ハロー注入とは
ハロー注入とは、MOSトランジスタのソースドレインエクステンションの周囲へ、チャネルと同じ導電型で濃度の高い領域を作る注入です。 日新イオン機器はイオン注入ディクショナリーで、この領域をHaloまたはポケットと呼ぶとし、Halo構造はゲート電極形成後に斜めイオン注入を行うことでセルフアラインに形成できるとしています。
直したいのは、ゲート長が短いほどVthが落ちる形です
Section titled “直したいのは、ゲート長が短いほどVthが落ちる形です”電子情報通信学会の知識ベースは、S2群1編3章でMOSFETのチャネル長が短くなることによって静電特性に生じる諸現象をまとめて短チャネル効果と呼ぶとし、ゲート長が100ナノメートルよりも短くなった現在、所望の集積回路動作を実現させるためにはこの短チャネル効果を抑制することが微細化技術の最重要課題だとしています。同章は、狭義の短チャネル効果をゲート長を短くしたときのしきい値電圧(Vth)の低下とし、ゲート長を横軸にVthを描いたときの短チャネル側の落ち込みをVthロールオフと呼ぶとしています。以上は同学会の知識ベースの記述です。
落ちる筋道も同章が示しています。同章は、チャネル領域の空乏層をゲート、ソース、ドレインが取り合っているとみることができ、この2次元的な電荷の奪い合いをチャージシェアリングと呼ぶとし、短チャネルでは逆バイアス状態にあるドレインからの空乏層が広がってゲートが制御できる空乏層の大きさが相対的に減少するとしています。同章は、同じ広がりがオフリーク電流の増大とサブスレショルド係数の劣化も招くとしています。SEAJも半導体製造装置用語集で短チャネル効果を、ソースドレイン端部が近づくことによりチャネル領域にかかるゲート電界が低下し、しきい値電圧が低下する現象だとしています。作る側から見れば、抑えにいく相手はドレイン側から伸びてくる空乏層です。
縦に濃くする手は、すべてのゲート長を巻き添えにします
Section titled “縦に濃くする手は、すべてのゲート長を巻き添えにします”先に打つ手はチャネル側の濃度です。日新イオン機器はチャネル注入の項で、Vthはゲート電極の仕事関数、ゲート絶縁膜容量、基板濃度で決まるとし、チャネル注入は注入量が大きくなるとVthが高くなるとしています。同社はチャネルドープの項で、ゲート電極直下のチャネル領域へドーズ量5E12ions/cm2未満の少量で正確なイオンを注入することによってしきい値電圧を制御することだとしています。以上は同社の用語解説の記述です。同社は、1つのLSIの中に、速度を取る低Vthのトランジスタと、待機時の電流を抑える高Vthのトランジスタを作り分けるとし、その振り分けはチャネル注入量で決まるとしています。
払う代償が3つあります。電子情報通信学会の知識ベースは、活性領域の表面にドーピングして基板濃度を高める方法ではすべてのチャネル長でVthが大きくなる問題があるとし、チャネルの不純物濃度が高いとVthのばらつきが大きくなる問題もあるとしています。同章は、サブスレショルド係数がS=2.3(kT/q)(1+Cdm/Cox)で表されるため、基板濃度を上げると空乏層容量Cdmが相対的に大きくなってサブスレショルド係数が大きくなるとしています。同章は、チャネルの高不純物濃度化はイオン化不純物散乱によるキャリアの移動度劣化にもつながるとしています。以上は同学会の知識ベースの記述です。
深さの側で逃げる手もあります。同章は、チャネル表面から少し奥の濃度を高くする形をレトログレードプロファイルと呼び、表面側の濃度を低く保てるのでVthが上がり過ぎず、空乏層の伸びが深い高濃度層で止まるため短チャネル効果を抑えられるとしています。SEAJは同じ形をSSR(Super Steep Retrograde)チャネルプロファイルと呼び、チャネルの深い側にドーパント濃度のピークがあり、表面側を低く抑えた急峻な分布だとしています。作り方は多段注入です。日新イオン機器はウェル注入の項で、高エネルギー注入機が使えるようになってからウェルを多段注入で作る方法が主流になったとし、深さ方向へ向かって濃度が上がる形からレトログレードウェルと呼ばれるとしています。
横に濃くすると、短いゲートほど強く作用します
