ドーズ均一性とは
ドーズ均一性とは、同じレシピで打ち込んだ単位面積あたりのイオンの個数が、ウェーハ面内・ウェーハ間・装置間でどれだけそろっているかを表す指標です。
そろい方には3つの層があります
Section titled “そろい方には3つの層があります”日新イオン機器のイオン注入ディクショナリーは、ドーズを、ウェーハへ注入される単位面積あたりのイオンの個数とし、実際に注入された総個数はドーズ量にウェーハ面積を掛けた値になるとしています。同じ辞典の注入均一性の項は、注入均一性をイオン注入装置の能力を測るパラメータの1つに置き、シート抵抗やダメージ測定で測ること、ウェーハ面内に注入されたイオンの分布のそろい方とも言い換えられることを示しています。面内を測る場合はウェーハ内注入均一性、同じ条件で注入した複数枚それぞれの平均値のそろい方を測る場合はウェーハ間注入均一性と呼び分けるとしています。
現場では、ここへ装置間がもう1層加わります。同じ辞典のドーズ合わせこみの項は、量産工場に複数の注入機がある場合に、どの装置で注入しても同じ特性が得られるようにする作業を指すとし、メーカーが異なる機差と、同じ機種の号機間の差の両方を挙げています。合わせこみはドーズ係数を変えて行い、指標にはサーマルウェーブ、シート抵抗、デバイス特性データを使うとしています。
ばらつくと、どこへ出ますか
Section titled “ばらつくと、どこへ出ますか”ドーズがずれると、活性化した後の濃度がずれます。濃度はシート抵抗を動かし、しきい値電圧を動かします。しかも注入は、自分のばらつきを持つだけでなく、前の工程のばらつきを吸収する調整代としても使われます。
同じ辞典のAPCの項は、APCを、対象工程より前のプロセスの情報をフィードフォワードして、ウェーハ間とウェーハ内の特性ばらつきを減らす仕組みとしています。イオン注入では、ゲート酸化膜の厚みやゲート長の情報からハロー注入量を調整することで、しきい値電圧のばらつきを減らせるとし、ウェーハごとにも、ウェーハ内でも注入量を変えられるとしています。住友重機械マテリアルソリューションズも、中電流イオン注入装置MC3-Ⅱの公式製品ページで、他工程によって生じた不均一を補正して工程全体の生産性と歩留まりの向上に寄与する仕組みとしてMIND2.0システムを挙げています。同社の製品ページの記載です。
つまりドーズ均一性は、自分の工程の出来ばえであると同時に、他工程の補正へ回せる余地でもあります。注入そのものが面内で偏っていれば、ドーパント活性化の後に残る分布は、前工程の補正と自分のばらつきが重なった形になります。切り分けはウェーハマップの形で行います。同心円なら回転や加熱の系、片側だけが低いなら走査や角度の系というように、形が原因の系統を指します。
何を測りますか
Section titled “何を測りますか”量産のラインでは、イオンの個数を、代わりになる2つの量へ置き換えて管理します。
1つ目はシート抵抗です。同じ辞典は、シート抵抗を薄膜やイオン注入で作った拡散層の電気抵抗を表す量とし、単位はΩ/sq、測定には一般に四探針法を用いるとしています。外側の2本の針で電流を流し、内側の2本で電圧差を測る配置です。注入層の濃度と深さの両方に依存するため、イオン注入装置のQC法として広く使われるとしています。ただし電気的に働かせるには活性化アニールが要るので、測るまでに熱処理が1本挟まります。
2つ目はサーマルウェーブです。同じ辞典は、基板へレーザ光を照射し、異なる波長のレーザ光で反射率を測ってその変化量をサーマルウェーブ値とする手法としています。結晶欠陥と反射率、注入量と欠陥のそれぞれに強い相関があるため、イオン注入装置のQC管理や面内均一性の計測に使えるとしています。注入後のアニールを挟む前に測れるぶんシート抵抗より簡略に管理できる一方で、注入量が多くなると値が飽和する傾向にあるため、比較的低い注入量の領域で用いるとしています。
面内分布は、平均値に加えて分布の形でも測ります。産業技術総合研究所の再生可能エネルギー研究センターは、結晶シリコン太陽電池向けの検討を報告した公開資料で、ボロン拡散層のシート抵抗の面内分布をヒストグラムで示し、イオン注入法による分布は熱拡散法(BBr3)に比べて面内均一性が非常に高いとしています。2019年に公開された同センターの報告です。同じ資料は、ボロン注入では高温の活性化アニールが要るため基板の酸素析出が課題になること、ランプアニールでプロセス中の酸素析出を抑えられることも述べています。
どのつまみで動きますか
Section titled “どのつまみで動きますか”面内のそろい方は、ビームをどう走らせるかで決まります。同じ辞典は、静電スキャン、磁場スキャン、メカニカルスキャン、ハイブリッドスキャンを、それぞれ別の項目に立てています。磁場スキャンについては、電場を使う静電スキャンと比べてイオンビームと電子が分離されにくく、ビームの発散の要因になる空間電荷効果の点で有利なため、低エネルギーかつ大電流のビーム走査に適するとしています。あわせて、中性化した粒子の注入を避けるために、磁場が0になる領域を注入へ使わず、オフセットをかけた磁場を使う場合があるとしています。
