エリプソメトリとは
エリプソメトリとは、斜めに当てた光が反射するときの偏光の変化を測り、その変化から膜の厚さや屈折率を求める方法です。 現場では、成膜した膜が目標どおりに付いたかを、削らずに確かめる手段として使われます。
膜の厚さを確実に知るだけなら、切って断面を観察するのが早い方法です。大塚電子の解説は、触針を使う方法や、電子顕微鏡で切り口を観察する方法について、誤差は小さいものの試料へ致命的な損傷を与えるおそれがあるため、品質管理の用途には荷が重いと位置づけています。量産では毎ロット確かめたいので、壊さずに測れる手段が要ります。
同じ解説によれば、光を使う膜厚測定には別の悩みが伴います。屈折率さえ分かっていれば高い精度で測れるのですが、屈折率は成膜条件に応じて上下するため、その屈折率自体を何らかの方法で知る必要が生じます。膜厚を求める立場からは、屈折率は解析を面倒にする要素です。膜の性質を知る立場からは、有用な手がかりにもなります。同社は、半導体材料では組成や不純物の割合が重要なので、屈折率が成膜条件の変化を映す指標にもなると述べています。そこで、光の解析へ偏光の情報を足したものが分光エリプソメトリです。
何を測っているのか
Section titled “何を測っているのか”ジェー・エー・ウーラム・ジャパンの解説は、入射する光に、入射面へ平行な電場成分を持つp偏光と、垂直な成分を持つs偏光が含まれるところから話を始めています。この二つは物質の表面で異なるふるまいをするので、反射した光の偏光状態は入射したときとは別の状態になります。その差を、二つの成分の強度比であるtanΨと、位相差Δという二つの値で表します。
大塚電子の解説は、膜厚を測るときは常に一定の入射角を保った反射測定で行うと述べ、二つの成分では表面での反射率にずれがあり、その比へ膜の中での光の干渉の効果が掛かることを挙げています。さらに、膜の中を進む速さの差と、反射のときの位相のずれ方の差から位相差が生まれるため、位相差の大きさも膜厚に応じて増減します。楕円になった偏光を解くので、エリプソメトリという名前が付いています。
1つの波長では、厚さの候補が複数あります
Section titled “1つの波長では、厚さの候補が複数あります”同社の解説は、この事情を数で示しています。単一波長では読み値がΨとΔの二つにとどまるため、定まる未知数も二つまでです。既知の基板の上に一層だけ膜がある単純な場合でも、厚さと屈折率の候補は複数のままです。透明な膜では、厚さが増えるにつれてΨとΔが周期的に同じ値を取るので、候補が一定の間隔でいくつも生じます。
そこで波長を増やします。同社は、波長が100種類のとき、求めたい値は厚さと各波長の屈折率で101個になるのに対し、読み値は各波長のΨとΔで200個になるため、周期性の問題を避けて解が一つに定まると述べています。屈折率は波長ごとに異なる値を取りますが、厚さの値は波長が移っても一つのままです。この一つという条件が、解を絞り込みます。ここに挙げた数は、同社の記事での例です。
現場で何が起きるのか
Section titled “現場で何が起きるのか”大阪産業技術研究所は、同所へ導入した装置での測定事例を公開しています。4インチのSi基板に窒化シリコンを成膜した試料を、露光時間2秒と二つの入射角の条件で64点測り、所要時間は約19分でした。膜厚は最も厚い場所と薄い場所で約25nm離れ、屈折率は最も高い場所と低い場所で0.006程度の差にとどまりました。このウェーハには色むらが生じていたのですが、測定の結果、その主な原因は膜厚の分布にあると分かりました。同所の測定事例での結果です。
ここに、エリプソメトリが現場で担う役割があります。外観のむらは、厚さの分布からも屈折率の分布からも生じます。切って断面を観察すれば原因は分かりますが、そのウェーハは工程から抜けます。削らずに面内の分布を求められると、均一性の課題を成膜条件の側へ持ち帰れます。
