります。
表面のP層は薄く作ります
Section titled “表面のP層は薄く作ります”浜松ホトニクスの技術資料は、Siフォトダイオードの断面構造の例として、受光面側のP層が通常ボロンの選択拡散で1 µm以下の厚さに形成されると書いています。短波長側では、入った光が表面の拡散層のうちに吸収される割合が急に高まるため、拡散層が薄くpn接合が表面に近いものほど感度が高くなる、とも書いています。同社の技術資料が示す構造例としての記述です。
整流用のダイオードでは、表面の作り方が性能へ及ぼす影響は限られます。光を測る側では、表面の数百ナノメートルの作り方が感度を決めます。
太陽電池との差はどこにありますか
Section titled “太陽電池との差はどこにありますか”浜松ホトニクスの技術資料は、フォトダイオードが広い意味では太陽電池も含むとしたうえで、ふだんは光の強さの変わり方を細かく検出するセンサを指す、と書いています。物理の現象は共通で、設計の目標が別々になります。太陽電池は電力を多く取り出す側へ、フォトダイオードは光量に正確に比例させる側へ振ってあります。
その正確さについて、同資料は、Siフォトダイオードの光電流が入射光量に対して優れた直線性を持ち、入射光量10⁻¹²〜10⁻² W程度の範囲では9桁以上に及ぶ直線性を持つとしています。同資料自身が、この桁数は素子の種類や使う回路によって上下すると条件を添えており、同社製Siフォトダイオードについての記述です。
9桁というのは、いちばん弱い光といちばん強い光の間に10億倍以上の開きがあっても、電流の大きさが同じ比例関係を保つという意味になります。光が届いたかどうかを見分ける用途と、光の量を数値で測る用途では、求められる作りが変わります。
検出できる波長は材料が決めます
Section titled “検出できる波長は材料が決めます”浜松ホトニクスの技術資料は、カットオフ波長を1240をバンドギャップエネルギー[eV]で割った値[nm]とする式を示しています。Siの常温時のバンドギャップエネルギーは1.12 eVなので、カットオフ波長は1100 nmになります。電子と正孔の対ができるのは、ここまでの波長に限られます。
短波長側は、素子の物性に加えて受光窓の透過率でも決まる、と同資料は書いています。同資料が挙げる短波長側のカットオフ波長は、ふつうのSiフォトダイオードで320 nm、紫外域向けのタイプ(同社のS1226/S1336シリーズなど)で190 nmです。硼珪酸ガラスやコーティング樹脂は約300 nmより短波長側の光を吸収するため、これらを窓材にすると短波長の感度が失われ、300 nmより短い波長を検出する場合は石英窓のタイプを使う、と続きます。この段落の数値はいずれも同社の技術資料に基づきます。
近赤外側でも事情が変わります。同資料は、Siが可視域や紫外域では光の吸収係数が大きく薄いウエハでも十分に検出できる一方、近赤外域では吸収係数がとても小さくなって光が通り抜ける分が増え、感度が下がるとしています。
そこで材料を替えます。浜松ホトニクスの製品情報は、InGaAsフォトダイオードを近赤外光検出用のフォトダイオードとし、同社では0.5 μm〜2.6 μmにおいてさまざまな感度波長範囲を持つラインアップを用意しているとしています。この範囲は同社のラインアップ全体がカバーする幅であり、1つの素子の感度範囲とは別のものです。
ソニーセミコンダクタソリューションズは、SenSWIRを、化合物半導体のInGaAsでフォトダイオードを形成し、読出し回路のSiとCu-Cu接続する短波長赤外イメージセンサー技術としています。受光する層と読出し回路の層で材料を作り分ける実装の例にあたります。SenSWIRは同社グループの商標です。
増幅は別の構造が担います
Section titled “増幅は別の構造が担います”素のフォトダイオードは、入った光を電流へ置き換えるところまでを受け持ちます。電子情報通信学会の知識ベースは、PINフォトダイオードで生じるキャリアが入射した光子数までにとどまるのに対し、APD(アバランシェフォトダイオード)では入射した光子数を超えるキャリアが発生するため、光の信号を増幅したときと同じ働きになるとしています。素子の中で信号を増やすかどうかが、両者を分けています。
そのPINフォトダイオードについて、同知識ベースは、狙って不純物を加えず、できるだけ真性半導体に近づけた層を、p型層とn型層のあいだに挟んだ構造としています。空乏層を厚くできるため、光をより効率よく吸収でき、pn接合の容量も小さく抑えられます。同じ原理のまま、構造の側を工夫したものにあたります。
暗いところでの限界は、暗電流で決まります。同知識ベースは、暗電流を、光を遮った状態でも素子の内部に流れている電流とし、受信器の感度や雑音の特性へ影響するとしています。光通信用のPINフォトダイオードについての節での記述です。JEITAの半導体用語集も、pn接合を半導体の内部へ埋め込んだ作りの埋め込み型フォトダイオードについて、暗電流が少なく残像を防げると書いています。
カメラの中にもフォトダイオードがあります
Section titled “カメラの中にもフォトダイオードがあります”JEITAの半導体用語集は、光を電気信号へ変えるための受光部として、フォトダイオードがCCDやCMOSイメージセンサに使われるとしています。画素の中で光を受けているのはフォトダイオードで、CCDやCMOSはその信号の読出しを受け持つ側の仕組みにあたります。同用語集はICガイドブック2009年版の用語解説を出所としています。
スマートフォンのカメラも、光ファイバ通信の受信器も、青果の水分を測る検査装置も、入口はどれも同じpn接合です。何を測りたいかによって、材料と表面の作りと読み出し方が選び分けられています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”フォトダイオードとは何ですか?