角度も面内の量を動かします。同じ辞典はパラレルビームを、ウェーハ上のどの位置でも一定の角度で注入できるようにした平行なビームとし、電場または磁場の走査とコリメータを組み合わせて作る方法を挙げています。角度がばらつけば、チャネリングの入りやすさが面内で変わり、同じ個数を打っても深さ分布が変わります。日新イオン機器はイオン注入サービスの公式ページで、EXCEEDシリーズの特長として±0.5度以下のビーム平行度制御機能、パラレルビーム、注入前の予想注入均一性チェック機能、エネルギーコンタミネーションの完全除去機能を挙げています。同社の製品ページの記載です。
住友重機械マテリアルソリューションズは、MC3-Ⅱについて、左右対称なイオンビーム平行化光学系でビーム走査方向のビーム均質性と高精度なビーム平行度を確保し、ビーム軸とウェーハ面の交点を一定に保つ走査機構でウェーハ全面の注入均一性を実現しているとしています。最終段へ減速機構を配置してビームの広がりを抑え、独自の走査方式で注入位置を一定に保って均一性を上げたとも述べています。同社はAll-in-One型のSAionについて、それまでウェーハ面と異なる位置での計測値で代用していたビーム発散角や平行度を、イオン注入装置として初めて製品ウェーハ面上で計測して制御できるようにしたとし、メカニカルスループットは500枚/時としています。いずれも同社の製品ページの記載です。
測り方そのものにも分解能があります。同じ辞典はプロファイルモニターを、注入ターゲット付近でビーム形状を測る装置とし、均一性の計測だけでなく形状補正のフィードバックにも使うとしています。1個のファラデーカップを動かして連続的に測る方法と、複数のファラデーカップを並べてほぼ同時に測る方法があり、後者は計測時間が短い一方で、隣り合うカップのあいだは計測から抜けるとしています。したがって面内の細かい構造の分解能は、並んだカップの間隔で決まります。
数週間の単位で流れます
Section titled “数週間の単位で流れます”ドーズ均一性は、装置に固定された性能というより、時間とともに動く量です。日新電機技報のVol.67 No.1(2022年5月)に載った日新イオン機器の報告は、計画外を含むメンテナンスによるイオン源内部状態の急激な変化、長期運用による引出電極アパーチャの摩耗、ビームラインへのコンタミ蓄積といった現象の総体として、最適なビームチューニングパラメータのドリフトが数週間程度の期間に発生するとしています。同報告は、実運用で得た約1万件のビームセットアップ履歴のうち9割を訓練用に使った機械学習でチューニングを自動最適化し、従来9割程度だったセットアップ正常終了率を、社内検証機の検証で安定して9割5分以上にできたとしています。2021年の成果としての報告です。イオン源パラメータと引出電極位置調整の分散が下がったことも挙げています。
したがって現場では、SPCのチャートへ載せて傾きを追う量になります。今日の1枚が規格の中に入っていることよりも、数週間かけて中心値がどちらへ動いているかが管理の対象になります。装置マッチングの作業も、ドリフトの周期に合わせて繰り返す作業になります。
そろえる代わりに、何を差し出しますか
Section titled “そろえる代わりに、何を差し出しますか”差し出すものは、おおむね時間とビーム電流です。
ビームを平行にするほど、コリメータで角度のばらついた成分を落とすことになり、ウェーハへ届く電流は減ります。電流が減れば、同じドーズを入れるのに時間がかかります。走査の回数を増やして面内をならす方向も、そのまま注入時間へ乗ります。低エネルギーで大電流を流したい工程では空間電荷効果でビームが広がるため、同じ辞典が低エネルギー大電流に適するとする磁場スキャンを選ぶことになりますが、電場より重い装置構成を抱えます。
計測でも同じ取引が起こります。複数のファラデーカップを並列に配置すれば短時間で測れる代わりに、カップの隙間は計測から抜けます。1個を動かせば連続した形が取れる代わりに、その時間だけ生産が止まります。物差しの側でも、アニールの前に測れるサーマルウェーブは高ドーズで飽和し、全域で使えるシート抵抗は熱処理を1本挟みます。
装置間の合わせこみには、到達点そのものがあります。同じ辞典は、機種が異なる場合はビーム径やビーム密度やスキャン方式が異なるため完全に合わせこむことは困難とし、イオン種ごと、エネルギー領域ごとにドーズ係数を変えることもあるとしています。つまり合わせこみは、イオン種とエネルギー領域で区切った係数の表として持つことになります。 レシピが増えるほど、この表を保つこと自体が工数になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ドーズ均一性とは何ですか?
同じレシピで打ち込んだ単位面積あたりのイオンの個数が、どれだけそろっているかを表す指標です。日新イオン機器のイオン注入ディクショナリーは、注入均一性をイオン注入装置の能力を測るパラメータの1つとし、シート抵抗やダメージ測定で測るとしています。
ウェーハ内均一性とウェーハ間均一性は何が違いますか?