Section titled “横に濃くすると、短いゲートほど強く作用します”日新イオン機器はハロー/ポケット注入の項で、Halo構造ではチャネルの両端で不純物濃度が高くなり、チャネル長が短いほど寄与が大きくなるとしています。同社は、従来はチャネル長が短くなるとVthが下がる短チャネル効果が出てリーク電流を招いていたところ、この構造では短チャネル側でVthが持ち上がる逆短チャネル効果が働くため、微細なトランジスタでも所望のVthを保てるとしています。以上は同社の用語解説の記述です。
電子情報通信学会の知識ベースも同じ形を示しています。同章は、ゲートを加工した後に斜め方向からイオンを打ち込み、チャネル表面より深い側で、ソースとドレインの接合の近くに濃度の高い部分を局所的に作る方法をヘイローまたはポケットインプラントと呼ぶとし、これでドレインから伸びる空乏層を抑えられるとしています。同章は、ゲートが短いほど左右の高濃度領域が互いに重なり合い、短チャネルのMOSFETではチャネル濃度が実効的に上がるとし、ヘイローの設計を合わせ込めばVthロールオフを打ち消せて、広いゲート長にわたり均一なVthが得られるとしています。濃度をゲート長の関数として作り込める、という点がチャネル注入との差です。
作り方は、ゲート形成後の大チルト角ステップ注入です
Section titled “作り方は、ゲート形成後の大チルト角ステップ注入です”順序が構造を決めます。日新イオン機器は、Halo構造はゲート電極形成後に斜めイオン注入を行うことでセルフアラインに形成できるとしています。ゲートを作った後に斜めから入れるため、追加のマスク合わせなしでゲート端に対して位置が決まります。SEAJは半導体製造装置用語集でHalo注入を、イクステンション部を囲む形に作る、ウェルや基板よりも不純物濃度の高い領域のための注入とし、ウェーハを傾けた大チルト角注入で行うとしています。SEAJはPocket注入を、イクステンション部の下側に作る同じ性質の領域とし、ゲート電極をチャネル部で厚く、ポケット注入部で薄くしたうえで打ち込む作り方だとしています。SEAJは、機能はPocket注入と同等としたうえで、Halo注入には生産プロセスとしてメリットがあるとしています。以上はSEAJの用語集の記述です。
斜めに入れる以上、回数がかかります。日新イオン機器は斜めイオン注入の項で、ウェハに傾斜をつけてイオン注入する技術だとし、トレンチの側壁やゲート電極下のチャネル端に不純物を導入するために使われるとしています。同社は、一方向からの注入のみでは非対称性が発生するため、ツイスト角を変化させて注入するステップ注入が用いられるとしています。ソース側とドレイン側で同じ濃度を作るには、ツイスト角を回した分だけ注入を重ねます。角度の基準の取り方はチャネリングと同じ系です。
ドーズ量の位置は、同じイオン注入の中でも中位です。日新イオン機器はチャネルドープを5E12ions/cm2未満、LDDを1E13ions/cm2近辺、ソース/ドレインを5E14ions/cm2超としています。以上は同社の用語解説の記述です。ハローはエクステンションを取り囲んで打ち消しにかかる領域ですから、エクステンションの濃度に対する比で作用の強さが決まります。
つまみは、チルト角とドーズとイオン種です
Section titled “つまみは、チルト角とドーズとイオン種です”第一はチルト角です。角度を大きく取るほどビームはゲート電極の下へ回り込み、チャネル端の奥まで領域が届きます。角度を小さくするとステップ注入の回数と影は減りますが、届く先が浅くなってロールオフの補償が弱まります。日新イオン機器の斜めイオン注入の記述にあるとおり、角度を取った分は非対称性としてはね返るため、ツイスト角を回す回数で払います。
第二はドーズ量です。増やせば逆短チャネル効果が強くなり、短ゲート側のVthを持ち上げられます。減らせばばらつきの側が軽くなる代わりに、ロールオフが元の形へ近づきます。ばらつきの大きさは数で決まります。電子情報通信学会の知識ベースは、ゲート長65ナノメートル、チャネル幅100ナノメートル、基板不純物濃度が1立方センチメートルあたり10の18乗個の場合、ゲート下の空乏層厚30ナノメートルに含まれる不純物数Nは約200個になるとしています。同章は、同一設計寸法のトランジスタに含まれるドーパント原子数はポアソン分布に従い、平均値Nに対して標準偏差が√Nになるとし、この寸法ではばらつき割合√N/Nが7パーセント程度に達するとしています。以上は同学会の知識ベースの記述です。同章は、しきい値ばらつきσVtがゲート幅とゲート長の積の平方根の逆数に比例して増えるとし、その比例係数AVtがPelgrom係数として、トランジスタの作製テクノロジー固有のばらつき強度の指標に広く用いられるとしています。日新イオン機器も不純物揺らぎの項で、チャネルに存在するドーパント数が数個レベルとなって統計的ばらつきに基づいた離散分布となり、その結果Vthのばらつきを引き起こすとしています。