装置の中へ組み込む形もあります。ジェー・エー・ウーラム・ジャパンは、ALDのチャンバへ分光エリプソメーターを取り付け、酸化アルミニウムや酸化タンタル、酸化チタンの厚さをALDのサイクル数の関数として追った例を挙げ、一層ごとの成長を追えると述べています。同社は、ゲート酸化膜の膜厚測定の再現性が0.003nmかそれよりよい水準になるとも書いています。これらは同社の記述です。
もう一つ、CD-SEMのような寸法の測定と対になる性質があります。同社は、エリプソメトリが偏光成分の絶対的な強さのかわりに比を測るため、光が弱い場合や強さが不安定な場合でも測れること、そして反射率の測定と異なり正確な標準サンプルの維持が不要になることを利点に挙げています。
何を差し出すのか
Section titled “何を差し出すのか”答えが仮定に依存します。大阪産業技術研究所のテクニカルシートは、エリプソメーターが屈折率や膜厚を直接測るかわりに、光学的な仕組みを立てて解析する間接の測定になり、解析にはある程度の知識が要ると書いています。大塚電子の解説も、膜の界面の様子や深さ方向の密度の傾きまで求める解析には危うさがあるとし、スペクトルを動かす要素が多く、とりわけ膜の表面の状態で結果が動くため、どの見立てが本当なのか曖昧になる場合があると述べています。
薄すぎる膜も苦手です。大塚電子は、膜が数nm程度になると光の波長の百分の一ほどになり、屈折率と厚さの積は求まるものの、両者の分離が難しくなると書いています。ジェー・エー・ウーラム・ジャパンも、極薄膜では厚さと屈折率を同時に求めるだけの感度が不足するため、より厚い膜から得た屈折率をおおよその値として仮定し、厚さだけを求める進め方を勧めています。
相手も選びます。同社は、表面で鏡のように反射しさえすればほぼどの物質でも測れるとする一方、表面が粗いと光が散乱して検出器へ届く量が減ると述べています。厚い側にも限りがあり、可視から近赤外での測定では5μm以下が勧められ、1μmを超える膜では複数の入射角で測って確からしさを上げる形になります。ここに挙げた範囲は、同社が勧める目安です。大阪産業技術研究所も、光を使う測定である以上、測れる相手は鏡面に近い基板や薄膜に限られると注意しています。
つまりエリプソメトリは、壊さずに何度でも測れる代わりに、読み取った数字が「立てた見立てのもとでの厚さ」にとどまります。CVDやALDで積んだ膜を毎ロット追いかける用途には、この取引が合っています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”エリプソメトリとは何ですか?
光を斜めに当てて反射させ、その偏光の状態がどう移ったかを測り、変化の量から膜の厚さや屈折率を求める方法です。楕円になった偏光を解くことから、この名前が付いています。
何を測っているのですか?
二つの読み値です。ジェー・エー・ウーラム・ジャパンの解説は、反射光の偏光状態を、二つの偏光成分の強度比であるtanΨと位相差Δで表し、この二つがエリプソメトリの生データになると述べています。
なぜ間接の測定と呼ばれるのですか?
厚さそのものを直接得るかわりに、計算で求めるためです。大阪産業技術研究所のテクニカルシートは、エリプソメーターが屈折率や膜厚を直接測るかわりに、光学的な仕組みを立てて解析する間接の測定になると記しています。
1つの波長で測るとどうなりますか?
厚さの候補が複数のままです。ジェー・エー・ウーラム・ジャパンの解説は、単一波長では読み値が二つにとどまるため定まる未知数も二つまでで、透明な膜では厚さが増えるにつれて読み値が周期的に同じ値を取ると述べています。
波長を増やすと、なぜ解が定まるのですか?
読み値の数が求めたい値の数を上回るためです。同じ解説は、波長が100種類なら求めたい値は厚さと各波長の屈折率で101個になるのに対し、読み値は各波長のΨとΔで200個になるため、周期性の問題を避けて解が一つに定まるとしています。
半導体の現場では何に使いますか?
成膜の出来ばえを削らずに確かめる用途です。大阪産業技術研究所は、Si基板上のSiN膜を64点測って膜厚の分布を求め、ウェーハに生じた色むらの主な原因が膜厚の分布にあると確かめた事例を公表しています。同所の測定事例での結果です。
測れる相手に条件はありますか?