測る単位が異なります。同ディクショナリーは、ウェーハ面内のイオン分布のそろい方をウェーハ内注入均一性、同じ条件で注入した複数枚それぞれの平均値のそろい方をウェーハ間注入均一性としています。面内の偏りは走査とビームの作り方で動き、枚ごとのずれはビームの安定性で動きます。
現場では何を測って均一性を管理しますか?
シート抵抗とサーマルウェーブを使い分けます。同ディクショナリーは、シート抵抗を四探針法で測り、注入層の濃度と深さに依存するためQC法として広く使われるとしています。サーマルウェーブはレーザ光の反射率の変化からダメージを測る手法で、アニールの前に測れるぶん簡略に管理できるとしています。
サーマルウェーブはどこまで使えますか?
低い注入量の領域で使います。同ディクショナリーは、注入量が多くなるとサーマルウェーブ値が飽和する傾向にあるため、比較的低い注入量の領域で用いるとしています。高ドーズ側では、アニールを1本挟んでシート抵抗へ切り替えます。
面内をそろえるために装置は何をしていますか?
ビームを平行にして、走査の形を対称に保ちます。日新イオン機器はイオン注入サービスの公式ページで、EXCEEDシリーズの特長に±0.5度以下のビーム平行度制御機能と、注入前の予想注入均一性チェック機能を挙げています。同社の製品ページの記載です。
装置が異なると同じ条件でも結果が動きますか?
動くことがあります。同ディクショナリーはドーズ合わせこみを、複数の注入機のどれで注入しても同じ特性が得られるようにする作業とし、ドーズ係数を変えて合わせるとしています。ビーム径やビーム密度やスキャン方式が異なると完全な合わせこみは困難になるため、イオン種ごとやエネルギー領域ごとに係数を分けることもあるとしています。
一度そろえれば、しばらくそのままですか?
数週間の単位で流れます。日新電機技報に載った日新イオン機器の報告は、イオン源内部状態の急激な変化や引出電極アパーチャの摩耗やビームラインへのコンタミ蓄積の総体として、最適なビームチューニングパラメータのドリフトが数週間程度の期間に発生するとしています。2021年の成果としての報告です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 均一性(面内・ウェーハ間・ロット間)とは ── 工程を問わず使う一般形で、ドーズ均一性はその注入版にあたります
- 装置マッチングとは ── 装置間の層だけを取り出して合わせる作業です
- 四探針法(シート抵抗)とは ── ドーズ均一性を測るときの、いちばん基本の物差しです
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- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「注入均一性」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 注入均一性の位置づけ、ウェーハ内均一性とウェーハ間均一性の呼び分け、シート抵抗やダメージ測定で測ること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「ドーズ」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ドーズが単位面積あたりのイオンの個数であること、総個数がドーズ量とウェーハ面積の積になること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「ドーズ合わせこみ」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 機差と号機間差、ドーズ係数による合わせこみ、イオン種やエネルギー領域ごとに係数を変える場合があること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「サーマルウェーブ」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 反射率の変化でダメージを測る手法、アニールの前に測れること、高い注入量での飽和
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「シート抵抗」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 四探針法の配置、単位Ω/sq、濃度と深さに依存するためQC法として使われること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「プロファイルモニター」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ファラデーカップ1個を動かす方式と複数を並列に配置する方式、隣り合うカップのあいだが計測から抜けること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「磁場スキャン」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 空間電荷効果の点で有利なこと、低エネルギー大電流への適合、オフセットをかけた磁場を使う理由
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「パラレルビーム」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ウェーハ上のどの位置でも一定の角度で注入するための平行ビーム、電場または磁場スキャンとコリメータの組み合わせ
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー 用語一覧」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 静電スキャン、磁場スキャン、メカニカルスキャン、ハイブリッドスキャンが別々の項目として立てられていること
- 日新イオン機器「イオン注入ディクショナリー「APC」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 前工程の情報のフィードフォワード、ハロー注入量によるしきい値電圧ばらつきの低減
- 日新イオン機器「イオン注入サービス」公式ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── EXCEEDシリーズの±0.5度以下のビーム平行度制御機能と、注入前の予想注入均一性チェック機能
- 住友重機械マテリアルソリューションズ「中電流イオン注入装置 MC3-Ⅱ / MC」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 左右対称な平行化光学系、交点を一定に保つ走査機構、最終段の減速機構、MIND2.0システム
- 住友重機械マテリアルソリューションズ「All-in-One型イオン注入装置 SAion」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 製品ウェーハ面上でのビーム角度計測、500枚/時のメカニカルスループット
- 日新電機「技報 Vol.67 No.1(2022年5月)2021年の技術と成果「イオン注入装置」」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ビームチューニングパラメータのドリフトが数週間程度で発生すること、約1万件の履歴を使った自動最適化、正常終了率9割から9割5分以上への改善
- 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター「イオン注入プロセスの特徴と課題(2019年成果ポスター)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ボロン拡散層のシート抵抗の面内分布、熱拡散法との比較、活性化アニールと酸素析出