第三はイオン種です。住友重機械マテリアルソリューションズは中電流イオン注入装置MC3-Ⅱの製品ページで、微細化されたMOSFETの特性はチャネルやドレインの不純物分布に極めて敏感に影響されるとし、イオン注入においてもエネルギー、ドーズ、注入角度など多くのパラメータを高い精度で制御することが不可欠になるとしています。同社は、ハローやレトログレードウェルを急峻に、かつ精度良く作るうえで、InやSbといった重イオンの注入が要る場面も増えるとしています。同社は同機が3から960キロエレクトロンボルトの注入エネルギーに対応し、重イオン注入にも対応するとしています。以上は同社の製品ページの記述です。重い元素へ替えるほど分布は急峻に保てますが、装置側に重イオン対応と角度精度が要ります。
第四は後工程の熱です。ハローの急峻さは、後の熱処理で鈍ります。注入で作った点欠陥がアニールの立ち上がりでドーパントを余計に動かす経路は過渡増速拡散(TED)にまとめてあります。熱を減らせば急峻さは保てますが、活性化率の側を差し出します。総和の見積りは熱バジェットです。
測る先は、二次元の濃度分布とゲート長を振ったVthです
Section titled “測る先は、二次元の濃度分布とゲート長を振ったVthです”ハローは横方向の作り込みですから、測る面も横方向へ広げます。日新イオン機器はSCM(走査型キャパシタンス顕微鏡)の項で、先端が尖った針とサンプルのあいだに発生する局所的な容量を測定することでキャリアの導電型および濃度を測定する手法だとし、二次元キャリアマップを求めるとしています。以上は同社の用語解説の記述です。
電気側の物差しは、ゲート長を振ったVthのカーブです。ロールオフが残っていればカーブが短ゲート側で落ち、補償が強すぎれば持ち上がりすぎます。ばらつきの強度は、電子情報通信学会の知識ベースが挙げるとおり、σVtをゲート幅とゲート長の積の平方根の逆数に対してプロットしたPelgromプロットの傾きで比べられます。
取引は、Vthの維持とばらつきのあいだで組みます
Section titled “取引は、Vthの維持とばらつきのあいだで組みます”- チルト角を大きく取ると、チャネル端の奥まで領域が届いて補償が強くなります。代わりに、ツイスト角を回すステップ注入の回数が増えます。
- ドーズ量を上げると、逆短チャネル効果で短ゲート側のVthを維持する方向へ動きます。代わりに、チャネル端のドーパント数が増えて不純物揺らぎの側の負担が増えます。
- 重イオンへ替えると、分布を急峻に保てます。代わりに、重イオン対応と角度精度を持つ注入装置に条件が限られます。
- 後工程の熱を減らすと、急峻さが保てます。代わりに、活性化率が落ちてシート抵抗が上がります。
- チャネルを真性のままにする構造へ移ると、揺らぎの要因そのものが減ります。日新イオン機器は不純物揺らぎの項で、薄膜SOIやfin構造のようにIntrinsicチャネル構造にすることで回避できるとしています。電子情報通信学会の知識ベースも、FinFETはチャネル中の不純物ドーピングを省ける特長を持ち合わせるため、バルクプレーナMOSFETにおける主要なばらつき原因であったRDFを基本的に排除できるとしています。代わりに、立体構造への均一なドーピングという別の宿題へ移ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ハロー注入とは何ですか?
MOSトランジスタのソースドレインエクステンションの周囲へ、チャネルと同じ導電型で濃度の高い領域を作る注入です。日新イオン機器は、この領域をHaloまたはポケットと呼び、ゲート電極形成後に斜めイオン注入を行うことでセルフアラインに形成できるとしています。
ポケット注入との違いは何ですか?