光が鏡のように反射して返ってくることです。ジェー・エー・ウーラム・ジャパンの解説は、表面で鏡面反射さえあればほぼどの物質でも測れるとする一方、表面が粗いと光が散乱して検出器へ届く量が減ると述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CD-SEM(寸法測定)とは ── 同じ非破壊の計測で、あちらは横方向の幅を測ります
- 断面観察とは ── 切って厚さを直接観察する側で、こちらは切らずに計算で求めます
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- ジェー・エー・ウーラム・ジャパン「エリプソメトリー FAQ」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 入射光に入射面へ平行なp偏光と垂直なs偏光が含まれ両者が表面で異なるふるまいをすること、反射光の偏光状態が強度比tanΨと位相差Δで表されること、ΨとΔから膜厚や屈折率を得るには光と試料のやりとりを記述した仕組みが要ること、単一波長で定まる未知数が二つまでにとどまり既知の基板上の単層膜でも厚さと屈折率の候補が複数になること、透明な膜では厚さの増加とともに読み値が周期的に同じ値を取ること、波長が100種類なら未知数101個に対し読み値が200個になり解が一つに定まること、極薄膜では厚さと屈折率を同時に求めるだけの感度が不足するためより厚い膜から得た屈折率を仮定して厚さだけを求める進め方が安全であること、鏡面反射があればほぼどの物質でも測れる一方で表面が粗いと光が散乱して検出器へ届く量が減ること、可視から近赤外での膜厚の上限として5μm以下が推奨され1μmを超える膜では複数の入射角が勧められること、偏光成分の絶対強度のかわりに比を測るため光が弱い場合や強度が不安定な場合でも測れること、反射率測定と異なり正確な標準サンプルの維持が不要になること、ALDのチャンバへ分光エリプソメーターを取り付けて酸化アルミニウム・酸化タンタル・酸化チタンの厚さをALDサイクル数の関数として追った例、ゲート酸化膜の膜厚測定の再現性が0.003nmかそれよりよいこと
- 大塚電子「5.エリプソメトリー」【入門】分光法による膜厚解析(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 楕円偏光を解析することからエリプソメトリーと呼ばれること、膜厚測定では常に一定の入射角を保った反射測定で行うこと、二つの偏光成分で表面の反射率が異なりその比に光の干渉の効果が掛かること、膜の中での光の進む速さの差と反射時の位相のずれ方の差から位相差が生じ位相差の大きさも膜厚に応じて増減すること、膜の界面の状態や深さ方向の密度勾配まで求める解析にはリスクがあり特に膜表面の状態に大きく左右されてどの見立てが正しいか曖昧になる場合があること、膜が数nm程度になると光の波長の百分の一程度となり屈折率と厚さの積は求まるものの両者の分離が難しくなること
- 大塚電子「2.薄膜の測定方法」【入門】分光法による膜厚解析(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 触針法や電子顕微鏡による断面観察は誤差が小さい一方で試料へ致命的な損傷を与えるおそれがあり品質管理の用途には荷が重いこと、分光光度計を用いる方法が非破壊・非接触で手軽であり屈折率が既知であれば高精度に測れる一方で屈折率が成膜条件により上下するため別途測る必要が生じること、半導体材料では組成や不純物の割合が重要なため屈折率が成膜条件の変化を映す指標になること、分光法へ偏光の解析機能を加えた分光エリプソメータではより薄い膜や屈折率自体を高精度に測れ膜の異方性も解析できること
- 大阪産業技術研究所「分光エリプソメーターによる測定事例」テクニカルシート No.18-05(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 分光エリプソメーターが偏光状態の変化を測り光学的な仕組みを用いて解析することで非破壊・非接触に屈折率・消衰係数・膜厚を短時間で測れること、基板上の薄膜を測る際に基板の光学定数が要ること、4インチSi基板上のSiN膜を露光時間2秒・2入射角で64点測り所要時間が約19分になったこと、膜厚が最も厚い部分と薄い部分で約25nm離れたこと、屈折率が最も高い部分と低い部分で0.006程度の差にとどまったこと、ウェーハに生じた色むらの主原因が膜厚の分布であったこと、光学測定のため対象が鏡面に近い基板や薄膜に制限されること、屈折率や膜厚を直接測るかわりに光学的な仕組みを立てて解析する間接の測定になること
- 大阪産業技術研究所「分光エリプソメーターによる測定事例(Ⅱ)」テクニカルシート No.19-04(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 分光エリプソメーターが非破壊かつ非接触で短時間に屈折率や膜厚を精度良く測れること、入射光と反射光もしくは透過光の偏光状態の変化を測り解析によって屈折率や膜厚を得る間接の測定であること、解析が必須でありある程度のエリプソメトリーの知識が要ること、光学異方性を有する試料の解析は多くの場合難易度が高くなること、反射や透過の測定となるため測定できる試料にも制限があること、上手に利用すれば短時間・非破壊・非接触で屈折率・消衰係数・膜厚・表面粗さ・光学異方性などの情報を得られること