pn接合に光を当てると、光の量に応じた電流が流れる受光素子です。浜松ホトニクスの技術資料は、光半導体素子のPN接合部に光を当てると電流や電圧を発生する受光素子としています。
整流に使うダイオードとどこが違いますか?
pn接合という骨格は共通です。JEITAの半導体用語集は、フォトダイオードを、pn接合へ光がよく届く作りにして、光伝導電流が流れやすいようにしたダイオードとしています。違いは、光が届くように作ってある点にあります。
太陽電池とは別のものですか?
浜松ホトニクスの技術資料は、フォトダイオードが広い意味では太陽電池も含むとしたうえで、ふだんは光の強さの変わり方を細かく検出するセンサを指すと書いています。同じ現象を、電力を取り出す向きに使うか、光量を測る向きに使うかという設計目標の違いになります。
検出できる波長の上限はどこですか?
材料で決まります。同技術資料は、カットオフ波長を1240をバンドギャップエネルギーで割った値とし、Siは常温のバンドギャップが1.12 eVなのでカットオフ波長は1100 nmになるとしています。
フォトダイオードは光を増幅しますか?
増幅は別の構造が担います。電子情報通信学会の知識ベースは、PINフォトダイオードで生じるキャリアが入射した光子数までにとどまるのに対し、APD(アバランシェフォトダイオード)では入射した光子数を超えるキャリアが発生し、光の信号を増幅したときと同じ働きになるとしています。
PINフォトダイオードは別の素子ですか?
同じ原理の構造上の工夫です。同知識ベースは、狙って不純物を加えず、できるだけ真性半導体に近づけた層をp型層とn型層のあいだに挟んだ構造をPINフォトダイオードと呼ぶとし、空乏層を厚くできる点を利点に挙げています。
イメージセンサとはどういう関係ですか?
受光している部分がフォトダイオードです。JEITAの半導体用語集は、光を電気信号へ変えるための受光部として、フォトダイオードがCCDやCMOSイメージセンサに使われると書いています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ダイオードとは ── 同じpn接合を、光の代わりに電圧の向きで使い分ける素子です
- CMOSイメージセンサとは ── フォトダイオードを平面に並べ、CMOS回路で読出しを行う撮像素子です
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- 浜松ホトニクス「技術資料 Siフォトダイオード(Cat. No. KSPD9001J04、2025年12月)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 受光素子としての記述、断面構造とP層の厚さ、動作原理、直線性、カットオフ波長と窓材の条件
- 電子情報通信学会「知識ベース『知識の森』9群5編3章 フォトダイオード」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 光電流が生じる原理、PIN構造の意味、APDとの増幅の有無、暗電流とは何かの記述
- JEITA 半導体部会「半導体用語集」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── フォトダイオードの用語記述、埋め込み型フォトダイオード、イメージセンサ受光部としての用途
- 浜松ホトニクス「製品情報 フォトダイオード」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── InGaAsフォトダイオードの用途と同社ラインアップの感度波長範囲
- ソニーセミコンダクタソリューションズ「技術情報 SenSWIR」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── InGaAsのフォトダイオードとSiの読出し回路をCu-Cu接続する実装例