SEAJは半導体製造装置用語集で、Halo注入をウェーハを傾けた大チルト角注入で行うものとし、Pocket注入をエクステンション部の下に作る領域とし、ゲート電極の厚さをチャネル領域で厚く、ポケット注入領域で薄くして注入することにより形成するとしています。SEAJは、機能はPocket注入と同等としたうえで、Halo注入には生産プロセスとしてメリットがあるとしています。
何が直るのですか?
ゲート長が短いほどしきい値電圧が落ちるVthロールオフです。日新イオン機器は、Halo構造によりチャネル両端の不純物濃度が高くなり、チャネル長が短くなるほど寄与が大きくなるとし、短チャネル領域ではVthが上昇する逆短チャネル効果が発生して、微細トランジスタでも所望のVthを維持できるとしています。
チャネル注入で濃度を上げるのとどう違いますか?
作用する範囲が違います。電子情報通信学会の知識ベースは、活性領域の表面にドーピングして基板濃度を高める方法ではすべてのチャネル長でVthが大きくなる問題があるとしています。ハローはゲート端の局所だけを濃くするため、短いゲート長のところだけに作用します。
どのつまみで動きますか?
チルト角、ドーズ量、イオン種です。日新イオン機器は斜めイオン注入の項で、一方向からの注入のみでは非対称性が発生するため、ツイスト角を変化させて注入するステップ注入が用いられるとしています。住友重機械マテリアルソリューションズは、急峻なハローやレトログレードウェルを精度良く形成するために重イオン(In、Sb)注入の必要性も増すとしています。
何を差し出しますか?
しきい値電圧のばらつきです。電子情報通信学会の知識ベースは、ゲート長65ナノメートル、チャネル幅100ナノメートル、基板不純物濃度が1立方センチメートルあたり10の18乗個の場合、ゲート下の空乏層厚30ナノメートルに含まれる不純物数は約200個で、ばらつき割合は7パーセント程度になるとしています。
横方向の作り込みは何で測りますか?
二次元のキャリア分布です。日新イオン機器はSCM(走査型キャパシタンス顕微鏡)の項で、先端が尖った針と試料のあいだに発生する局所的な容量を測ることでキャリアの導電型および濃度を測る手法だとし、二次元キャリアマップを求めるとしています。電気側ではゲート長を振ったVthのカーブで補償の強さを追えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- エクステンションとは ── 浅く濃く作るのがエクステンション、それを取り囲んで打ち消すのがハローです
- ウェルとは ── 深さ方向のレトログレードで抑えるのがウェル、横方向で抑えるのがハローです
- FinFETとは ── ハローで補償する道筋と、チャネルを真性のままにする道筋を分ける構造です
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- 日新イオン機器「ハロー/ポケット注入」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Haloの記載、逆短チャネル効果、ゲート電極形成後の斜め注入によるセルフアライン形成
- 日新イオン機器「斜めイオン注入」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ゲート電極下のチャネル端へ入れる用途と、ツイスト角を変えるステップ注入
- 日新イオン機器「チャネル注入」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Vthが決まる3つの要因、注入量とVthの関係、低Vthと高Vthの作り分け
- 日新イオン機器「チャネルドープ」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 5E12ions/cm2未満というドーズ量の目安
- 日新イオン機器「LDD」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 1E13ions/cm2近辺というドーズ量の目安
- 日新イオン機器「ソース/ドレイン」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 5E14ions/cm2超というドーズ量の目安
- 日新イオン機器「不純物揺らぎ」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ドーパント数が数個レベルになること、Intrinsicチャネル構造による回避
- 日新イオン機器「SCM」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 局所容量から二次元キャリアマップを求める測定法
- 日新イオン機器「ウェル注入」イオン注入ディクショナリー(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 多段注入によるレトログレードウェルの形成
- 日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Halo注入とPocket注入の作り分け、大チルト角注入、SSRチャネルプロファイル、短チャネル効果の記載
- 電子情報通信学会「知識ベース S2群1編3章 微細デバイスの諸問題」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Vthロールオフとチャージシェアリング、DIBL、パンチスルー、ヘイローインプラントの作用、不純物数約200個と7パーセント、Pelgrom係数、FinFETによるRDF排除
- 住友重機械マテリアルソリューションズ「中電流イオン注入装置 MC3-Ⅱ / MC」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 急峻なハローとレトログレードウェルに重イオン(In、Sb)注入の必要性が増すこと、3から960キロエレクトロンボルトへの対応